昨日に引き続き、インターネット映画大賞への投票です。今日は、外国映画部門 です。日本映画部門と同様、今年、東京で公開された外国映画内、映画館で観た74作品の中から選びました。



【作品賞】(5本以上10本まで)

  「インビクタス/負けざる者たち 」    7点

  「[リミット] 」    6点

  「セラフィーヌの庭 」    4点

  「瞳の奥の秘密 」    3点

  「「エリックを探して 」    2点

  「フェアウエル さらば、哀しみのスパイ 」    2点

  「ハート・ロッカー 」    2点

  「闇の列車、光の旅 」    2点

  「フローズン・リバー 」    1点

  「モダン・ライフ 」    1点

【コメント】

クリント・イーストウッドにモーガン・フリーマン。私にとっては、かなり最強のコンビによる「インビクタス/負けざる者たち」は高まっていた期待を裏切らない作品でした。「[リミット]」は、最初、このシチュエーションで最後までもつのかと心配になりましたが、その不安は吹き飛ばされました。「セラフィーヌの庭」「闇の列車、光の旅」「フローズン・リバー」「モダン・ライフ」といった地味な扱いの作品の中にも印象に残る秀作が目立ちました。

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【監督賞】              作品名

   [ロドリゴ・コルテス] (「[リミット]」)

【コメント】

   ごくごく狭い空間、姿を見せる人物は1人だけという限られた状況でたっぷりとスリルを味わわせてくれたウデに感動。

【主演男優賞】

   [スティーブ・エヴェッツ] (「エリックを探して」)

【コメント】

   主人公の情けなさとその後の成長が見事に表現していて説得力がありました。

【主演女優賞】

   [ヨランド・モロー] (「セラフィーヌの庭」)

【コメント】

  狂気を感じさせる天才画家をリアルに表現。セラフィーヌが憑依したような演技が心に沁みました。

【助演男優賞】

   [ティム・マッグロウ] (「しあわせの隠れ場所 」)

【コメント】

   実話に基づいているという前提がなければあまりに非現実的と言いたくなるようなストーリーに、問題児だったホームレス同然の少年を拾って世話を焼く妻を支える夫を演じた彼の存在がリアリティを加えていました。

【助演女優賞】

   [ モニーク] (「プレシャス 」)

【コメント】

   ダメダメで同情の余地なしな酷い母親を哀しみを抱えた一人の人間として存在させていて印象的でした。

【ニューフェイスブレイク賞】

   [ノオミ・ラパス] (「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 」「ミレニアム2 火と戯れる女 」「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 」)

【コメント】

   特異なキャラクターであるリスベットを一人の人間味のある女性として表現しています。3部作を支える存在だったと思います。

【音楽賞】

  「NINE

【コメント】

   豪華女優陣、それぞれの味わいを表現した数々の音楽が耳に残りました。

【ブラックラズベリー賞】

  「神の子どもたちはみな踊る

【コメント】

  この原作の映画化に挑戦した心意気は評価したいと思うのですが、やはり、無理があったような...。

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【美脚維持大賞】

   [カトリーヌ・ド・ヌーブ] (「隠された日記 ~母たち、娘たち~ 」「クリスマス・ストーリー 」)

【コメント】

  すでにかなりのベテランとなった大女優。美貌もさることながら、年齢を超越したほっそりとした見事な脚線美が印象に残ります。

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いよいよ2010年も終ろうとしています。例年通り、一年の締めくくりに日本インターネット映画大賞 に投票したいと思います。


先ずは、日本映画部門 です。2010年に東京で公開された日本映画で、私が映画館で観た54本の中から選びました。



【作品賞】(5本以上10本まで)

  「キャタピラー 」       7点

  「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人 」       7点

  「酔いが醒めたら、うちに帰ろう。 」       3点

  「十三人の刺客 」       3点

  「悪人 」       3点

  「アヒルの子 」       2点

  「花のあと 」       2点

  「玄牝-げんぴん- 」       1点

  「ボックス! 」       1点

  「武士の家計簿 」       1点

【コメント】

  寺島しのぶのベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞で話題になった「キャタピラー」ですが、原作の味わいを残しながらも、また違った深みを持つ作品に仕上がっている点でも評価できる作品だと思います。「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」は、公開にこぎつけるにも苦労があったという地味な作品ですが、今の私たちの生き方についても考えさせられる深い、そして、爽やかな作品で印象的でした。「酔いが醒めたら、うちに帰ろう。」は"一度は信じた愛に背を向けない"生き方に共感を覚えました。

