2005-08-29 16:38:40

第47話 日々新たなり

テーマ:ホークス

第47話


日々新たなり






 8月27日(土)。札幌ドームで、ホークスは日本ハムと対戦した。8回まで4対1でリードしていて勝ちパターンだ。「今日の試合は、もう大丈夫」と私は外出した。1時間後に試合結果を確かめて、私は思わず声を上げた。「あれ?」。日本ハム・小笠原の3ランで同点(この日2本目)。延長10回に田中幸のサヨナラ打。田中幸はプロ野球通算5人目の1000打点。吉武が3点のリードを守れず、守護神・馬原も機能しなかった。「まあ、こういう日もある」。

 8月28日(日)。どうしても「負けられない試合」(王監督)だったが、新垣のコントロールが定まらず、5回途中までに自責点8。まさかの連敗。「そう簡単にはうまくいかないということだ。福岡に帰って出直しだ。また、やり直します」(王監督)。指揮官は気持ちを切り換えていた。札幌ドーム、日本ハムに2連敗。誰が予測しただろうか。この週末、オリックス戦に3連勝した2位ロッテとのゲーム差は3に縮まった。だが、百戦錬磨の指揮官はいかなるときも日々、新たな気持ちになる。



 野球もビジネスも同じだろう。孫の圧倒的な精神力の強さは、自己刷新できる点にある。熱い情熱をもち、自己の信じた道を突き進む孫だが、同時にこれまでの事業プランを刷新できる柔軟さも併せもつ。孫は言う。「いままでの自分の作ってきたビジネスモデルを2、3年で変える。自己否定して、どんどん新しくするんです」。

 毎月、孫はアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中を飛び回っているが、年齢・地位などに関係なく相手の懐にとびこんでいく。偏見のない心は、常に新しいものを受け入れることができる。

 ブロードバンドでは、日本や韓国は世界でもっとも進んでいる。ビジネスチャンスはいくらでもある。「この業界の中でも(いい意味で)へんな人はいっぱいいる。これまでの事績や経歴は関係ない。ほんとうの実力社会がやってきた」と孫は言う。

 ナローバンドの時代はインターネット1、ブロードバンドが普及しつつある現代はインターネット2。スピードの差は1000倍もある。「こんなチャンスにあふれた時代はない」と孫。

 時代はデジタル情報社会に向かって一直線に突き進んでいる。そのために、いちばん必要なことは「柔軟な頭脳だ」(孫)。変わらなければならないのは自分自身だ。日々新たなり。

 インターネットはいまや4大メディアを超えた。あらゆる情報をインターネットで知る時代になった。



 30日(火)から福岡ドームでロッテとの2連戦。どんな新しいホークスが見られるか。

(文中敬称略)


2005-08-26 10:21:49

第46話 単純明快

テーマ:孫正義

第46話


単純明快







 23日(火)。降雨で1日延びた首位決戦の初戦。ホークス斉藤、ロッテ渡辺俊の両チーム、エース同士の対決。1対1の同点で迎えた7回、ズレータのバックスクリーンに飛び込む本塁打で勝ち越した。斉藤は8回ノーアウト1、2塁のピンチをしのいだ。9回にも強気のピッチングを崩さず投げぬいた。無傷の14連勝。昨年、16連勝を記録した斉藤だが、同じ投手が14連勝以上を2度記録するのはプロ野球史上初の快挙だ。ロッテとの差は5・5に広がった。「(斉藤は)いい意味での緊張感を保っている」(王監督)。



 

 ポータルサイトの雄、1日のアクセス数が11億と圧倒的な強さを誇るヤフーの井上雅博社長。穏やかな語り口調の中にも、並々ならぬ自信をうかがわせる。広告・オークション事業などすべての部門で大幅黒字。なぜ、そんなにも強いのか。「ブロードバンド市場が、それだけ大きくなってきたということでしょうね」(井上社長)。
 米ヤフーとの合弁で1996年にヤフーは設立された。情報検索サービスの提供としてスタートしたが、日本のユーザーの使い勝手のいいように改良を重ねてきた。視聴率を高める(アクセス数を増やす)には、なるべく多くのメニューをそろえるのが効果的だ。「あったらよいと思うサービスを実現し、嫌だと思うトラブルは極力なくしていく」(井上社長)。次々とコンテンツを増やして、総合ポータルサイトに進化してきたのだ。

