武士道シックスティーン

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武士道シックスティーン [DVD]/成海璃子,北乃きい,石黒英雄
¥4,935
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誉田哲也の同名小説を映画化した作品。原作は未読です。


3歳から父により剣道の英才教育を受けてきた香織は、中学生の時に出場したある大会で、同学年の無名の選手に敗れます。その悔しさが忘れられず、その選手のいる東松学園に入学します。ところが、再会した因縁のライバル、早苗は、剣道を楽しむのがモットーのお気楽少女。その早苗の姿に失望しながらも、早苗に真剣に剣道に取り組ませようと強引に引っ張っていこうとする香織。その姿勢に、早苗も引き込まれていきます。一方、剣道が中心の生活をしてきた香織は、早苗との交流の中で、普通の女子高生の生活を知るようになり...。


主演の2人は、それぞれに内面に刺を抱えながら、迷いつつも青春している女子高生をうまく表現していたと思います。脇を固める面々も、それぞれの味わいを出していました。


不器用に真っ直ぐに一途な道を突き進んできた香織。剣道に魅力を感じながらも一途に進む踏ん切りをつけられずにいた早苗。その対照のバランスが良く、一見、正反対なような2人が、それぞれに真っ直ぐで純で、青春の香りがストレートに伝わってきました。


ただ、中学生チャンピオンの香織が、全くの無名選手に負け、しかも、その勝者が、その後も大して評価されている様子がないのは不思議な感じがしました。例え、それが剣道でないにしても、何らかの訓練なり特別な才能なりがないと香織に勝つというのは、いくらなんでも...。彼女が、香織から逃げられる能力をどこでどんな形で身につけたのか、その背景が欲しかったです。


そして、それぞれの父親との確執。ここも、それぞれの人格形成に大きな影響を与えている部分ですので、もう少し、丁寧に描いてもらいたかったです。


予定調和な物語ではありますが、香織を演じる成海璃子、早苗を演じる北乃きいの2人の清々しい存在感と互いに影響し合いながら成長していく姿に好感を持てる爽やかな作品に仕上がっているだけに、もう一工夫がなかったことが惜しまれます。


まぁ、誰でも安心してそれなりに楽しめる作品だとは思いますので、一度くらいDVDをレンタルしても損はないと思います。



武士道シックスティーン@ぴあ映画生活

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メイプルソープとコレクター

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メイプルソープとコレクター [DVD]/ロバート・メイプルソープ,サム・ワグスタッフ,パティ・スミス
¥4,935
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数々の衝撃的な写真を発表し、HIVが原因で1989年3月に42歳で亡くなった天才写真家ロバート・メイプルソープ。彼の才能を見出し、育て、世に送り出したのは、美術コレクターとして活躍していたサム・ワグスタッフでした。2人の関係を2人を知る人々の証言などを通して描きます。

本作で語られるのは、メイプルソープというより、むしろワグスタッフの人となりが浮かび上がってくる作品です。そして、メイプルソープに対するワグスタッフの"コレクター"としての関わりより、彼を世に送り出すため、教育し、刺激し、プロデュースし、支援し...。メイプルソープこそが、ワグスタッフが作り上げた作品のような...。


芸術というもの、それがなければ生きていけないというものではなく、その価値の決まり方も実に曖昧。コストに対し価格が設定されるわけでもなく、この先、どんなものに値がついていくのか、今値の張るものの価値がどう変動していくのかは、実に不透明。


それまで、値のついていなかったものに金銭的な価値を見出し、育てていく。そんなアートなビジネスの裏側の一端が垣間見られる作品でもあり、そんなところも面白かったです。