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【監督賞】              作品名

   [佐々木 芽生] (「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」)

【コメント】

   私にとっては、知らない事柄に関係した知らない人物に関するドキュメンタリーでしたが、主人公たち素材も素晴らしく、彼らの人物像を巧く描き出していて楽しめました。

【主演男優賞】

   [堺 雅人] (「ゴールデンスランバー 」「武士の家計簿」)

【コメント】

   出演作も多く、いつも様々な表情を見せてくれますが、今年も、それぞれの作品で輝いていました。

【主演女優賞】

   [寺島 しのぶ] (「キャタピラー」)

【コメント】

   勝手な周囲の期待や評価に振り回される一人の女性の内面を炙り出す迫力のある演技でした。

【助演男優賞】

   [稲垣 吾郎] (「十三人の刺客」)

【コメント】

   残虐な藩主の狂気を見事に表現。心の底から憎らしく思えました。

【助演女優賞】

   [木村 佳乃] (「告白 」)

【コメント】

   溺愛で息子をダメにしていく母を恐ろしいまでの迫力で魅せてくれました。

【ニューフェイスブレイク賞】

   [山崎 ハコ] (「ヘヴンズ ストーリー 」)

【コメント】

   どちらかというと懐かしい方という感じですが、女優としてはニューフェイスですね。意外と言っては失礼でしょうけれど、作品全体の中でも光る存在でした。

【音楽賞】

  「スープ・オペラ

【コメント】

  決して音楽を前面に押し出した作品ではありませんが、作品の雰囲気を巧く盛り上げる感じが良かったです。"音楽隊"の登場の仕方も作品のファンタジックな雰囲気によく合っていました。

【ブラックラズベリー賞】

  「ゲゲゲの女房

【コメント】

   期待があっただけに、面白くなる要素が一杯あっただけに、部分的には印象的な場面もいろいろあっただけに、大きな違和感が残ってしまったところが残念でした。

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【3Dを無駄に使ったで賞】

  「劇場版3D あたしンち 情熱のちょー超能力♪母 大暴走

【コメント】

   壮大なる3Dの無駄遣い。それでありながら、妙に3Dを使いこなしている感じが印象に残りました。

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デザート・フラワー

テーマ:

母国ソマリアから逃れ、世界的なモデルとなり、現在はFGM(女性器切除)廃止運動に力を注ぐワリス・ディリーの自伝「砂漠の女ディリー」を映画化した作品。


ソマリアの遊牧民の家に生まれたワリスが13歳の時、ワリスの父は、金品と引き替えに、4番目の妻として老いた男性に嫁がせようとします。その前夜、結婚を嫌ったワリスは家を抜け出し、都会の親戚の元へ。そこから、叔母の勧めでロンドンへ渡ります。最初は、親戚が大使を務めていた駐英大使館でメイドの仕事をしていましたが、故国の政変で大使は帰国。ワリスは一人ロンドンに残り路上生活をしていました。ある時、ダンサーとしての成功を夢見るマリリンに寝る場所を提供してもらうことに成功し、その後、一流のファッションカメラマンに見出され、トップモデルへの道を駆け上がっていき...。


単に、貧しい国から大都会ロンドンに逃れてきて、寝泊りする場所もないどん底の生活から世界的なトップモデルにのし上るという成功物語ではありませんでした。奇跡的な大成功でメデタシ、メデタシではなく、成功した後に何をしようとしたか。


ワリスは、自身も抱えていたFGM(女性器切除)の問題に力を注いでいくことを決意します。彼女を路上生活から拾い上げてくれた

との会話の中で、FGM(女性器切除)が、「女である以上避けられない運命」ではないことを知った驚き、病院でかけられた白人の言葉とソマリア出身の男性医師の言葉。この問題を彼女の記事を書こうとする記者に話す場面。そして、ラスト。


悲惨な生い立ちにも負けず努力して立身出世して万々歳ではなく、徐々に、自分が生きる社会を拡げ、世界を学んでいきながら、自分自身が為すべきことを見つけ出していく姿が凛々しく眩しかったです。


