hataizu
2006-02-01 10:00:00

萬と万と卍

テーマ:☆ 中国語

一十百千…の次の単位の「マン」,現在の常用漢字表を見ると「」と表現されています。ところが手形なんぞに書く場合は改竄防止の為に「」と書くようになっています。さて中国語ではこれらの漢字はどのように扱われているのでしょうか?


」は「」の旧字体と思われている方も多いと思いますが,古来より何れの漢字も使われていまして,「」も由緒正しい漢字の一つです。


『集韻』には「万數也通作萬」という表記がありまして,発音は「無販切」とあることから日本語では「バン」若しくは「マン」,中国語では「wan4」という発音であることが分かります。日本の常用漢字も大陸の簡体字も昔から存在した「」という俗字の字形を「」に当てていたのですね。


この漢字を調べ続けると『正字通』の記載にぶつかりました。「万,今俗,借萬爲卍…(中略)…萬,古作卍,俗作万」という一文がありました。その昔西域では万の数を表すのに「」が使われていたそうです。「」というのもこの「」から変形した結果とのこと。今や地図記号でお寺を表すことでしか使用されない「」にも愛着が湧いてくる由来ってもんです。


ところでこの「」を使った姓があることはご存知でしょうか?単体で使用されることは無く「万俟」と複姓で使用されます。この場合の「」の読み方は『集韻』に「蜜北切」とあるので日本語だと「ボク」,中国語だと「mo2」という発音になります。これは知人に「万代」と書き「モズ」と読ませる人がいまして,なぜ「マン」という発音が出たのか調べたので知っていた雑学ってやつです。

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2006-01-25 10:00:00

漢字を調べるにあたって

テーマ:☆ 中国語

このブログを公開するようになり,周囲から「中国語ネタを調べるの大変でしょう」との声を頂くことが多くなりました。確かに大変です。ネタを決めてその漢字を徹底的に調べるにはそれなりの手間が掛かるのは事実ですが,慣れれば苦痛にはならない程度しか調べていません。専門の研究者に言わせれば中途半端な内容だと思います。何せ書いている本人が物足りないと思っているくらいですから。


参考までにブログを書くのに使用している辞書類を列記してみたいと思います


中日辞典(小学館) 

 学習者の定番ですな

 ただし一般の中国語学習者の現状を知る程度の参考資料

 「頁」の発音で「xie2」が掲載されていない等の問題があります


中日大辞典(愛知大学)

 大学時代に購入した中日辞典です

 中国語での読書の際のお供をさせています


井上日華新辞典(文求堂)

 昭和6年に出版されたポケットサイズの辞書

 サイズによらず民国末期の秘密結社の隠語が掲載される等

 マニアックな内容が気に入っています

 中国語を追究したい方は是非古本屋で探してみてください


大漢和辞典(大修館書店)

 全15巻の世界最大の漢語辞典

 文字や単語の由来が詳細に掲載されているので

 このブログには不可欠な辞書

 問題点はボリュームかな?

 価格も高いので研究者でもなければ自宅に揃える人はいないでしょう


(三遠文化:台湾)

 台湾の国語辞典です


新華詞典(中華書局:大陸)

 大陸の国語辞典です

 台湾に特化しているのであまり使いません


中華字海(中華書局:大陸)

 収録文字85,568字という世界最大の字典

 文字の異体字を調べたりするのに使います

 しかし折角調べてもPCで表示できないのであまり意味を成していません


それ以外に『説文字解』,『龍龕手鏡』,『康煕字典』が必ず調べる字書になります。こうやって改めて書き出すとよく調べているなぁと自分でも感心してしまいますが,この他にケースごとに『二十四正史』や『四書五経』,『三国志演義』を初めとする古典小説を日常読みながらメモしている事を考えると,大学院時代より勉強しているかも?と思えてきます。


そしてこれらの資料が最近の悩みのタネになりつつあります。これだけの書籍を買い集めれば部屋が本で溢れるのは必死,そろそろ寝室に書籍が進出しつつあります。


しかしこれだけ資料を調べても疑問が解けない漢字にぶつかるのが漢字の奥の深さでしょう。

2006-01-07 14:56:54

たかがネジなれど

テーマ:☆ 中国語

中国語を話すということは一体どのようなことなのだろうと時々考えることがあります。確かに日常会話に不自由しない程度に話していますし,資格でも高級HSKを持っており,さらに大学~大学院にかけて東洋学を専攻したので古代中国語である漢文もそれなりに読めますが,果たしてそれだけで“中国語が出来る”と言い切れないなぁ…自身のあやふやな中国語の知識と能力におかなびっくりしながらの毎日を送っています。


