マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと (特別編) [DVD]/オーウェン・ウィルソン,ジェニファー・アニストン,エリック・デイン
¥1,490
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ジョン・グローガンの同名ベストセラー・エッセイを映画化した作品。


新婚のジョンとジェニーは、ジェニーの計画通り、結婚生活を勧めていました。子どもを欲しいと思うジョンに対し、ジェニーは、今ひとつ気乗りしない様子。ジョンは、友人に、子育てに自信をつけるため犬を飼うことを勧められます。賢いといわれるラブラドール・レトリバーを飼うことにします。ブリーダーのところで、一匹の子犬に出会い、飼うことにします。マーリーと名付けられたその子犬は、驚くほどやんちゃでおバカで...。


動物、特に、犬を主人公にした作品の場合、犬の可愛らしさに頼り切った作品になってしまうことが多いように思いますが、本作は、犬以外の部分をきちんと描いていて、見応えのある作品になっていると思います。


マーリーの姿をたっぷり出しながら、グローガン家の人々の生活や成長を丁寧に描いています。その辺りのバランスが巧く、あざとらしさが感じられず、素直に作品の世界に入ることができました。


そのあまりの傍若無人振りに呆れながらも、あまりに邪気のない天真爛漫振りは、どこか、魅力的。これが、人間のなせる技であれば許し難いところなのでしょうけれど、そこは、犬。怒鳴りつけたくなるような場面でも、そのつぶらな瞳に見つめられてしまえば、とても、勝ち目はありません。


"馬鹿な子ほど可愛い"...そう、マーリーも"世界一おバカ"であることさえ、魅力的だったのでしょう。振り回されながらも、それどころか、むしろ、振り回されているからこそ、ジョンもジョニーも、マーリーから離れられなかったのかもしれません。


やがて、"マーリーよりも大変な"子どもが誕生。それも、三人も!"計画"通りにマーリーは、夫妻にとって、格好の"子育ての練習台"となったのですから、結果的に、マーリーは見事に与えられた役割を果たしたことになるわけです。それに、ジョンが、コラムニストとして成功したのも、マーリーの存在によるところが大きいわけで、元々、記者を目指していたジョンにとって、必ずしも最初から望んでいた成功ではなかったにせよ、やはり、マーリーが重要な存在だったことは間違いないでしょう。


マーリーが、周囲に様々な影響を与え、周囲がその影響力に戸惑い、時には苛立ちながらも、成長していく様子には、清々しさがあり、気持ちよく観終えることができる作品となっています。まぁ、それも、ジョンとジェニーが経済的にかなり豊かだったことによる部分が大きいのだとは思いますが...。


それにしても、マーリー役の犬たちは、相当の名優揃い。かなり訓練された犬たちなのでしょう。そのヨイコたちが、あれだけ、滅茶苦茶やるのですから、これは、見事な演技ですね。


全体に、美しく描かれすぎている印象も受けましたが、予想よりもずっと楽しむことができました。観ておいて損はない作品だと思います。



マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと@ぴあ映画生活

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カプリコン・1

テーマ:
カプリコン・1 [DVD]/エリオット・グールド,ジェームズ・ブローリン,ブレンダ・バッカロ
¥2,625
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人類初の有人火星宇宙船"カプリコン・1"の打ち上げが行われようとしていました。多くのアメリカ国民が見守る中、着々と計画は進行しますが、実は、打ち上げ直前に異常が発生。宇宙飛行士たちは宇宙船から降ろされ、ある部屋の中に閉じ込められます。宇宙開発計画に関連する予算の削減を防ぐためにも、体面を保とうとするNASAは、計画が順調に進んでいるように見せかけることを決定。偽の火星着陸映像を世界中に流します。3人の宇宙飛行士たちも協力させられますが...。


当初は、NASAが全面協力し、司令部の映像など、本格的なものを撮れたのだとか。途中で、政府の陰謀をテーマにしていることがバレ、NASAの協力は得られなくなってしまったそうですが、それでも、本作の製作や公開を差し止めるようなことがされなかったのは、自由を尊ぶアメリカの懐の深さでしょうか。だとしたら、最近、失われてしまっているものかもしれませんが...。


