2016-05-22 10:16:51

くくるくくぱろま(6)

テーマ:小説

ふり返って、後ろを見ては、絶対に、いけない。そう、本能的にそう感じて、私はただ、ひたすら、エレベーターのボタンを、狂ったように、押し続けた。

しかし、エレベーターは止まっている階から、降りてくる気配はまったく、ない。

開いたドアが、ドーンという大きな音を立てて閉まり、ズルズルと、何かがこちらに向かって、近づいてくる気配がする。足を引きずっているのか、あるいは、何かを引きずっているのか・・。

私は、エレベーターのボタンを、ひたすら、押し続けた。その時、ガタンと、大きな音がして、エレベーターが、いきなり動き出し、止まっていた1階から、ゆっくり、地下へと降りてくる。

た、助かった。でも、足を引きずるような、何かを引きずるような、背後の音は、もうすぐ、そこまで、迫っていた。

「早く、早く」と、私は大声を出して、絶叫する。

再び、ガタンと大きな音を立てて、エレベーターが止まり、ドアが開く。私はその中に飛び込んで、しかし、ドアを閉めるためには、ふり返る必要がある。イヤだ。でも、ふり返って、ドアを閉めねば・・。

私は、意を決して、ふり返って、ドアのボタンを押した。そして、閉まるドア越しに、私は見たのだ。

閉まるドアの向こうにいたのは、あれは、スッカリ、血の気を失い、目を大きく見開いた、義男の・・。

そこで、目が覚めた。私は、再び、病室の、自分のベッドに寝て、見上げた天井に、何か、黒々としたものがへばりついていた。そして、それがいきなり、私の上に覆い被さってきて・・。

そして、目が覚めた。ベッドの上。多分、夜。すべては、夢?

いや、そうではない。閉まったカーテン越しに、ゼイゼイという誰かの寝息。出し抜けに、隣のベッドの明かりがつき、黒々とした男のシルエットが、ゆっくりと、上半身を起こし、そして、カーテンに手を・・。

「柚木さん、柚木さん」

看護師の、緊迫した声がした。私が目を開けると、見慣れた看護師の吉岡さんの顔が、そこにあった。

「柚木さんが、急に大声を出して、何かを叫んでいると、部屋の人からナースコールがあったので」と、吉岡さんが、いう。

室内が明るい。今は、明らかに、夜ではない。

「な、何時?」と、私は、声を絞り出すようにして、聞く。

「もうすぐ、お昼ですよ。いやだぁ、寝ぼけたんですかぁ?」と、吉岡さんは、ようやく、表情をゆるめて、笑顔になった。

「ど、どうも、そうのようです。すいません」

だが、私にはわかっていた。あれは、夢なんかではないと・・。

私は、私の左手に、クッキリ、赤い指の跡がついているのを、見てしまったのだった。それは見る見る内に、薄れて、消えてしまったが、私は気を失う直前に、左手首をあれに、強く、握られたのを、覚えていた。

ハッキリ、いってしまおう。あれではなく、あれは間違いなく義男の、血の通っていない、冷たい手だったのだ。

私は、思い出した。そう、あの日のことを。

(続く)





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2016-05-21 09:10:03

くくるくくぱろま(5)

テーマ:小説

今日の回診で、本山先生と小日向先生から、ここまま順調なら、あと1週間で抜糸可能なので、それが終わったら退院していいでしょう・・と、伝えられた。

まぁ~だ、開腹手術の跡は、ガーゼとビニール・テープで、シッカリ、固定されていて、寝ている状態から、身体を起こした時など、相当、痛むし、時々、血の混じった体液も出て、ガーゼを赤茶色に染めるが、それはすべて想定内で、回復状態は極めて良好だと、先生方はいう。

今日から普通食といわれ、すでに、朝食として、トーストした食パン1枚にイチゴジャム、野菜と玉子の炒め物に、バナナ半分、パック入りの牛乳が出た。そのすべてを平らげ、食後にコーヒーでも飲もうかと、財布だけ持って、エレベーターに乗って、地下の売店前にある、コーヒーの自販機に向かう。