ファッションカメラマンとの出会いからどんどん名を挙げていくワリスですが、成功し出してからFGM(女性器切除)の問題に取り組むことを決意するまでが、少々、端折られ過ぎてしまったような...。成功に伴う生活の変化の中で、マリリンとの関係性の変化、ワリスの売り出しに一役買ったルシンダとの葛藤などもあったのではないかと想像されますし、その中で、彼女自身が自分が社会に対して為せることがあること、自分の発言が社会を動かす力となり得ることに気付いていったでしょうし、それがあったからこそ、FGM(女性器切除)の問題に取り組もうという決意もなされたのではないかと思ったのですが...。


ハロルドの登場の仕方も、今ひとつ中途半端。成り行きをきっちり描かないのなら、ニューヨークで彼の家を訪ねるシーンは蛇足のような気がしました。出会いの場面だけで終らせても何の問題もなかったような...。


それにしても、見事な人生。本年も実話に基づいた成功譚を映画化した作品(「しあわせの隠れ場所」とか「プレシャス」とか)がいくつかありましたが、その中でも、主人公自身の意思が強力に感じられる作品でした。


今年は128本の作品を映画館で観ました。明日、明後日は映画を観る予定がないので、本作が今年の映画館での見納めとなります。ラストを締めくくる作品としては良かったと思います。



デザート・フラワー@ぴあ映画生活

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エリックを探して

テーマ:

郵便局員のエリックは、最初に結婚し離婚した妻を今でも思い続け、2度目の妻の連れ子である2人の息子と暮らしていますが、息子たちからは冷たくあしらわれる情けない日々を過ごしています。彼は、サッカーの名門、マンチェスター・ユナイテッドの熱烈なサポーターで、そのスーパースターであるエリック・カントナ選手の大ファン。ある日、いつものように、悩みごとについて、カントナのポスターに語りかけていると、何故か、突然、カントナ選手が現れ、エリックにアドバイスを始め...。


もういい加減イイトシしたオジサンなエリックですが、息子や息子の友人たちにも馬鹿にされ、元妻への思いが断ち切れずに鬱々とした日々を送っているという情けなさ。


そんな彼が、憧れのサッカーのスーパースターの助けを得て張り切りだし、大きく変身します。そこには、父親として、一人の男性としての成長が見られます。きちんと相手とコミュニケーションをとる。自分の想いをしっかりと相手に伝える。自分なりの考えをしっかり持ち、やたらとブレたりせず毅然と対応する。


スーパースター、カントナとはいえ、決して、超能力を発揮するわけでも魔法を使うわけでもありません。まぁ、ごくごくオーソドックスで真っ当な言葉をかけるだけ。そんなの言われなくても分かっている、すでにエリックの心の中にあった言葉だったことでしょう。もっとも、カントナはエリックにしか見えない彼の中の妄想。カントナからエリックの中に全くない言葉が出てくるわけもありません。


それでも、エリックにとっては、彼のスーパースターから出てくる言葉なのですから、やはり、重みが違うのでしょう。カントナの言葉は、彼に大きな影響を与え、彼の行動を変え、元妻、リリーやリリーとの間の娘、サムとの関係も変えていきます。


そして、エリックの成長の中でも大きいものが、"仲間の協力を得る"ということ。「自分だけの力で何とかしよう」というのは、カッコ良さ気ではありますが、自分の力の限界を無視した子どもっぽい考え方というべきなのかもしれません。


周囲の協力を得るためには、自分の置かれた状況を周囲に理解してもらえるよう働きかけるコミュニケーション能力も必要。エリックは、カントナとの対話の中で、仲間の大切さやリリー、サム、息子たちの大切さに気付いていき、彼らとの関係を再構築していきます。若く輝いていた時期は通り過ぎ、後は終るのを待つだけといった諦めに入っていたようなエリックでしたが、けれど、彼の人生、まだ、終了のホイッスルは鳴らされていません。それまでは、得点の可能性が残されている。そんな希望が感じられる清々しい作品でした。


