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カーズ(The Cars)のリーダー、リック・オケイセック(Ric Ocasek)は、4th アルバム 「Shake It Up」 のリリース翌年、最初のソロアルバム 「Beatitude」 を発表する。
さらに、1984年のアルバム 「Heartbeat City」 でカーズが大成功を収めた後、3年間の開店休業中に2作目のソロアルバム 「This Side of Paradise」 の制作に乗り出す。

 

1991年、カーズ解散後としては初となるソロ3作目 「Fireball Zone」 をリリース。
リックは本格的ソロ・アーティストとしての歩みを始める。
現在に至るまでのリックのソロ・ディスコグラフィーは、以下のようになる。

 

1982年 「Beatitude」
1986年 「This Side of Paradise」
1991年 「Fireball Zone」
1993年 「Quick Change World」
1997年 「Troublizing」
2005年 「Nexterday」

 

・・・・ というのが、リックのソロ活動の概要である。
しかし、ここで若干の注釈が必要となる。

 

まずは、1993年にヨーロッパ限定でリリースされた 「Negathive Theater」 の存在だ。
ワールドワイドでリリースされた 「Quick Change World」 が、「Negathive Theater」 の変形バージョン、ある種の 「妥協の産物」 であったことは、御存知の通りである。
Warner Bros. と交渉(?)して、ヨーロッパ限定ながら 「Negathive Theater」 のリリースに何とか漕ぎ着けたのは、リックの執念と言うべきだろう。
なので、「Quick Change World」 と 「Negathive Theater」 のどちらを1993年のディスコグラフィーと扱うべきか、悩むところだ。

 

 

もう1つは、1996年の 「Getchertikitz」 の存在である。
Wikipedia によると、"spoken word album" として、ソロアルバムのディスコグラフィーとは区別して掲載されており、異端児的扱いとなっている。
そもそも、「Getchertikitz」 は、タイトルの読み方からしてよく分からないw
これを、リックのソロアルバムとして扱うべきなのかどうか。

 

① Amazon.co.jp: Ric Ocasek, Gillian Mccain, Alan Vega : Getchertikitz ...
https://www.amazon.co.jp/Getchertikitz-Ric-Ocasek/dp/B000003ZOW

 

② Ric Ocasek, Gillian Mccain, Alan Vega - Getchertiktz - Amazon.com ...
https://www.amazon.com/Getchertiktz-Ric-Ocasek/dp/B000003ZOW

 

③ Ric Ocasek | Alan Vega | Gillian McCain ‎– Getchertiktz
https://www.discogs.com/Ric-Ocasek-Alan-Vega-Gillian-McCain-Getchertiktz/release/1943796

 

④ Getchertikitz - Wikipedia
https://it.wikipedia.org/wiki/Getchertikitz

 

Web をざっと探してみた感じだと、「Getchertikitz」 の情報はほとんど出てこない。
① は日本のアマゾンの商品情報だが、ユーザーレビューは無い。
② の US の amazon.com にはユーザーレビューが3件載っているが、そのうちの一人は 「彼(=リック)は一体何を考えているのだ?」 という辛口の評価となっているw

 

③ のサイトは、他の有名アーティストのアルバムを検索するとユーザーレビューがたくさん載っているが、「Getchertikitz」 については何のレビューもない。
④ の Wikipedia 情報は、本家 US ではなくなぜかイタリアの Wikipedia で、全26曲のリストが載っているだけで詳しい情報はほとんどない。

 

こうして見てみると、「Getchertikitz」 は特異な作品として扱われていることが分かる。
リック自身も実験的作品として出しているのだし、ポピュラーでないのは致し方ないだろう。
しかし、だからと言ってまったく無視するのは、いかがなものか。
1996年といえば、リックのソロアルバムで最高傑作の呼び声も高い 「Troublizing」 をリリースする前年であり、リックの創作意欲が最高潮だった時期だ。

 

Getchertikitz - Ric Ocasek | Songs, Reviews, Credits | AllMusic
http://www.allmusic.com/album/getchertikitz-mw0000648525

 

何事も食わず嫌いは良くない。
そこで今日は、Web を探してもほとんど見つからない 「Getchertikitz」 のレビューを、この手で書いてみることに挑戦したいと思う。
↑の allmusic のページに行くと、各曲の一部を試聴できるようになっているので、これを実際に聞いてトライしてみる。

 

 

 

01. Quiet Please Performance in Progress (0:57)

Written by Gillian McCain

 

「Getchertikitz」 の CD をセットし再生すると、オープニングでいきなりこの曲の洗礼を受ける。「秘密の地下ディスコ密着潜入ルポ」 のドキュメンタリー映像の音みたいな、とでも言おうか。これを聞いて何か感想を書けと言われても、自分はそんなことしか書けない。

 

 

02. The Big Picture (1:28)

Written by Ric Ocasek

 

