終止符。

テーマ:

一生、麻雀で喰っていく覚悟もなく、

一生、麻雀で喰うことの出来る技量もなく。


只々、麻薬の様に続けてきたこの生活を、どこかで打ち切りたくて。


先の見えない、不安。焦燥感。

家庭を築き始めた友人に対する、羨望。劣等感。


それらを、心の中で払拭したかった。



人並みに働いて、人並みの幸福が欲しいから。




メンバーとしての、最後の本走。

東一局。ドラ四。

配牌は見るも無残な物だったが、有効牌の鬼引きで9順目に以下。


19一九①⑨東南西白發中四


北は場に二枚。


対面の親は赤含み二副露のタンヤオ。


南家、北家とも僕の方を伺いながらも、ヤオチュウ牌の連打。


今ならまだ北は出てきそう。早く重なれ。

久しぶりに何かに祈った気がする。



願いも空しく、無駄ツモの中張牌。

親が三副露目を入れ、打三。


南家、打北。



『例えテンパッても、もう降りかな。残り一枚じゃあ、ね・・・』

シュクッとした盲牌の感触。ツモ北。


19①⑨一九東南西北白發中四




麻雀を打ち始めてから、初の、フリテン無しの十三面張。


『どうせ当りだろうけど・・・』

「・・・リーチ」

打四。


親「ポン!」


瞬間いろんな思考が脳を巡る。

『ポン?裸単騎で国士リーチとやりあうってか?掴め!放銃しろ!開局32000でラストや!』

『最後の半荘で十三面か。引退試合に相応しいか・・・』

『俺のツモ筋には何がいる?親の和了牌か、それとも僕か』


南家が牌山に手を伸ばし、少し大げさなモーションで牌を叩く。

「ツモ、400、700」






・・・・メンバーを辞めても、麻雀を引退するのは、まだ先になりそうだ・・・・


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視線

テーマ:

何もする事のない休日。

たまには、友人が勤めているフリーにでも行こうかと思うが、

地元の駅から12駅離れているので却下。

近くのゲーセンで、プロ麻雀協会とセガが提携したMJ3を一人寂しく・・・

昇段戦にてセンターモニターに僕の手牌がリアルタイムで晒されている。

その映像を先ほどから眺めている若い女性が一人。

いや、モニターよりも、僕に視線を送る方が多いような・・・

局面は、オーラス。和了トップで以下の牌姿。

11223356799二三

ダマに構えて二順経過。

そこにツモってくる9。

普段ならノータイムツモ切りの牌だ。

一‐四が悪い待ちでも無い。むしろ和了が拾えそうな所。

唯、彼女の視線が、そうさせなかった。

打三。

ちらりと、女性の方に目を遣る。

その瞬間視線が合った。

モニターには目もくれず、僕だけを見ている。

(・・・惚れたか?この僕に、この打ち方に・・・)

次順、もってくる和了牌の二。

和了とらず。

打二。

次順、ツモ8。

打二。

こうなると、役満まで見えてきた。

1122335678999

和了牌が場に顔を見せないまま、数順。

親からリーチ。

そして和了牌であり、九連聴牌の4。

トリプルツモ和了。

だが、彼女の真剣な、憂いと、熱を帯びた視線が、そうさせなかった。

打2.リーチ。

(・・・感じたか?濡れたか?イッてしまったか?!この打ち方に、この僕に・・・)

親〈ロン♪〉

メンタンピン一発三色ナントカカントカ・・・三倍満。

肩をすぼめ、煙草に火を付け、煙を吸う。至ってクールに。

その時、女性が僕の方に歩いてきた。

(来たっ・・・)

『あのー』

「・・・はい?」

『失礼ですけど、何歳かな?』

(いきなり年齢からか、積極的だね)

『○○警察なんやけど』

・・・・・補導かよ・・・・

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レート。

テーマ:

今まで麻雀を打ち始めてから、最高のレートだった。


三打ちの500円、

35000持ちの40000返し。

沈み馬が5000円、飛びが10000。

一回の箱で35000円。



きっかけは友人からの電話だった。


「Nさんのマンションに来て欲しい」


二三度、セットで打っていた知人のマンションだ。

セットの面子が足りないのだろうか。


マンションの前には友人のUが立っていた。


U「昨日の夜からずっと打ち続けてるんやけど、

二人がアツクなって約束の時間過ぎても終わらん。

予定が有るから代わりに打って」


そういって、僕に札の詰まった財布を渡す。

30万ほど入っているだろうか。


U「負けたらこの財布から出していいから」



何でも、始めはピンで打っていたのがレートUPした末、500円になったそうだ。

Uが勝ち頭で約束の時間がきても、

二人が、

このまま勝ち逃げは帰さん

としつこく言ってきたそうだ。


『負けても知らんからね』

それだけUに言ってマンションの中に入っていった。



 あれは、もう麻雀じゃなかった。




部屋の中に入ると所有者のNと見知らぬ顔が二人。


『四人打ちですか?』


N「三打ちや。そこ座り」


すでに配牌が置かれている。


『あの・・・』


Nが牌を倒す。

N「天和やな。24000と祝儀で二万か。」


「早よ払いや」

後ろで見ていたジャージ姿が言う。



つまり、そういうことだった。

手っ取り早く、今まで負けた金を回収しようということだ。


黙って札を投げる。

『どうせ人の金だ。やれるとこまでやってやろう』


次局は対面のデブが理牌無しの面清をツモって

サッサと河に手牌をぶちまけ

『四暗刻。兄ちゃん、親やから22000と二万な。』




こんなやり取りが十数回続いてUが持たせた財布がきれいになくなった。



『もう、金ないですよ』


N「じゃあ止めやな。帰ってええで。」




マンションを出、Uに一部始終を話す。



『・・・・という訳で全額無くなった』



U「別にかまへんよ。そういう人間やと思ったし。

めんどくさい事巻き込んで悪かったな。

財布今度取りにいくわ。」


それだけ言って電話が切れた。




人の繋がりや、縁と言ったものは、大事にしたいと思う。


しかし、素性のはっきりしない人間とはやはり深く付き合う

べきじゃないんだろう。

知り合った場が、博打場なら、当然かもしれない。



Uの財布に残っていた一万円で飯を食いながら、そう思った。










半分以上フィクションです。あしからず。





飲み物。

テーマ:

雀荘の飲み物はそう種類があるものじゃない。

炭酸系が二種類とアイスコーヒー、オレンジジュース、後は、アイスティー。

それぐらいかな。


毎日毎日限られた飲み物を飲んでいると飽きる。


ある日、同僚のメンバーが得体の知れないものを

飲んでいる。


見た目は、ミックスジュースの様。

ただ、決定的に違ったのが液体の中に浮かんでいる澱。


一見するとオレンジジュースに水カビが入っている、様に見える。


「何、それ?」


『オレンジジュースにポーションミルク入れたんですよ。うまいですよ。』


一口、飲んでみる。


味は、オレンジジュースをまろやかにした感じ。



しかし、凝固したミルクの舌触りが、激烈な不快感を催す。




「・・・・よくこんなん飲めるな。」




口直しにメロンソーダにポーションミルクをいれた

《簡易クリームソーダ》

を飲む僕。


それを見た同僚。

『似たようなモンですやん。』



確かに、メロンソーダに水カビが浮いている様に、見えなくもなかった。

七対子。

テーマ:

昔、常連でKという人がいた。



順子手の作り方も上手かったが、

対子手の仕上げ方が、異様に上手かった。


ただ、変なこだわりというか、オカルトというか、

『2単騎は鉄板』

と何時も言っていた。

二でもなく、②でもなく、2。



一度後で見せてもらっている時、半荘一回で、

三局連続、2単騎の七対子を和了った事があった。


『な、2単騎は鉄板やろ』

僕の方を振り返り、笑った顔を憶えている。



そのKと同卓した時の一局。

七対子の聴牌で、2かドラの東を打ち出す所。

特に2がいい待ちでもないし、東は初牌。

2切りで良さそうだが、洒落っ気を出して、

打東、リーチ。


即座に、Kがツモ切り追っ掛け。

次順、Kが一発で引き和了る。

手元には2。



『これは鉄板やねん』


そういって、僕の方を見、笑った。




1or13。

テーマ:

その夜は久しぶりに

三人打ちのフリーで遊んでいた。


萬子の2~8を抜いた

比較的オーソドックスなものだ。



夜四時を回った位だろうか。

常連のKの打牌が遅くなる。


河に目をやると索子ズタ切りの筒子一色風。


手出しで字牌、筒子と出てくる。


途中で發がかぶった時に

少し苛立ち気味で河に叩き付ける。

『筒子の混一七対かな?

よもやの、面清七対まであるかも』



次順僕がツモ切った7に

Kからロンの声。



①①②②③③④④④7①②③


漫画ならたまに見るこの牌姿。

主人公の手牌が、左側からパタパタと倒される。

悪役の思考

《ちっ、つまんねえ待ちしやがって。

一盃口だけかよ・・・

何ー!、四暗刻単騎だー!?》


鼻で笑う主人公。

そして吐き出されるあの台詞。

《アンタ、背中が・・・(略)》



この一打で一万両。


この日はこの半荘以降

一度もトップが取れずだった。

麻雀卓。

テーマ:

店で使っている自動卓で、アルティマ、という卓がある。

牌山と一緒に配牌まで出てくる便利なものだ。


初めに見た感想。

「・・・なんだ、これは・・・」


気持ちが悪い。


サイコロの出目一つで配牌が変わってしまうのが麻雀だろう?

なんで始めから配牌が決まってる?

こんなんで天和が出ても認めんぞ。

いや、和了さえ認めん。



・・・現在、違う卓を使う時・・・



配牌取るのめんどくせー。


客『ツモ!』

【あぁ、地和だぁ!?ちっ、誰だよ、サイコロ振ったの?

おかげで親かぶりじゃねーか。】



結局何かに付けて、

文句を付けてしまうのが、僕の性質らしい。


残業。

テーマ:

我々メンバーの大半はアルバイトだと思う。

僕も例に漏れない。


アルバイトだから、当然時給で働いている。

店によっても違うだろうが、

大体時給800円前後が相場だろう。


で、店の本走の負ける瞬間で

一番萎えるのが、残業して負けた時。


普通の勤務の延長線で、時給もきちんとつくのだが、

何故か萎える。


例えば、一時間残業して、残業代800円。

その残業中の本走でラス×2→5000円。

差し引きマイナス4200円也。

          ・

          ・   

          ・

今日は黒で終わったと安堵している所に客、来店。


オーナー『もう一卓伸ばすから、残業して』

そして、ラス。

黒が反転して赤に。


オーナー『もう一回つないで』

そして、ラス。

赤が膨らむ。


オーナー『もう一人来るまでつないで』

そして、ラス。

赤が日当を超過・・・・

           ・

           ・

           ・

来ない客。順調に膨らむ赤。

アウトが二日分の日当に達する頃、

僕の中で何かが壊れる音がした・・・

符計算。

テーマ:

久しぶりの休み。


特にすることも無いので他所の店に新規でいった。


俗にいうギャル雀。


ミニスカートのメンバーの女の子がルール説明をし、

卓に案内される。




4800点差で迎えた一回戦目のオーラス。 

中盤にこの聴牌。

234678②③④二四六六   ドラ西

リーチを打たずとも条件を満たす聴牌。

・・・のはずだった。

終盤にこの形まま出上がる。

「ロン、5200」

 

『あ、それ3900ですよ』

・・・・そう言えばルール説明の時に

『当店は符計算はありません』

と言っていた様な。

全てを30符ラインで計算するルールだ、そうだ。

捲れずのアガリ二着。

符計算のテンパネなど、自分が覚えてきた麻雀の知識を

必要としない店のルール。

少し物足りない気がした。



帰り際、メンバーの子が

『お疲れ様でした』

と笑顔で言ってくれる。



例え、店のルールが気に入らなかろうとも、

笑顔一つでまた訪れようと思ってしまう自分。

中々単純だと思う。