地下には、売店の他、CTスキャンの部屋があり、暗い廊下がさらに奧へ、続いている。多分、その先には、霊安室があるのだと、私は考えている。いずれも別の病院でのことだが、以前、父や母が死んだ時、遺体は地下の霊安室に移され、そこで警察官による検死が行われ、その後、葬儀社の車が到着するのを待つことになった。きっと、それはどこの病院でも、同じだろう。

だから、おそらく、この先には、霊安室がある。入院して、無事、退院出来なかった者は、そこから、葬儀社の車に乗せられ、なるべく、入院者や通院者の目につかぬよう、ひっそりと、退出することになるのである。

売店で、朝刊を買ったあと、自販機にお金を入れ、モカのホット、ブラックを選択し、ボタンを押した。

コーヒーが自動抽出され、出て来るまでに、少し、時間がかかるので、ソファーに座って、待つ。エレベーターのドアが開き、白衣の看護師が、こちらを、横目でチラッと見て、しかし、歩みを止めることもなく、足早に、廊下を歩み去っていった。

自販機の取り出し口が開き、コーヒーのよい香りが、漂って来た。病室に持ち帰るより、ここで飲んでしまおうと、紙のカップを片手に、ソファーに戻って、腰を下ろした。

そこから、長い廊下の奥のドアが、よく見える。そのドアが突然、開いて・・そこで、目が覚めた。

一瞬、今がいつなのか、よくわからず、混乱する。病室内は暗く、多分、夜だ。カーテン越しに、隣のベッドから、ゼイゼイいう、荒い寝息が・・。

お、おかしい・・隣にはまだ、誰も、新しい患者が入っていないハズ。しかも、私の記憶では、今はまだ午前中で、私はコーヒーを飲みに、エレベーターに乗って、地下に向かったのではなかったか。

そして、奧の廊下のドアが、いきなり、開いて・・それからあとの、記憶がない。それとも、それはすべて、夢だったのか?でも、カーテン越しに聞こえる、あのゼイゼイという寝息。

思い切って、隣のカーテンを、少し、開いてみる。もちろん、そこには誰もおらず、シーツが剥がされた、剥き出しのベッドがそこにあるだけだった。

私は何が何だかわからず、起きて、病室を出た。

そこに、奧へと続く、暗く、長い廊下があった。そこは、地下だ。思わず、部屋に戻ろうとして、エレベーターの閉まったドアに、激突してしまった。売店も、シャッターを下ろし、CT室にも明かりはない。

何だ、何なんだ。

とにかく、エレベーターのボタンを押すが、エレベーターは上の階で、止まったままで、地下へ降りてくる気配がない。

私は、パニックになりかけていた。

その時、背後の廊下の奧で、ドアが開く音がした。

(続く)








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2016-05-07 09:01:16

くくるくくぱろま(4)

テーマ:小説

ゆかりさん、こんにちは。お元気ですか。

私は、今日も、何故か、ここから出ることが出来ないので、あなたに会いに行くことが出来ません。

実をいうと、ここというのがどこかも、わかりません。

「涼子さん、まだ、昼の薬を飲んでいないので、すぐ飲んで下さい」

今のは、看護師のはるかさんです。私は、何故か、ここから出ることも出来ず、その理由を尋ねても、納得のいく返事をもらえず、しかも、その上、朝昼晩、薬を飲むように、しつこく、強制されるのです。

この薬を飲むと、頭がボーッとして、眠くなってしまうので、とても、イヤです。でも、飲まないと、鬼がやって来て、私をよってたかって、羽交い締めにして、無理矢理、薬を飲ませるのです。

鬼は、3人いて、赤鬼と青鬼、それに、もう1人の鬼は、赤くも青くもなくて、人間の顔をしています。でも、人間ではなく、鬼なのです。きっと、人間の皮を被っているのだと、思います。

鬼が恐ろしいので、私は抵抗はしますが、結局のところ、薬は飲まされてしまいます。

それで、いつも、頭がボーッとしているのです。

私の部屋は、女ばかりの6人部屋ですが、鍵がかからないので、夜、あの平次がやって来るのではないかと心配で、よく、眠ることが出来ません。

平次は、もう50過ぎのオヤジで、食事の時など、誰かに見られていると思って、顔を上げると、見ているのはたいてい、この平次です。とても、イヤらしい目をして、口を半開きにして、こちらを見つめています。時々、そっと近づいてきて、手を握ろうとします。

