「集団的自衛権は、逆立ちして読んでも、現行憲法では認めようがない。」。本日(8月2日)山口市内で開催された講演「安倍政権の憲法解釈と集団的自衛権」で、元内閣法制局長官の阪田雅裕・弁護士は、こう言い切りました。阪田氏は、小泉政権時代に内閣法制局長官を務めています。
 
 実は、阪田氏は、私(平岡)の大蔵省(現・財務省)入省10年先輩の方で、平成5年に私が内閣法制局に出向した際そこで5年間お仕えしたことがあります(阪田氏が第3部長で、私がその直属の部下の参事官)。論理に緻密で、思ったことはハッキリと意見する人です。
 阪田氏は、「自分は、『集団的自衛権の行使』の問題について、政策的に反対しているのではない。それはそれでキチンと議論すべき課題である。」とする立場を明らかにして、安倍内閣の今回の対応について、次のように批判しました。 
 
 「これまで自分(阪田)は、『集団的自衛権の行使を認めるなら、憲法改正でやるべし』との意見を150回以上の講演で数万人の人に話をしたが、95%以上の人が『その通り』との認識を示している。『どうして、この意見が官邸にだけ届かないのか』との思いがしている。」
 
 「憲法は、統治権者(政府)が守るべきルール。法律は、国民が守るべきルール。統治権者が憲法の解釈を勝手に変更するということは、『国民一人一人が自由に法律を解釈して良い(例えば、制限時速が定められても、経験を積んだ人はその制限時速に上積みすることが許される、と解釈しても良い。)。』という社会を認めることに等しい。」
 
 「今回の閣議決定は、『従来の政府見解における憲法第9条の解釈の基本的な論理の枠内』であり、『この基本的な論理は、…今後とも維持されなければならない。』とするが、国会での集中審議での安倍首相や岸田外相の答弁では、本当にそうなのか疑問だ。実際、政府がそれまでに示していた『集団的自衛権の8事例』はどこかに吹っ飛んで行っている。」
 
 すなわち、「安倍首相は『中東有事で石油輸送が閉ざされると中小企業の倒産など国民生活が根底から揺さぶられる可能性がある』と、岸田外相は『米国からの要請を断る時には、日米信頼関係を根底から覆す可能性がある』と言って、それぞれのケースで集団的自衛権の行使の可能性を認めている。理論的に『行使できる』としてしまえば、後は政府の裁量にしてしまっている。」
 
 「韓国は、米国から集団的自衛権の行使の要請を受けて、ベトナム戦争に32万人の兵士を送り、数千人の死者を出した。集団的自衛権の行使を認めることは、そのような事態に対する覚悟も要ることである。法治国家として、立憲主義に則り、憲法改正の手続きの中で国民にその覚悟を問うべきなのだ。」
 
 阪田氏は、「集団的自衛権の本質は、他国間の武力紛争に、武力介入・武力行使をすることである。」として、個別的自衛権と本質的に性格が違うことも説明されました。私たちは、この本質の違いをシッカリと見極め、今後の「我が国のあり様」を真剣に議論していく必要があると考えます。