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2005-05-30 08:59:31

英科学ニュース:原子力、プラスチックの有害性、他

テーマ:科学技術と社会

サイコム・ニュース(http://scicom.jp/mailmag/ )のためにまとめたもの。とりいそぎ。


英科学ニュース5/29

■研究に関しては、動物実験に関するレポートが一番大きなニュースかもしれません。英国の動物愛護・権利運動は、先日もアメリカでテロリストとして扱われているという報道があったように、国内外で激しい活動を繰り広げていますが、今週も、レポート以外にも、ブリティッシュ・エアウェイズが実験用の動物の輸送を禁止したり、動物権利の問題の報道についての議論が起きたりしています。国民、研究者、メディア関係者のすべての人たちにとって取り扱いの難しい問題になってきていることをうかがわせます。

■シェラフィールドの再処理工場での燃料漏れのニュースにも驚きました。最長で9ヶ月も、見過ごされてきたということだけでなく、選挙前の報道が控えられたとみられているところが重ねて驚かされます。ブレア政権がエネルギー問題においてもう一度、原子力に重点をおこうとしている矢先ということもあり、タイミングが悪いというかなんというか、今後はどうなっていくのでしょうか。

■シェラフィールドのあるカンブリア地方は、このメルマガでも言及される「欠如モデル」という言葉を生んだブラインアン・ウィンの論文の舞台でもあります。論文では、放射能汚染がすすんでいるという疑いのある地域の調査において、放射性物質の専門家が、羊酪農家の持っている「知識」を見過ごしてしまった(「欠如」していると思った)ために実情把握が遅れてしまったことが主題になっていますが、今回の事件は(まだ事実関係ははっきりしていませんが)、より広く深い問題のような気がして成りません。これ以上、私の生半可なコメントは避けますが、日本と抱えている問題が似ているだけに、注目していていくべき事件だと思います。

■健康・医療関連でも、私達の生活と大きく関わってくるようなニュースがいくつかありました。特にプラスティックの件に関しては、一面にも取り上げられたほどで、もしかしたら大きな動きにつながってくるかもしれません。

■ビジネス面では、New Scientist紙のホームページにあったDVDの規格のニュースが目をひきました。インペリアル・カレッジの研究者の言葉として、開発しているとはいえ(規格の問題は)「我々に決定権はない。ハリウッドが決めるんだよ」というコメントが惹かれていました。先日、東芝とソニーの規格の競争が英紙でも伝えられていましたが、それとの関連はどうなっていくのでしょうか。

■ちなみに、私は次週から2~3週間、このメルマガの編集協力ができません。このセクションを意識して読んでくださっている方々がどれだけいらっしゃるかわかりませんが、あらかじめご了承ください。(岡橋)


動物権利
●Scientists told: reduce animal experiments
http://education.guardian.co.uk/businessofresearch/story/0,9860,1491676,00.html

▼the Nuffied Council on Bioethicsによる動物実験に関する二年がかりの調査レポートが発表される。短期間で動物実験を中止することは非現実的だといいつつも、動物実験の替わりになるような方法も模索していくこと、動物実験に関する情報開示を進めることなどを提言。

●Scientists dismayed by BA animal ban
http://www.guardian.co.uk/animalrights/story/0,11917,1494462,00.html

▼土曜日のガーディアン紙の一面記事。ブリティッシュ航空(通称BA)が、実験用の動物の輸送を禁止することに関して、政府や科学者が懸念をしめしている模様。

●Two sides to animal rights story
http://www.guardian.co.uk/animalrights/story/0,11917,1494914,00.html

▼先日、サイコムニュースでも紹介した、動物権利・反生体解剖の人たちの行き過ぎた例を示した記事がありましたが、その後、記事がかならずしも正確ではなかったことが話題になっている。ここでは、問題となった記事を書いた記者が、経緯を書いている。また、この件に関しては、Europeans for Medical Progress (EMP)が主催したメディアの責任を考える討論会(@ロンドン)でも議論された。

原子力
●Plutonium was left lying in a puddle on the floor for nine months
http://news.independent.co.uk/uk/environment/story.jsp?story=642357

▼'Complacency' led to the spillage of 83,000 litres of highly radioactive nuclear liquor at the Thorp reprocessing plant in Cumbria. Francis Elliott on a scandal that could destroy government plans for a second nuclear age

●Revealed: huge Sellafield leak went undetected for 9 months
http://news.independent.co.uk/uk/environment/story.jsp?story=642358

▼この4月に、シェラフィールドにある再処理工場で、83000リットルの燃料漏れが起きていることがわかった。長くて9ヶ月も発見されずにいたという。なおかつ、選挙まえだったので、事件がメディアにでてくるのが遅くなったという(!)。さらに、閉鎖にともなう経費などに5億ポンド(約100億円!!)の税金が使われる予定。ブレア政権のエネルギー政策にも影響をあたえる可能性もあるかもしれません。

大学・研究生活
●Anti-cheat software turned on academe
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2022165

▼学生のカンニング(cheats)を防ぐために使われているソフトウェアが、学術誌にも使われるかもしれない。

●Minister downplays potential course cuts
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2022172

▼化学の学部の閉鎖などは、国家的な問題にはなっていないのではないか。と新しい高等教育大臣が語る。

健康・医療
●Toxin in plastics harming unborn boys: Scientists say chemicals have gender
bending effect
http://www.guardian.co.uk/medicine/story/0,11381,1493570,00.html

●'Gender-bending' chemicals found to 'feminise' boys
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7440

▼ガーディアン紙では一面記事。プラスティックや化粧品などに普通に含まれている「フタラート(phthalate)」という物質が、男の赤ん坊の成育を阻害し、彼らをよりフェミニンにして、生殖機能などを低下させることは研究者の間で知られていましたが、今回のアメリカでの研究ではそれが、現在の日常にあるようなレベルでも起こりうることを示したということで衝撃的なようです。(もとの論文は、Environmental Health Perspectives)

