『エゴン・シーレ 死と乙女』 | First Chance to See...

First Chance to See...

エコ生活、まずは最初の一歩から。

 昨年夏にウィーンに行って、生まれて初めてエゴン・シーレの絵の実物を見た。写真等で見る限りでは、神経質なマッチョの露悪趣味すれすれって感じもして、下手すりゃ吐き気を催すだけかもな、と心配していたが、何のことはない、実物はどれをとっても繊細で美しく、シーレの絵をたくさん展示しているレオポルド・ミュージアムを一周し終えた頃にはすっかり作品のファンになっていた。中でも個人的に気に入った1枚がこれ。
 

 ちょっと猫背なところがかわいらしい。

 という訳で、あれから約半年後というタイミングで上映された伝記映画『エゴン・シーレ 死と乙女』を観てきたのだが。
 

 映画を観る前に知っていたのは、シーレが若くして死んだことと、クリムトと交流があったことくらい——要するに、レオポルド・ミュージアムに書かれていた英語の説明文をテキトーに流し読みして知ったことだけ。なので、この映画がどの程度まで史実に忠実なのか判断できないが、いやあ、シーレの絵の実物に触れる前にこの映画を観ていたら、シーレのわがまま勝手にうんざりして作品を見る気も失せていたかも。絵の良し悪しと画家の性格の良し悪しは関係ないと分かっているけど、だからって「天才は何をしても許される」ってもんじゃないぞ(苦笑)。

 ただ、この映画を観ていると、シーレは人物画、それも主に裸体画しか描いてないような気がするけど、レオポルド・ミュージアムには人物画じゃない作品も割と展示されていたように記憶している。裸体画ばっかり描きたかったけど仕方なく風景画も描いていただけなのか、それとも映画はシーレと女性たちの関係を中心に据えただけに「必ずしも人物画ばかり好んで描いていたわけではない」となると話が散漫になるからそこはこそっと省略したのか、実際のところ、どちらが真相に近いのかしらん。

 あと、この映画には私が密かに期待していた通り、ウィーンのカフェやケーキも登場していて嬉しかった。特に、ラスト近くのカフェのシーンでは、カウンター近くに置かれたケーキの数々がちらっと映って、「お願い、もっと見せて!」と心の中で叫んでしまった——あの場面、どこのカフェで撮影したんだろう?