2005-11-29 22:35:28

日乃瀬物語 外伝 (ミカミ)

テーマ:日乃瀬物語

■ 日乃瀬物語外伝 ■



 『 ミカミ 』



深夜の繁華街、街灯が煌々と照らす薄明かりの中を『池谷ミカミ』はひた走っていた。
侵魔なるモノが介入してくる世界。その只中に一人、彼女はそこにいた。
『追手は一体のみ・・・ま、ヤるだけヤってから後悔しなきゃね!』
薄暗い巨躯を揺らしてソレは現れる。
闇からの訪問者『エミュレイター』であった。
侵魔は事も無げに、その喉を鳴らして小さく威嚇する。一度聞き入れてしまったならば、まず人であれば耐えられぬ恐怖。それを今、その小さな体躯で少女は受け止めていたのであった・・・。
脳裏がチリチリと、焦げ臭い感覚に襲われる。
そんな中、ミカミはじっと敵を見据えながらも、周囲を舐めるように見渡していた。
「チッ・・・。文字通りの袋小路カ・・・」
行く先々で出くわすアクシデント。ミカミが思っていたよりも、深夜のアーケードはそれなりに人目があったのである。彼女は一エージェントとして任務を遂行するためだけに、自らを僻地に追い込むことしか出来なかった。
侵魔は幾重にも連なる小さな瞳に少女を映し、巨大な尾を犬のそれの如く軽やかに振っている。
「バカにして・・・後悔させてやるんだからね!」
ミカミが手を翳す。何も無い空間であった筈のそこに、光が集中した。光は瞬時に広がり、水のエフェクトをミカミの周囲に張り巡らせる。
侵魔はそれを見ても怯む事無く、じりじりとその間合いを詰めていった。
今ここにいる侵魔の目的、それは『狩る』という事のみ。
「ヤな奴。ちょっとぐらいビビりなさいっての」
ミカミの声に侵魔が吼えた。冷たいアスファルトを蹴り、這うような態勢でその腕を少女に突き放つ。
無論、小さな少女の体は瞬時にして引き裂かれた。侵魔は目に見えるそれと、腕に伝わってくる筈の感覚が無い事に苛立ちを覚えて、さらに周囲に警戒の雄叫びを上げた。
侵魔が捉えたモノ。それは拘束移動するミカミの残像であった。
紅い月の下、煌々と照らされて少女の体躯が宙を舞っていた。
「バカね。わざわざこんなトコに逃げ込んだってのに、考えなしにとでも思っていたのかしら?」
声に反応した侵魔が空を見上げると、月明かりを背後にし、少女は得意げにその巨体を蠢かしていた。
紅月の光に煌めく鱗。空を悠々と泳ぐその姿は、もはや魚のそれを通り越して、巨大な一匹の龍を連想する。
侵魔の瞳はそれを直感で『危険』と判断した。生物本来のそれは、もはや意識レベルでの行動を求めた。侵魔の巨躯が大地に還ろうと蠢く・・・
そして、プレッシャーに耐え切れずに侵魔は大きく吼えた。
『ガァァァァァッ』
口から吐き出された溶解液が、冷たいアスファルトに巨大な穴を開けていく。ブスブスと融けたコールタールが嫌な異臭を周囲に放つその光景は、まさに地獄を連想するものであった。
「逃げる・・・ねぇ。エライエライ。でも、逃がす訳・・・ないでしょ!」
浮遊する魔物から飛び降り、その体に水の障壁を展開させる。ミカミは白銀の鎧に身を包み、離脱しようとする侵魔の背中に飛び乗った。
突然の事に体を揺らし抵抗する侵魔の姿は、もはや当初ミカミを追い立てていたモノとしての威厳を、今や完全に失っていた。
「そういうズルっぽい所がサァっ!嫌いなんだよッ!」
遣る瀬無さの混じった怒りの中、ミカミの腕には一振りの剣が握られていた。ウェポンフォームによって生み出された白銀の剣。それを躊躇う事無く侵魔の背に突き立てる。
黒とも闇とも言えぬ血飛沫がミカミを濡らしたが、それでも彼女は力を抜く事を止めなかった。