クライマックスの追いつ追われつのシーン。農薬散布のための複葉機が、追跡用のヘリとあそこまで張り合えるというのは大いに疑問でもありますが、空中での追跡劇は迫力満点。複葉機を操縦するオジサンのキャラクターも良く、アクションを楽しめました。


それにしても、国家的な機密の鍵を握る人物の追跡を担うのがヘリコプター2台というのは、あまりにのんびりしているような...。まぁ、真実を知る人間が少ない中、そこに大人数を割くのが難しいというのは分かるのですが、追いかけ方としては、少々、ヌルイ...。


秘密を暴いたジャーナリストも、今ひとつ、ショボイ感じで、とても、国家権力をやり込めるような迫力に欠ける気がします。


それでも、前半部分、火星着陸が成功したように誤魔化そうと、必死になるNASAの面々と、そこに疑問を感じながらも、引き摺られるように協力する宇宙飛行士たちを描いた辺りは、惹き込まれました。


アメリカなら、リアルにこんなことをしているかもしれない...と思えてしまう部分もあり、なおさら、興味深く観ることができました。アポロ11号の月面着陸はフィクションだとする説も、根強くあるようですが、まぁ、確かにやりそうですよね。宇宙人を捕獲したっていうのもありましたね...。


そういえば、アポロ11号陰謀説の根拠の一つに"国旗がはためいている"というのがありましたが、本作の"火星"の旗は止まっていましたね。過去の失敗(?)を繰り返していない点は見事。


ラストのオチは、もう少し工夫が欲しかった気もしますが、なかなか面白く、印象的な作品でした。観ておいて損はないと思います。



カプリコン・1@ぴあ映画生活

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第9地区

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第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)/シャールト・コプリー,デヴィッド・ジェームズ,ジェイソン・コープ
¥3,980
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ヨハネスブルグの上空に宇宙船がやってきます。上空に浮かんだまま停止する宇宙船に、南アフリカ政府は偵察隊を派遣。船内で、弱り果てた多数のエイリアンを発見します。南アフリカ政府は、"人道的な見地"から彼らを受け入れ、第9地区と称される地域に住まわせます。それから28年、難民として生活するエイリアンと人間が暮らす共同居住区、第9地区はスラムと化していました。超国家機関MNUはエイリアンの強制移住を決定し、ヴィカスという男を現場責任者に指名します。彼は現場での作業中に、エイリアンの物である中身の分からない缶をいじっているうちに、その中の液体を浴びてしまい...。


人は、何かと、違いを見つけては、区別、差別したがるもの。性が違う、階級が違う、人種が違う、宗教が違う、思想信条が違う...。異星人ともなれば、格好の差別対象になるわけで...。


全く違う者同士が同じ場所に居合わせてしまった時、共生の道を探ることができるのか、分離することでしか平和を保てないのか?人類は、"人道的な見地から"エイリアンたちを特定の地域に住まわせることを決定しますが、結局は、差別の対象を狭い場所に押し込めて隔離しただけのこと。


その舞台を、かつてアパルトヘイトが行われ、黒人たちを特定のエリアに押し込めた南アフリカの首都、ヨハネスブルグに設定したところに製作者側の意図が明確に現れていると思います。


いろいろと突っ込みどころ満載ではあります。母船は、空に浮かんだまま。人間は、すでに、中に入ったことがある母船に、何故、ずっと近付かずにいたのでしょう?エイリアンの武器や特殊技術が欲しかったのなら、まず、この母船を早い段階で調査すべきだったでしょう。


キャットフードの缶で、簡単に武器を譲り渡すエイリアンたち。けれど、そんなスゴイ武器を持っているなら、それを使ってキャットフードを奪いに行くほうが実入りは良いような...。別に彼らが平和主義で強盗をすることに抵抗があったというわけではない様子ですし...。結構、無法な強奪行為を繰り返していましたよね...。


ヴィカスにしても、"燃料の液体"を浴びただけで何でエイリアン化してしまうのか?それなら、エイリアンと戦う中で地を浴びたりする方が、余程、危ないのではないかと...。


