2012-05-03 08:41:59

ミハエル・シューマッハの本当の凄さ

テーマ:モータースポーツ全般
今日は、少しホッとした出来事がありました。

GP3の契約問題で先週から揉めていたことが、やっと解決したのです。

モータースポーツの世界では、契約書は武器にもなり、凶器にもなります。

何十枚にも及ぶ契約書のいたるところに罠があるというか、言葉を裏読みするべき部分があります。

そんなことは百も承知で、逆にこちらもあえて明記して欲しくない部分があったりします。

契約書にサインして、正式発表をしても気は抜けません。

今年F1のシートを失ったヤルノ・トゥルーリ選手も正式に契約を交わしていましたからね。

ルールを味方にする、それはモータースポーツの世界では常識です。
それに秀でていたのが、ミハエル・シューマッハ選手です。


誰もが王者として崇める皇帝、ミハエル・シューマッハ。

F1を引退し、そしてまた復帰していまだ現役ですから、彼との思い出というと失礼ですね。
でも、少しだけ裏話をしたいと思います。


彼との出逢いは、彼がドイツF3選手権を走っていた頃にさかのぼります。

その年のマカオGPを前に、各国のF3選手権取材をしていた僕は、ドイツ選手権で気になる選手が3人いました。ミハエル・シューマッハ選手、カール・ベンドリンガー選手、ハインツ-ハラルド・フレンツェン選手です。後のメルセデス3羽ガラスと呼ばれた彼らは、確かにサーキットで光っていました。

その中では、当時、一番地味だったというか、影が薄かったのがミハエル・シューマッハ選手です。

「ミヒャエル・シューメーカー? 靴屋さんかな」って感じで声をかけました。

怖そうなマネージャーさん、ウィリー・ウェーバー氏がそばで威圧感を放っていたのが印象的でした。
(町田は、全然威圧的じゃありませんよ、念のため)

あまり英語が上手くなく、頬を赤くして海外取材に答える好青年。そんな印象の出逢いでした。


それから数カ月後、F3世界一決定戦、マカオGP。

予選から圧倒的な速さを見せていたのは、英国F3チャンピオンのミカ・ハッキネン選手でした。

当時のマカオGPは、第1ヒート、第2ヒートの合計タイムでレースの勝敗を決める2ヒート制でした。

第1ヒートで余裕のぶっちぎりを決めたミカ・ハッキネン選手は、第2ヒートでは、スタートからミハエル・シューマッハ選手の後方につけて、タイム的には常に優勝できる位置を確保しながら、いつでも抜ける状況を楽しんでいるように見えました。

そして運命の最終ラップ。そのままゴールしてもタイム的には優勝できたミカ・ハッキネン選手は、それでは満足せず、長いストレートエンドでミハエル・シューマッハ選手を抜いて、圧倒的な勝利を演出しようとしました。その瞬間、まさかの接触事故が起こります。

ハッキネン選手はあろうことか、ミハエル・シューマッハ選手のマシンのリヤウィングに激突。自ら自滅する結果となったのです。泣きじゃくりながらガードレールを殴りつけるミカ・ハッキネン選手の姿をわき目にしつつ、リヤウイングを吹き飛ばされながら、ゴールまでひた走るミハエル・シューマッハ選手。その姿を見ながら、「勝利のためなら何でもする、ウブなように見えて、実は本当に性根の座ったヤツだ。ミハエルは絶対にミカを罠にかけたな。間違いない」と、僕は確信しました。


当時、「AUTOSPORTビデオ」という媒体があり、翌週連続開催された富士スピードウェイ、「インターF3大会」の場で、副編集長だった村瀬さんがミハエル・シューマッハ選手とミカ・ハッキネン選手に、一週間前のマカオGPに関するインタビューを試みました。

「最終ラップの出来事について教えて欲しいんだけど」と村瀬さん。
「レースだからね。ずっとトップを走っていて、最終ラップの最後のストレートで抜かれそうになったら、誰だってやるよ」とシューマッハ選手。

「何をやるの?」と突っ込む村瀬副編集長。
「僕と同じことをさ」としらばっくれるミハエル・シューマッハ選手。

続いてハッキネン選手にマイクを向けた村瀬さんは、

「ミハエルが最終ラップに抜かれるぐらいだったら、誰だって僕と同じことをするよって言ってたけど」と振ると、
「言ってくれよ、何をやるんだ? 同じことって、何をするって言うんだ。アイツは何をやったんだ? 何かをやったんだよな! 何をしたか正直に言ってみろよ!」と興奮気味。
かなり面白い映像が撮れたのを覚えています。


