パーマネント野ばら

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西原理恵子の同名コミックを映画化した作品。


なおこは、離婚し、娘を連れて、故郷の村に住む母の元に戻ってきます。母は、村でたった一軒のパーマ屋、"パーマネント野ばら"を営んでいましたが、そこには、日々、村の女たちが集まり、恋の悲しさや辛さを語り合ったり、小さな告白をしたり...。


なおことその友人たちは、多少は若いものの、中心となっている女性たちは、オバサンたちというかおばあちゃんたちというか...。恐らくは、男性の目を惹くには、少々、トウが立っているというか...。けれど、その分、そうした"縛り"から自由になれる可能性を持っているのでしょう。もちろん、彼女たちに、いろいろな問題の渦中にいたりはするのですが、やはり、若い世代とは突き抜け方が違うというか、歳を重ねた者ならではの貫禄を見せてくれています。


そして、まだまだ、男と女の問題の真っ最中にいるなおこや友人たち。二つの世代の女たちが描かれ、それにより、オンナたちの人生が厚みをもって感じられます。


そう、"幻想"になど依存しなくても、現実の世界の中の女たちとの繋がりの中で生きていくことはできるハズ。


夏木マリ、小池栄子、池脇千鶴...、菅野美穂演じるなおこの周囲のオンナたち。なおこが幾分、おとなし目でノーマルな感じに描かれているだけに、それぞれの始めた部分がクッキリとした対照をなし、それぞれの人物像に深みを出しています。力のある演技陣のなせる技なのでしょう。


そして、なおこの娘、ももちゃんの全てを見透かすような眼差し。母からなおこ、なおこからももちゃん、母から娘に受け継がれていくものを考えた時に、ももちゃんの男運が良かれと祈るような気持ちにさせられます。もちろん、例え、男運がなくとも、ももちゃんはももちゃんでしっかり生きていくのでしょう。お母さんやおばあちゃんと同じように...。


ラストの方で登場するセリフ。「いい男はいない」そう悟った時、オンナは、一人の人間として自由になれるのかもしれません。恐らく、彼女たちは、懲りずに、この先もオトコに一喜一憂し、振り回されることを繰り返すのでしょう。でも、彼女たちは、そんなことでは凹まない。愚痴をこぼし合いながら、笑って生きていくのでしょう。


本作に登場する人々は、オンナたちも、それぞれがどこかでアブノーマルですが、オトコたちもオトコたち。ノーマルな印象を受ける唯一のオトコが"鹿島"なわけですが...。ラストである"事実"が明確になり、その後、本作の場面の所々が走馬灯のように浮かんできました。そうだったのか...。巧く伏線が張られ、「あれはどういうことだか放り出したまま終わり?」と思っていると、種明かしがあり、スッとした気持ちでラストを迎えることができました。


さらに、ラストのなおこの笑顔が印象的です。その背景には、なおこ自身が、彼女を温かく受け入れてくれていた周囲の優しさに気付いたこともあるのでしょう。


いろいろと事件も起こる割には、全体に、やや、平板な感じがして、正直、目蓋が重くなる瞬間もありましたが、なかなかの寡作だと思います。女性向かもしれませんが、観ておいて損はないと思います。



公式サイト

http://www.nobara.jp/



パーマネント野ばら@ぴあ映画生活

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春との旅

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足の怪我で漁師を引退した忠男と、その面倒を見てきた孫娘の春。春は、小学校の給食室で働いていましたが、その小学校が廃校となり、職を失います。春は、仕事のない田舎から都会に出ることを決意しますが、そのためには、忠男の世話してくれる人を見つけなければならず、疎遠になっていた忠男の兄、妹、二人の弟を訪ねますが...。


成長しないロード・ムービーかも...。折角、旅館を経営して頑張っている"おばちゃん"が良いアドバイスをくれたのに。


まぁ、そう簡単に変われないのが人間で、本当のところ、なかなか旅したくらいで人生変わらないってことかもしれませんが...。特に年齢を重ねてからでは。結局、おじいちゃんは春に寄りかかっちゃっていますしね。もっとも、老いるということはそういうことなのかもしれません。自分の中にあるマイナスの部分に気付いても、それを変えようと決意しても、多くの場合、元に戻ってしまう。そして、そうした問題は、多くの場合、しによって解決されるのでしょう。そう考えると、ラストは天恵かもしれません。ズルズルと二人がもたれあって堕ちていかないようにという。


そして、このラストにより、それまでの旅に、全く違う意味が加わります。安っぽい感動を拒否するこのシーン。老いの哀しさ、醜さを突きつけられた感じもします。


ただ、問題は春。そんなおじいちゃんに依存してしまう春。おじいちゃんの変わらなさは致し方ないにせよ、それでいいのか、春!


