高橋洋一氏「ピントのズレた金融緩和の「出口論」~急激なインフレは起こりません ~主流派はやたらと騒いでいるけれど…」2017/06/25(現代ビジネス)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52057 #現代ビジネス

<引用開始→


■予想を外した主流派



日本銀行が'13年から続けている大規模金融緩和をいつ止めるのかという「出口論」が過熱してきている。

これまで日銀はこの出口論について「時期尚早」との姿勢を貫いていたが、ここのところ「市場との対話を重視する」方向に修正しつつあると報じられている。金融緩和の出口論は、実際のところどれほどの意味があるのだろうか。

当たり前のことだが、出口論を繰り広げる人たちは今の異次元緩和に納得していない。'13年の金融緩和導入直後、マスコミや官僚のなかには「ハイパーインフレになる」と反対する向きが多かった。インフレの結果、国債は暴落し、円も大きく値を下げると強く主張していたのだ。

実際はどうだろうか。ハイパーインフレの気配はないし、国債の暴落も起こっていない。現在国債はほぼゼロ金利で、暴落どころか「高止まり」の状態だ。金融緩和に反対していた人たちの予想は今のところ外れている。

導入当初、大規模金融緩和を支持した人は「リフレ派」と呼ばれる少数派で、反対した人はかつての「主流派」で、こちらが大多数だった。かつて主流派だったエコノミストたちは、今もマスコミで金融緩和を批判しているが、予想を外している手前、肩身の狭い思いだろう。だからやたらと出口論をしたがるのだ。



■少なくともあと4年はかかる



本来、出口論に本腰を入れるべきなのは、実際にインフレが日本に訪れてからである。

アベノミクスの一環で'13年4月から開始した量的緩和は、1年で1.5%のインフレをもたらした。だが'14年4月の消費増税の影響をモロに受け、インフレ率は減少。急激なインフレが起こる状況ではない。

長期的な金融緩和については、海外の前例がある。'08年9月にリーマンショックが起きてから、英米などの先進国の中央銀行は大規模な量的緩和を行った。

その後、米FRB(連邦準備制度理事会)は'14年10月に量的緩和を終了したが、マネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)残高はそれほど減っておらず、今でもリーマンショック前の4倍以上になっている。イギリスでも同様に、リーマンショック前の5倍以上の残高になっている。

金融緩和の反対派は、この米英の例を引き合いに出し、「長期的にマネタリーベースを増加させるのはよくない」と主張するのだ。

だが、その主張は正当なのだろうか。日本でも、'01年3月から量的緩和を実施していた過去がある。これは'06年3月に解除されたが、インフレ率が事実上マイナスであるにもかかわらず解除し、マネタリーベースを急激に減少させた。だから米英は、早めに緩和を切り上げた日本の事例をミスと捉え、慎重に行動しているのだ。

その結果、リーマンショックが起きてからアメリカでは6年かかって「出口」を迎え、イギリスでは8年経ってもまだ迎えていない。日本が大規模金融緩和を進めてから、今年でようやく4年だ。加えて、日本では5年で切り上げた過去の失敗経験があることをもっと考慮するべきである。

そう考えると、日本の金融緩和が出口を迎えるまで、少なくともあと4年はかかると筆者は考えている。そんな先の議論で盛り上がることに意味はあるのだろうか。

『週刊現代』2017年7月1日号より

←引用終了>
AD