2005-10-05 13:44:05

第52話 美酒

テーマ:ホークス


 このブロクを中心に、孫社長とホークスの1年をまとめた井上篤夫著『孫正義 世界一をめざせ!』(実業之日本社刊)が、いよいよ明日発売になります。

 10月11日(火)午後6時から、紀伊國屋書店福岡本店でサイン会も開催しますので、ぜひご来場ください!

 

10月7日発売!  

 

52

 

美 酒

 

 

 

 

 

 

 9月27日(火)。ヤフードームに戻ってきたホークスは元気を取り戻した。サムライ・ズレータの2本目のホームラン。和田は12勝目をあげた。

 9月28日(水)。松中が46号。3年連続120打点は日本プロ野球史上初。「(王)監督のひとつ上をいけたのですごく嬉しい」(松中)。アメリカから愛妻が来ているズレータも43号ホームラン。

 3連勝。今季、監督の背番号と同じ89勝。ソフトバンク元年、王ホークスのパ・リーグ1位が決定した。3年連続のレギュラーシーズン1位だ。

 投打のタイトルを数多く獲得した。最多本塁打。松中46。最多打点松中121。ズレータはそれぞれ43と99と2位の活躍を見せた。松中は最多出塁率にも輝いた。「4番の仕事」をしっかり果たして堂々の2冠だ。2部門とも昨年の成績を上回ってのタイトル獲得である。「飛ばないボールになったからといって成績が落ちるのは、選手として恥ずかしい。筋力トレーニングはまちがっていなかった」(松中)。

 最多勝利賞は杉内の18勝。最優秀防御率2・11.「これだけ勝てるとは思ってもいなかった」。(杉内)。リズムのいい投球で気分爽快だった。

 最優秀投手(勝率1位).941斉藤の気迫のこもった投球。「負けないのは気持ちがいい」(斉藤)。1か月、故障で出遅れたがそれを補うに充分な活躍だった。杉内は勝利率2位(.818)。

 試合後のセレモニーで王監督は挨拶をした。

「今年の選手はほんとうにすばらしい野球をしてくれました。監督として

指揮しながら、何度感激し、胸を詰まらせたかわかりません」。

 我々ファンも同じ想いだった。

 松中が松坂から打った1試合3本のホームラン。

神宮球場でわが母校の大学の後輩・和田の力投に「早慶戦」の熱い感動が蘇ってきた。

 ルーキー・正太郎の逆転の一打。そして「まさかのロッテ3連敗」の危機を救ってくれたルーキー高橋秀の力投。感動の波が次から次に押し寄せてくる。美酒に酔いたい。

 だが、まだそのときではないのだ。

「優勝を目標にしてきたので、いまはオフのことで頭がいっぱい」。(松中)

 

 

 

 10月3日(月)。王監督は孫オーナーと会食した。ちょっぴりワインも飲んだ。「リーグ1位の報告とプレーオフと日本シリーズの決意表明をした」(王監督)。

 孫は言う。

「私はチャレンジし続けること自体が非常に幸せな人生だと思っています。つねに新しいことをめざしているからです」。

 2年ぶりの日本一奪還に向けて、ほんとうの戦いがいま始まる。

(文中敬称略)


2005-09-26 16:32:45

第51話 二合目

テーマ:ホークス
10月7日発売!

『孫正義 世界一をめざせ!』実業之日本社より10月7日発売!

定価 税込1050円、カラー口絵つき

編集担当の岩野です。

ホークスのパ・リーグ第1位、改めておめでとうございます!

このブロクは第50話までが単行本になりますが、

ブロクはまだまだ続きます。

引き続き、ご愛読ください。






第51話 



2合目







 9月13日(火)。日本ハム戦。延長10回、バティスタがサヨナラ打。「さすがメジャーだ」(王監督)。ズレータが先発復帰。役者が揃った。

 9月14日(水)。和田が8月3日から42日ぶりの勝利で、11勝目。ズレータ38号ホームラン、三冠王も視野に。

 9月17日(土)。9連戦の緒戦、オリックスにサヨナラ負けを喫する。杉内の好投が報われず。

 9月18日(日)。サンデー新垣が登板。149球で今季2度目の完封、9勝目。1対0。「必殺仕事人」大道の決勝犠打。ベテランの存在は大きい。ロッテとの4連戦に向けての弾みがついた。