気になったのは、春がやけに幼い感じがしたところ。18歳の設定になっているので、ある程度はやむをえないところかもしれませんが、それにしても、一応、社会人なんですよね。中学生という設定であれば違和感がなかったと思うのですが...。ガニマタ歩きも気になりましたが、あれは役作りなんですよね...きっと。あのちょっと微妙な感じのセンスの服装も、役作りなのですよね...きっと。(それに比べ、おじいちゃんはやけにお洒落でしたが...。)5日も福を変えないっていうのは、何なんでしょう?"田舎っぽさ"を強調したかったのかもしれませんが、あれじゃぁ、"田舎"に失礼ですよね。


金銭感覚もねぇ...。一泊目、二食付で6500円を高いといいながら、最後の方では、長距離っぽいフェリーにも乗ってしまいますし...。


確かに、力のある演技陣が揃えられ、演技の力というものを観ることができたと思います。でも、この人選ができたというところで、満足してしまった作品のようにも思えてしまいました。あまりに拙速な感じがするラストの前のエピソードには違和感がありましたが、それ以外の個々の場面は、それぞれに味わいがありました。老いとか人生とか血の繋がりとか家族とかを考えさせられるのですが、その割には、全体としては、今ひとつ、印象が薄い作品になっているように思えます。


ラストの前の馬の牧場でのエピソード。春は、彼女の母親と離婚していた父親について、新たな事実を知ります。忠男はそれを知っていた様子なのですが、それなら、何故、それを事前に知らせなかったのか?春を父親にあわせたいと願い、その事実を春が知れば父親を訪ねることをやめてしまうと思った...のでしょうか?


忠男については、あの足の怪我を理由に、漁師を辞め、妻と娘と春の人生を縛り、姉の旅館でも働けないと言い切っているわけですが、それ程の怪我なんでしょうか?杖を投げ捨て普通に歩いていたし、それなりの時間、たっていることもできている様子だったし...。確かに、漁師は大変でしょうけれど、誰かに介護されなければ生活できないということもなさそうな...。いや、この状態でひとりで生活ができないというところにこそ、彼の我が儘振りが表現されているということなのかもしれませんね。


キラリと光る部分をいろいろと持ちながら、全体としては、霞んでしまった感じで残念。


出演陣の演技を楽しめる作品。特に春が父と会うシーン。春の父を演じた香川照之がさすがの演技で作品全体の雰囲気を締めています。今後も香川照之の出演作はチェックしておきたいところ。まぁ、不満もありますが、観ておいて損はないと思います。



公式サイト

http://www.haru-tabi.com/



春との旅@ぴあ映画生活
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続・黄金の七人 レインボー作戦

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続・黄金の七人/レインボー作戦 HDニューマスター版 [DVD]/ロッサナ・ポデスタ,フィリップ・ルロワ,ガストーネ・モスキン
¥2,940
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黄金の七人 」の続編。


ローマ銀行の大金庫からの金塊強奪に成功した一味をFBIやペンタゴンが存在するアメリカを思わせる某国の高官たちが待ち構えていました。彼らは、"黄金の七人"に、カストロ将軍を思わせる南米のとある軍事国家の独裁者を誘拐させようとしていました。"教授"は、700万ドルなどを条件に依頼を受けますが、彼の本当の狙いは7000トンの金塊で...。


前作から、いろいろな面でグッとスケールが大きくなったのですが...、ちょっと、大きくなり過ぎたか...。まぁ、でも、この無駄にスケールの大きい馬鹿馬鹿しさこそが、本作の味わいなのでしょう。


7000トンって...。人類の歴史始まって以来、世界中で産出された金が、合計で14万6千トンと推測されていますから、その20分の1に当るわけですが...。まぁ、そんなこと気にしていたら、始まりません。