視点がワグスタッフに偏りすぎた感じはしましたし、証言者たちのバランスの悪さも感じましたが、なかなか興味深い作品でした。



メイプルソープとコレクター@ぴあ映画生活

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バックマン家の人々

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バックマン家の人々 [DVD]/スティーブ・マーティン,キアヌ・リーブス
¥980
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バックマン家の4人の兄弟姉妹は、それぞれ悩みながらも子育てに奮闘中。長男のギルは、息子に精神科を受診させるよう勧められショックを受けます。バツイチの長女、ヘレンはボーイフレンドに夢中になっている娘と反抗的な息子に手を焼いています。次女のスーザンの夫は3歳になる娘の英才教育に夢中。そんな中、しばらく音沙汰のかなった次男のラリーが、突然、黒人の子どもを連れて帰郷し...。


相当な一族です。


子どもたちはどこか偏っていて、当然のことながら、その親もヘン。もちろん、おじいちゃんおばあちゃんたちも。


それでも、彼らの時には激しく驚きの言動が、打算によるものではなく、その根底に彼らなりの愛情が感じられることが本作の救いとなり、安心して彼らのぶっ飛び振りを笑える作品になっています。


まぁ、無茶苦茶でありえない彼らなので、変にリアリティがない分、他人事として笑い飛ばせる部分もあるのですが、とはいえ、世の中には、意外に何もかもが"マトモ"な人々などそう普通に存在するわけではなく、誰もが大なり小なりマトモでない部分を抱えているものなのでしょう。そんな身につまされる部分もバランスよく織り込まれ、本作のスパイスとなっています。もちろん、ほとんどの場合、バックマン家の人々ほどではないでしょうけれど。


どこか人としての愛嬌が感じられながらも、多分、身近にいたらと~~~ってもメーワクなバックマン家の面々。ちょっと遠くから眺めているのが、安全で安心。けれど、彼らのような存在を本当に楽しむためには、その影響をかぶることを恐れていてはいけないのかもしれません。だからといって、バックマン家に生まれたいとまでは思えませんでしたが...。


俳優陣もそれぞれに好演で、ど~しよ~もない彼らを愛されるべきキャラクターに仕上げています。ヘレンの娘のボーイフレンドを演じた若き日のキアヌ・リーブスが、時々、印象的なセリフを口にして存在感を出している辺りも本作の見どころの一つ。


若干、ふざけすぎな感じもありますが、それも、本作ならではの味わいかもしれません。その辺りで好き嫌いが分かれるかもしれませんが...。それでも、観ておいて損はない作品だと思います。



バックマン家の人々@ぴあ映画生活

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死刑執行人もまた死す

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死刑執行人もまた死す[完全版] [DVD]/ブライアン・ドンレヴィ
¥3,990
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1942年6月にプラハで起きたラインハルト・ハイドリッヒ暗殺事件をもとに作られた作品ですが、製作当時は、まだ事件の真相は明らかにされておらず、本作のストーリーは、フィクションとして作られたものです。


第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されていたチェコ、プラハでナチスの地区司令官が暗殺されます。犯人であるレジスタンスの医師、フランツは、事件後に偶然出会い、彼を庇ってくれたマーシャが住むアパートに身を隠しますが、ナチスは、その報復として、一般の市民を無差別に人質として連行し...。


徹底的に、ナチス=悪、チェコ=善となっており、チェコ側が相当な覚悟のもと一枚岩になって祖国のために闘う姿が描かれます。監督がナチスドイツを嫌ってアメリカに亡命したフリッツ・ラングで、脚本がやはりナチスから逃げて亡命していた劇作家のブレヒトということもあり、その辺りの描写は徹底していますが、少々、チェコ=善の部分が強すぎた感じがしなくもありませんでした。作中でチェコ人の裏切りも描かれますが、基調は、チェコ人=ナチスに屈せず命を賭けて闘う愛国者。国として苦難の歴史を重ねてきたチェコなので、もちろん、そうした資質は他国の国民に比べて強い面はあるのでしょうけれど、実際は、それなりに裏切り者もいたわけで...。


もっとも、特に、亡命し、遠くから故国を見守るしかない者としては、故国の仲間への期待と応援の気持ちが募るのも当然なのでしょうけれど...。そんな製作者側のチェコへの熱い想いが感じられる作品です。


