ソロは私の命。そして、バンドは、それとはまた違った意味で、

大切なものになりつつある。

 

そんなことを人に話しながら、8月の主催ライブのことを思っていた。

 

ソロの覚悟を問うために主催した、「それぞれの十字架」。

 

 

 

 

歌と生きざまが直結した人達を選んだ。

 

トップバッターの清水健成さん。

 

 

今のライブハウスには、実験精神が足りない!と、

さまざまな実験を続ける、ウクレレ界の異端児。

 

ウクレレから琴の音が聴こえてくる「鶴の舞」。

空の上、雲の上まで連れて行ってくれる「積乱雲」。

海の底に眠る貝になったような気分になる「水深35m」。

クラシックがロックだった頃の作曲家のようで、素晴らしい。

 

重度重複障害者施設で、毎月、ライブを続ける人でもある。

障害者達との交流から生まれた「めっちゃベイビー☆」を

聴くたびに、健成さんを通して、彼ら、彼女らの息吹が、

人間の持つ、最もピュアな歓喜が、衝動が、伝わってくる。

 

 

 

二番手の栗原優さん。

 

 

毎週日曜、雨の日も、風の日も、新宿アルタ前の広場で、

反戦・反核・反原発を訴え、仲間達と歌っている人。

さまざまなデモにも参加している。

 

お金のために人を殺す人々への怒り、悲しみ。

そして、わかってほしいという祈り。

 

太く、熱く、スピリチュアルな声と、子供のようなその心。

 

この日は、涙を流しながら歌っていた。

 

「オカネノタメニヒトヲコロス?」「戦争の親玉」「祈り」。

3曲に絞ったその選曲は、潔かった。

 

 

三番手のライジング・マツさん。

 

 

建設現場で働く男の骨太な世界を、スピリチュアルに歌い上げる人。

マツさんの胸の十字架を見て、今回のタイトルを思いついた。

 

銚子で起きた、母子家庭の母親が、娘を殺した事件。

暮らしは貧しく、県営住宅の家賃の滞納が続き、立ち退きの

強制執行官が踏み込んだ時には、母親は死んだ娘の髪を

撫でながら、彼女の運動会のビデオを観ていたという記事を読み、

単なる親の子殺しじゃないと思い、作ったという「シャボン玉」。

 

何度か聴いているのだが、この日は涙が止まらなかった。

私も、生きた父の記憶は7年間で、あとはずっと母子家庭

だったからかもしれない。

 

何がこの母親を追い詰めたのか、みんなで考える必要がある。

 

そして、脱原発と表現の自由を訴え、経済産業省前で、

「After 311~霞ヶ関の中心で愛を叫ぶ !!」」というオープンマイクを

主催し続ける友人、浦邉力にエールを送った歌、「パワー」。

 

何と、この日は、浦邉力さんと奥さんの佳代さんが客席に。

ライブで聴くのは、二人とも初めてだという。

 

 

 

四番手は、私。

 

 

この日のメインは、「雪の夜」「朝鮮語で語りかけてください」

「3・11に生まれた友へ」。

 

私にとって、歌を作り、歌うことは、同時代を生きる人への

メッセージであると共に、死者との対話でもある。

歴史はいつも、一握りの成功者の目で描かれる。

だが、歌はそうじゃない。

 

私は、土の下の泣き声の代弁者でありたい。

そして、願わくば、その魂を昇天させたい。

 

そんな思いで、「雪の夜」を歌った。

親子の名乗りを上げられず、離れ離れに生きて死んだ、

父と祖母のことを。

 

「朝鮮語で語りかけてください」は、在日コリアン2世の音楽仲間、

黄秀彦さんの誕生日に作った歌。

 

日本は、本当は多民族国家なのに、それが見えにくく、歴史教育も、

大事なことは蓋をされ、時に、隣人を傷つけることがある。

 

