清湯ブルース

ラーメンと妄言


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かつて69 'N'ROLL ONEが世に広めた昆布水を用いたつけ麺、その源流はとあるつけ麺イベントでかの大御所による咄嗟の判断から生まれたと云うエピソードを僕はある人物から伺ったことがある。その大御所とは故・佐野実氏であり、そのエピソードを語ってくだったのは奥様である佐野しおりさん。ラーメンの鬼を源流とするつけ麺の新たなるスタンダード、昆布水仕立てのつけ麺を提供する店は、関東では飯田商店、らぁ麺やまぐちを始めとし、謂わばラーメンのひとつの正統性を背負ったことを主張しているような気がする。此方のらあめん忘八、オープンこそ2014年5月だが、俄かに騒がれ始めたのはオープンから一年を迎えようと云う頃。埼玉県の加須市と云う僻地で突如、昆布水つけそばを提供し始めたことに起因する。当時、噂を聞きつけて片道3時間の行軍の末に辿り着いた忘八はまさかの臨休であった。あまりのショックに膝から崩れ落ちながらも、店の裏口に回ると仕込中の店主と接触することが出来た。そこから約一時間ほど話せる機会を得たため、ただ店を訪れる以上の収穫もあった。当時まだ謎に包まれていた忘八について知ることが出来、食べることは叶わずとも破格の大器であることは確信して帰路に就いた。あれから七ヶ月、遂に雪辱の忘八に再初訪した。開店15分前到着で先頭を奪取。真冬とは思えない日差しの中、店内からはソウルミュージックが仄かに漏れている。店の周りには飲食店などなく本当に片田舎、ところが開店を迎える頃には、非フリーク層と思しき客が10人程集まっていた。店内は小上がりもある蕎麦屋のようなしつらえ、客席は多いが全部入れると回転が悪くなるため、人数を区切って入店させている。相変わらず腰の低い店主だが、厨房の中での動きには一切の無駄がなく自信に満ち溢れている。元々は佐野ラーメンの店で修行を積んで独立したが、都内の店にも遠征を重ねていたらしく、69に憧れてこのスタイルを踏襲したとのこと。そして夢にまで見たつけそばの登場。舟形の器にはたっぷりの昆布水に浸された全粒粉入り自家製細麺、そして小皿には塩と山葵が添えられている。まずは麺のみで啜る。美味い。塩をまぶして麺を啜る。これは謂わば麺の刺身。堪らずつけ汁に浸して、一気に啜る。飯田商店のそれに比べると幾分簡素な味わいだが、蕎麦のような落ち着きがある。昆布水は鰹出汁がやや強め。全体に少し古風な情緒を宿しているおり、麺に主役を譲りながらも、その調和が個性的。そしてこの自家製細麺がしみじみと美味い。予想以上に世界観を構築したつけそば、辺境から天下を狙うに相応しい虎視眈々とした味わいが見事である。そしてあまりのスピードで麺を啜り過ぎたため、満腹感を彼方に置き去りにしたまま完食してしまった。やはりあの時確信した大器は紛うことなく本物であった。まさか一杯で済むはずもなく、続けて二杯目に突入。

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つけそばの興奮冷めやらぬまま二杯目のとりそば、オペレーション上の問題で頼むタイミングを窺うのも難しいが、今日は腹を括って食べ終えてからの注文。キャパのわりには二杯ずつの調理となるため、回転は決して良くはないものの、店主は着実に淀みなく作り続ける。広々とした店内に流れる古き良きソウルミュージックと棚に並べれたへうげものの単行本のセレクトがなんとも絶妙で、長閑な和みと忘八らしいこだわりとが混在する個性的なグルーヴを醸すことに成功している。そして待つこと暫し、配膳されるはとりそば。埼玉県の加須市で、これほどまでに正統性を強く打ち出す一杯に出逢える喜びは格別だ。まずひとくち啜ったスープの感触に驚く。これまで感じたことのなかった独特なねっとり感、昆布水とも違う。鶏油の効果なのかも知れないが、クドさが控えめな気がする。そして次に味覚が来る。つけそばの汁が嘘のように華やかな美味さで、更なる上積みがある。鶏醤油自体は都内ではさして珍しくもないのに、比内地鶏のガラと淡海地鶏の丸で抽出したスープに折り重なる醤油感が素晴らしい味わいを生み出す類稀なる調和。この店の最重要メニューはこのとりそば、つけそばはその味の正統性を補完する脇差に過ぎなかったとさえ思わせる圧巻のクオリティである。辺境から狙いを定めた矢が、まっすぐに時代の核心を射抜く見事さにカタルシスも爆発。本当に素晴らしいとりそばである。かつては行われていた夜営業も完全に捨て去り、昼に的を絞った潔さ。自ら麺を打ち、研鑽を重ねるのならば、それが最良かも知れない。それにしても、良くぞこの辺境でこの方向性を打ち出したものだ。畏れ入った。昨今、関東圏でここまでハードルの高い店も他に思い当たらないが、訪れた甲斐は確実にあった。いや、此処はまた訪れることになるだろう。最後に屋号の忘八は仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を失った者、またそれらを忘れさせるほど面白いところの意で廓やその店主の異称。訳もわからず此処に通う地元の客は最早そんじょそこらのラーメンでは満足出来なくなってしまうのではないかと、少しばかり心配にさせる屋号のセンスも秀逸。まだまだ底知れない潜在能力の高さに畏怖すら覚える大器、これからも己の行く道を信じて突き進んでもらいたいものである。