政治的、社会的背景の強い作品ではありますが、サスペンスタッチのハラハラドキドキの展開には惹き付けられましたし、そうした中で現れてくる人間模様も丁寧に描きこまれています。重くなりがちなテーマを扱いながらも、コミカルな描写も挟み込まれ、しっかりとエンターテイメントとして楽しめる作品に仕上がっているところは見事。


エンド・クレジットにも、製作者の強烈な想いが籠もっていて印象的です。


一見の価値アリです。



実際のラインハルト・ハイドリッヒ暗殺事件の概要は...。


イギリスから送りこまれた愛国チェコ人ゲリラ兵がハインドリッヒを暗殺(「エンスラポイド作戦」)。その後、裏切りから情報が漏れ、実行犯たちは匿われていた教会で最後の抵抗を試みたものの全員が死亡。ヒトラーは、さらに、その事件に対する報復に出ます。「その村の出身にイギリスに行って軍隊に入った者がいる」程度の噂を根拠として、リディツェとレジャーキという無抵抗の村を襲撃し、男性はその場で全員射殺、女性と子どもは強制収容所送りとします。強制収容所に入れられた村人のほとんどは帰ってこなかったとのこと。



死刑執行人もまた死す〈完全版〉@ぴあ映画生活

キング・オブ・コメディ

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ニューヨークに住むパプキンは、人気コメディアン、、ジェリー・ラングフォードの大ファン。ある日、やはり、ジェリーの熱狂的なファンであるマーシャと知り合い、2人で大胆な作戦をたてます。ジェリーを誘拐し、替わりにパプキンがTVショーに出演し、マーシャはジェリーと一晩を過ごそうというのです。2人は、ジェリーをマーシャの自宅に監禁し、縛り上げ...。


それにしても、ロバート・デ・ニーロ、弾けています。この役を楽しんでいる感じが、パプキンに単なる不気味な変質者ではない魅力を与えているのかもしれません。ロバート・デ・ニーロ程の超有名なスターなら、当然、本作のジェリーのように、イヤ、それ以上に執拗に追われた経験があったことでしょう。常に被害者の立場にしかいられなかった彼が、相反する位置に立って、その状況を思い切り楽しんでいる感じがしました。


大スターも大変なのでしょう。もちろん、人気商売である以上、こうしたエピソードとは全く関係ないところにいたら、それはそれで寂しいものなのでしょうけれど...。


残念ながら、パプキンが舞台で披露するジョークが、それ程、面白く感じられず、その辺りで、気分的に作品の世界に浸れなかったのですが、あれは、"非常に面白い"という設定だと理解して間違いないのですよね?


ほとんど犯罪やり得なパプキンでしたが、そこまで自分を信じきれる才能は大したものだと思います。結局、才能やら運やらの問題はもちろんあるのでしょうけれど、成功するまで自分を信じ続けられる能力こそが、人を成功に導く条件なのかもしれません。成功を信じて前に進み続ける限り、失敗も成功の元に変えれるわけだから。


パプキンの後日談はヨシとして、マーシャはあの後どうしたのかとか、気がかりな点もありましたし、ちょっと笑えないレベルのパプキンの"犯罪"には、ついていけないものも感じましたが、そのトンでもなさこそが本作を成り立たせている面もあるわけで、まぁ、この辺りは、致し方ないところなのでしょう。


マーシャの家から逃げ出したジェリーが、街中で電器店のウィンドーに並べられたTVに映し出されたパプキンの姿を眼にした時の表情が印象的でした。


観ておいて損はないと思います。



キング・オブ・コメディ@ぴあ映画生活

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)/ブラッドリー・クーパー,エド・ヘルムズ,ザック・ガリフィナーキス
¥3,980
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結婚式を2日後に控えたダグのため、独身さよならパーティーを開くためにラスベガスにやってきたダグの親友、フィル、ステュ、それに花嫁の弟、アラン。部屋で乾杯をし、街へ繰り出し楽しい夜を過ごすつもりでした。ところが、気付いたら、その次の朝。目覚めた彼らが見たのは、滅茶苦茶になったホテルのスイート・ルーム。部屋は荒れ放題、何故か、生きた虎、鶏、そして、赤ん坊まで。ところが、皆、酷い二日酔いで何も思い出せません。おまけに肝心のダグの姿が見当たらず...。