いくら、全欧州からの選りすぐりメンバーだとしても、たった7+1人の泥棒軍団に、そう簡単に騙されるとは...。ナンテことも考えちゃいけません。


余計なことは考えず、この馬鹿馬鹿しさとジョルジアの小悪魔的な魅力を堪能するための作品というべきでしょう。


某超大国も小国ながらそこに対抗しようと踏ん張る某社会主義国家の独裁者も、それぞれの権力に寄り添う者たちも、振り回される者たちも、平等に笑い飛ばし、そして、両者を手玉にとって荒稼ぎを企む主人公たちに対しても皮肉な視線を送っています。その辺りのバランスが取れていて、風刺や皮肉が嫌味な感じにならず、楽しめます。


欧州各国から選りすぐりの精鋭を集めているはずが、意外に間が抜けていたり、それぞれ、どことなくトボケた感じなのに、結構、"仕事"はしっかりこなしていたり...。その辺りも、"定番"ながら、味が出ていたと思います。


前作とは違い、銃弾が飛び交う銃撃戦がありますが、それでも、"死者は出さない"のがお約束。この辺りも、本作独特のホノボノ感に繋がっているのでしょう。国家間の争いに関わっても、盗み出すものが7000トンの金塊でも、大きな力を持つ相手との戦いになっても、どこか、まったりとした雰囲気を纏っていて、安心感があります。


「続編」ですし、前作を観ておいたほうが、よりスムーズに作品の世界に入れますが、観ていなくても十分に楽しめると思います。観ておいて損はないと思います。



続・黄金の七人/レインボー作戦@ぴあ映画生活

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黄金の七人

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黄金の七人 HDニューマスター版 [DVD]/ロッサナ・ポデスタ,フィリップ・ルロワ,ガストーネ・モスキン
¥2,940
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ジュネーブのスイス銀行。その大金庫の奥には7トンの金塊が保管されていました。その金塊を盗もうとする7人の男たちと犯行の指揮を執る"教授"の恋人、ジョルジア。銀行の真向かいのホテルから指令を出す"教授"の指示の元、6人の男たちが地下から大金庫に迫り...。


銀行から7トンの金塊を盗み出す。純金地金1gが円(2010年5月27日現在)なので、その100万倍、約円の価値があるということになります。そんな大それたことをしているわりには、何だかゆったりというか、まったりというか、ゆるい雰囲気になっています。そのギャップが絶妙で、裏切りが相次ぐ犯罪映画を明るい雰囲気の娯楽作品に仕上げています。大きな犯罪を描いている割には、少々、スリルが足りない気もしますが、いかにもイタリアという感じのするちょいワルなお洒落な感じが心地よかったです。


「ルパン三世」も影響を受けている...というのも、成る程。ロッサナ・ポデスタ演じる"謎の美女"ジョルジアは、まさに峰不二子。峰不二子をリアルな人間にしたら、確かに、このロッサナ・ポデスタ以外の何者でもないでしょう。奇抜な感じもする衣装や眼鏡を可愛らしくお洒落に着こなし、本作の雰囲気を引っ張っています。


やっとの思いで盗み出した金塊は、二転三転の後、道路にばら撒かれます。そこに群がる人々。その中で、いち早くその価値に気付き、人を押しのけて延べ棒を掻き集め始める少年。大泥棒顔負けの子どもたちの"逞しさ"。こんな子どもの描き方も、むしろ、子どもの本質を突いているような...。お洒落で待ったりした雰囲気の中にも、ピリッとした描写を上手く挟み込んでいます。


"教授"とジョルジア以外のキャラクターの描き方は弱いですが、まぁ、この長さであれば、致し方のないところだったかもしれません。そこを描くために長くしても間延びしてしまったかもしれませんし...。


犯罪、スリル、笑い、裏切り、お色気...といった様々な要素がバランスよく散りばめられ、お洒落な雰囲気の音楽と映像で、コンパクトにスッキリと纏められています。安心して軽く楽しめる作品。観ておいて損はないと思います。