だが、侵魔が渾身の力を持ってそれに抗議した。体を高速で振動させ、体内に蓄積された瘴気を無理やり放出する。それは漆黒の電流に変異すると、ミカミの剣を伝って彼女に襲い掛かったのだ。
「ぐっ・・・い、痛いじゃ・・・ないの!」
相対する異種の闘気を無理やりに浴びせられ、ミカミの表情が曇る。それを見て侵魔は遮二無二体を揺すり始めた。暫くは耐えていたミカミであったが、徐々に表情が険しくなってくる。
「クッ・・・無駄に知恵なんかつけて!」
窮地に追いやられた反動か、侵魔は背なに刺さった剣を意識してか、筋肉を膨張させて逆に剣に圧力をかけ始めていた。白銀の剣は撓り始め、音にならないダメージを確かに与え始めていた。
体も半分以上が大地に埋まり始めていた侵魔は、そんなミカミの姿を見てスパートを掛けた。渾身の力を込めて背中の筋肉を膨張させる。
少女はたじろいだ。少なくとも侵魔にはそう見えたのだ。『コイツは武器らしい武器を他に持ってはいない』
侵魔を取巻く闇の瘴気が濃くなっていく。確信が絶対の自信に変わる時、侵魔の口が嫌味なまでの笑顔に真横に裂ける。
笑っていた。
「フフフ・・・あーっはっはっは!」
ミカミが笑っていた。
「賢いわねお前!賢いじゃないの!でも、お前なんかが思っているほど私はっ!」
全霊を込めて銀剣を引き抜くと、ミカミは新たに侵魔の体躯に深々と突き立てる。
「脆くはッ!」
意外なまでの行動に動揺し、激しい怒りの咆哮をあげつつ、侵魔の腕が背中のミカミを捉えようと、風を切りつつ振り回される。だが、それが届く前にミカミは侵魔の背を蹴り飛び上がると、柄にありったけのプラーナを注ぎ込んだ。
「無いってノっ!」
アーテラリィ・フォームによって瞬時に蛇腹状に細分化された刀身が、美しい真円を描きつつ再度引き抜かれ、侵魔の巨体内部をズタズタにしていった。
たまらず侵魔が叫び声をあげる。それは先ほどまでの自意識的なものではなく、明らかに侵魔の体が求めた反射行動からなるものであった。
漆黒の瘴気を帯びた血飛沫がミカミを頭から真黒に染めていく。額を伝って落ちるその体液に、思わず瞳を閉じてしまったミカミは『しまった』と思ったが、追い詰められていた侵魔は既に行動に移していた。
ミカミの体が宙に舞った。
たった一瞬の体制維持が出来なかった為に、渾身の力を込めた侵魔の身震いによって、その小さな体は冷たいコンクリートの壁に叩きつけられたのだ。
「がっ・・・は・・・!」
嫌な鉄臭い匂いが口いっぱいに広がっている。同時に吐き気と頭痛が襲ってくる中で、ミカミは肋骨が幾つか折れている事に気付く。
『く・・・ヤバイけ・・・ど・・・逃げるもんか!』
力が全身から抜け出ていくような虚脱感を感じつつも、ミカミの心にはそれを補おうかとするかのように、沸々と怒りに似た闘志が湧き上がり、その体の痛みを和らげようとする何かが蠢いていた。
『逃げない』という事。それは『ウィザード』としての力を確信した時、彼女の中で取り決められた絶対のルールであった。だが、そこでミカミはふと気付く。
「剣・・・は?」
先ほどまでしっかりとその手に握られていた物が見当たらない。信念を結晶化させたかのような我が身の分身が、今ミカミのその手中には無かった。
地面に落ちた影より濃い闇色の影が、軽やかに左右に激しく動いているのが見える。巨大な尻尾をこれでもかとばかりに嬉々として振るその姿は、ミカミの背中に嫌な寒気と冷や汗をかかせるに至っていた。
目前の侵魔の腕にしっかりと掴み取られているそれを見た時、ミカミは小さく苦笑した。
