トイレット

テーマ:

マイペースでばらばらに生きてきた兄弟3人。長男のモーリーは引きこもりで4年間、家の外に出ていません。次男のレイは、ガンダムオタクの研究員。末っ子で長女のリサは、生意気盛りの高校生。3人の母が突然なくなり、母が生前に日本から呼び寄せた"ばーちゃん"(3人の祖母)との共同生活が始まります。娘を失ったショックからか、ほとんど部屋を出ることもなく、毎朝、トイレに長くこもっては出ると大きくため息をつくばーちゃん。レイは、その姿が気になって仕方ありません...。


トイレを前面に出した点は、なかなか大胆かもしれません。人間にとって重要な場所でありながら、話題にする場所や相手を選ぶ感じ。普通に大っぴらにどこでも明るく話題にできるものでもありません。それでいながら、多くの人にとって、興味を惹かれる場所。一旦、その手の話題になれば、結構、盛り上がるもの。


一日くらい食事をしなくても大丈夫かもしれない。でも、トイレに一度も行かずに過ごすのは難しい。トイレは、多くの人にとって、一番無防備になる場所であり、一番一人きりになれる場所であり、一番寛げる場所であり...。そんなトイレに膨大なる力を注いでいるのが、我が日本。温かくオシリを受けとめてくれて、オシリを洗ってくれるだけではありません。近付けば、勝手に蓋が開き、自動で水を流し、人が離れれば蓋が閉まり...。最近は、血糖値のチェックなどをしてくれる機能が付いたものまであるのだとか...。


さて、ばーちゃんは、何故、毎朝、大きなため息をつくのか?レイは、それが気になり、同僚に相談し、ある推論を聞かされるわけですが。それが、正解だったのかどうかは分かりません。確かに、ウォッシュレットに馴れてしまうとそうでないトイレしかない生活は哀しい。家庭用トイレにウォッシュレットが相当、普及した今、洗浄機能のないトイレでは満足できない、というのは納得できます。


でも、ワザワザ、外に出てため息をつくのかなぁ...。不満を表現したいのなら、もっとすることがあるでしょうし、その意図がないのなら、意味がないし...。フト漏れてしまうため息というには、大袈裟すぎますよね...。他にも、ばーちゃんの財布の中身の背景とか、もう少し、丁寧に教えて欲しかったような...。


リサのエアギターはどうなったかとか、"女と3000ドル"はどうなったかとか、ばーちゃんの財布の中身の理由と行方とか、回収されないままのエピソードがいろいろあるのも気になります。


レイは、結局、鑑定に3000ドル、トイレに3000ドル使いました。保険で3000ドル入ったわけですが、同僚の車の修理に当てるべき3000ドルも含めれば、差し引き6000ドルのマイナス。どう捻出するのか...。ばーちゃんの財布の残り?あれほど、3000ドルでフィギュアを買うか、他のもののために使うべきか迷っていた様子のレイに6000ドルが簡単に用意できたとは思えません。


ばーちゃんが、何故、終盤まで、全く言葉を発しなかったのか、それも、よくわかりませんでした。"無口な人"だというのは良いとして、ここまで、言葉を出さない必然性も感じられません。ここまで...というのは、明らかにコミュニケーションを拒否する意思があったからだと思うのですが、それが何なのかよく分かりませんでした。願掛けとかしていたわけでもなさそうですが...。


あんなに楽しそうに餃子を作って食べていながら、何も言葉を発しないって、よく分かりませんでした。


登場する日本人はばーちゃん一人。けれど、本作の世界を見つめる視線は日本人のもの。完全に"日本で公開することを目的とした日本映画"。舞台はカナダ。登場人物はカナダ人、アメリカ人。セリフのほとんどは英語。それでも、本作は間違いなく日本映画になるという辺り、もたいまさこの力なのでしょう。


本作の雰囲気は嫌いではありません。ちょっと世間とはズレたようなまったりとした空気。不思議と懐かしさが感じられ、どこか落ち着いた雰囲気のある空間。そして、もたいまさこの独特な存在感。


さて、本作は、そんなに本のトイレの進化を牽引してきたメーカーが後ろ盾になっています。ウォッシュレットのCMとしては、悪くない作品と言えるでしょう。


好き嫌いは分かれると思いますが、「かもめ食堂」の世界が好きな人にはオススメできます。



公式サイト

http://www.cinemacafe.net/official/toilet-movie/



トイレット@ぴあ映画生活

AD

カラフル

テーマ:

第135回直木賞の受賞作家、森絵都の同名小説をアニメ映画化。原作は未読です。


大きな過ちを犯して死んだ"ぼく"の魂は、下界に戻って再挑戦するチャンスが与えられます。"ぼく"は、生きていた頃の記憶がないままに中学生の"小林真"の身体の中に入り込んで生き、"修行"をすることになり...。


かなりメッセージ性が強いというか、言いたいことが、何のヒネリもなく、直球勝負で明確に伝わってくる作品です。あまりに単純明快で、なおかつ、青臭い感じもしますが、それでも、比較的素直に観ていられたのは、アニメだからこそでしょう。実写では、上映中でも劇場から飛び出していたかもしれません。


まず、冒頭の部分で、どうしても気になったことが...。"(再挑戦に成功すれば)輪廻できるようになる"、"(再挑戦に失敗すれば)輪廻できずに消滅する"というところ。輪廻転生しているって、解脱できていないってことで、仏教徒な人々は、輪廻転生を繰り返す"苦"から抜け出すために修行しているのではないかと思うのですが...。思いっきり違和感がありました。原作の設定なのであれば、映画に文句言っても仕方ないのですが...。


そして、"自殺はいけない"、"人にはそれぞれ個性があり、十人十色の存在"ということなのですが、ある意味、真の家族が再生されたのは、真の自殺騒ぎがあったからなワケで、彼の自殺におよぼうとした行為が、家族の危機を救ったのだと考えれば、自殺も悪くないという理屈すら成り立ってしまうような...。


それに、うだつの上がらなさそうなお父さん。今のご時勢、リストラ候補ナンバーワンといった風情なのですが、お父さんの収入だけで、学費の高そうな高校に行かせるって...。すっごい資産家...ってワケでもないでしょうが...。


志望校を選ぶ理由が"友だちと一緒"は、その友が初めてできた大切な友人であることを考えれば無理ないとして、中学三年にもなるのだから、志望校について親に主張する場合、"合格の可能性を向上するために何をするか("必死に勉強する"とか)といった計画を説明し、親を説得しようという努力をすべきでしょう。」」


他にも、中学生で援交って、そんなにアッケラカンと語るようなフツ~のことになってしまったのか...とか、中学生に高価な服飾品は似合わないだろうとか(今じゃなければ着られないって、本当は"大人が身に着けるべきもの"のはず)、小林家の様々な問題も結局は有耶無耶か...とか、ところどころ引っ掛かってはしまいます。


設定についてもかなり現実離れもしていますが、それでも、思春期の子どもの心の揺れ、複雑な人間関係、大人には分からない想い...といったものが、ストレートに伝わってきて、胸に甘酸っぱいものが広がります。フライドチキンと肉まんを分け合い、志望校を決める場面などは、ちょっと面白かったりもしたのですが...。


まぁ、素直でないからなのかもしれませんが、全体としては、馴染めない部分が多い作品でした。もちろん、原作のある作品なので、映画のせいではなく、原作の問題である可能性も高いわけですが...。


本当は、たまには、こうした直球勝負な作品も良いものなのでしょうね。あまり細かいところには目を瞑り、素直にその世界に浸るべき作品なのでしょう。



公式サイト

http://colorful-movie.jp/



カラフル@ぴあ映画生活

AD

2004年、オランダ、アムステルダム国立美術館の改修工事が始まります。ところが、市民の権利を主張する地元のサイクリスト協会の猛反対で計画は頓挫します。理想に燃える館長、こだわりの強い学芸員たち、振り回されるスペイン人建築家たち。それぞれの主張が絡み合い、改修計画は、難航し...。


学芸員たちの美術にかける情熱。純粋に美術が好きで、その好きなものを世の人々に知らせたい、よりよい形で見せたいという気持ちが強く、展示の方法にもこだわりがあって...。学芸員としてのプロ意識が伝わってきます。やっとの思いで買い入れることができた日本の力士像の梱包を解く場面。次第にその姿を明らかにしていく力士像を目の前に顔を輝かせていく学芸員の表情を見ているだけで、彼の仕事への愛の大きさが伝わってきます。