黄金の七人@ぴあ映画生活

悲しみは空の彼方に

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ダグラス・サーク コレクション 2 (初回限定生産) [DVD]/ロバート・スタック,フィンレイ・カリー,キャスリーン・ライアン
¥22,680
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未亡人のローラとその娘のスージーは、コニー・アイランドの謝肉祭で、白人の夫に捨てられた黒人女性、アニーとその娘、サラジェーンに出会います。ローラは、夫に去られ住む家もなく困っていたアニーとサラジェーンとともに暮らすことにします。アニーは、女中として献身的に働き、家庭は明るくなり、ローラもチャンスを掴んで、女優としての名声を得ます。貧しい暮らしから抜け出し、豪邸に住むようになり、順風満帆でしたが、肌の色は白いサラジェーンは、母親が黒い肌のために自分が黒人として扱われることを恐れて母の存在を隠そうとし、アニーはそんな娘の自分に対する反発に悩み、ローラは女優家業に空しさを感じるようになり、スージーはいつも忙しい母親に不満を募らせ...。


人種問題、女性とキャリアの問題を中心に置きながら、2組の母と娘を描きます。


本作の製作が1959年。公民権運動の先頭に立ったキング牧師が、「I have a dream」で始まる有名な演説を行った「ワシントン大行進」が行われたのが1963年、人種による差別を明確に禁じた公民権法ができたのが1964年7月2日。この公民権法ができてからも、なかなか人種差別はなくならなかったわけですが、本作が撮られたのが、人種差別が公然と合法的に行われていた時期です。本作製作の4年前、1955年の12月にモンゴメリー・バス・ボイコットが起こり、1956年に合衆国最高裁判所において「バス車内における人種分離」を違憲とする判決が出て、反人種差別運動が高まりを見せていた時期であったとはいえ、なかなか、先鋭的な作品だったと言うべきなのでしょう。


本作では、人種差別の問題も描かれますが、決して、社会派の色合いが強い作品ではありません。基本的には、メロドラマ。決して、特に目新しい内容ではないのですが、しっかりと作られていて、アニーのサラジェーンへの想いが表現される場面など、やや、あざとい感じもしますが、泣かされます。


原題は「Imitation of Life」。女優業という虚飾の世界に生きようとしたローラと自らの出自を隠して白人として生きようとしたサラジェーンの苦悩が前面に出されます。そして、それに対し、酷い差別に遭ってきたであろうアニーの自分を偽らない堂々とした生き方。その対比が、ラストで鮮やかに示されます。結局、人は、どんな背景があったとしても、自分を偽ることで、本当に幸せな人生を歩むことなどできないということなのでしょう。


ラスト、自分の人生からその存在を消そうとまでしていた母親の死により、初めて母親を受け入れることができたサラジェーン。女中としてただローラに尽くしてきただけかに思えたアニーが、いかに豊かな人生を歩んできたか。そのことが、彼女の葬儀を通して明らかにされます。


きっと、その葬儀の風景が、ローラとサラジェーンの心に与えて物は大きかったことでしょう。果たして、2人は、この後、どのように、それぞれの人生を歩んでいくのか...。


この葬儀が、ローラやサラジェーンに与えたものについて、もう少し、突っ込んでくれていると、もっと、スッキリ観終えることができたような気がしますが、そこがなかったために、中途半端な感じがして、消化不良気味でした。


アニーを演じたファニタ・ムーアが出色。自らを偽ることなく、いつも凛として、娘を心配しながらも、その心情を理解し、愛を注ぐ姿が、本作に輝きを与えています。さらに、成長してからのサラジェーンを演じたスーザン・コーナー、そして、葬儀の際のマヘリア・ジャクソンの歌声が見事。もうちょっと、じっくりと聞かせてほしかったです。


最初から最後まで、そこそこ楽しめました。古さが感じられる部分もある作品ですが、よくできた正統派メロドラマ。観ておいて損はないと思います。



悲しみは空の彼方に@ぴあ映画生活

白いドレスの女

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白いドレスの女 [DVD]/キャスリーン・ターナー,ウィリアム・ハート,リチャード・クレンナ
¥2,100
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サウス・フロリダに事務所を構える弁護士、ネッド・ラシーンは、ある暑い夜、白いドレスを纏った美女に出会います。彼女、マティ・ウォーカーを忘れられないネッドは、彼女を探し出し、激しく愛し合うようになります。けれど、マティには、20歳も年上の資産家の夫がいるのですが、離婚したのでは、彼の莫大な財産を受け継ぐことはできません。そこで、二人の間で、夫の殺害計画が持ち上がり...。