その富士インターF3での決勝前のドライバーズ・ブリーフィングの時のことです。

初めての大会であり、参加台数が異常に多かったために、決勝進出へのルールが複雑で、ジャーナリストの僕も予選から決勝までの勝ち抜き戦のシステムを完全に理解していなかったのですが、第1ヒートでリタイアしたミカ・ハッキネン選手が第2ヒートにシード選手として出られるかどうかという段階になって、主催者側も混沌としていました。

そんなとき、ミハエル・シューマッハ選手が僕の隣に座って分厚いルールブックのある項目を指さしてこう言いました。「この項目がある限り、ミカは決勝には進出できない。それをみんなに教えてやってくれ」

彼は本当に冷静にルールブックを熟読玩味していたのです。
その指摘どおり、ミカ・ハッキネン選手は決勝進出なりませんでした。


時がたち、全日本F3000選手権にミハエル・シューマッハ選手がスポット参戦した時の話です。


彼はチームメイトのジョニー・ハーバート選手を圧倒するパフォーマンスを見せるのですが、実はジョニー・ハーバート選手が使っていたあるパーツが気になり、ジョニーが帰ったあとでチームのエンジニアに「あのパーツを決勝では僕のマシンにつけてくれ」と主張していたのです。

そしてタイヤメーカーの浜島エンジニアのところへ出向き、予選用タイヤの美味しい使い方を事細かに深夜まで訊いていました。誰よりも遅くまでサーキットに残り、自分が有利になる可能性があることは、徹底的に主張する。そんなドライバーでした。

見事に表彰台獲得でレースを終え、表彰式を終えた帰路、チームの人から頼まれて、ミハエル・シューマッハ選手と一緒に新幹線のグリーン車で東京まで一緒に帰りました。

隣の席に座って、日本円がまったくないというシューマッハ選手に缶ビールを奢り、ささやかな祝杯をあげました。何か良いことがあった時にしかお酒は口にしないという彼も、異国の地でのF3000でデビュー戦表彰台は、さすがに祝いたい気分になったはずです。
しだいに打ち解けあい、こんな言葉が彼の口をついて出てきたのを覚えています。

「もちろんF1ドライバーになりたい。それだけが夢なんだ。アイルトン・セナ選手と一緒に走りたい。それができれば、お金なんかいらない」と頬を赤らめながら、自分に言い聞かせるように語り、また軽く、ビールに口をつけました。


「ひとつ訊いていいかな?」と、突然、ミハエルが言い出しました。
「何?」と僕。
「日本にはルイ・ヴィトンの安売り店があるのかい?」
「は? なんで? ないと思うけど。ヴィトンはブランド品なので値引きしないよ」
少し考え込んだ様子のミハエル・シューマッハ選手は、おもむろに新幹線の荷物棚を指さしてこう言いました。
「だって、この電車に乗っている人たちは、みんなルイ・ヴィトンを持っているじゃないか。ヨーロッパでこんな光景は見たことないから、きっと日本には安くルイ・ヴィトンが手に入る店があるんじゃないかと思ったんだ」

少し、日本人でいることが恥ずかしくなったのを覚えています。


$モータースポーツ疾風怒濤2012

恥ずかしいついでに公開してしまいますが、当時、町田はTVのピットレポーターをしていました(汗)。僕から優勝インタビューを受けているロス・チーバー選手の左隣が、若かりし日のミハエル・シューマッハ選手の姿です。


翌週、F1ベルギーGPの取材でスパ・フランコルシャンへ旅立った僕は、ジョーダンのコックピットに座っているミハエル・シューマッハ選手と思わぬ再会を果たしたのでした。

わずか1週間後に、夢が叶ったミハエル・シューマッハ選手。
本当の凄さは、実はここから始まりました。

(以下、今晩は眠くなってしまったので皆さんのご要望があれば続編へ.,...)



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コメント

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6 ■おはようございます

是非、続編を希望します!

5 ■無題

続編見たいです!!

4 ■ロス、なつかしいね

おぉ、マッチこいつはロスじゃないか。なつかしいなー。コイツは滅法速かったね。雨天、鈴鹿のタイヤテストでは俺のほうが速かったけど、ドライではまったく競争にならなかった。ストレート遅かったからなー俺のエンジン。チューナーは誰だっけなぁ

3 ■無題

見入ってしまいました。
続きお願いします!

2 ■無題

とても面白い話ででした。続編を見れるのであれば是非とも読みたいです。

1 ■無題

そんな恥ずかしくなるような事でもないですよね。

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