●Exposed: how cigarette firms target women
http://news.independent.co.uk/uk/health_medical/story.jsp?story=642351

▼タバコ産業が、1970年代から1990年代にかけて、女性の喫煙者を増やすための研究を行っていたことをしてきたことがAddictionという雑誌の論文で指摘される。女性向けのブランドづくりや宣伝、製品開発も。今後20年で女性の喫煙者は2倍になるといわれている。

●Media pluckers strike again
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1492076,00.html

▼IVF clinics that take on difficult cases are being unfairly compared to those with a selective door policy, says Vivienne Parry
▼体外受精(IVF)の病院ごとの成功率をしめした報告書が発表される。記事では、全部の数字がでていないと思われるので、一概には比べられないことを指摘している。

●Taking the pill could reduce women's libido, US scientists claim
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1492599,00.html

▼アメリカの科学者が、避妊用ピルが、女性のリビドーを減退させていると主張。そういった副作用は認められているが、服用をやめるほどのことがあるわけではないという医者の声も。

●New fears over cholesterol drug
http://education.guardian.co.uk/businessofresearch/story/0,9860,1490995,00.html

▼アストラゼナカ社のCrestorというコレステロールを下げる薬が、他の薬よりも二倍近い副作用を起こすという研究結果。

●Superbug death sparks warning
http://www.guardian.co.uk/medicine/story/0,11381,1491373,00.html

ビジネス
●Nanoscale light tricks promise huge DVD storage (New Scientist)
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7432

▼Iomega社が、現在のDVDの40倍から100倍のデータを収められる技術についてのパテント。ロンドンのインペルアル・カレッジでも同じような技術開発が進んでいる。DVDの新規格については東芝とソニーの間で話し合いがすすんでいるということですが。

温暖化
●G8 will not set targets to cut global warming
http://news.independent.co.uk/world/environment/story.jsp?story=642008

▼G8の会議では原子力については議論される予定だが、温暖化をとめるためのターゲットを定めたりする予定はない模様。

●Owners of gas-guzzling cars to be hit by five-fold tax increase
http://news.independent.co.uk/uk/transport/story.jsp?story=642355

▼ガソリンを多く消費するBMWやレンジ・ローバーなどの車の所有者の道路税が五倍になる可能性。

その他
●Robot to explore buried ice lake
http://education.guardian.co.uk/higher/sciences/story/0,12243,1490331,00.html

▼南極下の湖を英科学者によるロボットが探査。より大きいVostok湖ではなく、Ellsworth湖でおこなわれる。

●The shocking truth about sex in Britain's primary schools
http://education.independent.co.uk/news/story.jsp?story=642340

▼インデペンデント紙の調査で、英国の10歳以下の子どもたちの間でも、「ふしだらな(promiscuous)」行為や言動が広がっていることが明らかになる。政府も学校のクラスに「尊敬の文化(culture of respect)」を取り戻そうと躍起になっているようですが。。。

●Brain-boosting pinta launched
http://www.guardian.co.uk/food/Story/0,2763,1492400,00.html

▼集中力や学習能力など脳の働きに良いとされる、オメガ3(魚や亜麻に多く含まれる)入りの牛乳を国内大手が発売。

2005-05-28 21:45:38

鶴見俊輔「期待と回想」上巻

テーマ:書評

対談本だから、読みやすいのがいい。
どこから読んでも、味のある本である。ということもあって、いつも虫食い読みだから、読むごとに発見がある。


15歳でアメリカに渡らされ、かの有名なクワイン、カルナップなど(といいつつ読んだことはない)から直接学んだにもかかわらず、そこに落ち着かなかったというか、それらと競争しようとしていたところがすごい。「タヌキを信仰している」といっているところもすごい。


哲学から漫画、日本史から世界史、自分の家族の話から交友のあった知人たちの話しまで、縦横無尽に話しがでてくる。ヨーグルトも市民運動だとか、植木等は親ゆずりの真面目な性格なのだとか、「へえ」という話しもたくさんでてくる。


鶴見さんの思想に関しては、プラグマティズム、アナキズム、漫画、反射などのキーワードがあるようなのだが、繰り返し言っていることをまとめれば、最後のところまで「ノー」を手放さないってことなのだと思った。プラグマティズムにも、日本という国にも、マルクス主義にも、キリスト教にも、ぎりぎりまで寄り添っているようでいて、最後のところで信じきるということをしない。正義と真理が一緒になっていたら何かがおかしいと思うという感覚。この、ぎりぎりまで寄り添うっていうのがなかなかできないのだなと思う。


そして、なによりも、哲学と彼自分の感覚が離れていないというところに感動する。~学だとか、~論だとかに溺れてしまっている自分が恥ずかしくなってくる。


こうなってくると、鶴見さんに小熊英二さんと上野千鶴子さんがインタビューして書かれたというあの本は、まるでとっておきのデザートのようだ。もちろん「期待と回想」の下巻も読みたいなぁ。

2005-05-26 04:51:04

テート・モダーン再訪

テーマ:Arts

先週末はテート・モダーンにいった。
フリーダ・カーロの特別展は六月からだったので、見れなかったのだが、
常設展をじっくりと見てまわった。


はじめて、テート・モダーンにいったのは2001年の春だったと思う。
元発電所の建物が高い評価を受けていたのもあったが、印象に残ったのは作品がテーマ別に並べられ、テーマにも各作品にも丁寧な説明がついていたことだ。
私は英語の勉強だと思って読み始めたのだが、かなり面白く、なんだかよくわからない「アート」が身近になった気がした。
アート愛好家にとっては、ミュージアムによるテーマや作品の解釈が作品が持つ本来の豊かさを限定させていしまっているという批判もあるようだが、私はテート・モダーンの思い切りを評価している。