スゴイ武器を持つエイリアンたちが、結構、簡単に人間に殺されたり捕まえられたりするのも何だか...。まぁ、エイリアンも知性派と野性派と二派あるようですが...。ある場面では、高度な技術や力を持つのに、ある場面では、弱々しかったり、その辺り、腑に落ちない部分も少なくありませんでした。


でも、結構、面白かったです。B級(C級?D級?)なりに作り込まれていたと思います。エイリアンを巡る人間の様々な思惑が見えてくる前半部分、ヴィカスとクリストファーの友情、ヴィカスと妻の愛を描きながら、激しいアクションシーンが繰り返させる後半部分。物語のテンポも良く、観ている間は、数々の突っ込みどころもあまり気にせず、作品の世界を堪能することができました。


ヴィカスも、ヒロイックな感じではなく、どこにでもいそうな当たり前のオジサン的な雰囲気が良かったです。その妻を愛する心を持ち、大きな仕事を与えられて単純に張り切るどこにでもいそうなオジサンが、職務となれば、エイリアンたちへの非道な行為に率先して手を染めていく。人類の歴史上の虐殺や軍隊の残虐行為も、その最前線で酷い行為に手を染めていたのが、平時ならごく普通の良き小市民であったはずの人々だったことを思えば、彼の行為も納得せざるを得ないところでしょう。


悲劇的な面を持ちながらも、ほんのりと優しさが感じられるラストも、やや、メロドラマチックに流れすぎた感じもしましたが、美しく印象的でした。


ラストが安易な人類とエイリアンの和解にならなかったところも良かったと思います。完全な和解でもなく、終らない殺戮でもなく、このストリーの纏め方としては、見事な着地点だったと思います。人類の明るい将来のためには、もっと、きちんとした共生に向かう解決が必要なのでしょうけれど、ここでそれを持ち出すと無理矢理な感じになるでしょうし...。


なかなか楽しめました。突っ込みどころの多さも含めて...。観て損はない作品だと思います。さて、続編の「第10地区」なんて出てきたりしちゃうのでしょうか?



第9地区@ぴあ映画生活

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セブン・イヤーズ・イン・チベット〈ニューマスター版〉 [DVD]/ブラッド・ピット,デヴィッド・シューリス,B.D.ウォン
¥3,990
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実在の登山家、ハインリヒ・ハラーの実体験を彼自身が記した「チベットの7年」を元に映画化した作品。


1939年、ヒマラヤのナンガパルバット登頂を目指して旅立ったハインリヒですが、悪天候と怪我で難航します。そんな中、第二次世界大戦が勃発。ハインリヒは、現地を支配していたイギリスの捕虜として収容所に入れられます。そこから脱走したハインリヒは、チベットに辿り着き...。


ハインリヒと若き日のダライ・ラマ14世の交流が描かれます。実際には、ハインリヒがラサに滞在していた頃、ラサには、10人程度のヨーロッパ人がいたそうですし、ハインリヒが結婚していたように描かれますが、実際には独身だったそうですし、事実とは変更が加えられている部分もあるようです。


アイガー北壁登頂を成功させた実績のある登山家であるハインリヒには、その自信からくるのでしょう、傲慢さ、身勝手さが感じられます。


そんなハインリヒが、捕虜として収容され、苦難の脱出劇を繰り広げ、やがて、彼のそれまでの価値観とは別の世界で生きているチベットの人々やその文化に触れ、徐々に、成長していく様子が描かれます。


ダライ・ラマに対しても、年齢差もあったのでしょうが、当初はどうしても上から目線になる感じが拭えなかったのですが、徐々に、ダライ・ラマを心の底から敬う気持ちが現れてきます。一方、ダライ・ラマの成長も描かれます。特に、中国政府による弾圧が激しくなり、危機的な状況を迎える中でのダライ・ラマの言動には、年齢を超えた、一国の指導者、宗教的な権威としての矜持と重みが感じられます。状況が人を育てるという面もあるのでしょう。多くの民の政治的、精神的指導者となることを運命付けられた一人の少年が、与えられた立場を自らの意思で背負った瞬間が清々しく描かれていて印象的でした。


最近では、2008年にチベットで騒乱が起き、TVや新聞でも盛んに報道されました。けれど、その後の状況は、あまり伝わってきません。そうした情報が表に出てこない原因として、何らかの意図が働いているのかどうか...。


