2005-11-27 01:33:23

名も無き旅路の物語 00

テーマ:名も無き旅路の物語

■ 名も無き旅路の物語 ■




歪んでいた。
愛情が、日常が、世界が歪んでいた。



可哀相なシルビア


私が連れ出してあげる
望む物を与えてあげる

愛してあげる
貴女の全てを・・・

世界の全てを・・・



起きてくれるわよね?シルビア。
こんなにも世界は光に満ちているわ!


起きて目を開けなさい。シルビア。
こんなにも貴女を祝福してるじゃない!


起きて私の愛しい妹。冗談よねシルビア?
こんなにも私は呼びかけているのに!


起きて。ねぇ、起きなさい。シルビア。
メルビナも待ってるわ。母様も、父様も愛して下さっているわ・・・





切り立った崖と深遠に続くコバルトブル-の海。

天然の城砦とでも言えよう断崖絶壁の裏側に、落ち窪んだクレーター状に広がった街・・・

フォーチューンに数ある都市の中であっても、このベイラの街は特殊な治世をされた都市であった。

噂で聞いた者たちは、口を揃えてこの街をこう伝え聞いたと言う。


『完全な女系統治者による絶対支配された街』


率直に言えばこの言葉が伝えるニュアンスは酷く曖昧であり、そのためか根も葉もない噂が尾ひれをつけて語られ伝えてゆく事もしばしばであった。

時代と運命と混沌に彩られし『 ベイラ 』の名を継ぐ女達・・・

クラウンと共に継承されし、『 クシュリダール 』の名の真の意味を知る者は少ない。


一つの物語が幕を開ける・・・





静かに凪が広がる日であった。

海は普段と変わりなく穏やかで、高地特有の潮を帯びた風が崖一帯に広がった風車を回し、粉を挽く石臼の音があちらこちらで聞こえてくる。街は美しい日常を送っていた・・・

その街を見下ろすようにして建てられたひときわ大きな洋館から物語は始まる。

簡素ではあったが質の良いインテリアで固められたその部屋は美しく、たった一つの事を除けば誰もが羨むような部屋であったろう。

そう、その部屋は普通ではありえない数の、仰々しい呪印で覆われていた。


声が響く。やり場の無い怒気を孕んだ罵詈雑言が、普段静かな廊下に響き渡っていた・・・

部屋の中、一人の女がひたすらに取り乱していた。
待機する数名の女中達が、静かに嗚咽を漏らす中、マルレーンは必死に伏せった妹に懇願していた。
それは最早次女シルビアにではなく、世界に、守護者に、神に対する祈りであったのかもしれない。
微かに連なる呼吸音だけが、ここに横たえられた少女の生死を判別する全てであった。
それが今、途切れんかと言わんばかりに弱まっていたのである。
熱い涙が迸り、マルレーンが天蓋から垂れ下がるレースを引き裂いて抗議する。
「ガート!貴様、我が妹を見捨てるかッ!?」
女中達の列に居並んで、一人仰々しいガープを羽織った老人は、おずおずと進み出てマルレーンの前に膝を折って頭を垂れた。
「申し上げますマルレーン様。医術・魔術共に我が持てる全てを賭しました故、これ以上のシルビア様のご病状は・・・」
微かに震えた翁の声は途中で途切れる。握られた錫杖の先より精製された漆黒の鎌が、冷たく主治医ガートの首に掛けられていた。
「諦めろと?そう申すかガート・・・シルビアにそう言えと申すか!!」
マルレーンの嘲笑の含んだ言葉とは裏腹に、その瞳は氷のような冷たさと漆黒の闇炎を湛えている。
握り締められた錫杖は、微かな主の力加減でその刃を内に引くよう魔力を放出していた。
「プリンセス。この枯れ木、必要ならば御刎ね下さって結構。されど如何なる法も罷り通りません。呪は法では消せませぬ。御理解を・・・」
旧家ベイラに60余年に渡り勤しんでくれたこの翁は、元より全てを捧げたこの君主の娘に対しても、決して臆する事はなかった。