思い返せば7年前に大陸留学から帰国し,「中国語できます!英語できます!韓国語できます!」と大見得を切って今の会社に入社したのですが,入社早々痛感したのは「留学の知識は仕事には役に立たない」という現実でした。


機械メーカーに勤務していますので,海外営業職をしていますが,何かと現場で技術通訳をしなければならない場面がありました。ある程度の技術用語は付け焼刃を含め勉強しましたが,現場で使う専門用語はおいらごときの知識では太刀打ちできませんでした。


今でも思い出深いのがネジに関して通訳した時です。ネジと言えば中国語で「螺絲」くらいならば中国語中級者でも分かりますが,その種類を通訳となるとかなりの難問,そもそも日本語で「ホロセット」と言われても,一般の日本人にはその日本語の意味が分かりませんって。


こういった専門用語は辞書には載っていないので,技術系の台湾人を捕まえてホームセンターに強制連行して1日つき合わせて覚えるしかありません。そしてその中国語を実際に通訳の現場で使用してみて,おかしい表現を修正していく… たかが「ネジ」の通訳ですが使いこなすまでにかなり手間がかかりました。通訳って難しいなぁと思う瞬間です。



参考までにネジの種類の中国語を列記しておきます。


丸ネジ 十字螺絲
皿ネジ 平頭螺絲
キャップボルト 内六角螺絲
六角ボルト 外六角螺絲
ホロセット 止付螺絲

一体どういうものか理解できない方はお近くのホームセンターまで(笑)

2005-12-25 10:00:00

杏林大学に関して

テーマ:☆ 中国語

昭和40年に開設された杏林学園短期大学を前身に,現在では医学部,保健学部を中心の大学となっている杏林大学。現在では総合政策学部や外国語学部も併設され総合大学として性格を有していますが,中国人であれば大学名の「杏林」を見れば医学関係の大学であることは誰にでもわかる名称です。「杏林」は医学の代名詞として使用されていますが,その由来を今回ご紹介したいと思います。


三国時代に呉の董奉という人物が蘆山に隠居していた時のこと,医者である董奉は近所に病人が出るとお金を取らずに治療を施していました。治療代を受け取らない代わりに董奉が求めたことが杏の木でした。重病の場合は5株,軽い病の場合は1株を持ち寄るというものです。数年後董奉の邸宅には十万余株の杏の木が植えられていました。更に董奉は住民と杏の実と穀物を交換し,交換した穀物は貧しい人々や旅人に分け与えられました。


また董奉はこのような「仁心」のほかに「仁術」をも兼ね備えた医者であり彼が救った病人は数知れません。『神仙傳』という書物には董奉の仁術を紹介しています。交州刺史の杜燮が病で亡くなって3日たった時,董奉は取り出した3粒の丸薬を視野の口に含ませました。そてから暫くすると杜燮の顔は見る見る生気を取り戻し4日後には完全に回復したという伝説があります。


このような奇跡を起こす董奉を人々は「董仙」と呼ぶようになりました。また彼の杏林は病人が董奉に対する畏敬の念を込めて「董仙杏林」と呼ぶようになったという事です。この故事より「杏林」が医学を表す言葉として使われるようになりました。


この「杏林」ですが中国語では「杏林春滿」として医者の仁厚を形容する言葉としてよく使用されます。「王醫生仁心人術照顧我母親,使我有杏林春滿的感受」などは小説やドラマで頻出する決まり文句です。


杏林」と似たような言葉に「杏壇」という言葉もあります。こちらは元々「道家が修練を積む場所」という意味ですが,宋の仁宗の時代に孔子堂を改修した際に周囲に杏の樹を植え,「杏壇」とう碑を建てたことから,現代では「教育」を表す言葉として用いられています。


混同しがちな言葉ですが,由来を調べればその違いもはっきりするのではないでしょうか?