けれど、大規模な改修工事は、美術への、美術館への愛だけでは進みません。かなり高額な費用が関係する大事業であり、多くの人々の注目が集まることであり、様々な立場の人間の利害が絡み...。駆け引きや交渉力、政治力が必要な世界。その政治力を発揮できる人材が見当たらないようで...。工事は延期につぐ延期、果たして、いつできあがるのか...。


美術館としては、工事の間も美術品を保管し続けなければならず、経費はかさむ一方。それでも、誰も責任を取る人はいないようで...。まぁ、責任を取りたがらないのは、日本の役人だけではないということなのでしょう。所詮は人間。洋の東西を問わず、そんなものなのかもしれません。


そして、一方で、「早く改修工事を完了させる」という目的のもと、阻害するものを"傍迷惑で自己中心的な存在"として断罪することなく、それぞれの意見をぶつけ合う姿には、日本人にはなかなか持ちにくい、個を尊重する姿勢というか、目先のことに囚われず理想に向かおうとする粘り強さが感じられました。


完成予定が2012~2013年とのこと。本当にできるのか?イギリスのブックメーカー辺りがオッズをつけていたりするのでしょうか?かなり、完成する確率は低いのでは?


大きな事業に立場を異にしながら関わる人々の想いに満ちた作品。まぁ、こう着状態を描いた作品ということもあるのでしょうが、全体に単調な感じはしますし、少々、眠気を誘われる場面もありました。全体の構成も工夫の余地アリという感じはしました。でも、業界の裏話的な部分は、結構、興味をそそられましたし、それなりに、面白く観ることができました。


レンブラント、ブリューゲル...、数々の名画をはじめとする美術品の数々がこのまま埋もれることのなければよいのですが...。さて、私たちは、いつか、改修工事完了のニュースを聞くことができるのでしょうか?


美術館の裏側に興味のある方にはオススメ。



公式サイト

http://www.ams-museum.com/



ようこそ、アムステルダム国立美術館へ@ぴあ映画生活

AD

ドゥーニャとデイジー

テーマ:
ドゥーニャとデイジー [DVD]/マリアム・ハッソーニ,エヴァ・ヴァンダー・ウェイデーヴェン,クリスティン・ヴァン・ストラーレン
¥3,990
Amazon.co.jp


2002年から放映されているオランダで人気を博す同名テレビ・ドラマを映画化した作品。


オランダ、アムステルダム。モロッコ人で厳格なイスラム教徒の家族と生活するドゥーニャと自由奔放に振舞い、恋に夢中なオランダ娘のデイジーは、正反対な性格でありながら、大の仲良し。二人とも18歳ですが、ドゥーニャは従兄との結婚を両親に勧められ家族と故郷のモロッコに帰ることとなります。一方、デイジーは、妊娠の発覚から母親との関係がギクシャクし、モロッコにいるはずの父親を訪ねてやってきます。二人は、カサブランカにいるはずのデイジーの父を探しにカサブランカに向かいますが...。


かなり弾けたデイジーと真面目で大人しいドゥーニャ。まぁ、よくある取り合わせで、よくある展開。そして、彼女たちの楽しい"青春"を変える転機となったのが、結婚と妊娠というのも、ありきたりというか、陳腐というか...。よくある設定で、ありがちな展開。なるようになって、あるべきところに落ち着く、無難な纏め方がされている作品です。


そういう意味では、新鮮味はないのですが、良かったのは、モロッコの風景。カサブランカといえば名画の舞台ともなった都市。古典的名画の舞台となった時代とは、また違った雰囲気の街になっていますが、街の雰囲気が巧く印象的な映像に切り取られていたと思います。


さて、真面目なドゥーニャは、デイジーのどこにそんなに惹かれたのか...。まぁ、単純に"自分にないものに惹かれた"あるいは、"あまりに世界の違うデイジーにより自身が開放されそうな気がした"といったところなのでしょうが、こうしたロードムービーで、それぞれの成長を描くなら、やはり、二人が惹かれあった背景は、もっと丁寧に描いて欲しかったところ。


そして、デイジーも酷すぎ。18歳...、まだまだ子ども...なのかもしれませんが、全く違う文化圏にある人に対する想像力のようなものが足りなさ過ぎ!あまり、勉強が好きなタイプであったことは分かりますし、定職も持たず、特に仕事に就くための資格や知識を伸ばすための活動をしているわけでもなさそう。社会人として、一人の大人として、まだまだ幼いというのも確かなのでしょうけれど、それにしても、もうちょっと考えたり、感じたりしてもよさそうな...。


