つながりの書20 2-7『箱根生活』 | 地球が喜ぶ仲間を作る! at 千葉県で自然な生き方の追求と普及

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『1000年先へつなぐ地球家族』をテーマとし、地球人としての理想的な生き方を追求していく活動期

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第2章 破滅と浄化
2-6『修行僧直伝の瞑想』の続き> (目次はこちら
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真夏だった。

僕が住み込むところは
箱根登山鉄道の一番上にある終着駅、
強羅という地だ。

2両の赤い電車は、
ぐねぐねとした経路を40分ほど
ゆっくりと僕を運んでくれた。

観光案内の車内アナウンスと、
明るい緑や深い緑、
鮮やかな紫色の紫陽花たちが
歓迎してくれた。

駅を降りると、
更に上に行くためのケーブルカーと
外に出る改札があった。

まだ上があるのかと思いながら
僕は外に出た。

小さな店や旅館が
自然の中に点々と建てられていた。

地図を見ると、
目的のホテルまでの道は

まっすぐ行って
右折して坂を上るか、

先に右折して
坂を上って左折してまっすぐ行くか、

どっちにしても
坂を上らなければならなかった。

思った以上に長くて急な心臓破りの坂を、
少し息を切らしながら上り、

13時頃にホテルに着いた。

近くにあって生活で使えそうなのは、
夜7時に閉まる個人経営のコンビニと、

観光地にありがちな値段設定の
飲食店くらいだった。

「こんにちは。
 ヒューマニーから来ました星です」


「アルバイトの方ですね、お待ちしてました。
 荷物が届いてますよ」


フロントの笑顔が素敵なお姉さんに
派遣会社名と名前を伝えると、

先に送った荷物が届いているので
部屋に持っていくように案内された。

衣装ケースを入れて
4箱の荷物を台車に積んで、

担当となるマネージャーを紹介された。

「宜しくお願いします」

「おう、じゃあ部屋を案内するから。

 今は荷物があるからエレベーター使うけど、
 俺たちは普段は階段な」


「はい」

マネージャーは少し色黒で
背は僕より少し低いが体格が良い。

笑顔はなかった。

「接客は経験あんのか?」

「はい、居酒屋のホールは何店舗かでやりました」

「お前そんな声で大丈夫か?
 接客できんのか?」


最近人と話していなかったためか、
あまり声が出ていなかった。

部屋を案内されると
そこは普通のホテルの一室で、

二段ベッドが3つと、
小さなテーブルとテレビ置いてあった。

現状4人がそこで寝泊りをし、
その部屋は仮眠・休憩室としても
使われているという。

今もベッドで寝ている人がいる。

僕は住み込みのバイトは初めてだし、
寝床は屋根と壁があればいいタイプなので
「こんなものか」と思った。

荷物を置いて
館内を案内してもらいながら

ここのルールなどを聞いて
部屋に戻った。

「今日は来たばかりだから夜は休みな。
 明日は朝6時にレストランに来いよ」


「分かりました」

そう言うとマネージャーは
部屋を出て行った。

しばらくすると
ベッドから1人が起き上がった。

はじめましての挨拶をして少し話すと、
ここの環境は他と比べて良くないようだ。

自分専用のスペースは
ベッドの上だけ。

温泉には毎日入れるが
そこの造りは銭湯と変わらない。

賄は仕事があった日のみ
残り物を食べることができて、

豪華な時もあれば
ご飯とみそ汁しかない時もあるそうだ。

朝は6時半から仕事で、
宿泊客の朝食の準備と提供、皿洗い。

10時頃に終わって
今度は17時から夕食の対応を2回転こなして、
全部終わるのが23時。

仕事がない日や休憩時間は、
寝るか散歩するくらいしかやる事がないようだ。

次の日、そしてまた次の日と
仕事をこなした。

3日もすると、
マネージャーは急に厳しくなってきた。

「何やってんだよ、早く動けよ」

ある程度は仕事なのだから
修行だと捉えていたが、
理不尽な事も少なくなかった。

仕事仲間に聞くと、
自分が最も正しいと思っている
帝王のような人だと言う。

今は少し丸くなったそうだが、
昔はもっと酷く、
泣かされた人も少なくないようだ。

顔も性格もジャイアンみたいな人で、
機嫌が良い時と悪い時のギャップが激しく、
それが切り替わるスイッチも掴めない。

苦手なタイプで、
仕事以外でも一緒にいるだけで
監視されているような感覚がする。

僕は元々自然が好きで、
木々に囲まれた知らない道を
探検しながら散歩したくなる。

僕は休みの日には歩いて行ける距離を
四方八方へと歩きまくった。

木のトンネルを通り、
滝の音で癒され、山にも登った。

住宅街も見つけ、
幾つもの神社にお参りをし、

駅から他の駅までの近道も発見した。

お金はあまりなかったので
美術館やユネッサンという温泉レジャー施設は
その周辺を楽しみ、

せっかくなのでと思って
少しだけロープウェイで更に上の観光地へと
足を延ばしてみた。

⇒『内観』へ つづく

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