ひいくんの読書日記

ひいくんが、毎日の通勤電車の中で読んでいる本を紹介します。
通勤時間は30分ほどなので、軽い読物がほとんどです。


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恋に破れ仕事に疲れた明里〔あかり〕は、幼い頃過ごした商店街に一人で引っ越してきます。
そして、そこで時計店を営む青年、秀司と出会います。
2人が巻き込まれる町の小さな事件を描く日常の謎ミステリです。


5編の短編が収録された連作短編集です。
黒い猫のパパ
茜色のワンピース
季節はずれの日傘
光をなくした時計師
虹色の忘れ物


主人公の仁科明理は28歳の美容師です。
恋人に別れを告げられ、仕事も辞めて、閉店した“ヘアーサロン由井”の建物に一人で引っ越してきます。
そこは幼いころの明理の思い出の場所でした。

明理は、斜め向かいの時計屋のショーウインドウに、“おもいでの時 修理します”という不思議なプレートの立てかけてあることに気づき、その店を営む同い年の飯田秀司と知り合います。


拾った古いオルゴールの中に入っていた写真フィルム(「黒い猫のパパ」)、思い出のワンピースを着てほしいという老婦人・ハルエさんの奇妙な願い事(「茜色のワンピース」)、昔流行ったという桃色のブタのぬいぐるみ探す日傘の女性(「季節はずれの日傘」)と、2人が出くわす謎は、誰かの大切な人を巡る思い出に関わっています。
そして、それらの人々の果たせなかった思いを叶えるために明里たちはひと肌脱ぐことになります。

やがて、秀司(「光をなくした時計師」)と明理(「虹色の忘れ物」)も、目を背けていた自分の記憶と向き合うことになります。


作者は、少女向けのコバルト文庫集英社)で多くの作品を発表している人気作家だそうです。
私は初めて読みましたが、この独特の雰囲気は少女向けの作風なのでしょうか。
最初は少し戸惑いましたが、文体にはすぐに慣れました。

明理秀司の恋模様の描写には最後までされることはできませんでしたけど…。


私のお気に入りは、「茜色のワンピース」です。

ハルエさんの思い出の切なさが、ラストシーンを際立たせ、余韻を残します。


ファンタジー色が濃厚な日常の謎ミステリという構成ですが、実は過去を克服しようとする人々の物語でもあります。

作者がこの物語で伝えたかったのは、過去の出来事を変えることはできないが、今を生きている自分が過去の出来事をどう捉えるかで思い出は変えることができるということのような気がします。


「光をなくした時計師」で過去を乗り越えた秀司と、「虹色の忘れ物」で過去を乗り越えるきっかけを掴んだ明理、この2人の今後が気になります。

秋には続編が刊行される予定とのことで、楽しみです。


思い出のとき修理します (集英社文庫)/集英社
¥630
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表紙のイラストは、イラストレーターで漫画家の山田コウタさんです。

秀司の大きな手と時計の小さな部品が印象的です。

[2013年2月16日読了]


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