2005-12-23 10:00:00

中国で死滅し日本で生き残った漢字

テーマ:☆ 中国語

世界に誇るアニメの巨匠・宮崎駿監督の作品に『耳をすませば』というものがあります。この作品は台湾でも人気を博しましてDVDなども売り出されていますが,なぜかそのタイトルは『心之谷』と翻訳されていました。初めて耳にしたときは『風の谷のナウシカ』かと思いました(苦笑) 「耳」も「すます」も「聞く」という概念すら取り払った大胆な翻訳です。


『耳をすませば』を見ていてちょっと気になったことがありました。それは主人公の「月島雫」という名前ですが「月島雯」と改名されています。作品中では台湾の習慣に従い「阿雯」と呼ばれています。アニメに限らず日本人の名前を中国語にする際に本来の表記を外れる場合もありますが,それは「中島みゆき」を「中島美雪」というようにひらがなを漢字表記にする場合が殆どで,中途半端に国字でもない漢字一文字を変更すのは非常に稀なケースです。


その理由は辞典で「」という文字を調べて見ると分かります。「」は国字でなく中国でも存在していますが,『小学館中日辞書』で探しても掲載されていません。そこで大修館書店から出版されている『大漢和辞典』で調べてみました。なんとそこには「義未詳」との一言があるのみです。「しずく」というのは国義でして,言ってみれば意味だけが国字という世界です。


たとえ中国語に存在していても意味不明の漢字では一般の台湾人には馴染みがある訳もなく,従って発音もできないという事情から「」に置き換えたようです。因みに「」とはwen2という発音でして「模様かかった雲」と言う意味の漢字です。「しずく」の意味とはからなりズレますが,部首が一緒ということでOKとしましょう(笑)


折角なので「雫」の発音にも触れておきたいと思います。こちらは『龍龕手鑑』という書物に「雫、奴寡切」とあるので、おそらくnuかnaoという発音であろうとおいらは勝手に考えています。但し音韻学に関しては素人この上ない人間ですので,この辺は中国文学の専門家の意見をお聞きしたいところですね。

2005-12-07 10:00:00

成語の覚え方

テーマ:☆ 中国語

周囲の中国語学習者からしょっちゅう質問されるものに「故事成語はどうやって勉強するの?」というものが有ります。確かに外国人によっての最大の難関は成語,「一石二鳥」のように日本語でも同じ表現を使っていたり,「刻舟求劍」のように漢文調で読み下せば理解できるものに関しては問題無い(実際には聞き取りに問題がある場合は多い)が,日本語では馴染みの薄い「克紹箕裘」のようなものになると確かに勉強するのは大変そうです。


膨大な成語を機械的に暗記していくのは現実的でないでしょう。そこでおいらの勉強法をご紹介しましょう。それは中国語の文章の中で知らない漢字が出てきたら中日辞典でなく漢和辞典を調べるということです。中国語がある程度のレベルに達すればどんな難解な文章であっても知らない漢字は限られてきます。また中国人(大陸人)自身も中国語の現代化運動の中で難解な文語表現を改め分かりやすい口語表現(口語文)で表記するため,中級以上の中国語レベルの日本人にとって馴染みのない字は殆どが由来や故事を持つ表現であるといっても過言ではありません。


中日辞典を調べれば意味は理解できるでしょうが,残念ながらその由来までは説明されていないので現実です。ところが日本の漢和辞典はよくでいたもので,その成語の由来を出典まで掲載して解説しているものもあります。人間不思議なもので意味そのものを覚えるより,由来を知った上で意味を覚えた方が印象に残りまs。


また漢和辞典ならばその漢字の持つ意味,そして目的の言葉以外に同じページに掲載されている他の漢字をついでに見ることもできます。おいらにとってはこちらの方が重要でして,目的の漢字や言葉を調べるついでに他の項目を眺めながら語彙を増やしています。


小学校の漢字の授業以来使うことのあまり無い漢和辞典ですが,それほど高いものでもありませんので中国語学習者は手元に是非一冊置く事をオススメします。ちなみに筆者のお気に入りは角川から出版されている『新字源』,高校時代からの愛用の一冊です。

2005-11-09 10:00:00

火星語?

テーマ:☆ 中国語

台湾の若者の間で使用される言葉に「火星文」というものがあります。文字通り解釈すれば「火星語」となりますが,火星では未だ生命体が発見されていない状態でして,火星独自の言語があるとは考えにくいです。一体「火星文」とはどんな文章なのでしょう?