 いま、ヤフーは「ライフエンジン」をめざしている。その人、その人のライフサイクルにあったもの、それに応えるものを提供していく。「これからも1ケタ、2ケタと売上げを伸ばしていく」(井上社長)。

 インターネットでできることはすべてやる。「すべての分野で一番になる」というのが井上社長の考え方だ。「そのためにやるべきことをやる」。

 1996年の設立時、小さな環だったヤフーは、増大していき、いまや巨大な環になりつつある。

 ヤフーの井上の理念はシンプルでわかりやすい。



 

 王監督と孫正義も大きなひとつの目標に向かって進んでいる。シンプルである。<めざせ世界一、野球もビジネスも>。 

 雨天で試合が延び、斉藤はスライド登板になった。周囲の心配をはねのけるように斉藤の答えはシンプルだった。「投げろと言われたら、それに従うだけ」。試合後の斉藤は言った。「素直にうれしい。また応援してださい」。斉藤の座右の銘は<感謝>。

 球場に応援に駆けつけた孫は興奮ぎみに言った。「最高でした」。
                 (文中敬称略)


2005-08-22 11:12:27

第45話 究極の自己満足

テーマ:ホークス


第45話


究極の自己満足






 8月20日(土)。杉内と西武・西口、両エースの力投が続いた。的場の強気のリードも冴える。先制タイムリーは松中(100打点)。

8回、バティスタが貴重な追加の2点目をあげた。技と技のぶつかり合いだ。

「見ごたえのある試合だった。(杉内は)最高のピッチングをしてくれたね。コントロールがよかった。今シーズン一番の出来だろう」(王監督)。杉内はハーラー単独トップ。毎回の奪三振14。ホークスは対西武、7勝7敗。

 この日は、第87回全国高校野球選手権大会最終日。駒大苫小牧が優勝。第30回大会の小倉(福岡)以来、57年ぶりの夏連覇を果たした。野球漬けの1日。とても幸せな日だった。



 孫家の家訓に「究極の自己満足」というのがある。孫正義は、「ナンバーワン主義」。なんでもナンバーワンでないと「生きている意味がない」というほどだ。「ビジネスもナンバーワンにならんものは絶対にやらん」と言ってはばからない。それはおそらく父・三憲の負けん気の強い気質を色濃く受け継いだものと思われる。

 そうした「ナンバーワン」を見てきた弟・泰蔵が、「ナンバーワンよりオンリーワン」の存在になりたいと思うようになったのは当然のことだろう。

「すごい兄貴だと尊敬はしていても、自分には自分の生き方がある」(泰蔵)。だが、兄弟に共通している考え方は、「どうすればハッピーになれるか」である。それぞれが自分にとっての「究極の自己満足」を追求する。それこそが自分だけでなく他人の幸せにもつながるかもしれない。

 


 8月21日(日)。対西武。ホークスは2回、ズレータが36号、2ランホームラン。3回には3点を追加した。5回までに6対0と大きくリード。楽勝かに思われた。だが、6回に3点を取られて新垣が降板。7回には1点差にまで詰め寄られていた。「息つくヒマのない試合」展開になった。結果は、馬原が6対5で接戦を制した。ズレータ、バティスタ、カブレラの外国人がお立ち台に登った。貯金は40に。

 これでパ・リーグ3位以内が確定。「貯金は目標を達したが、これからも一試合一試合を気合を入れてね、思い切ってやっていく。2位に5ゲーム以上の差をつけて1位が目標だ」(王監督)。