「返しな・・・さいよ・・・お前には高級すぎ・・・る代物とは・・・思わな・・ぐッ!」
視界が一瞬白くなって咽込むと、黒い液体の塊を吐き出していた。全くもって夜でよかった。昼であれば否応なしにこの出血量の事を自覚せねばならない。
そうなれば、きっと意識が鈍ってしまう。
『くっ。この量・・・肺も逝ってるカモね・・・』
その姿を数メートルの鞭状に変異した一振りの銀剣は、最悪な事にその柄を侵魔の腕に委ねられていたのだ。
紅い月光に照らし出され、美しいその刀身は眩いばかりにその身を光らせている。
それはまるでミカミに『心配するな』と示唆しているかのようにも見えた。
それが侵魔には、不快以外のなにものでもないのだ。
巻きつけた醜く長い指が幾らか深く傷つこうとも、侵魔はその銀剣に力を込め続けていく。
限界以上に引き伸ばされると、ミカミの銀剣は嫌な軋み音をあげながらその輝きを鈍くする。
ギ・・・ギ・・・ギチ・・・ギィン!
闇夜に鋼の破片が四散する。
美しく響く破壊音の旋律に乗って、ミカミの白銀の剣は粉砕されたのだった。
「この!よ・・・くも!」
ミカミの声が上ずっている。侵魔は体躯を震わせて、四散した銀剣へ込めた力を解いた。
ガシャンと冷たい音をさせながら、銀剣は地面に打ち捨てられる。侵魔もまた深く傷ついてはいたものの、その表情には薄ら笑いをする余裕がまだあった。
人ならばこうした時、どうするであろうか?
そんな疑問がふとミカミの脳裏に過ぎる。
「く・・・笑うしかないカモね」
必死にビルの壁に這った排水パイプを支えにして、ミカミは近くに呼び寄せた契約魔物の背に素早くしがみ付く。
すっと、顔を上げて侵魔の表情を見て、ミカミは笑った。
「何さ。エミュレイターの笑顔な・・・んて見たくもないって・・・の。このバカっ!」
侵魔は笑っていた。
その巨大な口を縦横いっぱいに広げ、先ほどまでの絶望感から解放され・・・勝利を確信して笑っていた。
「この・・・絶対こうか・・・い・・・させ・・・」
言う前に、ミカミは契約魔物ごと地面に叩き伏せられていた。指示をまともに与えられずに、通常通りとまではいかない動きしかできぬ契約魔物を叩き落す事ならば、今の侵魔にとっては造作も無い事である。
体が小さく痙攣し始めるのを感じて、アスファルトの上でミカミは覚悟を決めた。意外にもあっけないものだなぁ・・・と思えば、不思議と恐怖が麻痺していくのが分かった。
薄く目を開けると、目の前に契約魔物が元の一匹の金魚のような姿に戻って宙を浮いている。
『あはは。ダメだよポポロさん・・・逃げていいから。私はもういいから・・・』
口の中を切ったのだろう。呂律が回りにくくなっている最中、口に出したい事が次々と頭の中に生まれては消える。
ミカミは今、無力であった。
『眠い・・・』
今や横向けになった体を起こし、仰向けになる事すら億劫で・・・ミカミは静かに瞳を閉じようとしていた。
ニヤニヤとした表情で、侵魔はとどめと言わんばかりにミカミの体を握りつぶそうと持ち上げる。体に走る激痛に耐え切れず、ミカミの意識が否応なしに表面に押し出されていく。
「あが・・・あ・・・あ・・・あ・・・」
苦しみの中で見開かされた瞳に映るそれを見て、ミカミは運命を呪った。
そこには、醜い侵魔の顔があり・・・
その数メートル先には立ち尽くした一人の若い男の姿が見えたのだ。
「にげ・・・て・・・はや・・・」
先ほどまでの激しい物音に驚いてやって来たのだろうか、はたまた小さな正義感から、喧嘩の仲裁程度に考えて駆け寄ってきたのであろうか。どちらにしろ、月匣の展開時に誤って取り込まれてしまったのだろう。
