発創アリ。【第2章】

思いを引き出す。紡ぐ。世界を動かすチカラに変える。


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その瞬間は、もう巻き戻せない
通り過ぎてしまった時間だということを
僕の心は理解しようとしませんでした。


韓国のテグで開催されている世界陸上、男子100m決勝。
世界記録保持者のウサイン・ボルトがフライングにより失格。


この大会から国際陸連のフライングについてのルールが厳格化され
一度目のフライングで失格=一発失格になりました。
まさか、そのルールの網に足下をすくわれるのが世界記録保持者とは。


これまでのルールでは、1度目のフライングは許容され
2度目は、誰であれ失格というものでした。
さらにその前は、同じ選手が2度フライングをしたら失格というものでした。


ルールは2段階をへて厳格化していることになります。


ルール厳格化の発端は、おそらく2003年パリ世界陸上にさかのぼります。
男子100m二次予選において、アメリカのジョン・ドラモンドが
フライングと判定され、「俺はやっていない」と猛烈に抗議し
試合の進行を大幅に遅らせ、ドラモンドは失格だけでなく
選手として陸上界からの永久追放を課せられました。

以降、フライングのルールは厳格化への道を歩みます。



しかし、このルールは大きな矛盾をはらんでいます。



フライング判定は機械によってなされます。
が、しかし、この機械は極稀に誤作動を生じ
フライングでないものも、フライングと判定してしまいます。
つまり完璧ではないのです。


機械であっても完璧ではない。


これは、誰しも日常で経験していることで
しかも100分の1秒、1000分の1秒を判定するのなら
なおさらのことです。


ところが、フライングルールの厳格化は
この完璧でない機械が、人間には一発失格という完璧さを求める
という、機械に人間を従わせる関係を強制しています。


私たち人間が生み出した機械によって
私たちの行動が制限されるだけでなく、価値判断され
しかも、失格という、選手にとっては命に関わる道を強制されるのです。



この世のどこにも完璧さが存在しえない以上
一発失格という、人間に完璧を求めるルールは
存在してはならないと、僕は思います。


そのルールによって得られるものは
円滑な試合運営、そして、緊迫した瞬間でしょう。

しかし、その円滑と緊迫は
人間を非人間的な領域に取り込んでしまっているのではないでしょうか。


2003年パリ世界陸上のドラモンドの失格劇には後日談があります。
陸上界を永久追放されるという厳罰に処せられたにもかかわらず

彼のフライングは、機械の誤作動だったことが
のちに判明したのです。



現在、ドラモンドは、とても丁寧な指導をする
優秀なコーチとして名を馳せています。






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オリンピック2大会連続2冠の
世界に誇る日本のトップスイマーが

世界水泳において
100mは4位に終わり
注目の200mは攻め続けたレースで2位。



魂が震えるレースでした。



彼のレースを
彼の結果を
何ごとか語るならば


己の血を持って語って欲しい


そう思いました。


己の血を指先に滴らせ
それを持って、己の言葉を紡ぐ


その覚悟で、己の考えを発するべきだ。


命を賭して表現するものに対して
語る言葉とは、そのようであるべきだ。



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より多くの人に
注目してもらおうと思うことと


より多くの人の
役に立ちたいということは


天と地との差ぐらいあって


あらゆる職業において
自分がどっちを志向しているのかは
かなり根源的な問いになると思います。


前者に流れていると思える場面が
自分にも他者にも多いので。


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