歴史に学ばず、他者を、異文化を排撃するような狭い了見を、

この日本から無くしたい。違いがあるからいいんだと、

思える世界の実現を目指したい。

 

「3・11に生まれた友へ」は、東日本大震災の1年後に作った歌。

この歌を作って私は、福島へ向かった。

なぜ、福島か。一番、人が入らなければならない場所に、

一番、入っていない、と感じたからだ。

 

安全神話で原発を押し付け、爆発したら陸の孤島にして見捨てるって、

それは違うだろう。福島の原発で作った電気を使っているのは、

東京の人間なのに。人々はどんな思いで暮らしているのか。

ちゃんと目を見て、手を握り、励ましたい。最初は、そんな思いだった。

 

仮設住宅の集会所のサロンで、引きこもりがちなお年寄りの人達と、

童謡や懐メロを歌って、ストレスを解消してもらうボランティアを始めた。

地震と津波と原発事故で、土地を奪われ、家族を奪われ、

仮設住宅での長屋暮らしに、皆、よく耐えていた。

 

そして、思いのほか、明るかった。

菜園を作ったり、紙細工を作ったり。

千年以上続く武士の伝統、野馬追祭りのことを生き生きと話したり、

民謡を教えてくれたり。

 

「みんな、そんなに、がおってねえべ(しょぼくれてないだろう)」と、

花見の席で酒を注いでくれたおじさんが言った。

 

地元のミュージシャン達とも知り合い、友情を結んだ。

私は、いつの間にか、南相馬の人に、土地に、

惚れて通っている自分に気づいた。

 

原発20キロ圏内小高区出身、仮設住宅で避難生活を送る

志賀時恵さんの詞に曲を付け、「希望の里小高」という歌も作り、

皆で歌った。

 

その小高が、7月12日、遂に避難解除に。

仮設住宅慰問ライブのたびにお世話になる、つながっぺ南相馬の代表、

今野由喜さんのブログに、常磐線の原ノ町~小高間が、5年4か月ぶりに

再開通した様子が生き生きと描かれていたので、読み上げた。

 

 

途中の磐城太田駅では、地元住民がホームに集まり、日の丸を振り、

「お帰りなさい」の横断幕で列車を迎えてくれたという。

 

「急ぐことも焦ることも不要だ。亀の歩み大歓迎。一歩一歩、着実に、

それぞれの思いを胸に、復興に向けて、小高で生きようとしている

みんなで、共に時を刻んで行こう」

 

最後は涙で、声が詰まった。

 

通い続け、見届けようと、心に誓った。

 

 

みんな、本当にありがとう。

 

 

 

 

 

 

それぞれが、己の十字架と向き合い、喜びや悲しみを精一杯表現しながら、

希望へと向かった夜。

 

ソロなのに、チームのような一体感のある夜だった。

 

 

 

 

P.S. 私が劇中歌を提供した映画、『特務課の女豹 からみつく陰謀』の監督、

そして、生まれて初めて脚本を書き、演じた芝居『ちょっと長いお別れ』で、

相手役と演出を務めてくれた国沢実さんが、客席に。

 

 

「みんな、ラビィさんの分身のような気がした。ラビィさんのある面を強調したような」

という感想が、印象的だった。

 

友人は第二の自己。そう、きっと、お互いに。

 

出会いのエネルギーに感謝をこめて、結成したてのバンド、

蓮沼ラビィとマラフィキで臨んだ、7月の主催イベント

「山と山とは出会わないが、人と人とは出会うものだ」。
そして、ソロの覚悟を問うた、8月の主催ライブ

「それぞれの十字架」。

 

私にとって、どちらも大切なもので、今やるべきことだったのだと、強く思った。

 

 

Photos by ラビィ、和田さん、国沢さん、優さん

 

 

 

~近日ライブ~

 

●10月13日(木)大久保・ひかりのうま

 

南部輝久企画

"オカダノリコ、ハルちゃん応援ライブ!"