ダライ・ラマ14世は、その後、インドへ脱出。亡命政府を樹立し、チベットの元首としての立場を維持してきました。最近は、高齢ということもあり、政治的な指導者の地位を亡命政府の首席大臣に譲るとの意向を示してもいるようです。


CIAから資金援助を受けて志願兵の訓練費用や対中国戦のゲリラへの支払いに当てたり、初期のオウム真理教から多額の寄付を受け取ったり、なかなか、平和主事だけではない側面もあるようですが、その辺り、生き残りを図る亡命者としての宿命かもしれません。


いずれにしても、まだまだ、解決の糸口も見えてこないチベット問題。視点が偏っている感じは否めないものの、現在に続く問題の最初を描いたという点でも価値のある作品だと思います。


こうした作品を現地で撮影できるわけもなく、ラサの風景などはアルゼンチンで撮られ、街や宮殿も完全にセットだそうですが、見事に雰囲気を出した美しい映像で印象的です。


ハインリヒが既婚者だったという事実とは違う設定も、ラストの"プレゼント"に巧く繋がる設定となっていて、作品をきちんと纏めていると思います。ドキュメンタリーではない本作ですから、この辺りの"脚色"はアリだと思います。


チベットの状況を知るためにも一度は観ておきたい作品だと思います。



セブン・イヤーズ・イン・チベット@ぴあ映画生活

スティーグ・ラーソンによるベストセラー・ミステリーを原作とする三部作の完結編。前2作、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 」「ミレニアム2 火と戯れる女 」は、どちらも、映画館で観ています。


瀕死の重傷を負ったリスベットですが、病院に運ばれ、一命を取り留めます。一方、元公安警察の秘密組織は、彼女の事件を通して自分たちの存在が明るみに出ることを恐れ、関係者の暗殺を始めます。当然、リスベットも彼らにとって邪魔な存在。その魔の手は、リスベットやその周辺をも脅かします。やがて、リスベットの裁判がはじまります。その裏では、彼女を消し去ろうとする者たちと彼女を守ろうとする者たちの必死の闘いが繰り広げられ...。

前2作を観た以上、本作も観るしかありません。


国家規模の機密、国際的人身売買組織などが絡む壮大なストーリーを描いた三部作の完結編としては、やや、こじんまりとしてしまった感じもしましたが、無難に纏めているとは思います。国家の機密に関わる事件なのに、やけに、警察(公安?)が協力的なのは気になりましたが、現政権は全く感知しない前政権時の出来事ということで巧く処理されていたと思います。ただ、第1作が独立した作品としても成立していたのに、本作は、第2作とともに、他の2作あってこその作品ではあると思います。


いくつか、気になる点もありました。


リスベットを守るために闘う者たち、ミカエル、"疫病神"、元上司、前の後見人。彼らが、何故、そこまで、リスベットのために頑張るのか、ミカエルはともかく、他の人々の動機が今ひとつ感じられませんでした。本作のアッサリしすぎる印象はその辺りに起因するのかもしれません。


ザラチェンコは、前作からリスベットを殺そうとしているわけですが、殺す気なら、もっと前に殺せたはず。今まで、彼女の命を奪わずにいたのは、何か彼女を活かしておかなければならない理由があったのではないかと思っていたのですが、特にそのようなものがあったとか、何らかの理由があったけど消えたとかいうこともなかったようで...。今までは、殺すほどのこともないと高を括っていたら、意外にリスベットが力をつけていてビックリってことなのでしょうか?大切な何かを見逃してしまったのかもしれませんが、腑に落ちませんでした。


ニーダーマンの生命力もすごいですが、ザラチェンコもすごいですね。第1作を見た限りでは、当然、あの時点で死んでいたと思っていましたが...。その上、第2作のあの状況でも生き延びたなんて!ザラチェンコ、ニーダーマン、リスベット、不死身のDNAを持っているのでしょうか?


面白かったのは、リスベットのPCがアップルで、悪役たちのPCがWindowsというところ。ちょっとした、ご愛嬌?