しかし、一番衝撃的だったのは、Century Cityという特別展の一環で日本の写真家が立ち上げた「プロボーク」という雑誌の創刊の言葉がすべて展示され、一室を埋めていたことである(ちなみに横の一室には、ヨーコ・オノの「女性上位万歳」という歌がかかりっぱなしであった)。ちょっとくさいがその時にメモった一説を紹介する。


PROVOKE  知の荒廃 多木浩二

「人間は自分がどのような自己完成へ向おうとこの世界にいる限りダメであることを知り、自己とは自己にさしむけた意識のまえに空虚で自分のつくりだした世界によって致命的な損傷をうけていることを知るのである。・・・・」


から延々と日本語のつらなりが展示されているのである。気づかなかっただけかもしれないが、見たところ、英訳もないので、僕が読むために展示してくれているのかと思った程だ。今みると、少し分析的にみてしまっている自分がいるが、やっぱかっちょいい!


いま、ググってみたところ、慶應の岡原先生のHPに説明があった。
http://oka.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/pukiwiki.php?Provoke

2005-05-24 23:34:43

英科学:クローン、動物権利、オープンアクセス

テーマ:科学技術と社会

先週の目についた科学ニュース。

日曜日の夜に下宿先に帰ってきたため、サイコム・ニュースに間に合わなかった。。。


クローンのニュースは、一面になったり、ガーディアン紙ではComment&Analysisで議論されていたり、とメディアではかなり大きく扱われている。


ニューキャッスルには、何度かブログでも触れたことのあるPEALSという生命科学の倫理面や政策面を重視した研究センターがあるのだが(NanoJury UKにも関わることになっている)、そこで働く人たち(社会学や哲学をバックグランドとする人たちもいる)の気持ちはどうなものなのかなぁと思う。推進派でもなく、反対派でもなく・・・想像するだけで難しい役回りだと思う。


科学コミュニケーション
●Now we're going public: Are you worried about the rise of nanotech? Mark
Welland explains how NanoJury UK will give ordinary people their say
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1486817,00.html

▼ナノテクノロジーに関する科学コミュニケーションを進めるNanoJury UKが発足。市民レベルの議論だけでなく、研究者内でのセミナーも多く行っていくということです。

クローン
●UK breakthrough as human embryo cloned
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1488397,00.html

▼ニューキャッスル大学の科学者が、ヒト胚のクローンに成功した。

オープンアクセス
●Britain a leader in making research available on web
http://education.guardian.co.uk/businessofresearch/story/0,9860,1485744,00.html

▼英国の学術研究情報が得られるネット上のアーカイブ数は、米国に次ぎ2位。人口比にすると、スウェーデン1位、オランダ1位。

高等教育
●Kelly questions 50% pledge
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2021912

▼ケリー教育省が若者の50%に高等教育を受けさせるという労働党の公約の可能性に疑念を示す。

●Medical schools damaged by government funding policy, say doctors
http://www.researchfortnight.co.uk/getPage.cfm?pagename=ResearchDay&lang=EN&type=UK&Publication=Research%20Day%20UK&Issue=2316

▼政府の予算配分が、メディカル・スクールの教育とトレーニングに悪影響をあたえていると医師達が警告。

動物の権利
●Oxford animal lab to be built off-site
http://education.guardian.co.uk/businessofresearch/story/0,9860,1487661,00.html

▼オックスフォード大学の新しい動物研究施設は、オックスフォード郊外の秘密の場所か?大学はコメントを拒否。

●V-cs go on high alert on animal terrorism
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2021908

▼他の大学も動物権利過激派の攻撃からの対策が必要になってきているようです。

環境
●Oxford gets funding boost for climate change research
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1486873,00.html

2005-05-21 08:01:06

ナノテクと市民:NanoJury UKが発足!

テーマ:科学技術と社会

英ガーディアン紙の今日の一面は、ヒト胚クローンがでかでかとでていましたが、そっちはいろいろ報道されると思うので、木曜日の記事から「目のツケドコロ」をピックアップ。ガーディアン紙は木曜日はLifeという科学技術専門の別冊(別紙)がついてくるのだが、そのなかでNanoJury UKなるものが発足するという記事があった。記事は、ナノテクノロジーの教授であるマーク・ウェランドが書いている。


●Now we're going public: Are you worried about the rise of nanotech? Mark Welland explains how NanoJury UK will give ordinary people their say
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1486817,00.html


ナノ・ジュリィとは何か。ジュリィは、陪審制度であるから、市民がナノテクノロジーに関する社会への影響や日常生活における不安などを、訴えたり、議論できる場所であると思われる。科学技術に関する、こうした試みはコンセンサス会議や市民陪審(Citizen Jury)など、日本を含め各国で実践されてきている。

イギリスでは、遺伝子組み換え技術に関して議論が錯綜したことを踏まえ、政府も科学界も、新しい先端科学技術に関しては、「科学と社会」の問題に目をむけたり「国民との対話」が必要であるというようになってきている(実際に、『GM Nation』という国民との対話プロジェクトを実施したりしている)。イギリスのシンクタンクである「Demos」も去年だしたレポートのなかで、遺伝子組み換え技術の例から学び、ナノテクノロジーに関しては、より開かれたボトムアップの国民レベルでの議論をしていかなくてはならないといっている。まさに、そうした流れでこのNano Juryがでてきたと思われる。