際限のない馬鹿馬鹿しさをやらかす舞台をラスベガスにしたことが大正解。ラスベガスの警官たちが言うように、そこは、世界中から馬鹿騒ぎをしたい観光客が訪れる街。このトンでもない大騒ぎもラスベガスになら似合っています。


男4人の騒ぎ方も相当にお下劣でお下品なのですが、巧みにユーモアで包み込んで、嫌味になる直前で見事な寸止め。まぁ、痛すぎる場面もあり、そこだけは、眼を背けてしまいましたが、それも、悪意が存在しない馬鹿騒ぎの一環なので、悪い感触を後に引き摺らずにすみました。


ストーリー自体は、収まるところに収まる予定調和な展開なのですが、ダグの行方や彼らがラスベガスにやって来た夜の行動についての謎解きの要素も加わり、飽きずに最初から最後まで作品の世界を楽しめました。最悪な日を過ごしたオジサンたちも、最後はそれぞれにハッピー・エンド。ラストの纏め方も、左程、意外性はなくありきたりな感じもしましたが、気持ちよく観終えることができました。


結果オーライではありますが、間違いなく将来にわたって忘れられない体験をした彼ら。さて、本作は、いくらラスベガスでもここまで弾けるのは危ないという警告か、折角ラスベガスに行くのだからこれくらいは馬鹿やらないと勿体ないということなのか...。


それにしても、マイク・タイソンのパンチをまともに受けたのに、ちょっと失神するくらいですんでしまうアランは何者?フツ~、命が危ないでしょう。そして、ダグ救出作戦の中で登場するカジノでのブラックジャックのシーン。この才能は何?何ともユニークで印象的でした。


中心的な個性豊かな面々は勿論、周囲を固める登場人物も、オネェっぽい中国系のマフィアとか、やけにカッコ良いストリッパーとか、興味を惹かれる人材がいっぱい。


しょ~~~もなく、お馬鹿ですが、カラッと笑えてスッキリとした後味です。疲れた時に観ると、却って、エネルギーを吸い取られそうですが、そこそこの気力と体力がある時ならスカッと楽しめる作品だと思います。



ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い@ぴあ映画生活

脇役物語 Cast me if you can

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店に行けば店員と間違われ、変質者、誘拐犯にまで間違われてしまう万年脇役俳優のヒロシ。そんな彼にも、映画の主演の話が舞い込みます。ところが、忘れ物を届けただけなのに不倫と勘違いされ、その現場が新聞に出てしまったために、主演を降ろされることになってしまいます。そんなある日、女優を目指してニューヨーク留学を考えているアヤと出会い...。


う~んっ...。ドタバタコメディなのですが、味わい的には、30~40年くらい前のアメリカのコメディ風というか、チョットした懐かしさ(古さ?)が感じられる作品でした。まぁ、それなりに笑えたりする部分もあるのですが、あまりに都合がよすぎて、登場人物たちがヘンすぎて...。


ドタバタなので、ヘンな人満載でも悪くはないのですが、それならそれで、もっときちんとドタバタして欲しかったし、親子の問題だの、愛だのでしんみりさせるなら、ドタバタしながらも、もっと普通に存在しそうなキャラクターを揃えて欲しかった気がします。


実力がありながら、地味な脇役ばかりなヒロシ。バツイチで女性経験も少ない、そんな彼が、知り合って間もないアヤをいきなり名前で呼び捨てなんてありえないですよね。キャラクターの作り方も、どこか、破綻しているような...。


ヒロシは代議士の妻との不倫を疑われるわけですが、あの場面の写真が撮られるくらいなら、本物の不倫場面が誰にも見過ごされているのはヘンですよね。アヤが演技を認められる場面にしてもヘン過ぎ!アヤは店員にキレていますが、少年がいるのを知りながら一晩放置したアヤも同罪。そのアヤに拍手を送るのもねぇ...。しかも、あれで、演技力をどうのこうのと...。大体、あのような立場で仕事で日本に来ている彼女があそこにいる?