あんなにも驚いて・・・立ち尽くして・・・声も出せずに・・・巻き込んでしまった・・・
『ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・・』
罪も無い一般人を居合わせてしまったこの残酷な運命に、ミカミの頬に涙が伝った。
過信からくるミスにより、自らが傷つき、最悪死ぬ事があってもそれは仕方が無い事だとは納得できた。
だが、それが他の生命までもが不条理な計りにかけられてしまうという事。
それが情けなくて涙が出てしまうのだ。
見開いたままのミカミの瞳に映る虚像を見て、侵魔はミカミを掴んだままに後ろを振り返った。次の獲物を手に入れたのだ。その顔は満面の笑みに包まれていた。
侵魔はニタリと笑って考えを巡らせる。
生憎と両腕は予約済みである。
これからミカミの柔らかな体を引き裂くという、一大イベントの準備の全てが整っているのだから。
ならば足はどうだろう?
蹴り上げられるかと片足に体重を載せようとすると、背中から腹の内側にかけての傷が猛烈に痛んだ。思わず巨大な尻尾がピンと硬直するのが分かる。
・・・獲物もエモノも決まった。
尻尾がビュンと風を切って、立ち尽くしたままの不運な男に叩きつけられる。
「や・・・やめてぇッ!」
ミカミの最後の気力を振り絞って出した懇願の声が、闇夜のビル群の隙間に消えていく。
ビルの壁に深く巨大な亀裂が走り、噴出した蒸気に似たプラーナの奔流がアスファルトを突き抜けてマンホールを高々と宙に飛ばす。
男を捕らえたと思われたその攻撃は、男の数メートル手前で突如起立した、コンクリートの分厚い壁に阻まれて完全に静止していた。
「無粋ですねぇ。私はまだ何もしてないというのに。そんな短気な事では、勝てる戦も勝てませんよ?」
男は小さく笑い、眼前に出現させたアース・シールドを只の土くれに戻してしまう。
驚愕に顔をしかめた侵魔の姿を見、男はゆっくりとその手を高く上げる。
その手には、太陽の輝きが形作られていた。
「いやはや全くもっていい夜だ。今夜は空気が清んでいるから、さぞかし星が見事でしょうに。・・・そうですね。こうしましょうか?」
土埃の舞う中で、男は肩に積もりかけた埃を軽く掃いつつ、侵魔に対して優雅に微笑んだ。
いい知れぬ恐怖に侵魔が後づさる。だが、奇しくもこの袋小路は侵魔自身がミカミを追い詰めた格好の場所。
先ほど自身が開けた穴も、いつの間にかコンクリートで無理やりに埋められてしまっていた。そう、退路は既に絶たれていたのである。
「綺麗な夜空を返してもらいましょう。それに、そちらの一等星もね?第一に、闇如きに女性の扱いが分かるようには、到底思えませんしねぇ」
言いながら、もう片方の腕を突き出して小型の弓を展開さる。しっかりとした足取りで、男は一歩前に進む。
ミカミの頬を伝っていた物は、今や跡形も無く消えていた。
この男は誰なのだろう。この光は何なのだろう?
何故か逞しく、美しく、愛しく思えてならぬ光を湛えた男を前に、ミカミは言い知れぬ恐怖と安堵を同時に感じていた。
「闇には勿体無い光だが、これを機に生まれ変わればいいのだよ。光ある者へ・・・ね?」
咄嗟に侵魔はミカミを盾にし、その只ならぬ魔力の塊から逃れようと奔走する。しかし男はそれを無視して尚もその魔力を凝縮し続けている。
「その行為は私には無意味だよ。的確に、お前だけを私は消せるからねぇ」
小型弓に巻き込まれた呪札が輝き出す中、また一歩また一歩と男は前に進み出る。
ミカミもまた、全てを受け入れてか身動きせずに、じっと男の動作を見守り続けていた。
男が更に一歩前に進み、そして最後の言葉を紡いだ。