Nano Jury UKの体制のなかで、特に注目したいのが、多くの組織が関係していることである。まず、この記事を書いているウェランド氏のいるケンブリッジ大学のInterdisciplinary Research Collaboration (IRC) in Nanotechnology。そして、環境保護活動で名高いグリーンピース(最近も、レンジ・ローバーの新車を「Climate Criminal」として工場にのりこんだりして、新聞をにぎわせている)。また、この記事がでているガーディアン紙(のとくにLifeという毎週木曜にでる科学技術専門の特集号)も協力している。最後に、ニューキャッスル大学のPEALS(生命科学の政策と倫理と研究を総合的に研究するところで、多くの科学コミュニケーション活動を行っている)も絡んでいる。これだけ骨のある組織が集まって、本当にいっしょにやっていけるのかと不安にもなるが、気合がはいっていることがよくわかる。まさに、「横断する知」が実践されようとしている感じがする。ちなみに、記事では、社会科学者のRobert Doubledayがフルタイムで参加することになっていることも強調されている。


そして、この記事では、NanoJuryの主眼である市民レベルでのディベートもさることながら、IRCの研究者達や組織内での議論やセミナーを積極的に行っていくことにも触れている。曰く、


Having such seminars does not simply educate about specific issues, it educates about how issues are raised and publicised, the importance of public engagement and the importance of establishing scientific transparency.


また、市民とのコミュニケーションにしても、科学フェスティバルで話した経験をひきながら、イベントに参加する市民は関心があって、ただ近くに住んでいるからだったりするのではないかといっている。つまり、グリーンピースや全国紙との連携によって、より広いコミュニケーションを図ろうとしているのだ。

最後に、このNano Juryによってナノテクノロジーが、究極的に望まれないものだとされても、それは私達が、責任ある未来のために科学、技術と市民(公衆)がどのように協力しあっていけるのかということを学べるので、十分に意味のあることだ(下手な訳なので、下に原文も貼り付けておきます)、と述べている。政治家的な発言だが、当のナノテクの研究者がここまで言うだけでもかなり勇気のいることだと思う。


Even if the jury eventually rules that nanotechnology is, ultimately, undesirable, the lessons we will have learned about how science, technology and public understanding can work together for a responsible future will be very valuable.


さて、どうなっていくのでしょうか。

2005-05-20 18:45:00

ドキュメンタリーと演劇の類似性

テーマ:映画

 もうひとつ、下村さんのHPより。


下村健一の「目のツケドコロ」

●同時出版!ドキュメンタリーの「力」と「嘘」

 http://www.tbs.co.jp/radio/np/eye/050416.html


ドキュメンタリーについては、前にも書いたことがあったが、「ドキュメンタリーの力」と「ドキュメンタリーは嘘をつく」という本を書いたお二人の話を聞いていて、「映像の観劇化」がすすんでいるのではないかということを思いついた。ただの思いつきなので、映像の観劇化というわかりにくい表現を使っているけれど、ドキュメンタリーにしろニュースにしろ、映像を演劇とかある種のパフォーマンスとしてみるという意識が高まっているのではないか、というぐらいの意味である。


それこそ、現在、多くの人たちは映像に「編集」や「やらせ」が介在しているだろうことをしっている。しかし、このドキュメンタリーの作り手たちは、映像に作り手の意図や意識が組み込まれてしまうことにもっと積極的な意味を見出そうしているように思う。そのために、あえて偽善的なそぶり(ドキュメンタリーの「力」)をみせたり、偽悪的なそぶり(ドキュメンタリーの「嘘」)をみせたりしているのだろう。 しかし、「うそ」も「ほんと」もまざりあいながら、作り手と受け手の想像力がぶつかりあう装置として、古来から受け継がれてきたものに、演劇やダンスなどの「パフォーマンス」がある。とくに、演劇は「昔ながらのドキュメンタリー」という事ができるかもしれない。


もちろん、例えばテレビや映画などで視る「映像」と劇場で観る「演劇」は、コミュニケーションの仕方が根本的に異なる。しかし、この二つを並べて考えることは、後者の特に西洋社会での実践と批評の歴史が長く、そして深いだけに、多くのヒントと考えるための枠組みを提供してくれると思う。もちろん、日本の演劇や古典芸能にも多くのヒントが隠されているはずだ(平田オリザ「リアルだけが生き延びる」とか、中沢新一「精霊の王」なんかはその例にあたるかもしれない)。


一例をあげるのならば、演劇論にはブレヒトのいう「異化効果」というものがある。「異化」という言葉は、それこそ現在大学でドキュメンタリーのつくり方などを教えているSさんの話ではじめて意識したのだが、私はブレヒトの「異化効果Verfremdungseffekt;alienation; estrangement)」からきているのではないかと勝手に思っている。


ブレヒトは、演劇におけるいわゆる「リアリズム演劇」を否定したといわれている。彼の舞台では、演劇の作り出す意味と演じる役者を完全には一致させず、「異化効果」を仕込むことによって、役者自身(actor)と役柄(character)とそれをあわせた舞台(staging)間に楔を打ち込み、意識化させていたという(異化効果はV-effectともいわれる)。演劇でなくとも、この手法はマンガでも多用されていると思う(漫画家がでてきちゃったりするやつ)。 これは、ドキュメンタリーでも同じことである。森さんは「フィクショナライズ」という言葉を使っていたが(演劇論の専門用語だと思ってた!)、その過程をより意識するために、作り手の意図をはっきり見せたり、作り手を映像に登場させるといったところは、まさに「異化効果」ということができると思う。


おもしろいのは、ブレヒトは、この「異化効果」を中国の役者(Mei Lanfang)を観たときに思いついたという話。「演劇=現実」という方程式を解体している、Meiのパフォーマンスを観て、ブレヒトは「非幻想的な演劇」の重要性に気づいたのだという。East meets Westがこんなところにあるのですね。そして、この「異化効果」を少し乱暴にまとめると、リアリズムにあえてヒビを入れることによって、より「リアル」さが際立ってくるということだと思う。演劇にしろ、ドキュメンタリーにしろ、その他、日常にあふれれさまざまなリアルの演出にしろ、リアリズムとフィクションの間の曖昧模糊とした何か(それは「力」でもあり「嘘」でもある)、私達を惹きつけるものがあるのだろう。そのとき、私達はたんなる観客になる以上のものになる(ボールは、SpectatorからSpect-actorという)のだろう。