 9月19日(月)。5点差をつけてリードしたが、5回に同点に追いつかれ逆転負け。城島の2打席連続ホームランが水泡に。この日、ダイエーの創業者中内こう氏死去。合掌。

 9月20日(火)。松中が2打席連続ホームランしたが、またしてもロッテに敗れる。「中内氏の弔い合戦」(王監督)のはずだった。2連敗。

 9月21日(水)。ロッテに大敗して3連敗。ついにゲーム差は2に。

 9月22日(木)。ホークスの危機を救ったのは「秘密兵器」ルーキー・高橋秀の力投だった。6回途中まで1失点で初勝利をあげた。

 9月23日(金)。松中44号、川崎4号、ズレータ40号、大道1号のホームラン攻勢で、西武との初戦に勝利した。杉内はハーラートップの18勝をあげる。

 9月24日(土)。まさかの9回裏逆転負け。だが、ロッテが楽天に敗れたため1位が確定した。「コメントする気分になれん」と王監督は怒り心頭だった。

 孫は素直に喜びのコメントを出した。

「見事、レギュラーシーズンを制したことはこの上ない喜びです。次はプレーオフ。リーグチャンピオンシップのフラッグを手に、日本シリーズで日本一に。そして11月に行われるアジアシリーズでアジアナンバーワンになり、世界一の夢に一歩一歩近づいていきたいと思います」

 9月25日(日)。斉藤和巳と松坂のエース対決。松中が4回、45号2ラン。斉藤は力投をしたが、9回2アウトとなったところで降板。馬原が前夜の逆転負けの嫌なムードを打ち消した。長く苦しい9連戦を戦い抜いたホークス。レギュラーシーズン単独1位が確定した。


 20代から事業をはじめ、ビジネスでも「世界一の夢」に一直線に進む孫。いま、富士山の登攀にたとえればどのくらいまで来ているのだろうか。孫は答えた。

「まだ2合目です」

(文中敬称略)



2005-09-26 16:23:33

このブログが本になります! 福岡でサイン会も!

テーマ:ホークス

10月7日発売! 編集担当より読者の皆さまへ!


いつも、本ブログをご愛読いただきましてありがとうございます。

まずは、ホークスのパ・リーグ1位決定を祝いたいと思います。

いよいよプレーオフ、そして念願の日本一に向けて、がんばってほしいですね。


そして、こちらも嬉しいお知らせです。

このブロクと、本年春のスポーツニッポンの連載に大幅加筆した単行本、『孫正義 世界一をめざせ!』が、きたる10月7日、全国の書店で一斉に発売されます。出版社は実業之日本社、定価は税込み1050円です。

巻頭には、王監督やホークスの主力選手、そして孫さんのアメリカ留学時代など、カラー口絵も8ページついています。ぜひお求めください。


また、本書の刊行を記念して、10月11日(火)午後6時から、紀伊國屋書店福岡本店(JR博多駅前)で、著者・井上篤夫氏の「サイン会」を行います。

福岡の方も遠方の方も、ぜひお待ちしております!

2005-09-02 18:02:55

第48話 武士道

テーマ:ホークス

第48話

 

武士道

 

 

 

 

 

 8月30日(火)。ロッテとの首位攻防戦。和田と久保の同級生対決でもある。2回、城島のシングル、宮地の2塁打。まず1点を先制したが、6回にロッテ、サブローのソロで同点に。その裏、ホークスは3点、7回に2点を追加して、ふたたび6対1とリードした。「楽勝のケース」(王監督)。だが、8回にロッテは一挙に6点をあげ、逆転した。

その裏ホークスは、代打大道の今季初安打のタイムリーヒットで同点に。9回、先頭の川崎が3塁打。最後は松中のサヨナラ打。川崎は今季最多の1試合4安打。「(接戦に持ち込まれたのは)ぼくたちにスキがあったからだと思う。もっと気を引き締めていかなければいけない」(松中)。前半は投手戦。後半は乱打戦。私たちは1試合で2つの楽しみを味わうことができてよかったが、疲れた。「この時期、投手はしんどい」(王監督)。2位ロッテとの差は4に。夏バテにご用心。

 

 