「日乃瀬ソウタツの名の元に・・・『ディヴァインコロナ』」

爆散する光が侵魔を包み込み、瞬間的に侵魔の巨躯を蒸発させていく。ミカミの体がフワリと浮かび、真下で構えたソウタツがそのまま引き寄せる。
結果、抱きかかえられるような格好になるのだが、不思議とミカミにはそれが心地よく、純粋に嬉しく思えた。
「ごめんな・・・さ・・・あ・・りが・・・」
礼も言えぬまま、ゆっくりとミカミは意識を失っていった・・・



ソウタツとミカミ、若い二人の出会いはココから始まった。





 近状 ■


まったりと仕事再開な功誌朗ですよコンバンワ。

文字ネタが最近続いています。

てか、実情を言うとですねぃ。

ホントに日中が忙しくてネタが仕入れられません!(爆

理由がありまつ。

閉まっちゃうもの。

玩具屋とか玩具屋とか玩具y(蹴り蹴り蹴り蹴り蹴り

えへへー

なでしこさん 「五月蝿いのよこのバカっ!」(踏み踏み踏み踏み踏み


功誌朗 「ああっ!貴女はこないだ暴露話された実は偽名使ってた妹殺しn(蹴

なでしこさん 「誰がいつどこで何時何分何秒言っていいって言った!?このッ!このッ!」


功誌朗 「ああ、ララア。時が見えるよ・・・・」

なでしこさん 「沈めっ!海の底へ沈めっ!」


功誌朗 「なので今回のはネムのご両親話にしてみた。因みに次の話はソウタツのお話でつ。まだ途中だけど1日ありゃ書けます。今回のもネカフェに着いてからポリポリと書いてたやつだし」

なでしこさん 「そういう能力は仕事で使いなさいよ・・・(汗」


功誌朗 「嫌だね!だってそんな事したら、事務系の仕事までさせられちゃうじゃないノ!アンタ、バカっ!?」

なでしこさん 「あーー。あったわね。アスカのポスターとか・・・昔のアンタの部屋に


功誌朗 「誰かーー!止めてっ!この女を止めてぇーーっ!おぉぉ・・・ファラオがお怒りじゃぁー!メンフィスさまぁーー!」

なでしこさん 「誰がメンフィスよっ!?何でよりによってあんな黒い男の役所・・・っと(汗」


功誌朗 「ああいう大御所の漫画は、ネタにすると後が怖いのでこの辺でお開きにしませう

なでしこさん 「・・・・・・異議なしーでーす」


功誌朗 「何かわい子ぶった言い方してるの?歳は?職業は?息はぁ~ってしてみて。お酒飲んでない?免許持ってる?」

なでしこさん 「何を職務質問してるのよ・・・って、何気に『歳は?』のトコだけ強調してたでしょ!?じゅ・・・・・・18歳・・・・よ」(ぷぃっ


功誌朗 「年齢詐称の現行犯だ。タイーホする!」

なでしこさん 「もしもし?ああ、変質者です。至急来てくだs・・・・・あ、逃げた」


功誌朗 「もうこねーよ!

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2005-11-25 00:28:47

日乃瀬物 ~告白~

テーマ:日乃瀬物語

■ 日乃瀬物語 ■


~告白~



「ただいまー」
ドアを開くと、自然に出る言葉。
それに呼応して、当然のように部屋の奥から帰ってくる言葉。
「お帰り~。ネム」

日乃瀬家の日常がここにあった。


いつもと変わらぬソウタツの声に、ホッと胸を撫で下ろす。
2DKの古い建物は、左程大声を出す必要性が無い。例え我武者羅に叫んでも、それは最早意味を成さないからである。
どんなに簡素な言葉の中であっても、二人の微かな変化は見え隠れしてしまう。
普段なら意識せずとも気付いたであろうその事に、この時ばかりはネムの耳には入っていなかった。
自室に入り簡単に着替えを済ますと、そのまま小さな台所に立って隣りの和室を覗き込む。
編集の仕事がまだ終わっていないのだろう。細身だが大柄な男の後頭部が微かに揺れていた。恐らくはまた徹夜した状態で、今の今まで仕事に没頭していたに違いない。
机に噛り付いたままの姿に、ネムはクスリと笑ってソウタツの背中に声をかけた。
「今日はお魚の煮付けだけど・・・いいカナ?」