 どうすればハッピーになれるか。ともに「究極の自己満足」を追求する。事業家孫正義も指揮官王監督も、めざすところはひとつだ。

 23日からはロッテとの直接対決3連戦が始まる。城島も戦列に復帰する。

(文中敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2005-08-20 12:47:19

第44話 勇士

テーマ:孫正義


第44話


勇 士






 8月16日(火)。斉藤は開幕から13連勝。松中が初回に先制の39号。

    松中は言った。「エースが投げて、負けるわけにはいきませんから」。城島に代わって必死に戦っている的場。松中・斉藤・的場、3人の勇士は優勝の決意を述べた。




 宮内謙(ヤフーBB副社長)は1984年にソフトバンク入社以来、20年以上、孫正義を支えてきた側近だ。事業家としての孫を熟知している。

「孫社長は、いつも事業を立ち上げた瞬間には次に移る。そこが普通の人と違うところ。常人は事業がうまくいきだすとスティック(固執)するんだよね。おれがやったんだ、おれがやったんだで、その事業に埋没する」。

  常人の眼には孫は飽きっぽく、短期間で事業に興味をなくしてしまうように思えるときがある。しかし、孫の事業に対する考えは創業以来一貫している。宮内は言う。

「この人には負ける。やっぱり他にはいないと思う。つねに夢をもっていて、負けそうになってもヘコたれない。そういう人なの。ぼくにはとうてい真似ができない」

 絶対不利は絶対有利に通じる。

「孫社長はそれができる。ぎりぎりの瀬戸際のときに、力を発揮できる希有な人物なのです」。

 孫の交渉力、営業、セールス能力のすごさを宮内はつぶさに見てきたのである。20歳で自動翻訳機を売ったときと同じ。あの凄まじいエネルギーはどこから来るのか。宮内は言う。

「孫社長は相手の地位がどうだとか、そういう見方はしない。そこが凄い。企業は技術と営業とオペレーションで成り立っている。そこのところをよくわかっている」

 たとえヤフーBBの技術がすばらしいといっても、売れなければ話にならない。宮内は言う。

「ときには若い32、33歳の社長にも頭を下げることができる人なのです。そして、若い人とも意気投合できる、柔軟な心をもったエネルギーにあふれている。既成概念がまったくない人なんです」

 買収も意気投合しなければ成立しない。

 次々に新しいテクノロジーが生まれてくる。その技術を導入しようとすると既存の勢力から強烈な抵抗にあう。

「人間も企業もそう。血みどろの戦いをしている。ずっと死ぬまで戦うんです。そのプロセスがおもしろい」

 宮内は断言する。

「リーダー孫正義は、世界に冠たる勇士だ」

                 (文中敬称略)



 

2005-08-15 14:07:35

第43話 帝王学

テーマ:孫正義

第43話


帝王学






 8月12日(金)。ホークスは札幌ドームで日本ハムと対戦した。同点の3回にズレータが3ラン。5回には鳥越が巧打し、加点。小刻みな継投で日本ハムの反撃をかわし、4時間を越える長い試合を制した。3連勝。貯金は38に。

 8月13日(土)。杉内は8回2失点の好投をしたが、打線の援護がなかった。「(日ハム)入来が見たことない投球を見せたね」(王監督)

 8月14日(日)。新垣が好投。この日はコントロールがよかった。5月20日の阪神戦から3ヶ月ぶりの白星を上げた。「力まないで投げたのが良かった」(王監督)