汚らしいので、平次に手を握られた時は、洗面所に行って、液体石けんで、ゴシゴシ、手を洗います。それで、私の手は、厳冬でもないのに、常にあかぎれが出来ています。

はるかさんには、平次が夜、部屋にやって来たらイヤなので、ここから出すか、せめて、部屋に鍵をつけて下さいと、何度も頼みましたが、はるかさんは「そんなことないわよ、それはあなたの妄想よ」とぃって、全然、取り合ってくれません。私が平次にレイプされてしまったら、それは彼女の責任です。

本当に、イヤです。平次は、汚らわしい。死んで欲しい。死ななくてもいいけど、ここかから出て行って欲しい。

いや、出て行くべきなのは、本当は、私なのです。私は病気ではないし、薬を飲む必要もない。だから、ゆかりさん、どうか、1度、私に会いに来て下さい。そして、私をここから、出して下さい。お願いします。

「涼子さん、これから袋貼りの作業をしますよ」と、はるかさんが、そういいます。

袋貼りの作業なんて、イヤです。私は、ここに入る前は、IT企業のオフィスで、一般事務をしていたのです。ワードだって、エクセルだって、ちゃんと、使えます。そんな私が、何が悲しくて、袋貼りなんかしなくては、いけないのかしら。

それに、袋貼りの作業は、平次と同じテーブルでしなくてはならないので、本当に、イヤ。

ああ、ゆかりさん、今すぐ、会いに来て。何度も手紙を出しているのに、あなたは何故、会いに来てくれないの・・。

(続く)



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2016-05-05 10:35:35

くくるくくぱろま(3)

テーマ:小説

朝食後、ベッドで寝ていると、カーテンが開き、担当医の本山先生と小日向先生が、顔を出した。

「どうです、痛みますか?」と、本山先生がいうので、そりゃあ、手術後、ま~だ、1週間しかたっていないので、痛いですよと、心の中ではそう思ったが、「痛いことは痛いですが、耐えられない痛みではありません」と、優等生風の応答をした。

「じゃ、お腹を見せて」といわれたので、パジャマの前をはだけ、アンダー・ウェアーを持ち上げて、ガーゼとビニール・テープで固定された、開腹手術のあとを、見せる。少しだけ、血の混じった液がたまって、ガーゼが変色し、ビニール・テープがパンパンに、膨れあがっている。

「大丈夫のようですね、管を抜いたあとも、しばらくは血の混じった液が出ますので、これは心配しなくてもいいです」と、本山先生。

それから、「あとで、処置室で、ガーゼを取り替えます」といって、本山先生と小日向先生が帰ると、入れ替わりに、栄養士の女性がやって来た。来週から、おかゆではなく、常食になります、という。食事のことで、何か、お困りのことがあるかと聞かれたので、ないと、答える。

あると答えたところで、メニューが替わるわけではないだろうし、それに、実際、朝昼夜の食事に、特に、不満はない。

トイレに行きたくなったので、ベッドの手すりにつかまり、えぃ、やぁと、気合いを入れて、一気に、身体を起こす。激痛が走るが、痛むのは、下腹に力を入れる時だけで、いったん、起きてしまえば、もう大丈夫。

ベッドから降り、トイレに行って、ついでに、エレベーター・ホールに向かう。病棟内では、ここだけで携帯の使用が、認められているのだ。

一応、病室から持って来た携帯の電源を入れて、留守電やメールのチェックをするが、誰からの電話も入っておらず、メールも1件も入っていなかった。どうやら、私がいなくても、誰も困らないらしい。

家に電話をしてみるが、誰も出なかった。まぁ、涼子はずっと家を出たままだし、家には他に、誰もいないんだから、誰かが出たら、逆に恐いが、あるいは、涼子が家に戻っているかも・・という、淡い願望がないといったら、ウソになる。あわれなもんだ。

部屋に戻ろうと、携帯の電源を切る寸前、まさに、その時を狙っていたように、マナーモードにしてある携帯が、ブルブルと鳴った。

「ハイ」

「オレだよ、わかるかい」

そいつは、そういって、あとは沈黙した。

私は、何もいわず、携帯の電源をオフにした。

もちろん、それが誰か、わかっている。しかし、彼が私に電話をしてくるハズがない。彼は死んだのだから。

(続く)