 8月31日(水)。夏休み最後の試合。ヤフードームに詰め掛けた多くのファンとともに、我々は歴史の目撃者となった。斉藤は開幕15連勝。日本記録タイで勝利投手となったのだ。この日、斉藤はあまり調子がよくなかったが、気迫のこもったピッチングを見せた。「チームが勝つことだけに集中して投げたい」。「万馬券だな」王監督が笑いながら言う伏兵・鳥越とカブレラの活躍で勝利を掴んだ。この日、レギュラーシーズン1位のマジック15が点灯した。

 

 

 孫は、これまでの枠を超えたスケールで物を考える。「大きな数字、大きな夢を語ると、男は黙って実行すべきだ、あまり多くを語ると笑われる、軽々しすぎるというように、特に日本的文化、風土の中では批判される場合が多い」。

 壮大な夢を語る孫に対して、いわゆる「孫バッシング」など厳しい反対意見が多かった。これには300年のあいだ、江戸幕府によって培われた武士道の影響が大きいと孫は考えている。

 だが、男は黙って戦うのみでいいのか。「生まれたからには人生を思いっきり生きたい。夢に向かって突き進む」と孫は言うのだ。

 

 

 31日の8回表、ロッテの橋本の打球が斉藤の左太ももを直撃、斉藤は転倒したが、1塁に送球、アウト。斉藤は激痛のためしばらく起き上がれないほどだった。冷却スプレーをしてふたたびマウンドに立った。試合後、足を引きずりながらお立ち台にのぼった斉藤は言った。「痛みはありますが、大丈夫です。ここまで来たら投げますよ」。

               (文中敬称略)

2005-08-29 16:38:40

第47話 日々新たなり

テーマ:ホークス

第47話


日々新たなり






 8月27日(土)。札幌ドームで、ホークスは日本ハムと対戦した。8回まで4対1でリードしていて勝ちパターンだ。「今日の試合は、もう大丈夫」と私は外出した。1時間後に試合結果を確かめて、私は思わず声を上げた。「あれ?」。日本ハム・小笠原の3ランで同点(この日2本目)。延長10回に田中幸のサヨナラ打。田中幸はプロ野球通算5人目の1000打点。吉武が3点のリードを守れず、守護神・馬原も機能しなかった。「まあ、こういう日もある」。

 8月28日(日)。どうしても「負けられない試合」(王監督)だったが、新垣のコントロールが定まらず、5回途中までに自責点8。まさかの連敗。「そう簡単にはうまくいかないということだ。福岡に帰って出直しだ。また、やり直します」(王監督)。指揮官は気持ちを切り換えていた。札幌ドーム、日本ハムに2連敗。誰が予測しただろうか。この週末、オリックス戦に3連勝した2位ロッテとのゲーム差は3に縮まった。だが、百戦錬磨の指揮官はいかなるときも日々、新たな気持ちになる。



 野球もビジネスも同じだろう。孫の圧倒的な精神力の強さは、自己刷新できる点にある。熱い情熱をもち、自己の信じた道を突き進む孫だが、同時にこれまでの事業プランを刷新できる柔軟さも併せもつ。孫は言う。「いままでの自分の作ってきたビジネスモデルを2、3年で変える。自己否定して、どんどん新しくするんです」。

 毎月、孫はアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中を飛び回っているが、年齢・地位などに関係なく相手の懐にとびこんでいく。偏見のない心は、常に新しいものを受け入れることができる。

 ブロードバンドでは、日本や韓国は世界でもっとも進んでいる。ビジネスチャンスはいくらでもある。「この業界の中でも(いい意味で)へんな人はいっぱいいる。これまでの事績や経歴は関係ない。ほんとうの実力社会がやってきた」と孫は言う。

 ナローバンドの時代はインターネット1、ブロードバンドが普及しつつある現代はインターネット2。スピードの差は1000倍もある。「こんなチャンスにあふれた時代はない」と孫。

 時代はデジタル情報社会に向かって一直線に突き進んでいる。そのために、いちばん必要なことは「柔軟な頭脳だ」(孫)。変わらなければならないのは自分自身だ。日々新たなり。

 インターネットはいまや4大メディアを超えた。あらゆる情報をインターネットで知る時代になった。



 30日(火)から福岡ドームでロッテとの2連戦。どんな新しいホークスが見られるか。

(文中敬称略)


