2016年11月13、14日の2日間、イギリス・マンチェスター市中心部にあるマンチェスター大学で開催された、バイクフィッティングのシンポジウム『ICS2016』が開催されました。これに私(伏見)は今回出席しておりました。

ICSとはInternational Cyclefit Symposiumの略でつまり国際サイクルフィットシンポジウムと解釈して下さい。スポーツサイクルに関するシンポジウム及び会議は、近年欧米では盛んにおこなわれております。コーチングや救急救命や医療系のシンポジウムもあれば、今回のようにバイクフィッティングにシンポジウムというのもあります。近年スポーツサイクル(競技からレクレーショナル)まで英語圏の国々の台頭してきており、英語で開催されるシンポジウムが主になってきております。

特にイギリスはナショナルチーム(チームGB)やUCIプロツアーのチームSKYなど、国一丸となったスポーツへの取り組みはとてもシステマチックで、他の国々からも評価が高く、この国の取り組みについて話を聞こうと多くの国々から参加者が訪れました。

Todd Carver氏、Matt Stienmetz氏と議論する私(伏見)。 Stienmetz氏は先日新発表されたCervelo P5Xの開発にも携わる空力学のエキスパート。

 

2012年からスタートしたICSですが、私はICSについては2013年にも参加したので今回が2回目となります。

毎回バイクフィッティングに関わる深いトピックについて学び、ショップやバイクフィッター講習などでフィードバックすることで日本の自転車業界のレベルアップを目指しています。

 

また今年はスペシャルゲストとしてスコットランドの伝説 Graeme Obree(グレアム・オブリー)氏の講演が予定されているため大変興味がありました。

 

●今回の講演者は以下の通り

・Steve Peters教授(チームGB/チームSky)チンパンジーの行動学、教育方法と選手育成方法

・Lotte Kraus(Gebiomized)女性サイクリストのサドルチョイス

・Dr.Barney Wainwright(Leeds Beckett University,UK) サドル高/前後とパワー、コントロール性の因果関係

・Mick Habgood(Biomechanical Podiatrist) 足病医からみるクリート位置とカント/インソール学

こういった図は理解しやすいですね。

 

・Andy Brooke (Leeds Beckett University, UK)

IBFI International Bike Fitting Institute 国際バイクフィッティング協会 について

・Graeme Obree 1990年代、自身の選手時代のポジションと工夫、呼吸方法、成功と挫折の体験談

・Dr. Tom Korff  バイクブランド「Frog」 子供用専用設計スポーツバイクの設計コンセプト被験者データ収集について

・Dr. Valerie Pennemans  ベルギー Bioracer Motion プロダクトマネージャー

・Dr. Scott Drawer(チームSky/British Cycling)ビッグデータを利用したスポーツマネージメント、自転車競技、バイクフィッティングetc.

・Victor Calsamiglia(Cyclistlab) バイクフィッティングとライダーとの調和

【実演講習】

・Todd Carver(Retul) UCIプロツアーサイクリストへのフィッティング理論提供とポイント、フィードバック

・Paraic McGlynn(Cyclologic)エリートサイクリストのバイクフィット、アセスメントの観点とフィードバック

・Jon Iriberri(Custom4.us)UCIMTBクロスカントリーレーサーへのバイクフィッティングとポイントについて

・Curtis Cramblett(Physical Therapist)ライダーの故障個所についての典型例とアセスメント&修正ポイントについて

 

毎回多くの事を学びますが、今回も運動学の蓄積データやノウハウなどについて多くを学びました。

今年はリオ・オリンピック/パラリンピックが開催され、ご存じの通りイギリスチーム(チームGB)は大きな成功を収めました。イギリスチームについてはSteve Peter氏やScott Drawer氏などが選手へのマネージメント、精神分析などを担当し育成方法などを説明しました。

 

講演内容を聞いていますと、優れた選手を見出すため超大国は選手の「使い捨て」しているなどと誤解されていますが、決してそうではないことがわかります。選手個々の癖や性格を理解し、また「怒り」とパフォーマンスをうまくマネージメントすることで選手の競技能力の向上を図るなど、非常に興味深い話が聞けました。

 

またランチの際はオブリー氏と話す機会があり、1990年代にイギリスチーム代表として来日した時の事を話してくれました。当時のイギリスチームは財政面でもかなり困窮しており、スタッフもおらず、大変不安になりながら来日したようです。日本に到着してからは日本側の対応に大変感謝していた事、またレースへの遅刻のハプニングについてエピソードを語ってくれました。当時私はカナダにいましたので、彼の日本でのレースについては全く知らなかったのですが、東京ドームor前橋?での室内レース会場について日本は技術的に進んだ国であると思ってくれたようでした。

 

今回面白かったのはTodd Caver氏のフィッティングデモの際のある参加者からの質問、

「UCIプロツアーレベルの選手は身体アライメントを調整した上でフィッティングするか、あるいは問題(身体的な柔軟性などの制約)があっても出力を出すためであったらそれを無視するか?」

というものでした。

Carver氏の答えは、プロ選手の多くは金を稼ぐのが目的なので、数年のプロ生活であれば選手は身体アライメント調整よりも長時間のハードなトレーニングorレースに耐えうる最適なポジショニイングを提案をバイクフィッターに要望するようです。

 

たしかに多くの動画では、たとえ有名選手であってもぎこちないルーティーンで筋トレを行う姿を見かけますね。選手は全てが備われば素晴らしいのでしょうが、実際限られた時間で生活するわけですから、何を優先させるかは個々によって違うのでしょう。特にロードレースは心肺機能の維持&向上こそ競技能力に対して大きなウエイトを占めるわけですから、長時間のロードワークこそ彼らの関心事項なのでしょう。

 

各スピーカーによる多くの講演内容は守秘義務があり詳しくは書けませんが、私の財産になったことは確かです。日本全体のレベルアップのためにも講習会などを通してお話できれば良いと考えております。 またこういったシンポジウムへは今後も継続的に参加し、知識を深めていきたいと思います。

 

サンメリットBIKE FITスタジオ

伏見 真希門(ふしみ まきと)

 

Steve Peter氏 チンパンジーの行動学のエキスパート 脳の仕組み、心理学をスポーツへ応用

 

 

Scott Drawer氏 ビッグデータの活用方法について説明

 

 

自転車マニアだったらご存じグレアム・オブリー氏 スコットランドの伝説ライダーです!

タイムトライアルにおいて変わった呼吸方法をとりいれ、窮屈な姿勢に対応したそうです。

アワーレコード樹立の際に使用したシューズを手に取りました。シマノ製。ソールの側面にペダルスピンドルを差し込む構造です。穴の周囲は鉄板で強化されています。おそらく片足1kg以上あるのでは?

 

Lotte Kraus氏 女性のサイクルストに合ったサドルとは?プレッシャーマッピングシステムを使用しながら男性と構造的な違いを説明します。

 

Bioracerのエアロ計測システム。

ある講演者が使用したスライドの一部 個人的にこういう図柄は好きです (笑

 

Tom Korff氏子供用スポーツバイクの設計について

 

今回もシンポジウムの進行役を務めたCyclefitのPhil Cavell氏

 

 

マンチェスター市中心部の広場ではもうクリスマスイベントが開催されていました。

 

 

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