トラックが突然停まり、礼拝を始める運転手とドゥーニャの姿を目にした時のデイジーは、それなりに神妙な面持ちで、この辺りでは、彼女の成長も感じられたのですが...。


素材は悪くなかったと思いますし、安心して観ていられる作品だと思うのですが、特に印象に残る作品とまでは言い難い気がします。


残念な作品。



ドゥーニャとデイジー@ぴあ映画生活

嘆きの天使

テーマ:
嘆きの天使【淀川長治解説映像付き】 [DVD]/マレーネ・ディートリッヒ,エミール・ヤニングス,ローザ・ヴァレッティ
¥1,890
Amazon.co.jp


ドイツの小説家、マンの「ウィンラート教授」を映画化した作品。


ハンブルグで高校教師をしているラート教授は、中年で独身、真面目一方の堅物でした。そんな彼が、ふとしたきっかけで、街のキャバレーの踊り子、ローラに出会い、彼女に惹かれるようになります。世間知らずな教授は、教職を捨て、ローラにプロポーズをし結婚します。その数年後、各地を巡業していたローラの属する一座は、ラート教授が教師をしていた街に再び現れますが、そこには、ローラに捨てられたラート教授の無残な姿が...。


世間知らずで純情な中年男性。恐らく、浮わついた経験もほとんどなく、地味に堅実に生きてきたのでしょう。


ローラのような女たちの生業がどんなものかも、そうした女たちとどう付き合うべきかも、何も知らず、経験もなく、同じ常識の中で生きている人間だと思い込んだ...というより、彼とは全く違う常識の中に生きる人々の存在など、"非常識"とか、"不道徳"という形で自分の世界から切り捨てていたのでしょう。だから、彼には、ローラの「恋しかできない女でもいいの?」という言葉の意味が理解できなかったのでしょう。


ラート教授の堅固な世界を崩したローラの輝き。それは、彼にとって、初めて見る眩い光だったのかもしれません。全く知らなかった世界、触れようともしてこなかった世界への、無知なる故の純粋な興味、好奇心。そして、ローラの美しさ。


ローラを演じるマレーネ・ディートリヒが、妖艶。イマドキのスリムな美女ではなく、肉体をしっかりと感じさせながら、悪魔の囁きのような毒のある甘さ、艶やかさを魅せてくれています。


何も知らない子どものようなラート教授は、"愛"とか"結婚"とかいうものを信じていたのでしょう。疑いを挟むことなく、ローラに突撃していくラート教授の一途さは、ローラの心を本当には動かしません。けれど、アリ地獄の底に引き込まれるアリのごとく、教授は、そこから這い上がることができません...というより、這い上がろうという意欲さえ奪われてしまった様子。


大きな挫折や脱線の経験もなかったのかもしれません。一度、落ちてしまった人生。そこから脱出するなんて、想像することさえできなかったのかもしれません。


いかにも真面目で不器用なラート教授。少ないセリフながら、その純情と裏切られても裏切られても消えることのないローラへの一途な想いを微妙な表情で見事に表現したエミール・ヤニングスの演技が光ります。無垢なるが故に堕ちていく哀しさ。そして、そんな残酷な運命に浮かび上がる滑稽さ。


そして、ディートリヒの美しさ!"美"の基準が変わってきた今にも輝きを残す姿かたちと、しっとりした妖艶な動きと残酷なほどに魅力的な表情。


モノクロの映像に浮かび上がる人間の哀しさ、運命の残酷さ、そして、"魔性"の美しさ。


ある日、突然、かごの中で生き絶える鳥、前半部のキャバレーの場面でどこかに入ってくるピエロの姿...、ところどころに、ラート教授の運命を予言するような映像が挟み込まれ、破滅に向かって行くラート教授の人生を示す構成も味わい深かったです。


なかなかの名作。一度は観ておきたい作品だと思います。



嘆きの天使@ぴあ映画生活

赤い影

テーマ:
赤い影 [DVD]/ヒラリー・メイソン,ジュリー・クリスティ,ドナルド・サザーランド
¥1,800
Amazon.co.jp


デュ・モーリアの小説をもとに製作された映画作品。


娘が池に落ち死亡しするという事故があり、失意のままに美術画の修復の仕事で、妻のローラとともに、イタリア、ヴェネチアに滞在することとなったジョン。ローラは、そこで、盲目の霊媒師に出会い、娘の霊の存在を指摘され...。