エリックの郵便局員という仕事もストーリーの展開の中で巧く活かされていましたし、細部までよく作り込まれていて、最初から最後まで作品の世界に浸ることができました。


取り立ててサッカーファンでもなく、カントナのこともほとんど知りませんでしたが、しっかりと楽しめました。サッカーシーンも満載で若かりし日のベッカムも登場したりして、サッカーファンなら尚更楽しめること間違いなしだと思います。



公式サイト

http://www.kingeric.jp/



エリックを探して@ぴあ映画生活

白いリボン

テーマ:

第一次世界大戦前夜、ドイツ北部の小さな村で不可解な事件が連続して起こります。敬虔なプロテスタントとして生きてきた村人たちが、疑心暗鬼になり、互いに疑いの目を向けあうようになり...。


村人たちは、敬虔なプロテスタントの信者。けれど、そこには、支配する者と支配される者がいて、支配される者は、さらに弱い立場にある被支配者を探しているような...。


牧師は、子どもたちが清く正しく育つよう厳しく育てます。彼の正義に子どもが従わなければ罰を与えるのですが、その時に、「自分も心苦しいのだけれどお前たちのために罰を下すのだ」と言い訳をします。それは、子どもたちへの言い訳であり、自分自身への言い訳であったことでしょう。そして、彼自身は、それを言い訳だと意識することもなく、本心から自らの正義を信じていたのかもしれません。


けれど、牧師の言動は、子どもたちに自分の正義のためには他人を踏みにじっても良いのだというメッセージを伝えはしなかったか、自分の暴力を相手のための行為だと正当化することを教えてはいなかったか、正義のためなら独裁的に相手を支配しても良いのだと、むしろそうすることこそが正しいことなのだと示しはしなかったか?


医師は、自分の酷い行為を棚に上げ、長い間献身的に尽くしてくれた助産師に罵詈雑言を投げつけ、自分に起きた悪いことを全て彼女の所為にしようとしています。彼も、本心からそう信じていたのかもしれません。自分が加害者であるにも拘わらず、まるで、自分の方が被害者のように、客観的に見れば被害者である相手に加害の責任があるかのように理屈をこねます。


自分の中に原因を求めず、他者に責任を押し付け、自分を被害者として位置付ける。自分の正義のためなら相手を傷つけることがあっても仕方がないとする価値観。こうしたものが根底にあることで、相手への不信、恐怖を大きくし、膨らんだ被害感情が相手への攻撃となって噴出していく...。


人類の歴史の中で繰り返され来たであろう果てしない戦いを生み出す土壌が作られていく過程が見えてくるようです。


自分を悪の側に位置づける認識があれば、心の中に何らかの葛藤が生まれ、行動にも何らかの抑制がかかる可能性があるもの。けれど、自分にこそ正義があると信じてしまうと、歯止めが利きにくく、どこまでも暴走してしまうことがあります。特に、自分を被害者、相手を加害者と信じてしまった時には。そう、被害者は、案外、簡単に復讐者、加害者に転換するのです。


多くの戦争が防衛のために始められ、多くの侵略が相手国の庶民のために行われていることを私たちは歴史から学ぶことができます。そして、その"防衛"の理屈を成立させるために情報操作や欺瞞が行われ、相手国の庶民のために行われた戦いで多くの相手国庶民を殺しているわけです。歴史を見ればそんな例はいくらでも見つけることができます。


本作では、一連の事件の犯人探しに関する解答は明示されませんが、ところどころにそのヒントが示されます。大人たちの歪みをそのまま受け継ぎ、それ以上に先鋭化させるのは子どもたち。


本作のラスト近くでは、第一次世界大戦の引き金となったサラエボでの事件が起こります。その第一次世界大戦の終結が第二次世界大戦の原因を作り、やがて、世界は第二次世界大戦に突入します。本作に登場する子どもたちは、第二次世界大戦の時に大人になった彼らが戦争の中をどう生きたのか、大人になった彼らがどのように戦争を支えたのか...。恐らくは、愛国的な国民となり、忠実に国のため、故郷のための戦争を支えたのでしょう。正義から自由になり、自分を被害者にするカタルシスから解放されるのは、簡単なことではありません。


白黒の陰影のある映像には、強い力が感じられ、戦いの時代に突き進んでいく社会の陰鬱さ、逃れようのない息苦しい空気が伝わってくるようでした。


重く暗い作品ですが、一度は観ておきたい作品だと思います。



公式サイト

http://www.shiroi-ribon.com/



白いリボン@ぴあ映画生活




http://pia-eigaseikatsu.jp/tb/tb?movie_id=153635

海炭市叙景

テーマ:

