糖尿病の治療には、食事や運動などの生活習慣を長期に見直す必要がある。しかし、患者がインスリン注射や食事療法などに同意しなかったり、守らなかったりする事例も多い。こうした中、診療や療養指導を寸劇で再現して患者と医療側双方の本音を探り、治療の改善を目指す関係者向けのワークショップが反響を呼んでいる。(草下健夫)

 医師「前からお勧めしたように、インスリン注射を始めましょう」

 医師の黒子(今日こそ“うん”と言ってくれ)

 患者「私の努力不足。歩くので待ってください」

 患者の黒子(絶対嫌。今まで歩いていなかったから、歩いたら良くなる)

 医師「待って待ってで、もう2年。合併症が出る前に始めましょう」

 医師の黒子(今日こそ説得するぞ。今さら歩くなんて、よく言うよ)…。

 日本糖尿病学会で昨年5月、寸劇「糖尿病劇場」が“初演”された。会場の医療関係者からは「医師は血糖値を下げる意思だけでやっている」「患者も手ごわい。看護師の力を借りては」「患者はどうなりたいと思っているのだろう」といった意見が飛び交った。

 糖尿病劇場は、患者と医師ら医療従事者に加え、双方の黒子が出演して会話に出ない本音を語ることで、コミュニケーションギャップを浮き彫りにする試み。関係者の勉強会などで上演されるようになっている。

 主宰する有志の医師の一人、朝比奈クリニック(東京都日野市)の朝比奈崇介(たかゆき)院長は「治療がなぜ拒否されるのかを理解するため、医療従事者がどう働き、患者がどう思ったか、といった関係性に注目した」と説明する。

 医療従事者の間では「あの患者はコンプライアンス(医師らの指示を守ること)が悪い」といった言い方があるという。コンプライアンスが悪い原因は、患者にインスリンなどに対する情報や理解が不足しているため、との見方がある。

 これに対し、朝比奈院長は「コンプライアンスという言葉を、糖尿病のような慢性疾患で使ってよいのか疑問。痛みや熱などの治癒が目標の急性疾患と違い、慢性疾患は治癒が難しい。長期化する分、患者も病気のことを勉強する時間がある。急性疾患とは哲学が異なるのでは」と提起する。

 病院から「食事を何キロカロリーに」といった説明を受けるが、「患者は自発的にそうしたいと思わないと実行しない」と朝比奈院長。

 医療側にとっては血糖値などが改善しないジレンマはあるが、患者の思いを受け止め、ステップを踏み、「よくなりたい」と思うことが大切。ただし、治療結果の責任を患者が負う面も出てくるという。

 「糖尿病劇場のせりふに正解はなく、患者ごとのケース・バイ・ケース。医療従事者に考えてもらうことに意義がある」と朝比奈院長は説明する。

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