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2016-05-03 22:12:04

くくるくくぱろま(2)

テーマ:小説

その声の主は、もうこの世の人ではない。だから、もちろん、ただの幻聴。

「もう、待ってなんかいないで、行っちゃえよ」

でも、まぁ~だ、行くわけにはいかないのだよ、義男君。

私は、マグカップの冷たいお茶の最後の一滴を飲み干すと、ゆっくりと、立ち上がった。

エレベーター・ホールの窓の向こうにあるのは、老朽化した、別の病院の建物。今、近くに新しい病棟を建てているので、完成したら、移転し、古い病棟は取り壊すのだという。

ここは、文字通り、病院銀座のようなところで、私の入院している病院と、その隣り合わせの病院以外にも、近くに2つの病院がある。いずれも、高層階の病院で、きっと、その病室の数だけ、入院患者がいるのだろう。

あまり、大きな足音を立てないよう、気をつけながら、病室に戻り、そっと、ベッドに潜り込む。

カーテン越しには、相変わらず、老人のゼイゼイという、苦しそうな寝息が、続いていた。

寝なければ、もう少し、寝なければ・・。

廊下を歩く足音が近づいてきて、見回りの看護師が、病室をのぞき込み、何も変わったことがなさそうだと、安心して、隣の病室に、移って行った。

「もう」「待ってなんかいないで」「行っちゃえよ」

突然、黒い影が私に覆いかぶさり、視界が真っ黒になって、ただならぬ気配に、私は飛び起きた。

もちろん、誰もおらず、夢とわかる。少しだけ、眠っていたらしい。

しかし、カーテン越しに、隣のベッドが騒がしい。看護師が、先程まで、ゼイゼイと苦しそうな寝息をたてていた老人に、話かけている。

「大丈夫?どこが苦しいの?」

別の看護師が、小走りに駆け寄ってきて、「今、先生を呼びましたから」と、緊迫した口調で、いった。

カーテンが、激しく動く。やがて、「山村さん、山村さん」と、男性の大きな声がして、カーテンの動きに、さらに激しさが増した。

私は、どうしたらいいかわからず、そのまま、ベッドの上で、身を固くしていた。

その日、夜明け前に、老人はどこかへ移送され、そのまま、帰って来ることはなかった。

午前中に、隣のベッドから、シーツが外され、老人の荷物は、すべて、ひとまとめにして、どこかへ運び出された。山村さんは、死んだのだ。

(続く)






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2016-05-03 11:42:28

くくるくくぱろま(1)

テーマ:小説

カーテンの向こうの、ゼイゼイという、苦しそうな寝息。

時計を見ると、まぁだ、午前3時過ぎ。起床時間は午前6時だから、あと、3時間近く、ある。

眠れない。消灯後、ほぼ1時間か2時間おきに、目が覚める。ベッドが硬くて、それに、ほぼ、終日、寝ているので、腰が痛い。おまけに、カーテンの向こうの老人が、夜中に何度も、ベルを押して、看護師を呼ぶ。

喉が渇いた。水が飲みたい。腰が、背中が、痛い。痛み止めが、欲しい。眠れない。睡眠薬を下さい。泣き言、ばかりだ。

でも、今は、その彼も寝ていて、6人部屋の病室で、起きているのは、おそらく、私だけ。腰なら、私だって、痛いんだよ。このボケ。

起き上がって、プラスチックのマグカップを片手に、そっと、病室を抜け出す。

エレベーター・ホールの前のソファーに腰を下ろして、マグカップの中の、無料サービスの冷たいお茶を、飲む。巡回中の看護師が、チラッとこちらを見て、「眠れないんですか」と、声をかけながら、しかし、立ち止まることもなく、歩いていった。

毎日、こうして、ここに腰掛けているので、次に彼女が、ここを通る時までに、部屋に戻っていれば、文句をいわれることもない。

だから、あと、10分ほど、ここにいる。

もうすぐ、私の頭の中に、聞こえてくるであろう声を待ちながら・・。

そう、最近、声が聞こえてくるように、なったのだ。その声は、私に、こうささやく。

「もう、待ってなんかいないで、行っちゃえよ」と。

(続く)