以前注音文化 と題して台湾の流行表現をご紹介しましたが,「火星文」はそれの延長線上に使用される言葉です。火星の文章=地球人には理解できない文章という意味で比喩的に使用され,つまりは年配者では理解できない,或いは理解が難しい若者独自の文章表現を指す言葉です。


火星語をいくつか紹介しますと,英語系統,台湾語系統,象形系統の3種類に分類することが出来ます。まず英語系統ですが,アルファべットを使用し発音が近似している文字を表すという方法,例えば「u」で「」「」「」等を,「b」で「」「」「」「」等を表したりするのがその方法です。


続いて台湾語系統ですが,或る漢字を用いて全く意味の異なる台湾語を表現するというもので,例を挙げれば「迷」で「」,「費」で「」を表したりする方法です。


最後に象形系統ですがこれは単純で「→」で「」を「○」で「OK」を表したりする表現法方法で,日本でも同様の使用法があるのでこれは分かりやすいと思います。


これだけなら慣れれば何とかなりそうな気もしますが,台湾の「火星文」で難しいのがこれらを組み合わせた用法が多数あるということです。例えば「e」で台湾語の「彼(中国語の)」を表したり,「+」で「」を表し,更に「」と同音の「」,「↓」で「」を表し同じく同音の「」の意味に派生したりとなるとおいらなんぞには完全にお手上げの世界です。


「火星文」がどれくらい分かりづらいかは文章でいくら説明しても理解してもらえないと思いますので,例を挙げたいと思います。文字化けではないのでご注意を!


【正式な文章】

曾經有一份真誠的愛擺在我的面前,但是我没有珍惜

等到失去的時候才後悔莫及

塵世間最痛苦的事莫過於此

如果上天可以給我個機會再來一次的話

我會對這個女孩説我愛他

如果非要在這份愛加上一個期限,我希望是…一萬年


【火星文】

曾經u1一份金誠d愛擺在挖d面前,但4w迷u珍c

斗到失qd4候才後悔莫g

塵4間最痛苦d4莫過於此

如果↑天口以給挖咕g費再乃1次d話

挖費對嘰咕女孩説挖ie

如果非要在嘰份i+↑1咕期限,挖c望4…1萬年

…こんな文章分かるか!と言いたくなりますが,この「火星文」はまだ初級編,実際にはより複雑怪奇な文章が使われているようです。確かにこれは暗号を通り越して「火星語」かも!?

2005-10-16 09:00:00

中国語と韓国語

テーマ:☆ 中国語

中国語ネタでブログを書いていますが,実は韓国語のほうも仕事で使っています。ソウルに留学したことがあるので話せて当然といえば当然なのですが,日本人にとってアジアを代表する言葉である中国語と韓国語を話す関係でしばしば質問を受ける内容に中国語と韓国語はどちらが難しいかというものがあります。

言語構造も発音構造も異なる二つの言語を一概に比較することは難しく答えに窮してしまいますが,おいらの個人的な感覚で言えば,初級者にとっては中国語,中級者にとっては韓国語がより簡単なような気がします。


初級者の場合は会話能力が皆無であるため,文字を意味の分かる漢字を使用する中国語の方が簡単に感じると思います。中国語が全く分からなくても「我是日本人」という文章を見れば「私は日本人」という意味は分かりますが,ハングルで表記されると完全にアウトでしょう。


これがある程度勉強を進めると文法構造が日本語に似ている韓国語のほうが簡単に感じてきます。「旅行に行く」を「旅行を行く」のように助詞の使い方が若干異なったりと相違点はありますが,「友達と話の花を咲かせる」などという慣用句でさえ韓国語の場合は基本的に単語の置き換えで話せるため単語と基本的な動詞&形容詞(厳密にはこれに存在詞が加わる)の活用を覚えればそれなりに会話が成立してしまう点,そしてなにより中国語のように声調が存在しない韓国語のほうが日本人に馴染みやすいという点がその理由だと考えています。


さて上級者にとってはどうなるかと言うと…率直に言えばどちらもかなり難しいです。韓国語の場合は敬語表現の豊富さに加え,独特の言い回しが豊富に存在しているため韓国人と同じような会話能力を身につける困難さがありますし,また中国語では豊かな故事成語に加え,台湾では話し言葉とは全く異なる書き言葉が存在しておりこのマスターが困難を極めます。


個人的には敬語表現が存在せず漢字というパーツの組み合わせて表現力を広げられる中国語の方が簡単なように感じますが,いずれにせよ外国語をマスターするのは至難の業。おいらも日々精進の生活を送っています。


2005-09-29 09:00:00

マツダ自動車

テーマ:☆ 中国語

日本の企業が台湾に進出した場合,その会社名は原則として日本の漢字をそのまま使います。自動車メーカーの場合「トヨタ自動車」は「豐田汽車」,「日産自動車」は「日産汽車」としていますが,唯一例外として「マツダ自動車」があります。


「マツダ」の部分は日本人であれば「松田」の漢字を充てたくなりますが,中国語表記では「馬自達」と「マツダ」を音訳表記してしています。なぜこのような当て字を使うのかといますと,「松田」の中国語発音に問題があります。