まぁ、ドタバタなので、そんなことど~でもいいのかもしれませんが、一応、ドタバタならドタバタなりの理屈を付けておいて欲しかったところ。その理屈の付け方が巧ければ、それなりにその世界を楽しめたと思うのです。


なかなかの豪華出演陣です。ホンのちょっとばかりの時間だけしか出てこないホームレスが柄本明だったりして。ヒロシの父親は津川雅彦だし、ヒロシが不倫をしたと勘違いされる相手は松坂麗子だし、彼女の本当の不倫相手は柄本祐だし。でも、これでは、宝の持ち腐れ。折角の力のある演技陣が揃っているのですから、それぞれの持ち味がいかせるキャラクターの設定と脚本、演出の問題なのでしょうね。場面から場面への転換もギクシャクしていて気になりましたし...。何とも、残念で勿体ない感じです。


万年脇役の俳優に焦点を当てるという辺り、そして、有名な父とパッとしない息子の関係に目を向けた辺り、主演に益岡徹を持ってきた辺り、悪くなかったと思います。もっと面白い作品になり得たと思うのですが...。それに、「Cast me if you can」という副題、「Catch me if you can」をもじったのでしょうけれど、それも活かせていなかったですよね...。


観るなら、旧作になってから、レンタルのDVDでも十分かなぁ...。



公式サイト

http://wakiyakuthemovie.com/



脇役物語@ぴあ映画生活

レオニー

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世界的に有名な彫刻家、イサム・ノグチの母、レオニー・ギルモアの人生に焦点を当てた人間ドラマ。


20世紀初頭のニューヨーク。詩人である野口米次郎(ヨネ野口)と出会い、彼の著作の編集に携るようになります。やがて、2人は愛し合うようになり、レオニーは野口の子どもを身籠りますが、日本人を排斥する動きが強くなる中、野口はレオニーを残して単身日本に帰ります。母の元で息子を産み育てていたレオニーでしたが、日本人の血を引くが故に差別される息子の姿を見たこと、野口からの誘いがあったことから子連れで日本に渡ります。野口は、そんなレオニーに住まいを用意してくれていましたが...。


今から100年以上も前の話。今とは違い、気軽に日米を行き来できる時代ではありません。途方もない時間と費用。しかも、そんな遠い国についての情報などほとんどない中、未知の世界に足を踏み入れようとする勇気は、いかほどのものだったか。想像するに余りあります。それを成し遂げ、しかも、異国の地で、自らの生き方を貫いた姿勢は見事。


そして、野口米次郎を詩人として米国社会に認知させることに一役買い、イサム・ノグチに芸術家としての才能を見出しそれを発揮する道を示したレオニー。才能を発掘し、世に送り出す才能の持ち主だったのでしょう。特に、10歳のイサムを学校に行かせるのではなく家を設計させたこと、成長し医学部へ進学した彼に芸術の道に進路を返させた辺り、自らの才能を見出す能力への自信が眩しいです。


その辺り、巧く表現されていたと思います。特別に美人とも思えないレオニーの顔が、美しく輝く瞬間がところどころにあり、ハッとさせられました。


元々、アメリカでの学生時代も"変人"として遇されてきた彼女。アメリカでも、そして、野口の様な存在が、当たり前にあった日本ではなおさら、様々な困難に遭遇したことでしょう。そんな生活の中で、「日本語が分からないから侮辱されても分からない」と笑い飛ばせる彼女の逞しさも印象に残りました。


戦争のきな臭さがたちこめる中、徴兵制がないからということで年端もない一人息子を単身米国に行かせ、その後、自分が帰国した際にも、息子の教育環境を守ることを優先させ、すぐに手元に戻すことはしない辺りも、彼女の強さが光っていました。


