きらきらの想いをちりばめて
あなたに恋する乙女たちの物語





「テジャンの頃に」


ちらちらと雪が降っていた
高麗の冬は寒い
閉ざされた王宮の中で
ウンスは少し気持ちが沈んでいた

いつまでここに居たらいいのか
天界には戻れるのだろうか?
考えると不安になるから    なるべく
考えないようにしている
だが高麗もわるいことばかりではない

暇があれば様子を見に来る
ウダルチ隊長は冷たい口調なくせに
常に気配り目配りをして
さりげなく優しい男
彼が唯一ウンスの拠り所だった

ぼんやり窓の外を見ていると
背の高い彼の影が見えた
塞ぎこんでいるウンスを見守っているような
愛しい顔つきをしていた
ウンスは思わず上着を手に取ると
飛び出してチェヨンのもとに駆けつけた

如何しました?

驚いた顔でウンスを見るチェヨン

隊長の姿が見えたから来たの
退屈で仕方ないのよ
散歩に行きたいわ  連れてって
私をこんな所に閉じ込めたのは
あなたでしょう?

チェヨンはすまなそうに
肩をすくめて小さく頷いた

外は寒い  しっかり着込んで
足元に気をつけて

チェヨンが言ってるそばから
ウンスはつるんと滑りバランスを崩す

危ないではないか
まったくイムジャときたら
これだから目が離せぬ

抱きとめられた腕の中で心臓が高鳴る

そうよ  だからしっかり守って
私のそばにいて

チェヨンは何も答えない
ただ気のせいか?チェヨンの腕に力が入り
ぎゅっと抱きしめられた気がした






「告白」


なんの用だ?

あいつが言った
小さな頃から知ってる瞳が
ウンスを覗き込む
もじもじしていると畳み掛けるように
言葉が続く

用がないなら呼び出すな
こんな雪の日   風邪をひいたら
いかがするのだ

ご  ごめんなさい
テジャンに風邪引かせたら大変よね

あほう
ウンスのことだ
俺は鍛えているがウンスは違う
か弱いお前が風邪でも引いたら大変だ
それくらい   わかれ

ぶっきらぼうだが優しい男
生まれた時からチェヨンに惚れている
気がした

あ  あのね
渡したいものがあるの
はい    これ!
天界にはね   女人から好きだって
言っていい日があるんだって
だから  だから
お菓子を作ったのよ
私の気持ち受け取って

一世一代の愛の告白
今生の勇気を振り絞ったのに
困ったようなチェヨンの顔
いたたまれなくなってウンスは
踵を返して走り出した

くるぶしまで積もった雪で
なかなか思うように歩けず
ふらりと転びかけた

待て!
なぜ逃げる?

後ろから支えるように
抱きしめられた

だってチェヨンが困った顔するから

恥ずかしさと寒さで泣き出したウンスを
ゆっくり自分のほうに向けると
チェヨンは微笑んだ

早とちりの癖
子どもの頃から変わらないな
困るわけないだろ?
あのな
俺が先に告白したかっただけ
ウンスに惚れてるって
先越された

チェヨンの指先がウンスの涙を拭く

もう泣くな
これからは俺が笑顔にしてやる

チェヨンの声が耳元に届き   
ウンスは頷くのが精一杯
不意に抱き上げられた腕の中は
お菓子のように甘く幸せだった





「でざーと」


夕餉のでざーとは野いちごの
砂糖漬け
ソウルにいた頃の大きくて甘い
所謂いちごはこの高麗にはないけれど
すっぱい野いちごも貴重な砂糖に漬けると
甘いジャムのようになって
でざーとの逸品だ

口のまわりが赤いぞ
相変わらずおさな子のようだな

もくもくと食べていたウンスを
チェヨンがからかった

そんな意地悪言うならあげないから
美味しくできたのに〜

ウンスは野いちごの器をもって
ぷいと横を向いた

そうかそうか 旨いか
それは結構

チェヨンはさして残念そうにも
せずに ウンスを見つめる

ヨギ・・・

え?

ヨギ・・・ついておる

言葉と同時にチェヨンの舌が
ウンスの唇の横をかすめた

ちょっと?なに?

野いちご ついていた

あ ありがと・・・

キスされるよりなんだかドキドキ
こそばゆい感触が唇の端に残った

食い足りぬな

あ うんうん 野いちご
どうぞ

ウンスが器を差し出すと
チェヨンは笑って首を振った

こっちのほうがいい

急にからだが軽くなって
足が地面から浮き上がった

えええ?
お姫様抱っこ・・・何処行く気よ

イムジャを食べに

チェヨンはにやりと笑って答えた






「バレンタイン」現代版


バレンタインの前日から
ウンスはそわそわしていた

チョコを渡すタイミングが難しい
あんまり構えても
重たい女だと思われるし
軽く渡すには勇気が必要で
なんども鏡に向かって練習をした

「はい   これ」
これじゃあ素っ気ない

「あなたに食べて欲しくて」
これじゃあなんだか意味深だ

うだうだ悩んでいるうちに夜が明け
チェヨンに近づくことも
勇気も出ないままでいた

チェヨンはチェヨンで
顔を合わせたらウンスから
何かアクションがあってもいいのに
バレンタインを知らないのか?
おどおどするばかりのウンスを
気にしていた

すれ違ってばかりの毎日で
やっと先日
気持ちを確かめあえたはず
たかがチョコ一つでもチェヨンは
気持ちが気になる

ウンスはチェヨンの周りを旋回するみたいに
うろうろし
とうとう意を決してチェヨンの前に立った
そろそろ夕暮れ
このままだと夜になってしまうし

あの   あの   あの
ヨンに貰って欲しくて

すっと差し出したハートマークの
包み紙をチェヨンはうれしそうに
受け取った

待ってた
もらえないかと思った

待っててくれたの?