闇炎が微かに瞳の奥で揺らいだ。刹那、錫杖は闇に満ちた闘気で満たされ、そのオーラを四散させた。
冷たい輝きを湛えたそれを床に打ち捨てて、マルレーンは自身を落ち着けるように乱れた前髪を横に流す。
何故か母の顔が浮かんで自身を戒める。
『母様が海路遠征の折、私が自重しなくてどうするのだマルレーン・・・』
長く結った髪を解き、領主代行として賜った母のローブを脱ぎ捨てる。
女中達が驚き、マルレーンの前に駆け寄ろうとするが、彼女の一歩手前で障壁に弾かれてしまう。

ガートの顔を覗き込み、フっと小さな笑いを見せる。

「惜しかったなガート。貴様がシルビアの体を治せるならば、この体くれてやっても構わなかったが・・・だが、もう遅い」

言葉とは裏腹に、マルレーンの額に薄らと汗が滲んでいた。
「マルレーンさま・・・お答え下され。いつ、その『 呪 』を交わされました?」
障壁が女中を弾いたい瞬間、光の方陣を見極めたガートが冷や汗を流して目を見開いた。
その顔は蒼白で、シルビアの治療をしている時のそれを超える絶望感に満たされた表情であった。
「どうか!どうか!・・・引き返なされっ!!今ならまだ間に合いまする!」
叫ぶガートを横目に微かな笑みを浮かべたまま、薄い純白のアンダーを全て外して裸体を晒す。
マルレーンの白く透き通るような肌に、淡く光る呪印が全身に描かれていた。
「よい。言うなガート。解っている。だが、引く訳にはいくまい?私はこの子の姉だ。導かねばならん。・・・我儘だ。許せ」

天を仰ぐ。

普段あまり好きではない潮風が、今はただ恋しかった。
しかし、この部屋には決して開かれる事の無い、巨大な梨地のガラス窓しかない。
外界の景色も見る事も出来ず、世界の風を肌で感じる事も無く誕生してから15年、ここに眠る妹は一人ベッドの天蓋に描かれた世界しか見る事は無かったのだ。
「シルビア。貴女はこれから光溢れる世界に帰るのよ・・・姉さまがきっと、導いてあげる・・・」
ベッドの端に体を横たえ、シルビアに微笑みかける。
闇との契約。星詠みの力。古代魔術の読解。全てを併せた荘厳な呪文の詠唱が始まった。
強大なオーラの本流の中、異変に本能的に気付いたのであろうか、雪より白く氷よりも透き通った瞼が、ゆっくりと開いた。
焦点が合うにつれ、大好きな姉の姿が見える。その姿は苦痛に耐えながらも、懸命に自分に向けて優しげな笑みを送ってくれていた。
目尻に微かな涙が光って、シルビアは床の中から微かに口を開く。
「姉さま・・・あぁ。死にたくないの。世界を見たいの・・・」
「大丈夫よ。姉さまがきっと・・・・・・ぁ・・・光の中へ・・・」
呪印が光を撒き散らし、因果の輪を捻じ曲げて生命の奔流を擬似的に生み出していく。
その姿は天龍のような神々しさをもって、嬉々としてシルビアの中へ入ろうと、部屋中にその力のとぐろを巻いている。

急激に上昇した気圧変化に対抗できず、ドアが、インテリアが・・・激しく音を立てて吹き飛ばされていった。

爆散した光の奔流に包まれて・・・


小さな世界は・・・閉ざされた。



眩い太陽の光が差し込む街。

人々の顔は輝き、ベイラの街は安息に包まれていた。


『 マルレーン・クシュリダール・ベイラ 』 こと 『 御手洗 なでしこ 』

17歳の時であった・・・







■ 功誌朗的裏話 


なでしこさんが可愛そうなんで、ネムだけじゃなく『なでしこさん』の過去話を暴露。

てか、設定のみだけであった4姉妹のお話を書いてみた。

まだ長女・次女しか出てないけど(ぁ

しかも次女死んだし(ぉ

三女オトコスキーだし(何

四女海賊だし(ぇ


まあ、なでしこさんの皮肉めいた職業プリーストからの出発は、こんな経緯があったためとか今更に暴露。

どっかのkyataくんはこれの元ネタ見たの3年ぶりぐらいかにゃあ?

まあいいさ。気が向いたら後の話を書きまする。

多分気が向かないだろうけど(汗






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