 *平田オリザ「演技と演出」にリアリズム演劇のグルであるスタニスラフスキーとブレヒトについてのわかりやすい記述がある。同著者による「リアルだけが生き延びる」も好著。


*David Boyle "Authenticity: Brnds, fakes, spin and the lust for real life"が、リアルとフェイクについてさまざまな例を引いて説明している。学術書ではないが、かなりおもしろい(日本語訳もでてほしい)。最後に「わび-さび文化」がこれからのニュー・リアリストの基本になってきているといっているところが、日本人としては嬉しい(という私は、わび・さびの意味についてこの本ではじめて知った・・・)。

2005-05-20 18:40:22

イラク戦争をふつうの人の視点で描く「Little Birds」

テーマ:映画

下村さんの「目のツケドコロ」で『Littel Birds』という映画が紹介されていた。


GW必見!イラク映画『Little Birds』上映中
http://www.tbs.co.jp/radio/np/eye/050430.html


かなり観たい。(けど、いまは無理・・・)


渋谷のUplinkでこのお二人のトークイベントもあるらしいです。Uplinkは、「うたかた」を観にいったことがありますが、小さいけれど、かなりくつろいだ感じの映画館でした。いろんなデザイン・チェアーがありました。イベントも盛り上がりそう。下村さんとお話ししたいなぁ。


『Little Birds 公開記念トークイベント~インディペンデント・ジャーナリズムの未来~』
http://www.uplink.co.jp/factory/log/000462.html


*自主映画会のために英語版もあるということなので、うちの大学のアーツ・センターで上映できないかメールしてみようかな。英国だと難しいかもしれないけど、アーツ・センターは「In this World」とか、「Osama」とかの映画も上映しているから、もしかしたら反応してくれるかもしれない。ものは試し。

2005-05-17 08:00:30

知識人は絶滅種なのか?

テーマ:知識政治

私の所属する社会学部が、Annual Sociology Debateなるものを開催した。そんなものやってたのかと思っていたら、今年が第一回目だという。そして、第一回目のテーマは、"Is the Intellectual an Endangered Species(インテレクチャルは絶滅種なのか?)"。討論者は、最近それぞれが「インテレクチャル」についての本を書いた、我らがスティーブ・フラー社会学部教授と、ケント大学社会学部教授のフランク・フレディ。


Steve Fuller. 2005. The Intellectual: the positive power of negative thinking...
Frank Fredi. 2004. Where Have All the Intellectuals Gone?: Confrinting 21st Century Philistinism.


討論会は、二人がそれぞれ20分~25分ぐらいずつしゃべり、その後に会場からの質問に二人が答えるという形式だった。ぱっと聞くと(とくにインテリというすこし皮肉のこもったカタカナ用語を使用する国からやってきた私にとっては)、インテリによる、インテリのための、インテリ話という完全に自己完結した会なのかと思ってしまいがちだが、かならずしもそういうことではなく、「知識社会」といわれる現代において、知識人の存在にはどんな意味があるのか、あるいはもっと広い意味での知識って何なのか、という問題とつながってくるのである。だから、インテレクチャルといっても大学に勤める人や科学者、テレビや雑誌にでてくるひとだけでなく、もっと広い意味で考えたほうがいいようだ(フラーの本では、より理念型として扱われているようだが)。けれど、やっぱり大学の人たちばかりが集まっており、当事者性がたかいので、討論も「(大学人である)我々は~(We...)」という話し方が増えていったのも確かなのではあるが。。。


私自身にとっても、暗い未来が予見されている(最近の内田先生のブログでも日本のインテレクチャルの悲惨な現状についての一事例が報告されていた。またまたTBさせていただく。)大学や知識人社会とどう付き合っていくのか(大学人になるとしても、大学外にいくとしても)という差し迫った問題でもあるので、耳をダンボにして聞き入った。会場も満員で200人以上いたかもしれない。


フランク・フレディの話しは、インテレクチャルの世界が、いかに"culture of flattery(お世辞の文化)"であり、"conformism(体制順応)"にまみれており、現世的であるかということであった。よくいわれる大学の市場化もしかり、人々を小バカにしたような選挙活動やマスメディアもしかり、子供だましの科学館(ボタンを押しているだけ)もしかり・・・、ということだそうだ。つまり、本の副題にもあるように、ここまではびこった"philistinism(俗物根性)"とどう立ち向かっていくのかということを問題としているようだった。私の感想としては、フレディは、どうやら大いなるインテレクチャルの復旧(復活とはいわないでおく)を呼びかけているようなのだけど、それにしてはインテレクチャル社会の負の側面を強調しすぎだと思った。それは現実なのだろうけど、インテレクチャル悲観論だけであって、ビジョンに欠けるといったところ。でも、さすがに頭の回転と受け答えはすごいと思った。


それをうけた、スティーブ・フラーの話しは、「インテレクチャルの未来は明るいのではないか。でも、アカデミアの中では逆だけどね。」という一言からはじまり、プロタゴラスだって、ボルテールだって、・・・・サルトルだって、マルクスだって、歴史上に名を成して、社会に影響をあたえてきたインテレクチャルはみんなアカデミアとは折り合いが悪かったじゃないかい!という話しや、20世紀の後半になっていままでにないくらい多くの人々が大学を卒業して、アカデミアの外で活躍しているじゃないか!という話を出してきて、アカデミズム悲観論を一蹴する(シニシズムは湛えたままだが)。その上で、インテレクチャルの重要性とは何かという核心に進んでいく。特に以下の二点のことについていっていたと思う。