2005-08-22 11:12:27

第45話 究極の自己満足

テーマ:ホークス


第45話


究極の自己満足






 8月20日(土)。杉内と西武・西口、両エースの力投が続いた。的場の強気のリードも冴える。先制タイムリーは松中(100打点)。

8回、バティスタが貴重な追加の2点目をあげた。技と技のぶつかり合いだ。

「見ごたえのある試合だった。(杉内は)最高のピッチングをしてくれたね。コントロールがよかった。今シーズン一番の出来だろう」(王監督)。杉内はハーラー単独トップ。毎回の奪三振14。ホークスは対西武、7勝7敗。

 この日は、第87回全国高校野球選手権大会最終日。駒大苫小牧が優勝。第30回大会の小倉(福岡)以来、57年ぶりの夏連覇を果たした。野球漬けの1日。とても幸せな日だった。



 孫家の家訓に「究極の自己満足」というのがある。孫正義は、「ナンバーワン主義」。なんでもナンバーワンでないと「生きている意味がない」というほどだ。「ビジネスもナンバーワンにならんものは絶対にやらん」と言ってはばからない。それはおそらく父・三憲の負けん気の強い気質を色濃く受け継いだものと思われる。

 そうした「ナンバーワン」を見てきた弟・泰蔵が、「ナンバーワンよりオンリーワン」の存在になりたいと思うようになったのは当然のことだろう。

「すごい兄貴だと尊敬はしていても、自分には自分の生き方がある」(泰蔵)。だが、兄弟に共通している考え方は、「どうすればハッピーになれるか」である。それぞれが自分にとっての「究極の自己満足」を追求する。それこそが自分だけでなく他人の幸せにもつながるかもしれない。

 


 8月21日(日)。対西武。ホークスは2回、ズレータが36号、2ランホームラン。3回には3点を追加した。5回までに6対0と大きくリード。楽勝かに思われた。だが、6回に3点を取られて新垣が降板。7回には1点差にまで詰め寄られていた。「息つくヒマのない試合」展開になった。結果は、馬原が6対5で接戦を制した。ズレータ、バティスタ、カブレラの外国人がお立ち台に登った。貯金は40に。

 これでパ・リーグ3位以内が確定。「貯金は目標を達したが、これからも一試合一試合を気合を入れてね、思い切ってやっていく。2位に5ゲーム以上の差をつけて1位が目標だ」(王監督)。

 どうすればハッピーになれるか。ともに「究極の自己満足」を追求する。事業家孫正義も指揮官王監督も、めざすところはひとつだ。

 23日からはロッテとの直接対決3連戦が始まる。城島も戦列に復帰する。

(文中敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2005-08-12 10:43:24

第42話 ゆるぎない自信

テーマ:ホークス


第42話


ゆるぎない自信






 8月9日(火)。宿敵西武との対戦。初回で、いきなりホークスは松中の38号3ランなど6安打で6点を先取した。6回には「たっぷり休養をとった」ズレータが31号3ランで3点。試合を決めた。開幕以来、負けなしの斉藤は7回を7安打3失点で12連勝。「松中は難しい球をよく打ったね。初回の集中打が効いた。夢じゃないかと思ったよ」。王監督も上機嫌。斉藤は球団開幕12連勝のタイ記録。「ここまでいったら新記録を作ってほしいね」(王監督)。「城島が守らなくても3勝1敗はまあまあだね」。

 王監督は翌日の西武戦についても語った。「西武には3つ負け越しているからね、それをなんとか1つにしたい。あまり意識をしすぎてもいけないが、気持ちで負けてはいけない」。王監督のいう気力だ。ロッテとのゲーム差は5。「完全優勝をしてプレーオフ。そして日本一」。王監督の自信はゆるぎない。



 8月10日(水)。ソフトバンクの平成18年3月期第1四半期決算説明会が行われた。「5年ぶりにトンネルを抜けそうだ」。冒頭、孫正義はそう挨拶した。連結営業損益は5年ぶりに黒字回復になった。売上高は2586億円で前年同期比75・6%増。ソフトバンク・インベストメントのイー・ファイナンス事業が連結からはずれたが、日本テレコム買収で固定通信事業の売上げが加わった。営業損益は31億円の赤字だったが、インフラ事業で着実にユーザー数が伸びて損益分岐点を超えたため、6月では単月で黒字化した。

「損益分岐点を超えたので、ここから急激に利益が拡大していく。四半期ベースでは、この7月から8月は確実に営業黒字になるだろう。通期では数百億円単位の営業黒字になるのではないか」。通期の最終損益黒字化についても言及した。「現時点では、はっきりしたことは言えないが、強気にはなってきた」。投資回復期に入ったことは間違いない。