そんなレオニーの苦労の原因を作った野口ですが、彼の"裏切り"や"女性関係のだらしなさ""レオニーへの不誠実さ"は、彼自身の問題という以上に、当時のそこそこの階級の男性にとっては"ごく当たり前"のことだったのでしょう。彼が言う通り、妾宅を持つ経済的に豊かな男性はそれ程珍しくなかったわけですから...。むしろ、家を用意し、女中もつけ、生活費を賄うための生徒まで用意した野口は、そこそこの誠実さを持ち合わせていたというべきなのかもしれません。もちろん、それは、レオニーにとって、今の時代を生きる私たちにとって受け入れられるものではありませんが...。


中村獅童は、そんな男が甘やかされ好き放題やっていた時代の"日本の自分勝手で憎たらしい男"を見事に演じていたと思います。


ただ、結構、長い年月の盛りだくさんな内容をあまり濃淡つけず満遍なく描いたせいか、年譜を表面的に辿っただけという感じも否めませんでした。演技陣はしっかりと人物の内面を表現する力を垣間見せているのですが、その力が活かしきれておらず、その点が何とも残念でした。


レオニーのその時々の選択についても、何か納得できないものが残ってしまいました。そもそも、彼女は、野口米次郎のどこにそんなに惹かれたのか。何故、裏切られながらも、彼への想いを引き摺っていたのか。その辺りも不思議な感じがしてしました。


もっと、レオニーの生き方の根底にあるものをしっかりと描き、エピソードの描き方にもメリハリをつけられていたら、もっと完成度の高い作品になっていたと思うのですが...。基本的には、かなり良い作品だと思うのですが、それだけに残念。



公式サイト

http://www.leoniethemovie.com/



レオニー@ぴあ映画生活






http://pia-eigaseikatsu.jp/tb/tb?movie_id=154685

ゲゲゲの女房

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漫画家水木しげるの妻、布枝の自伝的同名小説を映画化した作品。TVドラマにもなり話題となっていましたが、原作は未読、ドラマも未見です。


お互いのことを何も知らないまま、見合いで、戦争で左手を失った漫画家、水木しげると結婚した布枝。「"軍人恩給"で生活は安定」のはずが、話が全く違う貧乏生活。どう接していいかも分からないまま始まった極貧の生活の中、布枝は、漫画を描き続けるしげるを手伝うようになり...。


いかにも昭和な感じが良かったです。しげると布枝も貧しかったですが、まだ、日本全体が、そうは豊かでなかった時代。けれど、人々の中に戦争の記憶が残っていて平和な世の中のありがたさを実感できた時代、そして、将来は豊かになったいくという希望が持てた時代。貧しくはあっても、明るさが感じられる時代だったのでしょう。そんな時代の雰囲気というものが感じられます。


愛から始まったわけではない結婚生活。けれど、何気ない日々を重ねる中で、着実に2人の間に愛が育っていく様子が伝わってきます。全体としては、特に大きな事件も起こらず、淡々と流れていく感じでしたし、しげるの漫画家としての成功の前に終ってしまうので、ドラマとしてはとてもアッサリとした感じなのですが、その分、シミジミと伝わってくるものがあったと思います。


そして、漫画が動き出す場面が良かったです。しげるの漫画と妖怪への情熱と妖怪たちの力が感じられる場面でした。何の説明もなく、フッと登場する妖怪たちも。ラストで、初めて、彼らが妖怪であることが明示されるのですが、2人の生活が妖怪たちに見守られている雰囲気が印象的でした。


ただ、あの"調布駅前"は何だったのでしょう?そして、古びたバス停でバスを待つ布枝たちの背景に現れる高層マンション。あれ、本作の時代設定よりずっと今ですよね?あれだけ、はっきりと映ってているのですから、意図があったのでしょうけれど、それまでのいかにも昭和な雰囲気がガラッと崩されてしまいました。「墓場の鬼太郎」が少年マガジンに掲載されたのが、昭和40年ですから、本作で描かれている時代は昭和30年代だと思うのですが、それよりは前の時代の雰囲気が感じられるところも気にはなったのですが...。一般家庭にカラーテレビが普及したのが昭和39年ですし...。それもあって、余計に、落差が感じられ違和感が強かったのだと思いますが...。