1990年に自ら命を絶った不遇の小説家、佐藤泰志が、亡くなる直前の2年余をかけて、故郷である函館をモデルにした18の連作短編小説「海炭市叙景」の中から5つの短編を選んで映画化した作品。


その冬、海炭市では、町を支える産業であった造船所が経営難のためにリストラを行い、大量の解雇者を出します。その中で、造船所を解雇された兄とその妹は、なけなしの小銭を握り締めて初日の出を見ようと山を登りますが、兄は行方不明になってしまいます。地域の再開発のため立ち退きを迫られ単身生活の老婆は、長年飼っていた老齢の猫に姿を消されてしまいます。小さな会社を経営する男は、再婚した妻に息子を虐待されますが、その責任の一端は自分にもありました。プラネタリウムで働く男は妻に裏切られ傷付きます。路面電車の運転手をする男の息子は、帰郷しても父親のところに顔を出そうとはせず...。


微妙に繋がっていくような、繋がらないような5つのストーリー。そこには、寂れゆく町の姿があり、そこに住む人々のやるせない日常があります。町の暗い将来をそのまま示しているような人々の何かを諦めてしまったような荒んだ雰囲気。


全体に寒々しさが感じられる作品でした。それは、雪が降る映像のせいというより、登場する人々の希望が感じられない言動にあるのでしょう。ところどころに、ちょっとホッコリできるような部分がないわけではないのですが、それよりも、寒さや寂しさが前面に出てきています。


さらに、個々のエピソードがバラバラな感じで、全体としての纏まりに欠ける感じが、その寒々しい雰囲気を強調しているように思えました。


何だか、分かりにくい描写、それも特に必然性もないのに敢えて分かりにくく表現しているようにしか思えないような部分もあり、頭の中に疑問符が浮かんできて集中力が途切れる場面もチラホラ。


そして、時代設定も???でした。造船所でリストラとか、世間では景気が上向いていたということは、1990年の少し前。つまり、原作が書かれた時の"今"。携帯電話がフツ~の人が当たり前に使うものになったのは、それよりもだいぶ後のこと。今と20年くらい前の状況とが混在していたことも分かりにくさの原因の一つだったのでしょう。


街を走る路面電車とか、その車内の映像とか、心に沁みてくるような印象的な映像もところどころにはあり、閉塞感が漂い滅び行く気配さえ感じさせる町にも、例え、暗さばかりが感じられるものではあっても、確かに人々の生活があり人生があることを実感させられるような面もあっただけに、全体のまとまりの悪さは気になりました。


猫と暮らす老婆の存在感は見事でしたし、寂れゆく町で暮らすやるせない人々の姿にはリアリティがありましたし、暗い希望の見えにくい物語な割には嫌な気持ちにならない作品で、特に楽しさ、面白さが感じられるワケでもないのに、長めの上映時間も左程気になりませんでした。決して、ツマラナイだけの作品ではなく、悪い作品ではなかったのに、とても残念でしたし、勿体なかったです。


個々のエピソードの繋ぎ方と全体の構成の問題が大きいのではないかと思います。



公式サイト

http://www.cinemairis.com/kaitanshi/



海炭市叙景@ぴあ映画生活

今年の6月で10周年を迎えたテレビ朝日の人気刑事ドラマ「相棒」の劇場版第2弾。TVのドラマも2008年公開の劇場版第1弾「相棒-劇場版- 絶対絶命!42.195km東京ビックシティマラソン 」もスピンオフ作品の「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿 」も観ています。


警視庁本部内で、元警察官の八重樫哲也による人質篭城事件が発生。何かを要求することもなく、動機は分からないまま時が過ぎ、強行突入により事件は解決されます。しかし、突入のドサクサの中、八重樫は射殺され、彼が何のために事件を起こしたのかは解明されないままでした。そのまま、事件を終結されようとする上層部に反し、杉下右京と神戸尊の"特命係"は、事件の真相に迫っていき...。