カタン。

ペンを置く音が小さな静寂を生んだ。
「ネム。隠し事は無しって決めたよね。・・・話してごらん?」
困った風な顔をして、振り向かないままにソウタツは、自分の膝を2度ほど叩いた。
その声はどこか優しげで・・・
どこか哀しげな感がある。
仕方なく、ネムも困り顔を見せた。
「や・・・やぁーー。むぅ」
曖昧な返事を聞くと、ソウタツは間髪入れずにそのまま後ろに倒れた。
座椅子がミシっと嫌な音を立てた気がするが、お構いなしにソウタツが駄々をこねる。
「む・・・ネムは父さんの膝は嫌いになってしまったか・・・残念だー。あぁ、残念だ-」
天を仰ぐような格好で、ソウタツが仰々しく歌舞いてみせる。
「えっと・・・嫌いじゃないよ?でも、好きでも無いカナーー?」
指で軽く頭を掻くと、ネムはガスの元栓を捻って部屋に入る。そのまま寝そべったソウタツの隣りに座ると小さく頬を膨らませた。
「やっぱり・・・おかしいカナ?ばればれ?」
顔に血が上っていくのが分かる。きっと今、自分は赤い顔をしているに違いない・・・そう思うと益々恥かしくなっていく。
にんまりとした顔で、ソウタツはネムのお尻をギュっと抓った。
「当たり前。いったい何年間、ネムのお父さんを勤めてると思ってるのかなー?」
我慢していても痛いものは痛い。少し涙を浮かべつつもじっと耐えるネムの姿を見て、ソウタツがクスクスと笑い出す。
「さっきも言っただろう?話してみなさい。お父さん、ネムが大好きだから・・・きっと力になってあげれるよ?」

言葉が響く。
迂闊にも別の涙が出そうになって、ネムはお尻に噛み付いたソウタツの手を、軽く叩いて振り解く。


「うん。大切なお話。ボクね、好きな人が出来ました」
不思議と声がすんなりと出ていた。

下校中、必死に様々な会話を想定してシュミレートしていたのだが、結果『きっと上手く言えないだろう・・・』そんな共通の答えが導き出されていたというのに。
しかし、感慨にふける暇も無く、容赦ない否定の言葉が浴びせられた。
「だめ。絶対。誰にもネムはあげません!残念でしたー!お父さんはもう寝ます。おやすみなさい!」
ソウタツが柄にも無く大声をあげる。そしてそのままズルズルと這ったまま移動して、部屋の隅に畳まれていた布団を頭から被って抗議の態勢をとる。
「・・・さっき、「力になってあげれる」って言ったのに。嘘つきー」
言いながらも、ネムの口元が緩んだ。
掛け布団を頭から被ったソウタツは、クスクスと笑っていた。
その顔が、その笑い声がネムには嬉しかった。
「お父さんを捨てるのだねぃ?酷いなネムは。そんな子に育てた覚えはありません!」
ガタガタと震える布団の小山から、笑いの混じった抗議の声が聞こえてくる。
「うん。そんなお父さんは捨てちゃうからね。カッコワルイもの。ボク、いらない~」
楽しくなってソウタツの遊びに付き合ってしまう。ネムは稀に見られる子供じみた父の姿が大好きであった。
「裁判長。判決は如何ですかな?」
布団の小山から顔を覗かせて、ソウタツがネムに真剣な表情で訊ねる。
困った顔をして、ネムは裁きを申し付けた。
「んっと、ちゃんと聞いてくれないのなら・・・今日は晩御飯作らないからね?」
小山が瓦解する。ソウタツがその場に座りなおし、ネムの前に鎮座する。
「そりゃ困る。じゃあ賛成しよう。お相手は・・・ウチによく来てくれる娘。蝶子さんかな?」
顔を真っ赤にして、耳や頭から湯気が出るのではなかろうか・・・そんないつものネムを想像して、ソウタツは小さく笑っていた。
だがそこに見えるものは、ネムの目が真っ直ぐにソウタツの瞳を捉えているという姿のみ。


『フフフ・・・ミカミさん、私は「お父さん」失格ですかねぇ・・・?』
心の中で亡き妻を想って苦笑する。それと共にソウタツは、何か消失感に似た物を胸の奥に感じていた。
いつの事だっただろうか・・・ミカミから聞いた言葉がふと過ぎていく。
『思ったままに動く時、想ってもらえれたなら止まる事。その人は、愛を捧げるに相応しい人なの。つまり、ソウタツくんに対する私ね。私。文句ある?あるのカナー?』
その後、何故か記憶でもプッツリと意識が途切れているが・・・ソウタツは今は深く考えないようにし、現実の眼前にいるネムに視線を戻した。

「当りですー。ボクなりに・・・一生懸命に考えたのでぃす。明日、後夜祭の後に告白するの」
はにかみながら答える息子の姿が嬉しくて・・・ソウタツは祈った。
「そうかい。ネムも本当に好きな人が見つかったんだね?早熟なんだねぇ。今時の子供は・・・でも、そういうのは別にお父さんに断らなくてもいいんだよ?」
言いながら、ソウタツの頭に一つの答えが浮かんで消えた。


