二次創作小説⇒金色のコルダ小説「好きと恐いの境界線」柚木×香穂子 | ミにならないブログ~ゲーマー主婦のお絵描きと子宮体癌~

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二次創作小説


作品
金色のコルダ
柚木×香穂子

執筆日
2008年3月29日

コメント
久々の柚木さま、今回はいつものラブラブでも、
いじめっこでもありません
この「もどかしさ」が伝われば幸いです(笑)
ラブラブを期待した方、ごめんなさい~

小説

「好きと恐いの境界線」



「愛しの日野香穂子へ
 放課後、屋上へ来い
 来ないと・・・わかってるよな
 音楽科3年B組 柚木梓馬より」

日野香穂子の下駄箱には、こんなメモが入っていた
本人が入れたのか、それともまた柚木親衛隊のいたずらか
とにかく、日野にとってはあまり嬉しくない手紙だった

日野はコンクール出場が決まってから、まわりの環境ががらりと変わり
音楽科の先輩や同級生、後輩との交流も持つようになった
これまで恋愛といえる恋愛をしてこなかった日野には
恵まれた環境となったわけだ

しかし、同じコンクール出場者とはそれなりに交流出来るようになったが
所詮は皆ライバル、恋愛感情を持っていいのか、日野は戸惑っていた
さらに、音楽科の出場者には女子のファンも多く、
嫉妬の目で見られているのも確かだ

どうせ嫉妬されて意地悪されるくらいなら
自分から距離を置こう…
日野はそう考えいた

が、こんなメモが入っていては、行かざるを得ない
もし、いたずらだったら受けてたってやると思えるし
そんなことしなくても、私と柚木先輩とは何もないからって説明できる
もし、もし本人だったら…
行かないともっと恐いことになりそうな予感がした

一見、誰にでも優しく物腰のやわらかい、人間としても尊敬の出来る人だと思った
しかし、数日前の屋上で、私の前でだけ見せた本性、言葉遣いから顔の表情まで
まるで別人、はじめて柚木先輩を恐いと思った瞬間だ

好きになりはじめてた人が、いきなりの豹変
それに親衛隊があるほど、学校中から人となりも認められている
嫉妬の目も毎日厳しい

(私が入る好き間なんて・・・ないよね)

日野はそう考えていたのだった

「はぁ~」

このあと屋上で待ち受けているのは、いいことか悪いことか、
いろいろ頭の中でかけめぐり、思わず深いため息が漏れた

「そこ!日野さん、今のところ訳してみて」

「え?あ、あの…」

香穂子ちゃん、ここだよ、ここ
ぼっーっと考え事ばかりしていた日野は、英語の授業中だということを忘れていた

「もういい、座りなさい、今度から気をつけるように!」

担当の先生に言われると

「はーい」

としょぼくれた声で席に座る日野だった

キーンコーンカーンコーン
午後の授業が終わった

「香穂子ちゃん、今日ケーキ食べにいこうよ、女性の日で半額だってぇ~」

クラスメイトの1人が誘ってきた

「うそ?うそ?私も行くぅ~!」

もう1人の友人も話しに乗ってきた

出来れば、何もかも忘れて、友達と学校帰りに寄り道してケーキ食べたり
カラオケに行ったりしたかった
だが、コンクール出場が決まってからは、練習練習で友達と遊ぶヒマもない
ましてや、今日は先輩からの呼び出しまである
日野は泣く泣く友達からの誘いを断った

「そうだよね、香穂子ちゃん頑張ってるもんね」
「うん、うん、応援してるからさ、頑張ってね!」

そう言うと二人は学校を後にした

(きっとケーキ食べに行くんだろうなぁ
 私も食べたかったなぁ…)