まず、一点は、インテレクチャルは、自分の領域だけの学術雑誌や大学の授業だけにとらわれずに、さまざまな言葉をつかって、さまざまなメディアを通して、さまざまなテキストで、さまざまな長さで、さまざまな理由のために発言をしていかなくてはならないという主張をしていた。「scholatism(スコラ学的な内向きのメンタリティのことだと思う)」に陥ったり、ギルド(組合)を作ったりしないで、できるだけ多くの人達に自分が生産した知識をとどける。つまり、(今回はこの言葉を使っていなかったが)パブリック・グッド(公益)のために仕事をしていかなくてはならないということであった。


そして二つ目は、アカデミアのテニュア(終身ポストのこと)の意味について。フラーいわく、アカデミズムの歴史をひもとけば「テニュア」ができたのは、"taken-for-granted(当然だと思われている)"な事柄を、インテレクチャルが不断に批判していくことを保証するためにできたのだという。つまり、インテレクチャルがテニュアにまもられながら、硬直した保守的な考え方やシステムを常に批判していく、そういう機能が期待されていたというのだ。大学は権力の手先と考えている人にはちょっとおかしく思えるかもしれないが、フラーがいうには、大学は、批判精神(クリティシズム)を担保する場所として歴史上存在してきたというのだ。残念ながら、今のテニュア制度はそういう風には、働いていないことが多いのだという。


これだけではなんだかよく解らないが、私なりにまとめると、フラーが言いたかったのは、インテレクチャルは、パブリックのために(そういう意味では市場化には賛成していると思う)働き、そして批判精神の義務の遂行を矜持としなくてはならないという事だったのだと思う。


後半の、質疑応答では、フロアーからインテレクチャルの「市場化」(大学の学部が企業にスポンサーされていることとか)について、学術誌に論文を載せること(パブリッシュ)について、「犠牲」について、「マスマディア」との関係について、などの質問がでて、面白いやりとりが展開された。しかし、あまり覚えていない(聞き取れないところもあった)ので、ここもフラーが応答として述べた二点だけを記憶と本に頼りながらまとめてみる。


一つは、インテレクチャルのアカデミック・フリーダムを考えるときに、"freedom of teach(教育の自由)"だけでなく学生の"freedom of learn(勉学の自由)"もセットで考えなければならないという主張。これは、フラーが「大学」をインテレクチャルの牙城として一押しにする理由でもあるらしいのだが、「研究」だけでなく「教育」にも重点をおいていかなければ、パブリック・グッドにつながっていかないということらしい。つまり、(私の勝手な解釈になってしまうかもしれないが)インテレクチャルにもとめられているのは、「知識の生産」だけではなく、「知識の分配」であり、それが「教育」の重要性につながってくる。具体的には、大学院生には知識の生産の仕方だけでなく、つまり教育方法(つまり知識の分配の技術)も教えていかなくてはならないのではないか、というコメントをしていた。


少し話しがずれてしまうが、この線で考えてみると、日本の科学界・教育界がやろうとしているらしい「科学コミュニケーター」の育成というのが少し的をはずしたプロジェクトなんじゃないかと思えてくる。もちろん、科学ジャーナリストや科学コミュニケーションを専門とする仕事はもとめられるようになってきているのかもしれない。しかし、だからといって科学コミュニケーションという専門を学ばせるのではなく(そもそも科学コミュニケーションの専門なんて無いし)、もとからあるそれぞれの領域のなかで教育の仕方なりコミュニケーションの仕方なりという、知識の分配の方法を教えていくのが本当なんじゃないかということだ。だからこそ、自然科学でいえば、技術のスピンオフばかりを考えてないで、教育面も加味したカリキュラムを制定すべきだというのがフラーの主張だったはず。人文系だって、教職をもっと取りやすくしたり、教える機会をもっとあたえたりすればいい(これは私見)。そうすることで、大学や研究職にありつけたひとも、そうでないひとも、知識の分配をしていく。それが、知識社会の良好な循環をもたらすのではないか(governance of science)、というのがフラーの主張の私なりのまとめである。


話しをもとに戻して、もう一つ印象に残ったのは、インテレクチャルの仕事が楽になるはずがないということ(フラーは、「リスキーな仕事だ」という言い方をしていた)。そうだとは思っていたけれど、まともに言われると「それじゃ、ほとんど修行僧に成れと言うことなのか・・・」と思った。しかし、少なくとも必要とされ存在を認められていれば、修行僧としても幸せなのだから、そのための戦略と信条を持ってやっていかなければならない、といいたいのだろう。おお、なんてロックンロールな仕事なんだ!!


でもね・・・。・・・は想像にお任せいたします。

2005-05-16 20:49:34

英研究ニュース:グリーン・エネルギー、進化心理学、脂肪酸、等

テーマ:科学技術と社会

サイコム・ニュース(メルマガに登録していただけるとうれしいです)のためにまとめた先週の英国科学ニュース。サイコムでは、研究ニュースとしているけれど、科学一般、知識社会一般の話しを広く拾っているつもり。それでも、すこし個人的な見解がはいってきてしまうのはしょうがないかと。自主的に勉強のつもりでやっているわけだし。。。


粥川さんがご自身の日記で当ブログを紹介してくださった(ありがとうございます!)。さすがに人気サイトだけあって、カウンターも通常の四倍になっています(粥川ファンのみなさん、はじめまして)。粥川さんは自分は「嫌われ者」と卑下しているけれど、議論を巻き起こす知識量と経験と気力があるところがすごいところで、それでこそインテレクチャルの証なのだと思う(Steve FullerのThe Intellectualを読んでいるところなので、「インテレクチャル」という言葉を使っている。これについては別エントリーする予定)。


