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メルマガの編集後記に載せてもらったメモを補足してブログにアップします(メルマガ発行人に了解済み).先週のニュースなので,今週も関連ニュースがありますが,すこしだけ追加しています.(◆意見●ニュース▼ニュースの一部or要約)
>>本文<<
◆イギリスで,学術情報の公開について,政府・議会で議論がなされているニュースがありました.イギリスは,オープンソース化に向かっている雰囲気です.一部の大学では,教員の研究成果に無料でアクセスできるようにシステムを整えているようです.また,生命医療研究では世界最大級の研究助成財団であるイギリスのウェルカム財団もオープンパブリッシングについて積極的です.
●Open access moves a step closer
http://education.guardian.co.uk/higher/research/story/0,9865,1403747,00.html
◆EU・アメリカでも同様の議論がなされています.(先日,NIHがオープンソース・パブリッシングをすすめることを表明したそうです@The Economist) 欧州委員会は,学術情報の公開についてのレポートをまとめているところだといいます.Elsevierなど,学術情報の出版を生業としているところには痛い話なのでしょうが,社会にとって研究とはなにか,特に大学も含めた公共機関における研究は,どういうものであるべきなのかということを再考する機会でもあると思います.ちなみに,コンピューターの世界での「オープンソース」とは何かというまとめとして,下のようなブログも発見(内田先生の親友).
●オープンソースの現在(ヒラカワ・カフェ店主軽薄)
http://plaza.rakuten.co.jp/hirakawadesu/diary/?ctgy=1
◆研究情報の公開において,ホットな話題は生物学的な情報の公開についてです.なぜなら,現在のところ,生物学的な情報は薬や作物の開発に直接つながりやすく,莫大な富を生み出す可能性があるものと思われているからです.そんななかで,オーストラリアからのムーブメントで,「オープンソース・バイオロジー」が始まるというニュースがありました.巨大製薬会社のあるアメリカやイギリスからではないムーブメントではないところが意味深です.
●「オープンソース・バイオロジー」まもなく始動
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050131305.html
▼生物学研究に関してオープンソースの方法論を提唱するオーストラリアの組織『バイオロジカル・イノベーション・フォー・オープン・ソサエティー』(BIOS)が、知的所有権を侵害することなく、生物学上のデータの取り扱いに関する制約を撤廃することを目指している
◆こうした問題は,知識の「集約」と「再分配」の問題とみることができます.これまで,研究活動とは,すなわち知識の「集約」のことだったと思います.特に近代型の大学や企業研究所においては,知識がどれだけ「集約」できるかが鍵となっていたと思われます.しかし,科学コミュニケーションの観点から考えるならば,集められた知識をどう社会に還元していくかという「再分配」の問題の方が重要になってきます.なぜなら,研究活動や経済活動が公的な側面を少しでも持つのならば(e.g.利益重視の企業も社会の損失になることをしていいわけではありません),知識を一部に「集約」するだけでなく「再分配」し,より広く使えるようにすることも望まれるべきだからです.また,社会へ知識を「再分配」していくことは,より健全な行為だと思われますし,結果的に社会の信頼やサポートを得ることにつながってくると思います.
◆世の中は,善人だけではないのだから,知識を無用に公開・再分配してしまうと,それを悪用しはじめる輩がでてくるのではないかという指摘もあります.とても重要な点ですし,そういう事が起きないような対策も必要になってくると思われます.しかし,それだけで知識を「集約」させるか「再分配」させるかという大筋の議論の本質を見失うわけにはいきません.また,一方で「集約」が悪しき独占で,「再分配」が麗しき共生だというステレオタイプも避けなければならないでしょう.
◆情報の「再分配」の問題とそう遠くはないニュースとしては,マイクロソフトが新しい検索エンジンを開始しました(MSN Search).全検索の42パーセントを占めるGoogleの対抗馬を目指すようです.ネットや検索エンジンの発達によって,研究のスタイルやそれを受け止める側との関係も大きく変わってきました.ブログもそうです.自分自身も,「ブログ的不安(郵便的不安のパロディー)」を感じながらも,なんとか情報の「消費者」で終わりたくないという思いがブログへ向かわせているのかなぁと思ったりもします.
◆生物情報や検索エンジンという各論からまた知識情報という総論にもどしますと,情報公開という問題と同時に早急に考えなくてはならないのは,「大学」の存在です.イギリスでは,すでに大学からスピンオフする企業の数も増えつつあり,新聞の株価欄やビジネス欄の話題になることも増えてきました.
●University skin venture sold for £5m
http://education.guardian.co.uk/businessofresearch/story/0,9860,1403832,00.html
▼話題の多いビジネスマン(controversial bussinessman)の新しいベンチャー会社York Pharmaが,シェフィールド大学からスピンアウトした皮膚病の薬の開発をする会社Melecular Skincareを買収.
●Uncle Sam's out in front, but we're hot on his heels:UK technology transfer is a late starter that shows every sign of being a great success
http://www.thes.co.uk/current_edition/(要購読)
▼イギリスの大学の研究費はアメリカの39%にすぎない|カリフォルニア大学のレポートによると,ロイヤルティーの半分は70年代の発明.過去十年のものは10%にみたない|マラソンランナーを短距離に転向させてメダルをとりにいけというようなものか|それでも,昨年は25を越える会社が設立され,10社が上場した.良い兆しが見えてきているのではないだろうかという結語.
◆ニュースだけを見ていると,ますますお金を生む大学がもとめられるようになってきているのだと感じます.そして,それは知識のさらなる「集約」を意味すると思います.しかし,大学には研究だけではなく,教育という機能もあったはずです.思えば,大学における一番優れた知識の「再分配」は教育にあるのです.昨今,各方面で引用回数がふえてきた科学コミュニケーションとは,知識の「集約」という流れに異議を唱え,知識の「再分配」という視点を忘れてはならないのではないかという思いや危機感の表れなのかもしれません.
◆もちろん,知識の「集約」と「再分配」は二者択一の問題ではありません.バランスのとれた地点・方法は,どこにあるのか,粘り強く考えていかなければならない問題です.日本でも,もっと議論をしていかなくてはならないでしょう.なぜなら,この問題は少しずつ世界的なルール作り(明らかな欧米主導ですが)がはじまっているところで,日本も主体的に関わっていくべきだと思われます(してるのかな?).国際競争力というクリシェーで表現することもできますが,オープン・パブリッシングをはじめとした知識の「再分配」の問題は,それよりももっと大きな理念みたいなものを生み出すかもしれないからです.上記のオープンソース・バイオロジーもオーストラリアの発祥です.日本は,科学技術立国を標榜する国なのですから,今起きつつある情報の「再分配」という問題に対してユーロセントリックな意見ではない,もっとバランスの取れた行動を示していくチャンスのではないかなどと思うのです.
http://scicom.jp/mailmag/