「松田」の発音はsong1 tian2(ソン ̄ ティェン/)と「送天」のsong4 tian1(ソン\ ティェン ̄)に似ているということで不採用になったという話があります。「送天」では“天国に送る”という意味,自動車メーカーがこんな名前をつけたら確かに洒落になりません


このような例は他にもあります。「全日空」もその一つで,中国語で読むと「一日中ヒマ」という意味になってしまい,それに気付いた全日空は自社ブランドをANAに全面的に変更しました。


どうでも良いですが私の勤める会社も中国語で発音するととんでもない意味になってします。会社名に限らず皆さんも自己紹介の前に中国語の意味を再度見直してみてください。意外な発見があるかも(笑)

2005-09-20 09:00:00

漢字の総数は?

テーマ:☆ 中国語

漢字検定1級合格して更に中国語を理解し,東洋史を大学時代専攻していたとなると周囲から漢字に詳しい人と捉えていただきさまざまな質問を頂きますが,その中でも最も回答に困るのが漢字はいくつあるの?という質問です。これはかなり難しい質問です。


古代より現代に至るまでの代表的な字典(辞典)における収録文字数を挙げれば下記のようになります。上の質問に解答するなら85,568字程度ということになります。


『説文字解』   9,353字 後漢 許慎

『字林』     12,824字 晉 呂忱

『玉篇』     16,917字 梁 顧野王

『龍龕手鏡』  26,430字 遼 釈行均

『字彙』     33,079字 明 梅膺祚

『康煕字典』  48,651字 清 張玉書等

『大漢和辞典』 49,964字 日本 諸橋轍次(1960年)

『中華字海』  85,568字 中国 冷玉龍(1994年)


とまぁ時代が下るにつれ収録文字数が増えていきます。古代に関しては収録文字数が増加する原因は,それぞれの時代に新しい漢字が発見された,または造られたという理由で説明ができますが,『中華字海』に至っては『大漢和辞典』の2倍に迫ろうという文字数,わずか34年の間に何故このような事態になってしまったのでしょう。


1994年に『中華字海』が世界最大の漢字字典と銘打って世に出回ってすぐに北京でこの本を購入しましたが,『大漢和辞典』を見慣れていたおいらにとっても難字奇字のオンパレードでした。巻頭の凡例では文字採録の基準として下記のものを挙げていました。


1 『説文字解』,『玉篇』,『康煕字典』などの歴代の字書に収録されている漢字

2 歴代の字書に収録されていないが文献で使用が確認できる漢字

3 國家語言文字工作委員會が公布した『簡體字總表』に収録されている漢字

4 甲骨文,金文や竹簡,帛書に見られる古文字で公認されていない楷書体

5 歴代の石碑に確認できる漢字

6 地方文献や方言辞書に収録された方言字

7 近現代に造字された科学技術面での新字

8 現代においても使用されている人名,地名の用字

9 『簡體字總表』に未収録ながらも現代の出版物で使用されている簡體字

10 1977年に中國文字改革委員會は発表した「第二次漢字簡化方案」に収録された文字

11 香港、澳門,台湾,日本,韓国,シンガポールでしようされる漢字


たしかにこれだけ集めれば85,568字にはなりますな。しかしこれでも全ての漢字を収録しているかというとそうでもなさそうです。収録した漢字の内日本や韓国の国字に関しては可能な限りの収録に留まっていまいして,探せば未収録も漢字はありそうですし,ベトナムを表記するために造られた字喃(チュノム)は収録されていません。字喃とて漢字でベトナム語を表記する際の文字なれば漢字の一種と言ってもよいと考えています。


漢字というものは「会意」の方法を使えば無限に造字できるのがその特徴です。しかも字形が複雑になればそれを簡略化する方法は時代によって,また個人によってことなる可能性を考えると渡井たちは文字通り無限の漢字の海を泳いでいるようなものです。


このようなことを書くと漢字を理解することは困難であるという結論になってしまいがちですが,85,568字の漢字の中で日常使用するのはほんの僅かです。ほとんどは同じ意味ながら字形が異なる別字や異体字と呼ばれるものでして,日常生活には無関係なものばかりです。『中華字海』の場合は「こんな漢字もあるの知っていた?」という考えの延長線で編集した「雑学字典」のようなものです。


日本人が一般に使用している漢字は3千~5千程度といわれています。中国人の場合は約8千,おいらのような漢字マニアでも1万程度が使用する漢字の限度です。漢字の特徴は存在はするが使用しない死字がやたら多いというのも特徴かもしれません。


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