第1作の雰囲気に比べ、2作、3作と、徐々に失速してきた感じがして、少々、残念ではありましたが、第2作を観たなら、やはり、観ておきたい作品だと思います。前2作を観た上でなら、多少、穴はあるものの、決して、ツマラナイ作品ではありませんし...。第1作しか観ていないなら、そこで終わりにしておくことをお勧めしますが...。


でも、原作は面白いのだと思います。読んでみたいと思います。



公式サイト

http://millennium.gaga.ne.jp/



ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士@ぴあ映画生活

副王家の一族

テーマ:
副王家の一族 [DVD]/アレッサンドロ・プレツィオージ
¥3,990
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19世紀半ばのシチリア。スペイン副王の末裔であるウゼタ家では、莫大な財産を巡り、一族が争っていましたが、やがて、長男のジャコモがすべてを自分のものにし、一族の絶対権力者となります。ジャコモは、特に息子のコンサルヴォに対しては非常に厳しく、ある事件により、ジャコモの逆鱗に触れtたコンサルヴォは修道院に入れられてしまいます。やがて、イタリア統一の機運が高まる中、コンサルヴォも成長し...。


相当に嫌なオヤジなわけですが、常に何よりも一族の権力の維持のために行動するジャコモの態度はぶれることがありません。ここまでくればアッパレという感じ。それにしても、こんなオヤジを長とする一家に関係する人々は、本当に大変。けれど、彼らも名家に生まれ育った人々。オヤジに反発を感じても、そこから抜け出すことは至難の業。コンサルヴォの妹も、最愛の男性とは全く別のしょ~もない男と結婚させられ、そのために最愛の男性が自殺するという悲劇にみまわれ、それでも、結局は父親の言う通りにします。


まるで、一族そのものが生存への意思を持つ存在のような...。一族が権力を握り続けるためには、その構成員である個々人など、一つの細胞のような存在。一族のためにすべてを投げ打つことを要求されます。


それでも、このど~しよ~もなく嫌味なオヤジ、ジャコモの真意が遺言によって明かされる時、ジャコモの負った宿命が感じられ、人間の醜さの裏にある哀しさが胸に迫ってきます。ジャコモに反発していたコンサルヴォも、そこで、父親を受け入れるのですが、このコンサルヴォの変化する姿こそが、本作のポイントなのでしょう。


権力への異様な執着を見せながら、一方で、迷信深く、悪霊払いには、大事な財産をつぎ込む。欲しいものを手に入れるためなら手段を選ばない冷酷さを持ちながら、悪霊を気にする辺りは、何者をも恐れないかに見えるジャコモの人間としての弱さであり、哀しさであるのかもしれません。


ジャコモの死後のコンサルヴォの変容を描く場面は、「ゴッドファーザー」のマイケル・コルレオーネを彷彿とさせる印象的な場面となっていました。舞台もシチリアですしね...。


「山猫」×「ゴッドファーザー」=本作といったところでしょうか?なかなか、重厚感のある作品でした。


正直、お近づきになりたくないような人物ばかりが登場する作品でしたが、それでも、最初から最後まで飽きずに観ることができたのは、作品の力ゆえなのでしょう。


なかなか見応えのある作品でした。



副王家の一族@ぴあ映画生活

ミックマック

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地雷により父を殺され、そのショックで母は精神を病み入院、バジルは孤児院に入れられますが、環境に馴染めず脱走します。その後、仕事を得ますが、発砲事件に巻き込まれ頭に銃弾を受けてしまい、仕事も失ってしまいます。その上、事件の際、手術を受けたものの、頭に銃弾が残ったまま。ある日、彼は、ホームレスの男性に声を掛けられ、彼やその仲間たちとともに生活するようになります。そんな日々の中、バジルは、父の命を奪った地雷を製造した会社と自分の頭の中に残る銃弾を製造した会社を見つけます。バジルは、仲間たちと2つの武器製造会社を懲らしめるために立ち上がり...。


ファッションや文化といったソフトな部分での影響力が大きいというイメージの強いフランスですが、実は、世界的でも有数の武器輸出国。イラン、イラク戦争でも、敵味方の双方に分け隔てなく武器を売って大儲けしていますしね...。