TVシリーズを観ているから、ということももちろんあるのだとは思います。TVシリーズで人間関係や人物像を把握しているからこそ分かる部分も散りばめられていましたから。けれど、それを差し引いても、面白かったです。


少々、風呂敷を広げすぎた感は否めませんでしたし、その分、雑に思えてしまう部分もありましたが、スピード感と迫力があり、時間を感じさせない緊迫感ある作品になっていました。


前回の劇場版より、今回の方が私的には好みでした。相変わらずの杉下右京のブレないカッコ良さ前回でしたし...。右京と尊のちょっと違うけれど、それぞれにしっかりとその人の中に根を下ろしている正義感も清々しかったし...。


前回劇場版の時の相反するキャラクターの亀山クンとのコンビとは一味違い、同じ路線上にありながらそれぞれの個性が感じられるコンビもなかなか味わい深いものです。


事件の背景にある過去との繋がり、権力抗争もリアリティがありました。この太平の世の官僚たちが、いかにもやっていそうですから...。


それにしてもラストはあれでいいのか?予告編などの前情報から予想できた結末ではありましたが、この後のTVシリーズ、大丈夫でしょうか?TVシリーズも完結に向かっていくってことでしょうか?とっても、気になります。そもそも、この展開が本筋に必須のものではなく、とってつけたような感じになっている点でも違和感ありました。一人の本作シリーズの功労者の花道にもなっているのですから、もっと、本筋に絡んだ必然性が感じられる展開にして欲しかったです。そこが、ちょっと残念。



公式サイト

http://www.aibou-movie.jp/



相棒-劇場版II-警視庁占拠!特命係の一番長い夜@ぴあ映画生活

久し振りに映画以外の話題を...。


さて、今夜はクリスマスイブ。明日の朝、目を覚ませば、枕元(クリスマスツリーの下?)に、サンタさんが置いてくれたプレゼントがあるはず。


ずっと、サンタさんからのプレゼントを楽しみにしてきた息子も小学校高学年。さすがに、心の底からサンタクロースを信じられる時期ではなくなったようです。本当はいないことを知っているけれど、信じておくことにした方がプレゼントを貰えて得だと思っている...そんなところでしょうか。


もっとも、サンタクロースを都合よく利用しているのは、チョッと成長した子どもたちばかりでなく、日本のその他大勢の大人も同じ。本来は、キリスト教に由来するこの行事を、宗教とは切り離した風物詩にしてしまい、商売に利用し、楽しみに利用し...、ほとんど骨の髄までしゃぶりつくしています。


この宗教的ないい加減さというか、寛容さ、何でも楽しんでしまおう根性は、特筆すべき日本人の性質と言うべきものかもしれません。


我が家では、毎年、クリスマスの3週間くらい前にサンタさんへの手紙を書くことになっているのですが、今年も書きました。けれど、今年の手紙がこれまでと違うのは、「今年が最後」とあったこと。息子なりに、そろそろ子どもの時期から少しずつ大人の時期に移って行っていることを感じているのかもしれません。


子どもにとってのクリスマスの楽しみは、サンタさんからのプレゼント。でも、サンタさんからはプレゼントを貰えない大人だって結構楽しめるのです。子どもを騙して。いかにして、サンタクロースの存在を信じさせるか、この世界の少なくない一部にいる多くの大人が、この命題にいかに真剣に労力を払って取り組んできたことか。そのエネルギーたるや、相当なものがあります。


そのエネルギーは、名著「サンタクロースっているんでしょうか? 」を生み、サンタクロースの動きを追跡するサイトまで登場させています。このサイトは、北アメリカ航空宇宙防衛司令部が1955年に中央防衛航空軍基地から受け継いで50年以上も続けている伝統のあるもの。サンタクロースに関する練られた分析なども細部まで凝っていて唸らされます。


今年も世界のあちこちでサンタ狂騒曲が繰り広げられていることでしょう。子どもの笑顔のために大人たちが本気でサンタクロースの存在を信じさせようと奮闘する姿、そして、子どもが驚きをもって喜ぶ顔。それは、まさしく平和の一つの形なのでしょう。きっと、そうして"騙された"子どもたちも、いつか、大人になり、自分たちのために必死にあれこれ知恵を働かせてくれた親たちのことを懐かしく思い出し、自分たちの子どもたちのためにあれこれ考えるのでしょう。