ジメジメとした身体にまとわりつくような夏の暑さに、マティとネッドの間に燃える欲望の熱さが重なり、暑さから来る息苦しさとサスペンタッチの展開が生み出す息苦しいような緊張感がダブります。この作品の空気感が印象的。


ネッドが手に入れたものは"切り札"となるのか、そもそも、ネッドはそれの手札を切るのか、その後の展開は観る者の想像に委ねられます。


勧善懲悪にも陥らず、けれど、簡単に"悪を野放し"にするわけでもないこの展開も微妙なバランスの上に成立していて、センスの良さが窺われます。


でもねぇ、ネッドも、"アレのためなら死んでもいい"とまで思い込んだのなら、最後、行くところまで行くべきではなかったのか...。一度は、そこまでの覚悟をしたのなら、とことんまで...、ということであれば、もっとカッコよかったのではないか...。例え、彼女に愛がないと分かっても、自分は単なるコマに過ぎなかったのだということが分かっても、それでも、人生を賭けるくらいでないと、ここまで見事な悪女には太刀打ちできないのではないか...。


命を賭けて、彼女の"殺人"と"詐欺"を確かな証拠とともに告発する...というのも、アリかなぁとは思いましたが...。


いずれにしても、キャスリーン・ターナーの悪女振りが見事。あくまで冷静に一人の男を殺しその財産を奪い、一人の男を破滅させ、一人の女の人生を乗っ取ったあげくに命を奪う。ラストの全てを手にしたマティの手放しに幸せそうでもなく、かといって後悔の念をのぞかせるわけでもない微妙な表情が印象的でした。


そして、彼女に振り回され、闇への道であることを感じながらも真っ直ぐ進まずにはいられないネッドを演じたウィリアム・ハートもさすがに演技派の技を見せてくれています。若きミッキー・ロークも、登場する時間は僅かでありながらも、キラリと光る存在感を見せてくれています。


作品の世界に惹き込まれ、程よい緊張感に最後まで引き付けられました。観ておいて損はない作品だと思います。



白いドレスの女@ぴあ映画生活

インフォーマント!

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インフォーマント! [DVD]/マット・デイモン,スコット・バクラ,ジョエル・マクへイル
¥3,980
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実際にアメリカで起こった事件に基づいた作品。


1992年、世界最大規模を誇る食品添加物の製造工場で、ウィルスが発生します。若くして、大企業ADMの重役にまでなったマークは、上司に日本企業のスパイから脅迫されていると報告し、そのウィルスもスパイの仕業ではないかと話します。早速、FBIによる捜査が始まりますが、マークは、その捜査官にADMの違法行為を告発。さらに、マークは、FBIのスパイとして社内の証拠集めに奔走し始め...。


マークが、何とも愚かで...。こんな人物が、大企業で、画期的な若さで重役になるって、どういうことなのか?実話なのに、リアリティが感じられません。これこそ、"事実は小説より奇なり"ってことなのかもしれません。そして、もしかしたら、"実話である"ということが、製作者側に、この辺りの状況について"リアリティ"をもたせるための工夫を怠らせてしまったのかもしれません。


そして、最初にFBIと関わってからのマークも、あまりに、無防備。かりにも、FBI。一人の人間が相手にするには、あまりに大きな相手なワケで、それにも拘らず、何度、危ない目にあっても、どこまでも、後先を考えなさ過ぎ。これだけの相手に対して嘘をつくなら、もっと、用意周到にやらなければ...。最初のウィルスに関する部分では、時間的な余裕がなくて難しかったかもしれませんが、それにしても、準備がなさ過ぎます。もう少し、じっくり作戦を練ったり、先の展開を予測して対策を立てたり、ということをしなかったのでしょうか?しなかったというのが事実なのだとしたら、彼のそうした無計画さを、もっと、コメディタッチで笑い飛ばせば、もっと、面白くなったのではないかという気がします。


まぁ、ちょっとしたミスを誤魔化すための嘘が、予想以上に重大な事態を引き起こし、それを収拾しようと嘘に嘘を重ねるハメになり、最後には自分自身を追い詰めてしまう、ということ自体はありがちなこと。