 その夜。ホークスは西武・松坂を打ち崩して対2連勝。城島に代わって守る的場の活躍が目立った。70勝一番乗り。2位ロッテとのゲーム差は6に広がった。貯金は37に。「ゴールが見えてきたから。残り試合とか、ゲーム差とか」(王監督)。残り試合は32だ。


 

 8月11日(木)。孫の48歳の誕生日。「黒字回復」「いまは無茶をしない」。来るべき決戦のときに向けた孫のゆるぎない自信と受け留めた。「楽しみにしといてください」

(文中敬称略)


 

2005-08-04 22:36:46

第40話 メディアビッグバン

テーマ:ホークス

 

第40話

 

メディアビッグバン

 

 

 

 

 

 8月2日(火)。「1年を振り返ったときにポイントになる試合でしょう。これで嫌なムードもふきとんだ」(王監督)。2連敗中のホークスにとって価値ある勝利。「ビックバン」が起きた。6回、ズレータの逆転満塁ホームラン。「サムライのように最後までがんばります」。

 

 

 いま、メディアの世界では「ビッグバン」が起きようとしている。

 孫泰蔵(ガンホー・オンライン・エンターテイメント会長)は、近い将来に〈メディアビッグバン〉が起こると考えている。

 金融ビッグバンは規制緩和によって起きたが、同じことがメディアの世界にも起きる。

「テクノロジーがメディアの枠組みを壊し、メディアの概念そのものも劇的に変化する」(孫泰蔵)

 インターネットには、周波数による物理的な限界も、配信の規制もない。現在、トヨタは年間1100億円規模の広告宣伝費を使っている。これがブロードバンドを使って、ハイビジョン並みの高画質動画を自由に電送できるようになるとどうなるか。企業が自分たちで放送局を作ったほうが、安くて高品質なものができると考えるのは当然だろう。

 そのことが明確化してくるのは2008年ぐらいだと、孫泰蔵は言うのだ。「もしぼくがトヨタの人間だとしたら、800億円も要りません。100億ぐらいで一瞬のうちに巨大なTV局を作ってみせます」

 なぜかといえば、トヨタカップという全世界の20億人が見るイベントがある。「1年目は無料、2年目から有料にして、そのうち2億人から100円ずつ課金できたら、200億円になる。こういったことがいろんなレベルで起きる」

 世界はすでにその方向に向かって動き始めている。米マクドナルドが年間の広告予算の半分をネットにすることに決めた。TVのCMはスキップされ、若者がTVを見る時間よりもネットに向かう時間のほうが長い。これから日本の多くの企業も追随していくにちがいない。「100年に1度の変革が放送の世界に訪れようとしています」(孫泰蔵)

 

 

 8月3日(水)。孫オーナー以下が出席して、ソフトバンク本社の取締役会が初めてヤフードームで開かれた。「(球場で)役員会が開かれるのはとてもいいいこと。試合も見てもらえる。今日も勝ちます。最後にものを言うのは気力」(王監督)。試合は松中の2ラン。大村は2本のソロホームラン。和田は球団史に名を刻む3年連続2ケタ勝利をあげた。

                             (文中敬称略)

2005-07-20 10:17:55

第37話 真っ直ぐ

テーマ:ホークス

 

第37話

 

真っ直ぐ

 

 

 

 

 

 7月15日(金)。9回、松中は西武・松坂から右翼ポール際に本塁打、サヨナラ勝ち。3本塁打を含む4安打でホークスの全得点を叩きだした。「(松坂)大輔の一番いいボール、直球を待ってました」(松中)。「直球を打たないといけないんだ」という王監督の檄に応えた価値ある一発だった。怪物・松坂を粉砕した。

 7月16日(土)。野球には魔物が棲む。和田と西口の投げ合い。松中が全5打席出塁したが、打線のつながりに欠け、チームは11安打を放つが13残塁。この日、右肩痛のために城島がスタメンからはずれた。「(城島が)いるといないとでは大違い。いない人のことを言ってもしょうがない」王監督は渋い表情で語った。

 7月17日(日)。新垣が44日ぶりに先発し、復調の兆しを見せた。5回、城島に代わってマスクをかぶった田口のタイムリーで逆転。9回、抑えの馬原が誤算。3点を奪われて逆転負け。「考えられないことが起こる。神様からガツンと言われたんだ。また、明日からやりますよ」(王監督)