 

開場 19:00 開演 19:30

料金: 1800円+ドリンク

出演: 松本敏将(くふき,tobacco juice)

     ICHIKA 
     蓮沼ラビィとマラフィキ(ギター:高岡冬樹 ジャンベ:南部輝久)

 

 ※広島のオカダノリコさんは、急遽、娘のハルちゃんが入院し、

  出演キャンセルとさせていただきました。
  何卒、ご理解と応援を、よろしくお願いいたします。
  当日、オカダノリコさんの新譜を限定10枚販売いたします!

 

19:30~20:10 ICHIKA
20:30~21:00 松本敏将
21:10~21:50 蓮沼ラビィとマラフィキ

 

☆コンクリートジャングルにアフリカの種をまく、蓮沼ラビィとマラフィキ、参上!

新曲、「ハッパがなくてもサイコーさ!」も、乞うご期待!

 

 

 

●10月15日(土)~16日(日)

  福島県南相馬市・仮設住宅慰問ライブ&おだかストリートライブ

 

  10/15(土)

   10:00~11:30 友伸グラウンド仮設住宅

   13:30~15:00 千倉仮設住宅

 

  10/16(土)

   10:00~11:30 西町第一仮設住宅

   14:30~15:00  小高復興文化祭・おだかストリートライブ

 

 ★10/16おだかストリートライブ・タイムテーブル★

  藤家サイクル店前ステージ
  (小高駅を背に、一つ目の信号を渡ってすぐ左手)

 

 10:00~10:15 開催挨拶&演奏 吉田タンス店(南相馬市小高区)

 10:15~10:35 南相馬ウクレレ部

 10:50~11:20 しんごお兄さん(郡山出身→神戸市)

 11:35~12:05 ぞーさん(南相馬市出身→東京)

 12:20~12:50 音楽工房(南相馬市)

 13:05~13:35 Radio【aco】tivity(南相馬市)

 13:50~14:20 久米さんバンド(南相馬市)

 14:30~15:00 蓮沼ラビィ(東京都)

 

 

●10月22日(土)神楽坂・ MASHRECORDS

 

〜音と兎と討入りの刻〜

OPEN18:30/START19:00

チャージ¥2000(+1D)

(出演)
①小山ひとみ(g&p)
②蓮沼ラビィ(g)
③佐藤歩(g)
④トモクロウ(g)

 

☆神楽坂“MASH RECORDS”への行き方!

東京メトロ東西線“神楽坂”駅下車。
矢来方面2出口を出たら、右に曲がります。
セブンとオリジンを過ぎて、次の角を右に曲がったらすぐの所(路地)にあります!
http://mashrecords-voyage.com/

 

 

●10月27日(木)さいたま新都心・串焼き処「楽園」

さいたま市大宮区北袋町1-90-4  TEL: 048-699-1129

 

開演 19:30~ 投げ銭制
出演: Show-Hey、蓮沼ラビィ
 

 

 

●10月28日(金)新宿・SOULKITCHEN

 

開場 19:00 開演 19:45

料金: 1500円+ドリンク

出演: 雨本ふみ、どや、斎藤メイ、蓮沼ラビィ

 

 

年に一度のワンマンライブ

蓮沼ラビィ、バースデー・ワンマンLIVE(23名限定予約制)

アフリカ帰りの任侠ブルース、蓮沼ラビィが、生まれた日に歌います!
気骨あふれる現代のサムライ、DISAGREEが友情出演!

2016年12月17日(土)@新宿・SOULKITCHEN
開場:19時 開演:19時半
CHARGE:2000円 +2DRINK(1000円)

出演:蓮沼ラビィ、DISAGREE(剣堂シュウジ、SNAKE、貫井源太郎)


※23名限定。ご予約受付中です。残り、10席!お早めにどうぞ。
aoiryu@now.mfnet.ne.jp(蓮沼ラビィ)