終り方もやけに中途半端な感じがして違和感ありました。


悪い作品ではない...というより、印象的な部分がいろいろとある作品名だけに、残念な感じがしました。


そう言えば、今日は"いい(11)夫婦(22)の日"。"良い夫婦"の形も様々あると思いますが、2人が良い夫婦だったことは確かだと思います。



公式サイト

http://www.gegege-eiga.com/



ゲゲゲの女房@ぴあ映画生活

クリスマス・ストーリー

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毎年、家族の集まるクリスマスの日。ヴュイヤール家では、長女、エリザベートに疎まれ、5年前、不始末をきっかけに彼女に"追放"されたアンリが姿を見せることはありませんでした。ところが、母、ジュノンの病気をきっかけに、このクリスマスは、エリザベートと夫クロード、息子のポール、次男イヴァンとその妻シルヴィアと子どもたち、ジュノンの兄の息子シモン、それに、アンリと恋人のフォニアの家族全員が集まり...。


それぞれに問題を抱えた家族。そして、その問題が、半端ではありません。


アンリを巡る問題も、なかなかに凄まじいもの。母、ジュノンとアンリの関係もかなりのものだし、エリザベートとアンリの姉弟は、最悪。ここまでになるだけの背景は気になりました。作中に描かれるアレだけってことはないですよね。ジュノンも含んだ形でのドロドロがあったのではないかということは想像できますが、結構、本作のキモとなる部分なだけに、もう少し、丁寧に描いて欲しかったです。結構な時間を使った作品なのですし...。


何というか、死生観、恋愛観、倫理観の違いを感じさせられました。こんなのあり?ありえないでしょう!な場面もあり...。子どもに母親が父親とは別の男性、それも父親の従兄弟とベッドにいるところを見せてしまって何の動揺もないって...。しかも、子どもに母親がいる場所を教えたのは父親だし...。おじいちゃんおばあちゃんが、「孫がいる間はセックスレス」と言っているのだから、これは、おフランス的にも、相当、まずいのではないかと...。


白血病で亡くなった長男ジョゼフの生前に、彼に骨髄移植をするドナーとしてアンリを産んだという辺りもなかなかですが、まぁ、こうしたことは、他作品でも起こったりしているので、あり得ることではあるのでしょうけれど...。


こうして見ていると、ヴュイヤール家で、ヘンなのは、アンリだけではないようで...、というか、アンリは、とてもヴュイヤール家の人間らしい人物だったということなのでしょうか...。 いや、むしろ、感情を素直に表現する辺り、分かりやすくヘンな裏を感じさせない素直な人物という感じさえしますが...。


ぶつかり合い、時にドロドロとしながら、最終的には、収まるべきところに収まっていくような、いかないような...、中途半端な形でラストを迎えます。


オカシナ面々勢揃いな家族で、あちこち綻びがあったりしても、やはり、家族は家族ということなのでしょうか。バラバラになる家族のことを心配していたジュノンが、自分の病気を家族再生のために巧く利用したということなのかもしれません。誰をドナーにするかという問題についても、ジュノンの家族再生への願いが籠もっていたようにも思えます。もっとも、あのドナーのお方の健康状態で、移植をしていいのかという疑問も感じたりはしましたが...。いいのでしょうかね...。


まぁ、それを言い出したら、ジュノンの重病人であることを全く感じさせない雰囲気とか、結構、身体への負担が大きい大変な治療をした割には、かなりアッサリ、回復してしまう辺りとか、違和感ありましたが...。


なかなかに豪華な出演陣で、演技という点では楽しめましたが、映画作品としては今ひとつでした。


部分的には家族の難しさと温かさが感じられ、味わい深い部分もあったのですが、それだけに残念でした。



公式サイト

http://a-christmas-story.jp/



クリスマス・ストーリー@ぴあ映画生活