2人の娘の命を奪った池の水、ヴェネチアの街を流れる運河の水、空から降る雨...。息苦しくなるような水のイメージ、そして、全体に色調が抑えられた暗めの映像が不気味さを醸し出します。"オカルト映画"ともされていますが、それほど、目を瞑りたくなるようなお化け屋敷的な怖い映像が続くわけでもありません。


それでも、当時としては、画期的だというカットバックの手法や意味ありげな視線を投げ、不思議な言動を繰り返す登場人物たちの存在により、不気味さが強調されています。


ただ、残念なのは、何かの伏線のように思われたちょっと独特な登場人物たちの視線や言動が、きちんと回収されず、不気味さを強める役割しか果たせていなかったこと。一応、クライマックスで、様々な映像がジグソーパズルのように貼りあわされていくのですが、どうも、巧く回収し切れていません。


ストーリーや展開はともかく、映像を楽しむ作品なのでしょう。映像は独特の癖になる不気味さがあって印象的です。


ヴェネチアという世界的にも有名な観光地を舞台としながら、観光名所を多く登場させる類の映画にならなかった点にも、製作者側の矜持のようなものが感じられます。そして、不気味な雰囲気タップリでありながら、観光名所が外されながら、本作を観ていて、ちょっと、ヴェネチアに行きたくなったりして...。


一度くらいは観ておいて損はないと思います。



赤い影@ぴあ映画生活

トイ・ストーリー

テーマ:
トイ・ストーリー スペシャル・エディション [DVD]/ディズニー
¥1,890
Amazon.co.jp


1995年に劇場公開された世界初の長編フルCGアニメーション。


アンディは元気でオモチャ大好きな男の子。彼のオモチャたちは、彼が部屋からいなくなると、自分たちの世界を生き始めます。オモチャたちのリーダーは、アンディの一番のお気に入りであるカーボーイ人形のウッディ。ところが、アンディが誕生日を迎えると最新式のオモチャ、スペース・レンジャーの"バス・ラトイヤー"がプレゼントされ、アンディはバスに夢中になります。以前ほどアンディに興味を持ってもらえなくなったウッディは面白くありません。つい、バズに意地悪な態度をとってしまい、他のオモチャたちの反発をかい、徐々に孤立していきます。そんなある日、思わぬことから、バズとウッディは外に出てしまい、オモチャを乱暴に扱う隣家の悪ガキ、シドに捕まってしまい...。


先日、本作も、「2 」も観ずに、「3 」を観たのですが、予想を超える面白さで、本作を観ることにしました。成る程、本作を観てから「3」を観るのが正解でしょう。「3」だけでも、十分に単品の作品として楽しめますが、本作を観ることで、登場するキャラクターの個性や関係性、アンディとの関わりなどが、より、理解でき、作品を深く味わえます。


アンディを巡るバズとウッディの関係、最愛のアンディを奪われる不安に耐えられないアンディの葛藤、オモチャ同士の関係や心の交流といったものが繊細に描かれ、深みのある作品になっています。


シドの"極悪非道振り"の描かれ方は、あまりに情け容赦なさ過ぎる感じもして、シドに同情したくもなりましたが、全体としては、楽しめました。


オモチャたちの立場から見た世界、オモチャの視線から見た世の中には、新鮮さも感じられ、また、納得のいくものになっています。オモチャたちの"子どもがいないところで活動する姿"と"子どもに遊ばれる自力では動けない姿"の描き分けも巧く、無理なく作品の世界に入り込むことができました。まぁ、オモチャが子どもが見ていないところで独自の世界を生きているというアイディア自体は、古くからあるものですが、そのある意味伝統的なアイディアに新しい命を吹き込んだというところかもしれません。


そして、本作で印象的なのは、バズが、自分の"真実"に気付き、傷付き、そこから立ち直る過程。それは、彼で遊ぶアンディが、近い将来辿ることになる道のりにも重なるものでしょう。オモチャでしかない自分の存在に傷つき、けれど、やがて、オモチャとしてのプライドを取り戻す。多くの人は、そうした過程を経て、大人になっていくものなのでしょう。