 8月15日(月)。60回目の終戦記念日を迎えた。

 孫は言う。「もし、(私が)政治家であったなら、4つの数字を明確にいたします」

 1つ目は日本のGDP(国内総生産)。2つ目は日本の税収、3つ目は日本の国家予算。これらの数字を30年後、50年後にどうしたいか。

「政治家は30年後、50年後、さらには100年後の日本をどうしたいのかを語るべきです」

 いま500兆円のGDPが今後30年間成長し続けると、日本のGDPはどうなるか。成長率1%で約700兆円、2%で約900兆円、3%で約1200兆円。

「何%の成長率でどこまでいきたいかという大きな志を、まず天下国家の志を持つべきだと思う」

 ちなみに中国のGDPは約160兆円だが、このまま8・5%の成長率を続けると、14年で日本のGDPを抜くことになる。電話回線数でいえば、現在日本が約6000万回線、中国が約2億回線。携帯も日本が約8000万台、中国は約3億台。電話ではすでに日本は中国に抜かれている。

 4番目の重要な数字として孫は、人口を上げている。現在、出生率は約1・2で過去最低。「人口を保つには2・1必要です。大変な状況です。人口が半分になってしまうということですからね」。

 母親が子どもを産みたいような国家にするというのは大変に重要だ。そのためには何をどうすればいいか。

 中国には帝王学というのがあるが、その要訣を孫はこう説く。

「大風呂敷を広げよ。天下国家を語り、志を持ち、天下国家百年、2百年、3百年の大計を立て、その決起文を書け」

 いかに天下国家が乱れているか。革命を起こして、何百万もの国民に涙を流させる決起文を書けるか。

 孫は言う。「鳥肌が立つような感動を人々に提供しなければいけない。命も惜しくないという人を何人集められるかで、世の中が変わる。そういう帝王学を日本の政治家にこそ広めていかねばならないと思う」

 9月11日(日)には衆議院選挙が行われる。

                                 (文中敬称略)


2005-08-12 10:43:24

第42話 ゆるぎない自信

テーマ:ホークス


第42話


ゆるぎない自信






 8月9日(火)。宿敵西武との対戦。初回で、いきなりホークスは松中の38号3ランなど6安打で6点を先取した。6回には「たっぷり休養をとった」ズレータが31号3ランで3点。試合を決めた。開幕以来、負けなしの斉藤は7回を7安打3失点で12連勝。「松中は難しい球をよく打ったね。初回の集中打が効いた。夢じゃないかと思ったよ」。王監督も上機嫌。斉藤は球団開幕12連勝のタイ記録。「ここまでいったら新記録を作ってほしいね」(王監督)。「城島が守らなくても3勝1敗はまあまあだね」。

 王監督は翌日の西武戦についても語った。「西武には3つ負け越しているからね、それをなんとか1つにしたい。あまり意識をしすぎてもいけないが、気持ちで負けてはいけない」。王監督のいう気力だ。ロッテとのゲーム差は5。「完全優勝をしてプレーオフ。そして日本一」。王監督の自信はゆるぎない。



 8月10日(水)。ソフトバンクの平成18年3月期第1四半期決算説明会が行われた。「5年ぶりにトンネルを抜けそうだ」。冒頭、孫正義はそう挨拶した。連結営業損益は5年ぶりに黒字回復になった。売上高は2586億円で前年同期比75・6%増。ソフトバンク・インベストメントのイー・ファイナンス事業が連結からはずれたが、日本テレコム買収で固定通信事業の売上げが加わった。営業損益は31億円の赤字だったが、インフラ事業で着実にユーザー数が伸びて損益分岐点を超えたため、6月では単月で黒字化した。

「損益分岐点を超えたので、ここから急激に利益が拡大していく。四半期ベースでは、この7月から8月は確実に営業黒字になるだろう。通期では数百億円単位の営業黒字になるのではないか」。通期の最終損益黒字化についても言及した。「現時点では、はっきりしたことは言えないが、強気にはなってきた」。投資回復期に入ったことは間違いない。

 その夜。ホークスは西武・松坂を打ち崩して対2連勝。城島に代わって守る的場の活躍が目立った。70勝一番乗り。2位ロッテとのゲーム差は6に広がった。貯金は37に。「ゴールが見えてきたから。残り試合とか、ゲーム差とか」(王監督)。残り試合は32だ。


 