本作では、大手の武器製造メーカー2社が糾弾されます。それぞれ、トップが行方不明になったり、罪に問われたり...。けれど、どちらの会社も潰れたりはしないのではないでしょうか?例え、この2社が傾いても、その代わりをするメーカーが現れるわけで...。武器を製造する会社があるから、武器が使われるという面があるのも確かですが、メーカーというのは、需要があるからこそ成り立つわけで...。


まぁ、なかなか痛快な作品にはなっていると思います。"いたずら"自体も気が利いていましたし、奇妙な登場人物たちの個性を巧く活かした仕掛けの数々は面白かったですし、テンポも良く、作品の世界に浸ることができました。ただ、敵の強大さに比べ、彼らの復讐があまりにこじんまりとしすぎていて、バランスの悪さが感じられました。もう少し、復讐を思い立つ理由の部分を軽いものにした方が、純粋に彼らの"いたずら"でスッキリできたような気がします。重いテーマを軽妙に描き出し、しっかりと風刺を利かせた辺りは見事だと思うのですが...。


「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」 の世界を思わせる世紀末的な黄色っぽい世界、奇妙な人々や不思議な道具類の数々、微妙なバランスの上に繋がっていく仕掛け、大胆かつ練られていながらどこかゆるい感じの作戦...。それぞれに、本作の監督であるジャン=ピエール・ジュネの個性が出ていたと思います。ただ、「デリカテッセン」の完成度を越えるのは、なかなか、難しいのかもしれません。


そして、バジルの仲間たちが、身を危険に晒しながらもこの"いたずら"に参加した動機が、今ひとつ薄い感じがした点も残念。バジルが仲間を得るまで、特に、頭に銃弾が残ったまでの経緯の描き方は、実にコンパクトでありながら、しっかりとストーリーが伝わってきて見事だったと思うのですが、彼の仲間たちの動機の部分は、もっと丁寧に描いて欲しかった気がします。


ブラックでシニカルな笑いと奇妙な人々の作り出す御伽噺の世界を楽しめる作品です。観ておいて損はないと思います。



公式サイト

http://www.micmacs.jp/



ミックマック@ぴあ映画生活

牛の鈴音

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牛の鈴音(うしのすずおと) [DVD]/チェ・ウォンギュン,イ・サムスン
¥5,040
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79歳になる農夫のチェ爺さんには、30年間、一緒に働いてきた牛がいます。牛の寿命は15年ほどなのですが、この牛は40年以上も生きています。周囲の農家が耕機械を導入し、農薬を使用する中、頑固なチェ爺さんは、牛を使って耕作し、牛が食べる草の安全性を確保するため農薬をまくこともありません。そんなチェ爺さんと長年連れ添ってきたイ婆さんは、常に不満タラタラ。ある日、かかりつけの獣医に、牛の寿命も残り少なくなっていることを告げられ...。


チェ爺さん、イ婆さん、そして牛。この取り合せが見事。この素材があっての本作だということは間違いないと思います。口数少なく、黙々と日々の仕事に取り組むチェ爺さん。文句たらたら、不平不満を振りまきながら、それでも、チェ爺さんや、牛が心配で溜まらないイ婆さん。


強烈でありながら、どこか魅力的なキャラクターが、気負いも虚飾も感じられず、ストレートに映し出され、夫婦の歴史の重みや味わいを思わされます。


そう、イ婆さんも、決して悪い人ではない...むしろ、愛させるべき存在なのです。子どもたちは頼りにならないとこぼしながらも、米の収穫が少ないといいながらも、せっせと子どもたちに米を送る準備をする場面など、古きよき日本のお母ちゃんにも重なる"母の愛"が感じられて胸が篤くなります。


チェ爺さんは、老いた牛に荷を引かせ、農地を耕させ...。本来の寿命をはるかに越える年数、生きてきた牛に酷なように思える仕打ちですが、チェ爺さん自身、老いてもなお、重労働の日々。一緒に長い年月を歩んできた牛には、最期までともに働いて欲しかったのでしょう。


牛が老いのために働けなくなることを認めることは、自らの限界を明らかにすることのようで嫌だったのかもしれません。寡黙なチェ爺さんが、牛に感情をほとばしらせる場面が脳裏に残ります。きっと、いつまでも、この牛と働いていたかったのでしょう。