子どもよりも、かつてオモチャで遊び、オモチャを卒業した大人こそが楽しめる作品かもしれません。沢山のオモチャを捨てた大人にとって、懐かしい甘酸っぱさとともに味わえる作品だと思います。


一度は観ておきたい作品と言えるでしょう。


本作は15年前の作品。「3 」と比較すれば、CGの進歩も実感できます。



トイ・ストーリー@ぴあ映画生活

12人の優しい日本人

テーマ:
12人の優しい日本人 [DVD]/塩見三省,豊川悦司
¥4,935
Amazon.co.jp


“もしも日本に陪審員制度が導入されたら?“という架空の設定で、12人の陪審員が殺人容疑者の判決をめぐって議論を繰り広げていくうちに混乱に陥っていく姿をユーモラスに描いたコメディ。「櫻の園」で高い評価を得た中原俊が再びアルゴで撮り上げた新作で、「櫻の園」でも見せた一つの場所で演じられるリアルタイムの群像劇という手法をさらに推し進めている。平凡な人々による陪審が次第に非凡な領域に流れていく過程が面白く描かれている点にも注目。


十二人の怒れる男 」が元ネタでしょうか。それに、リメイクの「12人の怒れる男 」、本作の三作を見比べると、それぞれのお国柄が出ているような気がします。議論するということに対する姿勢とか、問題の解決の仕方とか、諍いの収め方とか...。


12人の陪審員、それぞれのキャラクターがしっかり作り込まれていて、それぞれの発言がいかにもそれらしく、時としてそれぞれの醜い部分が冷徹に露呈されますが、タダのヘンなヒトでなく、その辺りに普通にいそうなリアリティが感じられます。 


無作為に選ばれた見知らぬ者同士、やる気が出ないのも、真剣に取り組む気が起こらないのも、ある意味、やむを得ないことなのかもしれません。けれど、徐々に、それぞれが、それなりに問題に真摯に取り組み始め、やがて、皆が納得できるところに辿り着く。果たして、彼らは真実に辿り着いたのかどうかは分かりません。


最初の方とは、随分と違った"真実"に行き着くわけですが、そこに至るには、いくつかの小さなきっかけが必要でした。下手すれば、全く違った結論が出されかねなかったワケで(というより、かなり危うかったような...)、何が真実か見出すことの難しさも感じさせられます。


三人寄れば文殊の知恵。本作では12人なのですから、その4倍。真面目に取り組めば、相当の知恵が出てくる可能性はある。時間の経過につれ、徐々に真剣さを増す陪審員たち。相互の関わりの中で変化していく姿に、人と人とが関わる中でこそ生まれる力を実感できました。


それにしても、豊川悦司の存在感!栴檀の葉は双葉より芳し、ということでしょうか。若かりし豊川悦司が、ほとんど言葉を発しない前半から、しゃべりまくる後半まで、魅せてくれます。途中で彼の"正体"について語られる部分と、ラストのオチ、この辺りも見事でした。


少々、長いというか、くどい感じがする部分もありましたが、楽しめました。限られた空間の限られた人物で、これだけ惹き付けられるのは、やはり、作り手のウデなのでしょう。時々、被告人の様子を映し出す元ネタの作品よりも、陪審員室からカメラが出ませんが、その"狭さ"が気になることはありませんでした。


観ておいて損はない作品だと思います。


本作が製作された当時、日本では陪審員制度はありませんでした。その後、裁判員制度が導入されたワケですが、陪審制度と裁判員制度もいろいろと違うようで、裁判員と陪審員が与えられる役割も当然、かなり違うようですね。幸か不幸か、まだ、裁判員を経験する機会には巡り会えていませんが、今後、可能性としてはあるわけで...。そんな観点から観ても面白い作品だと思います。



12人の優しい日本人@ぴあ映画生活

バッタ君 町に行く

テーマ:
バッタ君 町に行く [DVD]/出演者不明
¥3,990
Amazon.co.jp


アメリカのアニメーションの黄金期、「ポパイ」、「スーパーマン」といった作品を生み出し、1930年代を通じて、ディズニーの最大のライバルと言われたフライシャー兄弟が1941年に製作した長編アニメーション映画。