ラスト近くなって入れられるエピソードは、本作で取り上げられる事件よりずっと前のマークの"嘘"について描いていますが、それを見ると、彼は、元々、"詐欺体質"があったのかもしれません。そして、彼の"詐欺"は次々に成功を重ねていて、その成功体験があったからこそ、彼は、油断していたのかもしれません。この辺りが、もっと掘り下げられていれば、ずっとリアリティが出たような気もするのですが...。


そして、ラスト。マークを迎える妻。彼女との中学時代のエピソードはマークの口から語られますが、彼女のそのマークへの想いがどのように形作られてきたか、彼女の側から描かれる部分があれば、マークの人となりにも、もう少し深みが出て、面白くなったと思うのですが...。


それにしても、マークを演じたマット・デイモンは見事。本作のために15kg太ったそうですが、いつもの逞しさ、男らしさ、カッコ良さを脱ぎ捨て、どうにもこうにも身勝手で情けない雰囲気を巧みに表現。どこまでが嘘でどこまでが事実か、煙に巻いてくれます。これなら、FBIも企業の重役たちも誤魔化せる...かも?


マット・デイモンの演技に興味がある方にはオススメできる作品だと思います。



インフォーマント!@ぴあ映画生活

ハイ・フィデリティ

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ハイ・フィデリティ 特別版 [DVD]/ジョン・キューザック,ティム・ロビンス,キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
¥1,500
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ニック・ホーンビィのベストセラー小説を映画化した作品。


シカゴで中古レコードの店を開いているロブは、同棲していた恋人のローラに、突然、出て行かれ、傷心の日々を過ごしていました。思い悩んだ彼は、過去の失恋ベスト5の女性たちを訪ね歩き、自分が恋愛で失敗した原因を探りますが、心の傷は深まるばかりで...。


ロブのダメダメ振りが楽しかったです。最初は、「何だコイツ!」と目を背けたくなるような優柔不断オトコなのですが、だんだん、目が離せなくなり、最後には、「何だかんだ言っても、結構、カワイイところあるじゃん」と思えてしまう。そこが、本作の魅力なのでしょう。


ロブやその仲間たちのオタッキーな感じも巧く描かれていて、可笑しかったです。いかにもな薀蓄語り、妙なこだわりや知識のないお客に対する上から目線、売る相手の選び方...。いかにもありそうなエピソードがバランスよく織り込まれ、ロブたちの人物像を浮かび上がらせています。


ロブが語る恋愛物語も、それぞれにありきたりなストーリーではありますが、その中に、見事にロブと元カノたちの...というより、男と女の間の深い溝が軽妙なタッチで描き出されていて、観ていて、シミジミ、ホロリとさせられながらも、笑えました。


そして、ジャック・ブラック。これが、出世作とのことですが、時に主役の存在を霞ませるパワフルな演技は印象的。


左程、期待せずに観たから、ということもあるのかもしれませんが、音楽の趣味がマニアックで、ついていけない部分が多かったにも拘らず、意外に楽しめました。


観ておいて損はないと思います。



ハイ・フィデリティ@ぴあ映画生活

地下鉄のザジ

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地下鉄のザジ【HDニューマスター版】 [DVD]/カトリーヌ・ドモンジョ
¥3,990
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母に連れられ、初めてパリへとやって来たザジは、恋人と過ごす母親とは離れ、ガブリエル叔父さんにパリの街を案内してもらいます。けれど、一番楽しみにしていた地下鉄はストライキで閉鎖中。地下鉄に乗れないことに不満を抱くザジは、一人で街へ出て、奇妙な大人たちを巻き込んで大騒動を繰り広げ...。


ドリフターズ顔負けのドタバタ劇。お転婆娘、ザジの溢れ出るパワーに圧倒されました。


どこまでもマイペースで自由気ままなザジと、彼女に振り回される奇妙な大人たち。ザジもザジで野生児なら、大人たちも気ままで好き勝手し放題。それぞれに間が抜けていて愚かしく、けれど、小賢しい打算もないためか、彼らの愛すべき姿には、却って、清々しさも感じられます。