『あぁ。そうか・・・この子は覚悟を決めたのか・・・』

ネムの声が、心なしか大きくなった。
「でも、言わなきゃいけないの。明日、ボクは・・・上手くいけばだけど、彼女に告白するの。ただの『付き合ってください』じゃないんだ」
「ストップ。ネム・・・本当に彼女が好きなのかな?あの娘も『ウィザード』だったね。ネム、お前もだよ。それでも打ち勝てると、お互いが信じ合えているのかな?」
言い終わる前に、ソウタツの声がネムの言葉を途切らせた。
「違うよ。『好き』だった。そして、『大好き』になったの。でも・・・足りなかった。初めてだったの。『愛しい』って思えた。感じれた・・・だから」

「ストップ。ネムそれ以上は『責任ある言葉』だよ。分かっているね?」

ネムが力強く頷いて・・・
ソウタツは笑った。

「だから、蝶子さんとボク・・・婚約したいんだ。今からの全てを、彼女と共に歩みたいから・・・」
ネムが力強く頷いて・・・



ソウタツは笑った。
「がんばれ。歳の事なんて構いやしないさ。これからは。あの娘と世界を護っていきなさい」
ソウタツは笑った。
余熱で煮え始めた煮魚の匂いが、いつしか部屋に微に漂い始めていた・・・





余談。(ソウタツの日記より抜粋)

○月○日~


(前文略~)

先走っていると思われるだろうが、我々『ウィザード』の力、『ウィザード』の使命の事もある。
いつ果てるか分からぬ身というのも、我が子の事ともなれば・・・こうも情が移るものだろうか?
私はやはりダメな父親だろう。またしても、恥かしくて上手くアドバイスしてやれなかった気がしてならない。
どうだろうか、ミカミさん・・・
あの子達が困った時・・・その時にまたチャンスが来るのだろうか?