都会の真ん中に虫たちが暮らす草むらがありました。しかし、その囲いが壊され、人間が入り込むようになり、虫たちは危険に晒されます。そんなある日、長旅を終えて、恋人のハニーのもとに帰ってきたバッタのホピティは、彼らの惨状を知り、安全な土地への移住を提案します。虫たちは、移住を決意し、新天地に向かいます。一方、ハニーに片想いをし、ホピティを煙たく感じていたカブト虫のビートルは、彼の部下の蚊のスマックとハエのスワットを使って、ハニーとホピティの仲を引き裂こうと企み...。


歴史的な価値のある作品であることは確かでしょう。けれど、今の時代に観ると良くも悪くも"古典として価値がある作品"だとは思えますが、古びた印象は拭えませんし、今の時代になお楽しめる作品とは言い切れない感じがします。


虫たちと人間の関係が必ずしも"敵対関係"にあるものとして描かれていないところには好感が持てます。虫たちにも人間から逃げ回るだけでなく、利用できるところは利用しようという逞しさを見せています。そう、同じ地上に住む者同士、戦って傷つけあうばかりでは、埒があきません。互いに、できるだけ迷惑にならないように、それぞれの場でそれぞれの生活を営めば平和に収まるのでしょう。実際、私たちも、蜜蜂や地中の虫や微生物たちの世話になっている部分も随分あるわけですし...。


虫たちの造形も、決して、可愛いわけでもないし、キャラクター商品になって欲しいとも思えないのですが、独特のクセのあるユーモラスな雰囲気は印象的です。欲を言えば、もう少し、それぞれの虫ならではの特性を出したキャラクター作りがされていれば、虫を主人公にしたアイディアがもっと活かせたと思うのですが...。


70年も前の作品と思えば、相当に画期的な作品であったろうと想像することはできます。今観れば古さが目に付くのは致し方ないところですが、「フルアニメーション」という手法の魅力は十分に感じられますし、CGが主流となった今だからこそ、将来に残しておきたい作品だと思います。


一度は観ておきたい作品と言えるでしょう。



バッタ君 町に行く@ぴあ映画生活

愛という名の疑惑

テーマ:
愛という名の疑惑 [DVD]/リチャード・ギア
¥2,100
Amazon.co.jp


裁判で証言することも多い精神分析医のアイザックは、患者であるダイアナの深層心理を探るため、彼女の姉のヘザーに会いますが、アイザックは、飛び切り美しいヘザーと恋に落ちてしまいます。ヘザーには夫がいるのですが、その仲は冷え切っており、離婚を考えていました。そんな時、ヘザーの夫が殺され、ヘザーが容疑者として逮捕されます。アイザックは、ヘザーに少量のアルコールでも過敏に反応し、暴力的になる"病的酩酊"という症状があることを知り...。


騙し騙され、裏切り裏切られ...。少しずつ見えてくる"真実"に惑わされながら、緊迫感ある世界を楽しめました。サスペンスとしては、左程、画期的とも意外性タップリとも思えませんでしたが、そこに、巧く男女の駆け引きと姉妹の葛藤が絡んだことで、面白い作品になっていたと思います。今はなき「火曜サスペンス」的な雰囲気も感じられますが、下手すれば陳腐になる可能性があるストーリーを演技陣が味わいのあるものに仕上げています。


冷静に考えれば、相当に悪女なヘザーですが、エリック・ロバーツが実に見事に彼女の夫が冷酷で嫌な人物であることを表現しているため、ヘザーに同情したくなります。そして、ヘザーを演じたキム・ベイシンガーも、前半は妖艶さと夫に虐げられる妻としての哀しさを表現し、アイザックにたくらみを見抜かれた後半は、一転して、鬼と化す。その変化が本作の凄みを強調しています。


もちろん、主役のリチャード・ギアも好演。ヘザーと簡単に恋に落ちてしまう辺り、精神科医としては脇が甘すぎる感じはしましたが、ヘザーの魅力が精神科医としての矜持を簡単に崩してしまったということでしょうか。それにしても、これでは、トラブル続出だったのでは...と心配になってしまいます。そして、この前半のユルさに比べ、後半の鋭い切れ味にはビックリ。美女に骨抜きにされはしたけれど、一旦目覚めれば、本領発揮ということでしょうか。


そして、ラスト。姉妹の終らない物語を感じさます。少々、しつこい感じがしなくもありませんが、後に引く不気味さを残していて印象的。


一度は観ておいて損はない作品だと思います。



愛という名の疑惑@ぴあ映画生活