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久々二度目のらぁ麺すぎ本。

本年度TRY名店部門塩での躍進も目覚ましく、辛抱堪らずの再訪となりました。

言わずと知れた支那そばや出身、その厳格で由緒正しいイメージとも異なる店の雰囲気は、店主の醸す朴訥としたお人柄ゆえだろうか。

風格さえ備えた支那そばやイズム色濃いシルエット、それは清楚でありながら確固たる個性を汲み取るのが難しい箱入り娘のような側面も実は孕んでいた。

ところがである。

清楚さはそのままに、凛とした色香を漂わせ始めた。

つまりは、化けたのだ。


如何とも個性の強烈なくじら食堂、しば田、トイ・ボックスの寄合にこのすぎ本が加入したと聞いたとき、当初は正直ピンと来なかった。

しかし後に四つ葉を迎え、ワークショップと名乗るその寄合にすぎ本が参加した意義は予想以上に大きかった。

個性に揉まれ、それでいながら方向性を見失わず、自分の足元をしかと見つめた結果、やや大人しく感じられた才能は華々しくも開花した。

鶏ベースでありながら、魚介の味わいで直線的に仕上げられた旨味は、秀逸な塩ダレと融合することで静かなる迫力を纏い、やや緩めに茹で上げられた三河屋製麺の全粒粉細麺とも絶妙な相性を紡ぐ。

各具材も丁寧な仕事が活かされた抜群の完成度。

特にシルキーな皮に包まれた衒いのないワンタンの美味さは感動的で、食感、味わいともに肉ワンタンのトップクラスと云っても過言ではない。

今のすぎ本には清楚なだけではない華があり、もはや支那そばや出身と云う経歴すら必要のないほどの麗しき個性をたずさえている。


地力は確実にあった。

しかし個性に揉まれることで魅力は磨かれ、血統の良さもプラスに働き、表情は輝いた。

薄化粧なのに程良く仄かな色香、これは塩における見事な立脚点。



またも美味い塩に出会ってしまいました。
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シンプルなものほど、その良さを伝えることはこの上なく難しい。


たとえば道端で健気に一輪咲く花。

たとえば侘び寂び。

いくら言葉を積んでみたところでその本質から逸れる可能性に苛まされる。


実はこれまでの麺や七彩、そんな安直に語ることが出来ない魅力をいつも携えていた。

確かに四季を散りばめ牧歌的に叙情を漂わせた幾多の限定メニューの彩りも素晴らしい。

しかしその本質はともすれば気にも留めぬほど普遍的な色彩、一般的にわかりやすい覇気を纏うことはなかった。

個人的にTRSの良心と称したことがあるが、その味わいは間口が広く奥行きもあるのに派手さには欠けていたとも云える。


不得手なものを伸ばして全体の調和を崩すより、得意なことを研ぎ澄ます方が良い結果を生むことがある。



TRSから心機一転、八丁堀に移転した麺や七彩は注文を受けて一から打った麺を提供するスタイルに踏み切った。

たぶん、この凄みは文章では伝わらない。

目の前で小麦粉が麺に変貌する……もはや製麺機すら使わずに。


そこに一切の嘘が紛れ込む余地はない。


生憎の雨模様であろうが純白の店内に一切の翳りはない。

目の前で打った麺を提供する、これほどまでにシンプルに晴れやかで清々しいラーメン屋などあっただろうか。


オープン間もないこともあって多幸感溢れる空気にネガティブな要素など全く見当たらない。


至極真っ当な現場主義の極みがもたらした技とエンターテイメントの両立。


啜っている麺がほんの少し前まで粉だったと云う紛れもない事実をまざまざと見せつけるパラダイムシフト。


安心の向こう側には、これまで舞台裏だったはずのものが表舞台に開示された。

この臨場感。

このドキュメンタリズム。


言葉で説明がつかないのならば、その過程を余すところなく見せるまで。


この麺が美味いのなんのってもう、屈託のない神々しさ。

叶うのならば本当に毎日しばらく喰い続けたい。

極限まで自我を削ぎ落としながら技として昇華したアイデンティティーが見事に宿った一杯。


間違いなくネクストレベル。


いや、それどころか今年一番の衝撃かも知れない。


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