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2010-01-24 03:22:37

最近、買った本〈小説編〉続き

テーマ:小説

昨日は終日、実家に戻っていたので、特段、書くことがない。夜に東京に戻ってきてからは、疲れてしばらく寝ていたが、ようやく、気力が復活。

で、「最近、買った本〈小説編〉」の続きでも・・。つまり、あれ以降、読んだ小説、ということである。

高瀬美恵「セルグレイブの魔女」(祥伝社文庫)

高瀬美恵は、以前、同じ祥伝社文庫から出た「庭師」を読んだが、7万部を超えるヒット作とはいうけれど、正直、それほどの傑作とは思わなかった。しかし、この「セルグレイブの魔女」は、文句なしの傑作。「セルグレイブの魔女を訪ねよ」というメモを残し、失踪した少年。それから9年後、幼女の殺人事件が発生、それは連続殺人事件へと、発展していく。そして、現場には必ず、「セルグレイブの魔女を訪ねよ」というメッセージが残されていたのだった・・と、まぁ、そういったお話。

過去の少年の失踪事件と、現在の連続猟奇殺人事件とは、どこでどう、つながるのか???物語はあくまでミステリィとして、大どんでん返し&意外な犯人という、いわばミステリィの「お約束事」を踏襲しつつ、同時に、人間の心の奥に潜む闇の、ぞっとするほどの深さを描く、極上のホラーでもある。この人の次回作からは、目が離せない。

五十嵐貴久「シャーロック・ホームズと賢者の石」(光文社文庫)

なんだ、ホームズ物の偽作パロディに、流行り物の要素をぶち込んだだけの作品かよ・・と、半ばあきれつつ、手にしたこの本。もともとはホラーを書いてた人なので、買って、読んで、驚いた。

これがなかなかというか、実にすぐれたホームズ物のパロディなのだ。本書には4本の短編が収録されているが、その1編1編が、ホームズ物のパロディであると同時に、もうひとつ別の著名作品のパロディにもなっているという、凝りに凝ったつくりになっていることにも、驚いた。

一見、たいした本を書いてるようにも思えなかった(失礼)が、その実力には、正直、脱帽です。

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2010-01-19 09:32:15

最近、買った本〈小説編〉

テーマ:小説
今回は、ここ1週間ほどの間に読んだ、この3作を・・。
押井守「ASSAULT GIRLS」(徳間書店)
自ら監督した映画の小説版。ストーリィは基本的に映画と一緒だが、二宮金次郎像とか、かたつむりとか、イメージ的な画像の多かった映画に比べ、こちらの方が断然、わかりやすい。
パトリシア・コーンウェル「スカーペッタ(上)(下)」(講談社文庫)
ルーシーやマリーノのその後が気になって、読んでしまうが、ハッキリいって、少々、マンネリです。まぁ、「検死官」シリーズも、もう16作目なので、致し方ないか・・。
矢部崇「保健室登校」(角川ホラー文庫)
「紗央里ちゃんの家」で日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した著者の、連作短編集。句読点の少ないダラダラとした文体と、日常生活にいつの間にか異世界が紛れ込む、不思議かつ不気味な物語には、はまりっぱなし。今回も、保健室に集う中学生、駅子、専子、可絵子の3人を主人公に、気持ち悪さ全開で、私的には大満足の出来でした。
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2009-05-02 09:04:34

ホラー専門誌「エンブリヨ」復刊へ???

テーマ:小説

「スワン」の連載再開は、第4回目で止まったままになっているが、第10号をもって休刊とし、一時期あった電子メディアでの復刊(「e-エンブリヨ」)の話も断ち切れになったままのホラー専門誌「エンブリヨ」の復刊を、考え始めている。

もちろん、復刊するにしても、今回は同人誌としてではなく、出す以上、ミニコミ誌であることには変わりはないものの、ちゃんと市販も考えているので、まずはパイロット版を出して、反応をみつつ・・ということになるが、以前の同人仲間にはごく少数の人をのぞき、ほとんど連絡がつかないので、復刊というよりは、新規開店に近い形になるかもしれない。

