第13話 人生の羅針盤
テーマ:孫正義
第13話
人生の羅針盤
NHKテレビ『経済羅針盤』(4月24日)に孫正義が登場した。日曜の朝。平明な孫の言葉に真実が込められていた。咳唾(がいだ)珠(たま)をなす。一言ひとことに珠玉の響きがあった。
インターネットとテレビの融合とは。
「インターネットでもテレビが見られるようになるし、テレビもインターネットにつながる。区別がだんだんなくなる。インターネットでもフル画面の動画で、何千チャンネルでも見られるという時代がもうじきやってきます」
テレビにもコンピュータが入っている。これがネットワークにつながって、さらにテレビからでもインターネットのコンテンツにつながる。
「どちらがテレビでどちらがインターネットか、その境がなくなっていくということ」
孫の説明は体のすみずみにまで浸透していく。どちらが支配する、勝ち負けの世界ではないのだ。滑らかな語り口だが、饒舌ではない。情熱的だが、感情的ではない。一言ひとことが心地よく響く。
私が孫に初めて会ったのは、20年近く前だが、そのときから今日まで孫の方向性は一貫していて、微動だにしていない。
「やがて一人ひとりがPCを持つ時代がやってきます。そのときはネットワークでつながります」
当時、孫のこの言葉にどれほどの人が真剣に耳を傾けただろうか。
「2、3年先を見るほうが難しいと思う。2、30年先を見るほうが、ほとんどはずれない」
2、30年先のイメージを描いて逆算して、10年後、5年後、2年後を考える。
「ぼくの場合は逆算方式」
孫の実弟・孫泰蔵(ガンホー・オンライン・エンターテイメント会長)が東大合格めざして猛勉強をしていたころ、兄から受験勉強の仕方をゼロから教わった。
<問題はあくまでも結果なのである。ということは、最終的に全体としてどれだけやるかという計画を立てるべきなのだ>
最終のゴールを決めて、それを逆算していく。そのためにいま、何をやるべきなのかを兄は弟に徹底して教え込んだ。結果、弟は最難関の東大経済学部に合格した。
孫にはすでに確かな未来が見えている。
「蛇口をひねれば水が出るように、ブロードバンドはわれわれの生活に入ってきます」
誰でもいつでもどこでも、平等に利用できるブロードバンド時代が、すぐそこにやってきている。
孫は人生の羅針盤をも示してくれた。
(文中敬称略)