しかし、こうした場合、日本でなら、普通は、牛に名前をつけますよね。これだけ牛とともに生きていながら、「牛が死んだら自分も死にたい」とまで言いながら、名前をつけたような様子が見られないのは何故か...。どんなに大切な"仲間"であっても、耕作用の牛は牛、名前を付ける対象ではないということなのでしょうか。その辺り、お国柄というか、文化風習の違いが出ているのかもしれません。


古いもの、滅びいくものへの郷愁が詰まった作品です。やや、"懐かしさをそそる"ことに偏りすぎた嫌いはありますが、長い年月を積んだ重みを感じさせる牛の姿(特に、お尻の辺りの感じ)、爺さん婆さんに刻まれた皺が、そのまま、本作を支える大きな力となり、観る者の心を揺さぶります。


地味な作品ではありますが、チェ爺さんと牛とイ婆さんの生活が巧く切り取られていて、見応えのある作品に仕上がっていると思います。このそれぞれに味わいのある2人と1頭を観るだけでも価値のある作品。一度は観ておきたい作品だと思います。



牛の鈴音@ぴあ映画生活

食べて、祈って、恋をして

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世界的ベストセラーとなったエリザベス・ギルバートの自叙伝を映画化した作品。


ニューヨークで作家として成功したリズは、仕事にプライベートに忙しい日々を送っていましたが、どこかで満足できずにいました。バリを訪れた彼女は、ある占い師との出会いから、自分の抱えている問題に直面することになります。彼女は、夫に離婚を迫り、すべてを捨てて、イタリア、インド、インドネシアを巡る1年の旅に出て、自分を見つめ直すことにします。まずは、イタリアで美味しいものを食べまくり...。


イイトシした大人の優雅な自分探しの旅。全財産を失ったわけですが、さすがに人気作家。旅行記を描くということで多額の契約金を手にします。費用のことを気にする様子は感じられませんから、相当なものなのでしょう。この辺りが、何の実績もない若者の自分探しとは違うところ。


西洋的世界の中で、成功しても、そこでは満足できなくなっているのでしょう。インド、バリ...。その神秘な精神世界は、西欧的価値観に限界を感じる人々には魅力的に映るのでしょう。食べ物は、やはり、西欧的世界で、けれど、精神的な面では新鮮さのある東洋世界に惹かれ...。それも"調和"なのかもしれません。


悩みながらも、周囲の言葉を少しずつ取り入れながら、少しずつ前に進んでいくリズの姿をジュリア・ロバーツが好演。こうした人物の場合、往々にして酷く独りよがりだったり、周囲の迷惑を全く顧みなかったりという傾向が見られますが、その辺り、さすがに"大人"でありながら、かつ"柔軟"なところに魅力が感じられました。


そして、リズが旅先で出会う人々がそれぞれに魅力的。その辺り、もう少し、丁寧な描写が欲しかった気もしますが、まぁ、全体的な時間を考えれば、仕方がないのかもしれません。本当は、もう少し、エピソードを絞って、一つ一つをしっかり描いて欲しかった気もしますが...。


さらに、ラストも、"結局、同じことか!"という感じもしましたが、まぁ、人間なんて、そう簡単にすべてが変わるものではありません。同じようなパターンの行動を、ちょっと違う立ち位置で繰り返すといった辺りが短い期間での人の"変化"としては妥当なところなのかもしれません。


内容に比較して、仕上がりが軽過ぎる感じがするところも、少々、違和感がありました。悪い作品ではないと思いますが、レンタルのDVDで十分かもしれません。



公式サイト

http://www.eat-pray-love.jp/



食べて、祈って、恋をして@ぴあ映画生活

悪人

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吉田修一の同名小説を映画化した作品。原作は、既に読んでいます。


保険外交員の女性の遺体が発見されます。当初、彼女が待ち合わせをしていると友人に話していた地元の大学生に疑いの目が向けられますが、捜査が進み、彼女と出会い系サイトで知り合っていた土木作業員の清水祐一が容疑者として浮かび上がります。その頃、祐一は、やはり、出会い系サイトを通して知り合った光代と付き合うようになっていました。やがて、祐一が指名手配されるようになり、光代は、祐一と行動をともにしますが...。