以下、ニュースのまとめ。

▼先週は、晴れた日が続きました(私がいるMidland地方だけかもしれませんが)。でも、英国はまだまだ寒いです。

▼今回も、栄養とこどもの行動のつながりについての研究の話しがでてきました。これから、さらに研究が進むと思われますが(そして英国の食状況がもっとよくなるといいのですが)、こういう記事でよく出てくるのが、脂肪酸(Acid oil)です。脳の働きにとって重要なこの栄養が英国の人たちには足りてないそうなのです。日本人は魚をたくさんたべるので、大丈夫なのでしょうか。実は、高価な魚の摂取が少なくなっている私も脂肪酸が豊富な亜麻仁(ゴマに似ている)を買ってたべたりしています。頭の働きがよくなることを期待して。。。

▼博士が100人いる村という話もありましたが、心の衛生は研究者のみならず現代人の一番の関心ごとかもしれません。「Healing Without Freud or Prozac(フロイトにもプロザックにも頼らない癒し)」という本は、100万部以上売れているベストセラーであるとか、著者が医師・科学者であるというのもありますが、「国境なき医師団」として紛争地での治療経験から編み出されたというところに興味がいきます。ちなみにここでも、脂肪酸(Omega3)がでてきます。

▼大学関係者が主な読者であるTHES紙には、気鋭の進化心理学者の新著に関連した記事がありました。暴力が遺伝であるという主張は、本を読まないうちから大きな議論を起こしそうですが、入念に集められたデータも見てみたい気がします。前回のコメントでも述べましたが、勢いを増しつつある遺伝決定論や進化心理学などとどう付き合っていくのか、あらゆる分野の学者にとって大きな問題になってきそうです。誠実でオープンな議論に発展していってほしいものです。

▼来週には、政府の環境アドバイザーがブレア首相に風力などのグリーン・エネルギーをすすめる報告をする予定となっています。ガーディアン紙を中心にみているからかもしれないですが、他にも環境問題に関連した研究ニュースがありました。原子力エネルギーにもどる様子を見せているブレア首相がどう対応するのか、来週の一面になるかもしれません。

▼他には、大学の現状のニュースや代替エネルギーの問題、動物権利関連、北海の魚、温暖化否定派のデータの怪しさなどを少しずつまとめてあります。皆さんからの情報提供やご意見もお待ちしています。(岡橋)

研究ニュース

科学者
●Theory of the killer-instinct in our genes dismissed as 'bullshit'
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2021842

▼アメリカの気鋭の進化心理学者のDavid Bussが、今月末に「The Murder Next Door: Why the Mind is Designed to Kill(お隣の殺人者:何故、心は殺すようにデザインされているのか)」という本を出版する。マンチェスター大学の心理学者の は「ブー*ット」、スティーブン・ローズも「進化学的ファンタジー」とコメントしている。このTHES紙には、Buss氏のインタビューも二面を割いて掲載され(要購読)、議論がすでに沸騰していることを感じさせます。(アメリカの状況はどうなのでしょうか。>舘野さん)

●The stress buster: His ground-breaking book about coping with tension has sold more than a million copies. Here David Servan-Schreiber tells Harriet Griffey how to relax
http://www.guardian.co.uk/g2/story/0,,1480217,00.html

▼世界で100万部以上も売れている"Healing Without Freud or Prozac(フロイトにもプロザックにも頼らない癒し)"の著者(医師であり神経科学者でもある)のインタビュー。よくありがちな本ではなさそうです。「ハート・コーヒーレンス」と呼ばれる彼の方法は、「国境なき医師団」の一員として紛争地域での治療にあたった経験が生かされているようです。

●'This is how science is done': Nobel physicist Richard Feynman wrote hundreds of inspiring letters, often to strangers. Below, his daughter Michelle Feynman introduces an edited selection - published here for the first time

▼ノーベル物理学賞受賞者のリチャード・ファイマンが書いた、手紙が、娘によって公開される。同じ分野の人たちではなく、様々な分野の人たちに書いていたそうです。

大学・教育
●Star staff cosseted in bid to up RAE rating
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2021834

▼2008年の大学評価にむけて、一流の研究者が厚遇されている模様を伝えている。教育オンリーの契約が増えたり、評価の仕方に問題があったり、ということもあるようです。いくつかの大学は自前の評価を準備している模様。

●Number crunching: Universities see data provision as a chore, but they must take care with the figures or face the consequences, warns Rosa Scoble
http://education.guardian.co.uk/higher/comment/story/0,9828,1482406,00.html

▼Higher Education Statistics Agency (Hesa)に関してのコメント。1993年に設立されたこの機関の出すデータは、大学関係者の間でかなり使われるようになっている。しかし、そのデータを誰が、どこで、どのように使うのか、そしてその結果がどうなったのか、ということに注意を払わなければならないと忠告している。

●Scientists at Oxford fear lab closures
http://www.thes.co.uk/current_edition/story.aspx?story_id=2021820

▼オックスフォード大学の物理と化学の学部が資金繰りに苦難している。研究スペースの縮小や人員削減もありうるそうです。

●University heads reject science rescue plans
http://education.guardian.co.uk/higher/sciences/story/0,12243,1483629,00.html

▼先日、物理や化学の学部の縮小を危惧した議員たちが、地域ごとの協力体制の設立を提案したが、大学からは否定的にみられているようです。議員達の提案が問題の解決にはならないといっているが、中央からのコントロールを嫌う傾向もあるらしい。

●Exam results reveal gender gulf in schools: Study proves boys lag far behind girls nationwide
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,6903,1484284,00.html

▼男子生徒の成績が女子生徒の成績より、大幅に劣っているという驚きのデータがでたことについて。

健康
●Why it's time we faced fats
http://www.guardian.co.uk/life/feature/story/0,13026,1476219,00.html