日野は心の中でつぶやきながら、メモをにぎりしめ屋上へ向かった


ガタン
屋上のドアを開けると、すでに柚木が目の前に立っていた

「あ、柚木先輩・・・」

柚木は風に髪をあおられながら、乱れた髪を整えるように手ですくい笑ってみせた

「やぁ、きてくれたんだね、日野さん」

「あ、はい・・・」

「そんなに緊張する必要はないんだよ、同じコンクールに出場する仲間じゃないか
 もっとリラックスして、何でも僕に言ってくれていいんだよ」

「あ、はい・・・、その、えーっと・・・」

日野が困って顔をポリポリとかいていると、柚木が日野に近づいてきた
思わず後ずさりをする日野だった

「あの…、で、用件は…」

近寄る柚木を止めようと、会話を進めた

「あぁ、ここでは何だから、そろそろ迎えの車が来てるころだから
 正門へ行くよ、内容は車の中で話そう」

そういうと、日野の前を美しく長い髪を靡かせながら屋上のドアを開けた
ほのかに香水の香りがした

日野はじりじりと近寄ってくる柚木に、また弄ばれるのではないかと
冷や冷やしていたが、思わず胸をなでおろした

「ほら、早くいくよ、お嬢様」

柚木はそういうと、振り返りウィンクをした
こんな所、親衛隊の1人にでも見られたら大変なことになる
日野はあわてて、柚木のあとをついていき車に乗った

車のまわりには、親衛隊の顔もあり、視線が痛かった


すこし車を走らせると、どこかの丘の高台で車を止めた

「じゃ、少しここら辺を散歩するから、2時間後くらいに戻るよ」

「かしこまりました」

柚木は運転手にそう告げると、日野を車から降ろし、何も言わず歩き出した
その背中は何か言いたげな、とても物悲しげに見えた

少し歩くと丘の先端へ出た
そこには、この街をひととおり見下ろせ、遠くには海も見え、
夕焼けのオレンジが綺麗に街と海を照らし出していた

「僕は、ここから見る景色が好きなんだ
 遠くに見える青い海に空からオレンジの光が差し込み
 金色に輝いているだろ
 見渡す街もそうだ
 夕焼けのオレンジが付きだしたネオンや看板、瓦に反射して金色になる
 ここに立つと、自分がどんな小さいことで悩んでいたのか、
 どんなつまらないことで、イライラしていたのか、
 そして誰に愛されているのか、誰を愛しているのか
 全てがわかる気がするんだ」

柚木の後姿を見て、日野は柚木さえもその金色の景色に吸い込まれていくように思えた

「柚木先輩…」

少し寂しげな表情で日野は柚木を見ていた

「ふん、お前にはつまらないところを見せたな」

日野は思わず、びくっとした
(また、あの豹変がはじまるのかなぁ、恐いよぉ~)
心の声が柚木にも伝わったのか

「なに、びびってんだよ、ほら、もっと近くにこいよ」

そういうと、日野の近くまで下がり日野の目の前に立った

「あ・・・の・・・、柚木・・・せん・・ぱい・・・」

日野は震えが止まらなかった
どうしよう、なにかされたら抵抗できない
これから起こるであろう悪いことばかりを頭に浮かべていたのだ

「そんなに・・・恐がらせたのかな・・・」

柚木は震える日野を見て、悲しげな表情を見せた

「いえ、あの・・・これは・・・」

必死でとりつくろうとするが、日野は言葉を失っていた
(どうしよう…)

「無理矢理こんなところまで連れてきてしまって、迷惑だったかな
 ここでだったら、本音が言えると思ってたんだけど
 やっぱり君を目の前にしたら、ついつい苛めたくなっちゃうんだ
 困ったな・・・」

物憂げな表情で髪をかきあげ、くるりと後ろを向いた

「好きな子を苛めたくなるなんて、僕もまだガキってことかな」

小さな声でそうつぶやいた

「えっ?」

日野は聞こえてはいたが、一瞬耳を疑った
(好きな子・・・?それって・・・?)

「じゃぁ、もう戻ろうか
 夕焼けから陽も落ちてダークブールになりかけてる
 少し肌寒くもなってきたしね」

そういうと、日野とは目もあわせずに、車を止めた位置まで歩き始めた
日野は一瞬固まって身動きが取れなかった

少し口調は変わったが、今日は何も意地悪をされなかった
言葉で弄ばれなかった
それが意外だったのだ

そして何より、【好きな子】と聞こえたのが一番の意外だった

「ま、まさか・・・ね」

日野もしばらくして、柚木のあとを追いかけた



その日は、家まで送ってもらい、次の日からは何もなかったように接している

そう

何もなかったように・・・



(どうして?

どうして、はっきりと言ってくれないの?

私、嫌われたのかな?

こんな状態、もどかしいよ

私、柚木先輩が好き…なのかな…)

 
END

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