PS・・・このシリーズ、続ける事を決定。詳細は・・・・気が向いた時に書く!以上!(笑

と。何気に某所にて婚約イベントを発生させる前夜に書いたものをUP。

いやあ、何とかバックグラウンドは固めておくに限ります。

いやはや。何より何より。

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2005-11-19 01:11:59

日乃瀬物語 00

テーマ:日乃瀬物語

■ 日乃瀬物語 ■






西日が差すこの部屋は暑くて。

セミの声が五月蝿くて横になったままの姿で。


ああ、そうだ。思い出した。


『部屋が狭い』と一度、不貞腐れた事があったっけ・・・

今は嫌に広く感じるこの部屋が悲しくて。


ボクは

泣いた。






日乃瀬物語






はじめの言葉は、「こんにちわ」

終わりの言葉が、「ありがとう」



ミカミがネムを諭す時、きまってこの言葉が使われる。

幼い頃より見知った御伽噺の冒頭のように、決まり文句としてミカミはこの言葉を使った。

疑問の尽きぬ子供だからこそ、ネムは決まってこう問いかける。

「こんにちわって言われたら、さようならだよ?」

こんな時、ミカミは決まってネムを抱きしめた。

「だって・・・・・・折角の出会いじゃないの。『さよなら』なんて言葉じゃ、ちっとも嬉しくないじゃナイ?」

母のこの時する無邪気な顔が、ネムは好きだった。

屈託のない・・・というのであろうか。特別美人という部類には、この日乃瀬ミカミと言う女性は当てはまらず、

只、誰よりも明るく、誰よりも自分に正直に生き、誰よりも愛を愛する女性であった。

そんなやり取りを横目にし、ソウタツはゆっくりと、静かに奥歯を噛んだ。

小さくギリリと鳴った音に、小さく「しまった。」と後悔するも、気づくと幼いネムを抱いたまま、ミカミがこちらをじっと見ていた。

「・・・気をつけるよミカミさん。うん。ごめんね」

視線だけで窘められて、ソウタツは素直に謝った。

こういう時、ミカミは弁解を受け入れてくれない。

それがミカミなりの夫、ソウタツへの信頼の証でもあったためである。

ミカミの腕の中、ネムはいつしか微かな寝息を立てている。

微笑を以て母の愛を伝えるミカミ。

微笑を以て父の包を与えるソウタツ。

二人は惹かれ、愛し、求め、育み、今を生きる。

自然に解け合う想いがここにいる少年、日乃瀬ネムを生み出したのであった。



夏。


照りつける日差しの下、セミの声がアスファルトに染みていく。

小さめの蜃気楼が足元を揺らめかせ、滴る汗を拭って病室を目指す少年の姿があった。

ネム13歳の夏。

空調の整った室内を歩く内、先ほどまでの汗も引き、ネムは馴染みの看護士達と二言三言交わしてその場を後にする。巡回や検査の時間も確認した。

大丈夫。今日はいつもより多く母さんと過ごせるかもしれない・・・

意識しなくても分かる。頬が緩んでいた。

この廊下、何回通っただろうか・・・

あの角を曲がった先、3番目の部屋。

引き戸の扉を開け、中へ一歩進む。刹那、窓が開いていたためだろう。風がネムの頬を撫でた。

カーテン越しに見える座ったままの影が写る。

「母さん・・・お休み中カナー?」

すっとカーテンの向かい側に顔を覗かせる。

体を半分起こした状態で、幾分か痩せてしまったミカミが、いつもの微笑で迎えてくれた。


「ありがとう。ネム」


ソウタツの声であった。

膝を折り、ミカミの細い手を取って頭を垂れる父の姿は、ネムには痛いほどにその意味が分かっていた。

笑わなければ。母さんの前だもの。もう大きくなったんだもの。笑わなければ・・・

考えるほどに、喉が熱くなって、体が震えた。

小さく、小さく。このまま無になるまで体を震わせたらどうなるだろうか?

そんな想いが過ぎった時、ふとミカミの瞳が潤んだように見えて。

心が溢れた。


「どうしたの・・・カナ?父さん・・・どうして・・・・どうし・・って、どうしt・・・・ぐっひっく」


風が凪いで、ミカミの長く切り揃えられた髪が流れる。

小さな病室に母の香りを確かめるように、ネムは小さな胸を痛めて泣いた。

ソウタツはそんな息子の姿を見て、ミカミにはにかんでみせた。

「酷いなぁ・・・。キミは。いつもボクを奮い立たせてしまうんだから・・・」

震えるネムの額に、大きく細い掌が当てられて・・・

その冷たさに一瞬、ネムは瞳を見開いた。

「ネム。父さんは今、とっても悲しくて、悲しくて、悲しくて・・・消えてしまいそうだった」

振り向かなくとも、ソウタツの表情が母のそれと同じ微笑を湛えている事が分かる。

ゆっくりと伝わる父の気持ちに気づいた時、額がゆっくりと温かくなっていく・・・


「温かいだろう、ネム。誰かを護りたい気持ちが、父さんの冷えた手を蘇らせてくれた。ミカミさんが・・・母さんが好きな想い。これが、人を『愛する』という事だよ」





「ふっ・・・あ・・・ぁ・・・ぇぁ・・・あああああああああああああああああ!」


溢れたはずの涙が、2度溢れる。

声を押し殺す事も止め、顔がくしゃくしゃになるのも構わず、声を聞いて駆けつけた看護士達に慰められても、その涙が止まることは・・・


その叫びが止めることは、


誰にも出来なかった。




日乃瀬ミカミ  5年程の闘病の末、その短い生涯に幕を引く。

死因は不明。

対エミュレーター戦闘の後、体調を崩し伏せがちになるも、病状回復せず。

フリーのWZにはよくある話である。






「ネムは・・・私たちの愛を受けた・・・だから、これからも護っていこうね?ソウタツくん。ね?」


日乃瀬ソウタツ日記より抜粋。

ミカミとの最後の会話の内容とされる一文。






気が向いたら続く(笑


注:この物語における登場人物・団体名は、全て『電脳英雑ナイトウィザード』さま内において、管理人功誌朗が使用している『PC:日乃瀬 ネム』のライフパスを元に、でっち上げた架空の絵空事です。本気にしないように。

しかし、あちらの世界の中での日乃瀬 ネムは、この設定を元に動き、戦い、足掻いて、恋しています。

世界の全てのTRPG好きの方に・・・・幸あれ。そして、愛あらんことを。

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