先週は,ローマ法王と選挙がにぎやかだった.科学政策に関連してくるレポートも見逃していたので,少しだけ読んでレポート.科学政策のところと,まとめのところだけをエントリーしておく.
科学界も政治界(scientific and political establishment)もずっと,「対話」だとか「オープン」だとか言い続けているど,実際の中身はどうなんでしょう?ということになると,あまり変わっていないような気もする.こういうことは,一朝一夕で変わるものでもないのだと思うから,「言い続ける」ことにすごい重要性があるのかなぁ.でも,政治にしろ,科学にしろ,ここまでいわなきゃだめになっちゃったってことも,振り返らないと,この社会の「アノミー状態」は,抜け出せない気もする.
反省と希望をバランスよく!(自分自身に言い聞かせているような気がしてきた.)
★科学政策
●UK Public Is Largely Positive About Science
http://www.mori.co.uk/polls/2004/ost.shtml
▼少し前のニュースですが,経済産業省付属のOffice of Science and TechnologyのためにMORIが作ったレポートの「Science in Society」が発表される.大まかな内容は,イギリスの80%の大人は科学が社会に貢献していると答えており,半分以上が去年の間に科学に関する活動に参加した(仕事以外で)と答えている.科学者への信頼も過去五年で63%から70%に向上.その反面,10人に4人の人だけが科学について知らされていると感じている.10人に8人は,結果(outcome)がなにかしらの活動(action)につながるパブリック・コンサルテーション(市民会議)を望んでいる.
●The BA calls for culture change
http://www.the-ba.net/the-ba/CurrentIssues/ReportsandPublications/Reports/_NSWresponse.htm
▼イギリスの科学界の大御所の「社会のなかの科学」に応じて出した声明です.科学者が自らの仕事について市民に対し説明することを,科学者の普通の仕事として位置づける「文化」に変えていかなければならない.そして,そのためにも科学者が市民との活動に従事することを科学者たちと資金を出しているひとたち自らが認め,評価していかなければならない.という主張.
●Policy through dialogue (2005)
http://www.cst.gov.uk/cst/reports/
▼これは,政府のCST(Communittee on Science and Technology)が同時期に出した「対話を通した政策:科学と技術に関する政策の情報開示」(うまくない訳ですが).
★まとめ
▼イギリスだけでなく,ヨーロッパ,そして世界のキリスト教徒の多い国々にとって今週の大きなニュースは,ローマ教皇が亡くなったことです.メディアは大々的に取り上げており,イギリスもキリスト教国であることを再確認させられます.
▼元カソリックのマドックス記者は,教皇の崩御は,なにもキリスト者(国)のみならず,非キリスト者(国)にとっても大きな影響があるといっています.なぜなら,教皇が変わることで生殖医療技術や家族生活などの基本方針が大きく変わる可能性があるからです.とくにカソリック教徒やカソリック国に大きな影響をあたえることは必至ですが,それが人々の生活や社会を変えていくことにもなるからです.リベラルな教皇が生まれた場合の影響は計り知れません.はじめて非白人の教皇が生まれる可能性(アフリカや南アメリカなどの方が信者が多い)が取りざたされていますが,バチカンの方向転換で,物事が大きく変わることが予想されます.それもメディアでの喧騒につながっているのだと考えられます.もちろん,科学技術の特に倫理面での状況に影響をあたえていくことでしょう.
http://www.guardian.co.uk/pope/story/0,12272,1451679,00.html
http://www.guardian.co.uk/pope/story/0,12272,1451456,00.html
▼時を同じくして,総選挙の日程がやっと決まりました.焦点は,ブレア&ブラウンのリーダーシップ,テロリズム,イラク,犯罪,教育,医療改革,移民,などなど多岐にわたりますが,そのなかで科学研究がどのような位置づけをされ,どのようなレトリックのなかで使われていくのかということを見ていければと思っています.
▼Dick Tavernの著書「The March of Unreason」が出版され,いくつか書評が出てきています.書評を見る限り,どうも科学VS反科学の単純な構造にとらわれている本のように思えるのですが,それはそれで参考になりそうです.
http://books.guardian.co.uk/review/story/0,,1449524,00.html
http://www.newscientist.com/article.ns?id=mg18624931.800
http://www.economist.com/displaystory.cfm?story_id=S%27%29%28L%2CRA%2F%22%23P%224%0A
▼イギリスの本屋で驚くことの1つは科学関連本の多さです.「Popular Science」という棚が,それこそ小説などと同じぐらいあったりするのです.こうした科学啓蒙書は,ホーキンスの世界的ベストセラー以降,特に出版が相次いでいるといいます.今週の記事にあったJon Turneyのポピュラー・サイエンス関連本の分析は,ある意味,科学を社会のなかでどう考えていくのかというヒントになるかもしれません.彼は,Imperial Collegeの科学コミュニケーション・コースの先生でもあります.
http://www.guardian.co.uk/life/feature/story/0,,1453315,00.html
▼冒頭であげた,「Science in Society」のレポートや英国科学振興協会の声明などは,科学界にとって市民の信頼を得ていくことが焦眉の問題なのだということがうかがえます.この二つを比べて見えてくる一つの違いは,前者のレポートは「政策」を意識しており,後者の短い声明は政策も含んだより大きな「文化」を意識している点です.おそらく,市民の信頼は両者が絡み合って育っていくのだ思うのですが,特に政策面で科学コミュニケーションをすすめていくのならば,「政策」と「文化」の兼ね合いを見極めていくことが大切なのだと思われます.まさに,「言うは易し・・・」ですが.