血を捧げる女
私の元親友N子は、某大学院を卒業し、一流企業に就職し年上の男性部下をあごでこきつかい、自分の稼ぎだけで高級マンションを買い、高級外車を乗り回し、私とは対照的な性格で男に依存しないタイプの女性。
恋愛?何それ~?!恋なんてつまらない。
彼女の口癖だった。
そんな彼女がある日突然、彼氏をつれてきた。
すごく男前で背も高くて高学歴で高収入、やさしくて、穏やかなのに貫禄があって守ってくれそうな・・・。
親友の彼氏だというのに、私までポーッっとしてしまうような男性でした。
もちろん、N子も彼にメロメロで卵焼きすら作った事ない彼女が、彼の為に調理器具をそろえ料理をはじめたり、女らしいところを見せようと、私にマフラーの編み方を教わったり、彼の部屋を掃除したり、恋してるのね~と私は微笑ましく眺めていた。
そんな彼女が突然救急車で運ばれたと連絡があり、私は病院へかけつけた。
手首に包帯をぐるぐる巻きつけた彼女はヘラヘラ笑いながら私に
「死ぬつもりはないから大丈夫だよ」
と両手で手をふってめいいっぱいの笑顔をみせた。
好きになりすぎておかしくなっちゃったのかと心配する私に、彼女バーゲンの戦利品を披露するかのように、手首の包帯をぐるぐるはずしながらうれしそうにかたりはじめた。
「彼とさ、愛について語ってたのね。
彼に、私のこと愛してる?って聞いたら、もちろん愛してるっていってくれたの。
でね、”俺はN子が今日は何考えてるのか、どんなものが好きなのか、シャワーにはいる前のN子はどんなにおいがするのか、N子の汗や血はどんな味がするのか、いつも考えてるんだよ。”っていうのよ。
だから、私の血の味はこんなのよ!って手首切って血を出して、彼の食べてたイカのおつくりにかけてあげたの。」
包帯も、あてていたガーゼもはずしてむき出しになった彼女の手首には、でっかいホッチキスのようなものが数箇所プスプスささっていた。
あまりにもえぐくていたそうなのに、彼女がうれしそうにかたるので、私は何もいえなかった。