また、内容的にも、以前の「エンブリヨ」は小説が主体だったが、今回はコミックなども積極的に入れて・・と考えている。

いずにれにせよ、一緒にやろうという人がいれば、是非、一緒にやりましょう。バックナンバーは、一応、「J-Latino」というホームページのオンライン・ショップで、購入できます。まぁ、私の家の押し入れの奥深くに眠っていますので、注文後、発掘=発送までに、時間がかかるかもしれませんが、どーか、ご容赦を。



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2009-04-04 14:42:51

スワン(4)

テーマ:小説
 その日は、クラスの成績発表の日だった。公立だったら、今どき、まさか、人を試験結果でランクづけるようなことはしないと思うけど、ウチは私立で、いつも、成績上位者の氏名が、掲示板に張り出されるのだ。かつて、クラスのトップはいつも高見沢クンだったが、彼が転校後は、私の名が常に、そこにはあった。
 掲示板の前には、すでに何人かの女子がいて、少し、ざわついていた。私がそばに行くと、何故か、気まずそうに、彼女たちは私と目を合わせることを避け、三々五々、自分の席に戻っていった。
 「二位 前田涼子」
 私の名前は、いつもの定位置ではなく、別の名前の次に書かれていた。一位は、スワンだった。
 (何故?)
 私は、事態がまだよく飲み込めず、その場に立ちつくしていた。単に一位と二位が、入れ替わっただけのこと。しかも、まだ、中間試験の結果だし、大したことではない。そう、頭でわかってはいても、納得がいかなかった。
 スワンは日本にやって来て、まだ、わずか数カ月。日常会話には不自由はないにしても、時々、おかしな日本語になることもあったし、難しい漢字は読めなかった。よく、隣りの席の里見に、「これ何と読むの?」と聞いて、ふりがなをふっていた。
 言葉にそれだけのハイディがあって、いきなりの成績トップ。
 確かに、彼女が並々ならぬ、優等生であることは、クラスの誰もが感じていた。だから最近は、彼女が、時々、ヘンな日本語を使っても、初対面の時のように、誰も笑わなくなっていた。正確にいえば、笑う人は皆無ではなかったが、それはクラスの、ひと握りの不良グループの面々で、彼らは自らのグループのメンバー以外の誰に対しても、非寛容だった。
 でも、いきなり、一位とは…。
 笑い声がして、スワンが里見やみゆきと一緒に、教室に入って来た。
 私はあわてて、自分の席に戻り、教科書を読んでいるふりをした。
 「わぁ、スワン、すごいじゃない。トップだよ、トップ」
 と、里見が嬌声をあげた(無神経)。
 「ええーッ、ホント。すっごい、すごい」
 と、みゆき。(無神経)
 しかし、スワンは、何もいわなかった。
 その時、真知先生が入って来たので、みんな、あわてて、席に戻り、ホームルームが始まった。
 私が教科書を閉じ、顔をあげると、スワンが心配そうな顔をして、こちらを見ているのが目に入った。
 (な、なんで、そんな顔して、私を見るのよ…)
 スワンのやさしさが、逆に、私を傷つけた。私はきっと、すごく怖い顔をして、スワンの顔をにらみつけていたのだろう。スワンはとまどったような表情で、こちらを見つめ、それから、周囲に助けを求めるように、目を泳がせた。
 (許さない、私はスワンを許さない…)
 それが不条理な感情であることは、もちろん、よくわかっている。スワンが悪いわけではなく、私の努力が彼女のそれを、下回っただけだ。あるいは、最初から彼女は、私とは頭の出来が違うのかもしれない。
 (タイ人のくせに、タイ人のくせに)
 私には人種に関する差別意識なんかないと、それまで、そう思っていた。教科書で、白人の黒人差別の歴史などを読んで、何と愚かしい…と、そう、他人事のように、思っていた。
 しかし、それは間違いだった。
 スワンは高輪の一等地の最高級マンションに、母親と共に住んでいた。同じ母子家庭でも、私とは明らかに、境遇が違う。それに加えて、日本にやって来て、たった数カ月で、私からクラストップの地位を奪い去った。
 (許せない、許せない、許せない…許さない、私はスワンを、許さない)

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