可愛らしさ、真っ直ぐさ、そして、欲望。ドタバタな中に、人間の様々な面が炙り出されていきます。


一番、印象的だったのは、"ニセ警官"との追いかけっこ。次々と、どこかから飛び出してくる"秘密兵器"。そのユーモアたっぷりの面白さとハチャメチャ振りには、笑わされました。


ただ、最後のレストランでの破壊劇は、あまりに暴力的で、無意味に長く、少々、辟易。それまでの、ジェットコースターのようなスピード感溢れる先の読めない展開が心地よかっただけに、残念な感じがしました。


滅茶苦茶な展開でありながらも、しっかりとパリの名所を見せてくれる辺り、お得感もあります。監督のサービス精神のなせる技でしょうか。


いかにも天然な味わいを上手く表現したザジ役のカtリーヌ・ドモンジョは、悪戯が嫌味にならない可愛らしさを出していましたし、ガブリエル叔父さんを演じたフィリップ・ノワレの大らかで優しい雰囲気も印象的でした。


観ておいて損はない作品だと思います。



地下鉄のザジ:完全修復ニュープリント版@ぴあ映画生活

生きるべきか死ぬべきか

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生きるべきか死ぬべきか [DVD]/キャロル・ロンバード,ジャック・ベニー,ロバート・スタック
¥5,040
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1939年、第二次世界大戦直前のワルシャワ。「ハムレット」を上演中の劇団、トゥルー一座の看板女優マリア・ツラは、同じ一座の看板俳優である夫の目を盗み、ポーランド空軍のソビンスキー中尉との密会を楽しんでいました。やがて、ワルシャワは、ドイツ軍に占領されますが、ポーランド人の一部は、地下組織でナチスへの抵抗を続けていました。ある日、ソビンスキー中尉は、シレツキー教授がナチスのスパイだと知り、劇団員たちは、シレツキー教授がナチスに渡そうとしていたレジスタンスの名簿を奪うため、一計を案じますが、...。


不倫、古典的な舞台、そして、国際的な企み、といった要素をバランスよく絡ませ合い、ヒトラーという"極悪非道"の代名詞とも言うべき人物を徹底的にこき下ろし、ナチス・ドイツを笑い倒しています。


製作されたのが1942年というところに、先ず、驚きました。1942年といえば、まだ、ナチス・ドイツが勢力を持っていた時期。ドイツ人監督が撮ったとはいえ、アメリカで製作されていますから、ドイツに対してアメリカ寄りの視点から目を向けているのは、当然といえるのでしょうが、それにしても、これだけ、第三者的な視線で笑い倒しているのは見事。


本作の2年前にチャップリンが「独裁者」を撮っていますが、それ以上に、ただ、ナチスを悪として糾弾するだけでなく、ナチスもまた我々と同じ愚かな人間の生み出したものであることを表現しようとしている感じがします。その辺りは、ナチスに踏みにじられる祖国ドイツへの愛情の現われかもしれません。


お約束のように訪れるピンチ。その切り抜け方が実に見事。スリルがあり、しかも、笑えます。不倫もネタにして笑わせながら、それでも、下品にならず、知性を感じさせている辺り、相当に練られているのでしょう。


登場人物たちも、それぞれに個性的で、人間の強さ、弱さ、逞しさ、愚かさ...人間の様々な側面を見せてくれています。主要人物たちのキャラクターの描かれ方も丁寧で、優れたヒューマン・ドラマとなっています。


タイトルにもなっている、「ハムレット」のあまりに有名なセリフ「To be or not to be.」の使われ方も絶妙。ラストでも、このセリフがしっかりと決まって、しっかりと笑わせてくれます。そして、ユダヤ人であるグリーンバーグによるシャイロックのセリフも効果的に使われています。


モノクロですし、映像には古さが感じられますが、それでも、製作から約70年を経た今観ても、十分に笑いながら作品の世界を楽しめました。


一度は観ておきたい名作。オススメです。本作をリメイクした「メル・ブルックスの大脱走」み観てみたいと思います。


ただ、残念なのが字幕。男性のセリフが女性言葉になっていたり、ところどころで違和感がありました。折角の名作なのですから、ここは、何とかして欲しいところ。もちろん、これは、映画作品自体を製作した側の問題ではないわけですが...。



生きるべきか死ぬべきか@ぴあ映画生活