当たり前だろ
俺は彼氏じゃないのか?
嫌われたかと思った
はあぁ〜〜心臓に悪い!

チェヨンはウンスの肩に頭を乗せた

ヨンったら
ごめんね   なかなか勇気がでなくて
よかった   待っててもらえて

はにかむウンスのからだを抱きしめて
チェヨンは笑った
夕陽で赤く染まるチェヨンの顔色
バレンタインのハートみたいに
綺麗に輝いていた






そしてもはやシリーズかも?(≧▽≦)
イムジャ企画プレゼンツの二作品は
以前からの連続物となっております

今までのリクエストをまとめたら
スピンオフになります   
こちらのお話はウンスバージョンには
変換せずにそのまま
お届けさせていただきました






「秘密の贈り物」


マイル殿と使いに?

ああ すまないが王妃様の
急ぎの用で尼寺へ行って欲しいのだ
元のお母上様から荷物が届いておる
だが寺は男子禁制
口の堅いマイルを供につけるから
よいか 誰にも知られず行って
預かりものを受け取り密かに戻るのだ

女人と二人で出かけるなど
妻のウンスに知られたら厄介だ
だが
叔母の頼みを断り切れずチェヨンは
マイルとともに尼寺に出かけた

マイルは寺に入りふろしき包みを
抱えて来る

お待たせしました 大護軍様

ああ では急ぎ帰るとするか

はい

マイルは涼やかに返事をすると
荷物をチェヨンに預け二人は馬で
駆け出した

やがて王宮が近づいて来る

ここからは別々に門に入るとしよう
このお役目は内密ゆえ

はい 大護軍様
あのぅ これ・・・

マイルはチェヨンにそっと包みを
差し出した

なんだ 王妃様の使いはまだあったのか?

いえ これはチェヨン様に
先日のお誕生日の御礼です

そのような気を使わずとも・・・

書を読む時にチェヨン様にお使い
いただけたらうれしゅうございます
これだと書を読むときの
しおり代わりにもなりますし
お役に立てる品かと・・・

そうか?

チェヨンは頷くと
マイルの手製のカバーを懐に収めた


後日 休みの日
まったりと書斎で書を読んでいる
チェヨンの隣でウンスが尋ねた

見かけないカバーね

か かばーとな?

ええ 本にかけておくブックカバーでしょ?
どうしたの?素敵じゃない?
そのカバー

ウンスはいぶかし気に尋ねたが
チェヨンは何も答えずに
ただ微笑んだだけだった


チェヨン様
チェヨン様への秘めた思いは
秘めた思い出の分だけ
マイルは増していくのです


マイルの気持ちにチェヨンは
気がついたのだろうか?






「お返し」
 

王宮の庭園に梅が咲き乱れいい香りがする
気がつけば
あれからひと月になろうとしていた

医仙様が流行らせた天界式愛の告白日
お粉は密かにチュソクに
手作り菓子を贈ったが彼は固まったまま
愛想がなかった
その後典医寺のそばで見かけた
チュソクの熱いまなざしは
ヨンと一緒にいるウンスに向けられていて
互いに好きだと思ったのは自分の錯覚
チュソクは医仙様が好きだったのだと
打ちのめされた気分で
チュソクを避け続けたひと月

だがそのチュソクがどういう訳か
今庭園で目の前にいる

お粉殿   最近会えぬが忙しいのか?

優しい口調が罪作りなお方だと
お粉は思った

私のことならお気になさらずに
チュソク様はチュソク様の思い人のそばで
お守りしたらよいのです

それならば俺はお粉殿のそばにおらねば
なりません
バレンタインの贈り物   嬉し過ぎて
大事にし過ぎてカビが生えたことを
怒っているのか?

え?だって固まっていたから
迷惑だったんだと

それは誤解だ   どんなにうれしかったか
隊長と医仙様みたくなれたらいいと
どれほど望んだか

は?医仙様がお好きかと?

馬鹿な   俺の懸想相手はお粉殿だけ
それが証拠にほら   これを摘んで来たのだ

チュソクは野花の束をお粉に手渡した

天界にはバレンタインのお返しに
好きなおなごに贈り物をする
ホワイトデーなるものがあるそうだ
俺が贈る相手はお粉殿だけだぞ

お粉は自分の浅はかな誤解に
ようやく気づき
チュソクはお粉を抱きしめた

会えぬ日々さみしかった
もう勝手に目の前から消えてはならないぞ

今までの不安が嘘みたく
梅の香りとともに二人に幸せな時が訪れた


********


『今日よりも明日もっと』
桜の香りが漂う春
去年よりも一昨年よりも
あなたにもっと恋してる







イムジャ企画におつきあい
いただきありがとうございました



イムジャ企画に
リクエストお寄せいただいた皆様
(順不同です)


ようむ様
karin様
agemaki様
yon0716様
811059様
yu-kishina様
くるくるしなもん様
パウダー様
kacotan様
あゆみん様
ポヨン様
nana様
いちごン様
ミポリン様
aguru1107様
nananahappymoon様
マイル様
oyuming12様
ゆきだるまの




素敵なイムジャリクエスト
ありがとうございました

次回は誰がイムジャかな?

今回ご参加の皆様も
次回こそはと
リクエストをお考えの方も
次のイムジャ企画で
お待ちしてますヨン
(予定は未定です  ミアネヨ〜)





数日体調が悪くて←胃腸風邪の模様
ご心配おかけしました
昨日より復活しております

皆様お気持ち
ありがとうございました
沁み入りました


また
おつきあいくださいませ




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