 8月11日(木)。孫の48歳の誕生日。「黒字回復」「いまは無茶をしない」。来るべき決戦のときに向けた孫のゆるぎない自信と受け留めた。「楽しみにしといてください」

(文中敬称略)


 

2005-08-08 10:44:00

第41話 発想力

テーマ:孫正義


第41話


発想力






 孫泰蔵(ガンホー・オンライン・エンターテイメント会長)の発想は兄正義譲り、ユニークで壮大である。

「アジアに、シリコンバレーとハリウッドを足したようなものを作りたい」。

 上海、東京あるいは特定の場所というのではないのかもしれない。泰蔵が描くイメージは、20世紀初頭のパリのサロン。画家、詩人など多くの文化人が集まった。時代を動かしていく人材が集まり、作品やテクノロジーが生み出され、大きなうねりとなって世界に発信される場所。「自分もその中のひとりとして動きたい」。新しい時代を切り開いていきたい。それが泰蔵の夢なのだ。

 シリコンバレーでは、ヤフーを始め多くのユニークな企業が生まれた。泰蔵は言う。「あの場所から新しいテクノロジーが生まれ、世の中の価値観が変わった」。エンターテイメントの世界でも同じようなことがハリウッドで起きた。「人々の熱い思いや価値観、情熱などが伝わっていく形で、第2、第3の孫正義が現れるかもしれない」

 同じ志をもった人々が集うことができる「磁場のようなものを作りたい」と泰蔵は考えているのだ。


 

 孫泰蔵のユニークな発想は野球にまで及んでいる。「ホークスのファンで、特に門田(博光)選手のホームランに憧れた」野球少年だった泰蔵は、むろんいまも熱心なホークス・ファンだ。ヤフーBBのライブ配信を楽しむだけでなく、「チャット」でもメッセージを送る。「ズレータ打てー!」「ようやった!」など。「熱くなっちゃいますね」という泰蔵。「野球をおもしろくするアイデアはいっぱいある」。たとえば、相撲の人気の取り組みには懸賞金が賭けられることがある。「それと同じことが、野球でもケータイを使ってできるのではないか」。ここぞという場面で、ファンがケータイで賞金を賭けられる仕組み。

<満塁。松中登場>

1人100円程度でも、多くの人が集まれば大きな賞金になる」。バックスクリーンに懸賞金の額が表示される。これにはギャンブル性がなく、法的にも問題はない。100円に対する待ち受け画面への対価と考えられる。ファンも選手も熱くなれる。野球がますますおもしろくなる。

「こういった発想ができるのも兄貴(正義)がブロードバンドのインフラを普及させてくれたおかげです。ぼくらはその恩恵を受けている。兄貴に感謝しなくちゃね」。

  孫泰蔵のユニークなアイデアが実現する日は、そう遠くないだろう。

(文中敬称略)


 


 

2005-08-04 22:36:46

第40話 メディアビッグバン

テーマ:ホークス

 

第40話

 

メディアビッグバン

 

 

 

 

 

 8月2日(火)。「1年を振り返ったときにポイントになる試合でしょう。これで嫌なムードもふきとんだ」(王監督)。2連敗中のホークスにとって価値ある勝利。「ビックバン」が起きた。6回、ズレータの逆転満塁ホームラン。「サムライのように最後までがんばります」。

 

 

 いま、メディアの世界では「ビッグバン」が起きようとしている。

 孫泰蔵(ガンホー・オンライン・エンターテイメント会長)は、近い将来に〈メディアビッグバン〉が起こると考えている。

 金融ビッグバンは規制緩和によって起きたが、同じことがメディアの世界にも起きる。

「テクノロジーがメディアの枠組みを壊し、メディアの概念そのものも劇的に変化する」(孫泰蔵)

 インターネットには、周波数による物理的な限界も、配信の規制もない。現在、トヨタは年間1100億円規模の広告宣伝費を使っている。これがブロードバンドを使って、ハイビジョン並みの高画質動画を自由に電送できるようになるとどうなるか。企業が自分たちで放送局を作ったほうが、安くて高品質なものができると考えるのは当然だろう。