その平和な御伽噺が、世界を包み込んでくれることを祈りたいものです。願わくば、世界中の子どもたち、かつて子どもだった大人たちが穏やかなクリスマスを迎えられますように。

マルセイユの決着<おとしまえ>

テーマ:
マルセイユの決着(おとしまえ) [DVD]/モニカ・ベルッチ,ダニエル・オートゥイユ
¥3,990
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一度は死刑判決を受け11年間、服役した後、作家に転身したジョゼ・ジョヴァンニの小説「おとしまえをつけろ」を1966年に映画化した「ギャング」のリメイク。原作小説は未読、オリジナル映画も未見です。


1960年代のフランス。終身刑の宣告を受けて服役していた大物のギャング、ギュが脱獄し10年振りにパリに戻ります。ところが、かつての相棒の未亡人マヌーシュがバーを営むパリの暗黒街もすっかり様変わり。仁義を欠いた世界に見切りをつけたギュは、マヌーシュの助けを借りてマルセイユへ向かい、国外へ出ることにします。逃亡資金を稼ぐため最後の大仕事に挑みますが...。


映像の雰囲気がいかにも古めかしく重く、ノワールな味わいたっぷりです。登場人物も中心となっているのはオジサンたち。主人公もそれなりに年齢を重ねた昔堅気のオジサン。法律は大切にしないけれど、仲間や義理人情、仁義は大切にするし、そのためには命さえ賭ける。


法律を大切にしないのは彼らを追う警察も同じで、敵と狙えば罠に嵌め、拷問し...。もっとも、この手のお話で警察が悪者になるのはお約束。もちろん、そもそも、ギュがよせばいいのに"最後の大仕事"に挑むのもお約束。


まぁ、善悪は別として、とにかく、オジサンたちがカッコいい。ほとんどそれだけの作品とも言えますが、そのカッコよさがなかなか見事。2時間半を超える長さですが、それをオジサンたちのダンディズムで引っ張ります。暗めの重厚な画面に渋いオジサンたちの姿が映え、まさに眼福。意外に長さを感じず最後まで観ることができました。


余韻を残すラストも印象的。オジサンたちの間の華麗なる紅一点、マヌーシュの表情が心に染みました。その前、ギュを追い詰めた刑事が最後にちょっとした人情を見せる場面も印象的でした。



マルセイユの決着〈おとしまえ〉@ぴあ映画生活

サベイランス

テーマ:
サベイランス [DVD]/ぺル・ジェームズ,ビル・プルマン,ライアン・シンプキンス
¥3,990
Amazon.co.jp


サンタ・フェの荒野の路上で奇妙な殺人事件が発生しました。警察官、若い女性、少女の3人が生き残り、男女のFBI捜査官が事情聴取を開始します。しかし、それぞれの証言は微妙にすれ違い...。


「衝撃のラスト」がウリのようですが、正直、衝撃感は低かったです。というか、ほとんどありませんでした。


3人の目撃者、悪徳警官、恋人を殺された麻薬中毒の女性、家族を殺された9歳の少女。それぞれの思惑とウソにより証言は食い違います。さて、真相は?ということで展開していくわけですが、残念ながら真犯人がわりとアッサリと読めてしまいます。それでも、証言をしている3人が事件を生き残ったのは何故かという部分で興味を引っ張られる前半部分は、それなりの緊張感もあり悪くなかったと思います。


乾いたハイウェイの風景とか、寂れた感じの田舎町とそこにある警察署とか、ところどころに登場する動物の死骸とか、それなりに雰囲気のある映像が観る者を引っ張りますが、どうも、今ひとつ迫力に欠けます。


宣伝文句の通り不条理ではあるのですが、その不条理さが中途半端というか...。どうしようもなく救われないし残酷な上に、惹きつけられるような魅力が感じられず、集中力が削がれました。


それに、確かに残虐な犯人なのですが、それよりも、悪徳警察官たちの悪行が際立ってしまって...。本物の警察官が制服着て職務中に立場を利用してアレですから...。


3人の証言と事件の映像の絡ませ方をもう少し工夫して、犯人像をもっと丁寧に描き、真犯人の明かし方を工夫すれば、もっとずっと面白くなったと思うのですが...。



サベイランス@ぴあ映画生活