▼栄養と行動や学習障害とのつながりについての新しい研究がはじまることについて、いままでの研究(オランダの刑務所、等)などをまとめつつ書いている。脂肪酸(Omega 3とか)が1つの解決法らしい。

●£74m for research into new treatments
http://education.guardian.co.uk/higher/sciences/story/0,12243,1481730,00.html

▼患者への新しい治療のための研究に医療系チャリティーと政府の機関が7400万ポンドを拠出。最新の分子生物学の成果を、病気の早期発見や治療の向上に生かすのが目的。

動物権利
●'Hundreds shouted at me, roll over and die': Science gave a Parkinson's victim new life but animal rights activists called him a Nazi
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,6903,1484312,00.html

▼動物実験のおかげで、パーキンソン病の先進的な治療を受けることができ人生が変わった人が、パブリック・ミーティングで動物権利活動家から非難を浴びたことなどについて。

環境
●Junk science: David Bellamy's inaccurate and selective figures on glacier shrinkage are a boon to climate change deniers
http://education.guardian.co.uk/higher/sciences/story/0,,1480375,00.html

▼植物学者のBellamy博士が、New Scientist紙上で、「世界の氷河は後退しているのではなく、成長している」と述べたことが、温暖化を否定する人たちに引用されるようになっているが、その出所がとても怪しいということが書かれている。

●North Sea fish on the move to cooler waters
http://www.guardian.co.uk/life/science/story/0,12996,1483209,00.html

▼北海の魚が北に生息地を移している。研究者は温暖化の影響といっている。

●Wave, wind, sun and tide is a powerful mix
http://www.guardian.co.uk/life/opinion/story/0,12981,1481539,00.html

▼オックスフォード大学での研究で、代替エネルギーの可能性を計算。場所や技術の組み合わせで、大きな違いがでることを示しているようです。

●Government report gives new wind to green energy
http://news.independent.co.uk/uk/environment/story.jsp?story=638548

▼政府の公式の環境アドバイザーが、原子力よりも風力と今週ブレア首相に報告する予定。

ビジネス
●If this is wasteful, I'm a banana...
http://education.guardian.co.uk/higher/comment/story/0,9828,1481609,00.html

▼ケンブリッジ大学とMITの協働が、先週のガーディアン紙のコラムニストに批判されたものにCambridge-MIT Instituteのディレクターが反論。アカデミアとインダストリーをつなげるのに役立っているらしい。英国の産学連携の象徴みたいなところのようです。

その他
●Experiment goes hunting for haunting under the Royal Mile
http://www.guardian.co.uk/life/science/story/0,12996,1482881,00.html

▼エジンバラの古くからある通りで、心理学者が幽霊体験の実験。

●Unknown mammal found at Laos market
http://www.guardian.co.uk/life/news/story/0,12976,1482801,00.html

▼ラオスの市場で売られているネズミのような動物が30年ぶりの新種の哺乳類。

2005-05-14 22:29:58

政策空間というサイトで「予防原則の神話」論文を読む

テーマ:科学技術と社会

リンクしてくださった kousin.comをちょっとみていたら、政策空間というサイトにリンクがあった。なかなかすごそうなブログ形式のサイトだが、ほとんどコメントやトラックバックがないというのはどういうことだろうか?最近、この形式になったのか。それとも会員専用のMLとかで議論されているのだろうか。こういうところに足跡を残しておくのは、なんとなく不安だが、それがまた興味を引いてしまう。最近の記事にトラックバックして、感想程度のことを書いてみる。


「予防原則という神話」という刺激的なタイトルに引かれて読んでみた。「予防原則」は、科学技術社会論や科学政策の世界では常套句のようである。私は、学部時代に平川さんのHP(ブログじゃないほう)とかで知った。たしかに、その頃と比べると「リスク」とか「予防原則」とかいう言葉を目にすることも多くなったかもしれない。ともかく、西澤さんは「ヨーロッパの予防原則」VS「アメリカのサウンド・サイエンス」的な対立軸が正確に現状をしめしていないと言っている。たしかに、狂牛病の議論でも見受けられるように(これも平川さんのブログ経由)、「予防原則」があたかも政治的な論争の道具かのように利用されていることも多いようだし、概念が一人歩きしている状況があるかもしれない。私も、こうした対立軸で見がちだったので、これはいけないと反省する。


西澤さんの書かれた論文もいづれ読みたいが、紹介されていた二本の論文についても、ここにメモしておこう。
Wiener, J. and Rogers, M. (2002) Comparing precaution in the United States and Europe, Journal of Risk Research, 5 (4), 317-349.
Wiener, J. (2003) Who’s precaution after all?, Duke Journal of Comparative and International Law, 13, 207-261.


ただ、これは西澤さんの書かれたより学術的な論文に書かれているのだと思うが、これから「予防原則」をどうやって考えていくのかという指針みたいなのを数行でもいいから示しておいてほしかったと思う(たんなる私の怠慢なのかもしれないが)。リスクというビミョーで、繊細な問題において、少しでも偏ったことをいうとすぐに叩かれるという恐れが、最後のところで筆を鈍らせていないかと感じた。短い文章で、いわんとすることを言うのは難しいし、すぐにレッテルを貼られてしまう危険性もあるのかもしれない。でも、いわれたら言い返せばいいわけで、それが開かれたアカデミックな議論(政策空間?)につながってくると思う。


私には、この文章では、「予防原則は神話なのです」というまた新しい神話が生まれていくような気がしてしまう。もし反「予防原則」を標榜するのであれば、そのラフな道すじを示していただけると、議論を見守る者にとっても、入っていきやすいなと思う。


以上、学生のタワゴトかもしれませんが。

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