 そのことが明確化してくるのは2008年ぐらいだと、孫泰蔵は言うのだ。「もしぼくがトヨタの人間だとしたら、800億円も要りません。100億ぐらいで一瞬のうちに巨大なTV局を作ってみせます」

 なぜかといえば、トヨタカップという全世界の20億人が見るイベントがある。「1年目は無料、2年目から有料にして、そのうち2億人から100円ずつ課金できたら、200億円になる。こういったことがいろんなレベルで起きる」

 世界はすでにその方向に向かって動き始めている。米マクドナルドが年間の広告予算の半分をネットにすることに決めた。TVのCMはスキップされ、若者がTVを見る時間よりもネットに向かう時間のほうが長い。これから日本の多くの企業も追随していくにちがいない。「100年に1度の変革が放送の世界に訪れようとしています」(孫泰蔵)

 

 

 8月3日(水)。孫オーナー以下が出席して、ソフトバンク本社の取締役会が初めてヤフードームで開かれた。「(球場で)役員会が開かれるのはとてもいいいこと。試合も見てもらえる。今日も勝ちます。最後にものを言うのは気力」(王監督)。試合は松中の2ラン。大村は2本のソロホームラン。和田は球団史に名を刻む3年連続2ケタ勝利をあげた。

                             (文中敬称略)

2005-08-01 12:09:41

第39話 悔しさ

テーマ:孫正義


第39話


悔しさ






 7月30日(土)。ロッテとの首位攻防戦。杉内がロッテを相手に本拠地のマウンドに登るのは、1年ぶりのことだ。「どうしても勝ちたかった」(杉内)。昨年の6月1日、ロッテを相手にKOされた悔しさにベンチを殴り、両手を骨折した。杉内は新しい自分に挑戦。自らの手で勝利を掴んだ。14勝、8回を零封で飾った。松中はプロ9年目で1000本安打を達成した。「(初安打のときと同じ)ドームで打てたのが嬉しい。日々、新たな気持ちで、やっていく」(松中)

 7月31日(日)。新垣が先発。初回、ベニーがボールの判定をめぐって退場。その直後に新垣はロッテの猛攻に逢い、6点を奪われ、その後も立ち直れず5点を献上した。王監督の我慢もこれまでだった。「コントロールも悪かった。自分で調整しながらやっていくしかない。野球の神様がガツンとやった。本人がどう思うかどうか」。自らの道を切り拓いてきた指揮官の言葉は重い。悔しさをバネに新しい自分になれるかどうか。改過自新。


 

 孫は小学生のときに、「大人になったら何になりたいか」と考えた。夢は4つあった。小学校の先生、画家、事業家、政治家。この4つの夢のどれかになりたいと思った。これらに共通している点はひとつだけある。「クリエイティビティ、創造力ということです」。

 これらはそれぞれには関連性がないように感じられるかもしれないが、孫の中ではひとつだ。同じ学校の先生でも、孫がなりたかったのは中学や高校、大学の先生ではない。「真っ白なキャンパスの小学生に、何か人生観というか、人生の入り口を教えてみたいと思った」。

 画家はクリエイティビティそのもの。孫は商売人になりたいと思ったことは一度もなく、天下国家を変えるような事業家になることを夢見た。「男が命をかけてやるのは事業家で、天下国家を変えてみたいと思った」。政治家はどうか? これも創造力の世界だと孫は考える。

「政治家も自らが志を立て、天下国家を変える、改革をするということができるならば、これは創造力を発揮できる世界だと思います」

 孫は4つの夢の中のひとつを実現させ、革新的な事業家になった。

「いまでも志高く、天下国家のお役に立てればという気持ちは常に持ち続けています」

 孫は同じ場所にとどまることを好まない。大きな夢に向かって突き進んでいく。どんどん進化する自分でありたいと強く願っている。

 (文中敬称略)


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