 7月18日(月)。年に一度の鷹の祭典。黒のシャツがファンにプレゼントされた。対楽天戦。星野がノックアウトされて3連敗。どちらのチームが首位を走っているかわからない。

 7月19日(火)。エース杉内が登板。リードはするものの追加点が奪えず。そのいやなムードを払拭したのが6回、松中の本塁打。妻の誕生日に本塁打でプレゼントした。「今日は総力戦で勝ちにいく」(王監督。)8回裏、鳥越がスクイズを。1点追加で7-4と点差を広げ、馬原が締めた。「これで気分よくオールスターに入れる」(王監督)

 前半戦を王監督は振り返る。「もちろん、完全優勝。5チームに勝ち越す。もっともっとホークスの野球をやる。貪欲に。勝てる試合は、これでもかこれでもかとやっていく」

 

 ヤフードームでの5連戦。ハラハラドキドキ。勝敗に一喜一憂する。さぞや指揮官はたいへんなストレスだろうと思う。だが、百戦錬磨の王監督は違う。「私生活はとてもリラックスしている。(良いことも悪い結果も)引きずらない。過去、終わったことは考えない。今日が大切なんだ」

 

 孫は言う。「20年、30年先を見すえているからこそ、今日に集中できる」日々の積み重ねが真っ直ぐに大きなゴールにつながっていることを、誰よりも強く感じている。

 

 この日、横浜クルーン投手が日本プロ野球史上最速・夢の161キロを記録した。

(文中敬称略)

2005-07-14 12:27:55

第36話 ふんどし

テーマ:ホークス

第36話

 

ふんどし

 

 

 

 

 

 7月12日(火)。どんよりと曇った梅雨空。対日本ハム戦。東京ドーム。試合開始直前、カブレラがいつものように3塁ベースの後方で、ひとりストレッチをしていた。左翼の外野ではバティスタがスイングのチェックを何度も行い、目に付いた人工芝に落ちている小さなゴミを拾っている。試合は杉内の好投で始まった。川崎がダルビッシュから自身初の満塁本塁打を放ち、7回表で7-0。「今日は楽なゲームになる」(王監督)。誰しもがそう思っていた。だが、「野球は怖い」と王監督の言葉のとおり、7回裏に2点を返された。吉武に継投。このまま「ホールド」してくれるはずだったが、3点を奪われた。9回には2点を追加されて同点。10回、荒金の右翼線への決勝タイムリーで辛勝。8-7の試合はもっともおもしろい。「この試合を勝った意義は大きい」(王監督)。

この日ソフトバンクグループを挙げて応援、孫も観戦した。「追いつかれてハラハラドキドキしましたが、勝ててよかった。(観戦勝率は)10勝2敗の2ケタ白星です」

 

 

 7月13日(水)。孫は早朝に福岡入りした。博多祇園山笠の集団山見せで孫は3番山笠・土居流の「台上がり」を務めた。「台上がり」は舁(か)き山(山車の一種)を担ぐ男たちを応援する役割で最高の名誉とされる。「ドキドキしています」。水法被に締め込み姿の孫はやや緊張した面持ち。孫は「舁き山」に上がり、「オイサー、オイサー」と掛け声を上げた。男たちは市内の1・5キロメートルを駆け抜けた。沿道からは「孫さんー!」と大きな拍手が起こった。「このお礼はホークス優勝で返したい」孫は笑顔で応えていた。

 

 

 この夜、ホークスは日本ハム戦で集団山見せに負けない「迫力」を見せた。田之上は初回に2点を奪われたが、粘り強い投球で7回途中まで先発の役割を果たした。ベテラン田之上の踏んばりに打線も援護した。4回、ズレータがレフトスタンドに豪快な本塁打。「パナマウンガー!」のパフォーマンスも出た。同点で一気に活気づいた。ラッキーセブンの7回には川崎が2試合連続の2ランで勝ち越し。松中が「4番の仕事」で29号ソロ。8回にも鳥越の2点タイムリーで7-3と点差を広げた。最終回は馬原が3人で締めて2連勝。ホークスは両リーグ通じて60勝の一番乗り。ロッテとのゲーム差は5に広がった。だが、15日(金)からは西武との3連戦がある。「ふんどし」を締めてかからないといけない。

(文中敬称略)

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