長編の原作の映画化ですが、なかなか、巧く原作の味わいを残しながら、重要なエピソードを削って纏めていると思います。祐一の性格特徴を示し、逮捕される場面での祐一の行動に繋がるエピソードが削られていたりもしましたが、それも、映画化に当っては必要なことだったのだと納得できました。


本作は本作として、原作とは別の作品として、きちんと成り立っていると思います。原作のある映画作品としては珍しく、原作を読んだ後でも映画作品を楽しむことができましたし、本作だけを観ても十分に作品の世界を堪能できると思います。


祐一と光代、それぞれの物語、そして、二人の関係に纏わる物語が、胸に沁みてきます。それぞれが抱えていた孤独の深さ、明るい未来が見えない中で日々を生きる空しさ、そんな中で、初めて心を許せる相手に出会った嬉しさ。けれど、すでに大きな罪を犯してしまった祐一にとって、光代と出会えた喜びが大きかっただけに、彼が抱えていた闇との落差に苦しめられたことでしょう。


そして、祐一の罪を知った光代。この辺りの表情の変化が実に見事に彼女の心情を表現していて、作品の世界に引き込まれました。


手塩にかけた可愛い孫が殺人を犯し、悪徳商法で脅されるように虎の子の貯金を巻き上げられ、大きく痛めつけられ傷つけられた祐一の祖母が、悪徳業者に金を返すよう迫るシーン。愛娘を殺された父親がその事件きっかけを作りながら全く反省のない大学生に思いをぶつけるシーン。この2つのシーンは、本作のメインストリームからは、やや、外れますが、白眉の場面だったと思います。


両方とも、立場は違えど、それぞれ、自分に直接の責任がないところで起きたことにより大きく運命を変えられてしまった者が、虐げられた立場から自分なりの人間としての尊厳を取り戻し、事件から立ち直っていく姿が表現されていたと思います。そして、多分、二人とも、何が悪なのかを知ったことで、それぞれの行動を起こしたのでしょう。樹木希林、柄本明がさすがの好演。


では、祐一はどうだったのか?祐一が逮捕される場面での光代への行為の背景を考えれば、それは、光代を"悪"から守るための行為だったのでしょう。そして、祐一は、すべての"悪"を引き受けることになるのでしょう...。


ラストの光代の行動。彼女は、その場を離れるのか、それとも、父親がそこからいなくなるのを待つのか?光代が、祐一の犯行現場を訪れながら、そして、その場で手まで合わせながら、花束を置かなかったのは、殺された被害者より祐一への同情が強かったからかなのでしょう。そして、自分を祐一の"被害者"と位置づけなかったからなのでしょう。これも、光代が、何が悪かということに答えを出したということなのかもしれません。


光代の祐一と過ごした時の回想で終るということは、光代が祐一の想いを確かに受け取っているということなのでしょう。そこに、本作の光があり、"悪"というものの、人生というものの複雑さが現れています。


そもそも、祐一の"罪"も、いくつかの偶然が重なった結果。被害者がそこに現れなければ、祐一が長時間待たなければ、大学生が居合わせなければ、彼女が大学生の車に乗らなければ、祐一が二人を追わなければ、大学生が彼女を蹴りださなければ、祐一が彼女を助けようとしなければ、彼女が祐一に対して暴言を吐かなければ...、起こらなかった事件です。人は、ホンの些細なきっかけから大きな罪を負うことにもなり、酷いことをしながらも犯罪とは認定されないこともあり、自分に責任のないことで痛めつけられることもあり...。


ままならない人生をどう生きるのか、祐一の祖母、保険外交員の父、光代は、その自分なりの答えに辿り着こうとしているのでしょう。


重く暗い雰囲気の作品ではありますが、読み応えのある原作、しっかりした脚本、確かな演出、深みのある映像、力のある演技陣が揃えられて印象的な作品になっています。


一度は観ておきたい作品。間違いなく、今年の邦画ランキングのトップクラスに入る作品だと思います。お勧め。



公式サイト

http://www.akunin.jp/index.html



悪人@ぴあ映画生活