続く2曲目は、1993年の 「Quick Change World」 のオープニングに収録されているのと同じ曲なので、リックファンならお馴染みの筈だ。↑の1曲目でいきなり度肝を抜かれたので、我々としてはここで少しホッとする。ただ、理解するには敷居が高いことに変わりはない。

 

 

03. The History of Glances (1:32)

Written by Gillian McCain

 

↑の2曲に比べると、女性の歌い手の口から発せられる歌詞の分量がとても多い。歌い手、と書いたが、歌というよりラップのようなものと言った方が適切だろう。これもやはり自分の感覚では 「地下組織の秘密の儀礼」 という感じしか思い浮かばない。

 

 

04. Tell Me (1:54)

Written by Alan Vega

 

男性の声で聞こえるボーカルは引き続きラップ調だが、この声の主は Alan Vega なのだろうか? 明らかにリックの声ではない。ただ、バックの演奏はそこそこいい感じに聞こえる。やっと曲らしい曲が出てきた、そんな感じだ。

 

 

05. Crowds (1:47)

Written by Ric Ocasek

 

続く5曲目は、引き続きラップ調ではあるが、リックが歌っている。バックの演奏も、テクノ職人のリックらしいサウンドクオリティで、悪くない。アレンジ次第ではカーズのアルバムに収録されてもそれほど違和感はないのではないかと思う。

 

 

06. Takings a Break from Gods & Monsters (0:37)

Written by Gillian McCain

 

再び、3曲目と同じ女性の声で、何事かがラップ調で滔々と語られる。それはそれとして、バックの演奏のこの感じは、ラップでもなく、我々がよく知る普通の音楽のようでもなく、何と表現すればよいのだろうか。00分37秒という時間の短さからしても、きわめて実験的である。

 

 

07. Smell War (3:31)

Written by Alan Vega

 

Alan Vega と思われる(?)男性の声で、そこそこ普通のボーカルが歌われている。サウンドもリズミカルでなかなかいい感じだ。タイトルおよびボーカルの感じからすると、「お前の足は臭いんだよ!」 というような歌詞の曲なのだろうかw

 

 

08. Quivering (1:15)

Written by Ric Ocasek

 

再びリックのボーカル(=ラップ調ではある)が聞こえてきて、我々としてはホッとさせられる。サウンドの方も脳に心地よいテクノ風で楽しめる。「Quivering」 という曲タイトルにも、リックのらしさが溢れている。

 

 

09. Judith in Disgust (1:06)

Written by Gillian McCain

 

どうやら、Gillian McCain の書いた曲は女性の声で歌われる(ラップ)と決まっているようだ。そして、この曲も自分には難解だ。メロディーがなく、どのように楽しんで良いのか分からない。「宇宙人と妖精の秘密の交信」 という感じしか思い浮かばないw

 

 

10. Train (3:33)

Written by Alan Vega

 

Alan Vega の書いたこの曲は、サウンド的にも非常にグッドだ。と言ってもそれほど自分の好みというわけではないけれども、これは誰が聞いてもまったく違和感のない普通のミュージックとして楽しめるのではないかと思う。

 

 

11. All Men Should Be Boxers (1:01)

Written by Ric Ocasek

 

再びリックのボーカルが、と思ったがその期待は打ち砕かれる。男の端くれとして共感を覚える曲タイトルにも壮大な肩透かしを食らわされる。ボクサーとは全く何の関係もない、変なエコーのかかったロボット・ヴォイスで何事かが延々と語られているだけだw

 

 

12. Mechanics of Fluid (1:08)

Written by Gillian McCain

 

ここまで聞いてきて、Gillian McCain の書いた曲がちょっとばかし曲者であるという、このアルバムの大体の傾向が掴めてきたw と思ったら、この曲のサウンドは以外にもリズミカルで悪くない。女性のボーカル(ラップ)なのは相変わらずである。

 

 

13. Living Crazed (1:32)

Written by Alan Vega

 

ここまで、4曲目、7曲目、10曲目で良質の 「ミュージック」 を聞かせてくれた期待の Alan Vega による13曲目は、若干曲球で実験的ではあるが、相変わらずビートが聞いたサウンドを聞かせてくれる。悪くないと思う。

 

 

14. Attempted Suicide (1:48)

Written by Ric Ocasek

 

リックのボーカルが聞こえてきて、何となくホッとする。「自殺未遂」 という曲タイトルおよびサウンドに、リックのニヒリズム、シニシズムが感じられるが、過去のリックのソロアルバムに入っている同類の曲よりも、実験性の度合いは強い。

 

 

15. And Jesus Said That Whores Will Be the First to Enter the Kingdom Of (3:31)

Written by Gillian McCain

 

再び Gillian McCain の曲球の順番となるw  専属の(?)女性ボーカルの声で、歌でもラップでもなく、物語が滔々と語られているという感じである。03分31秒の頭から終わりまで全部聞くことで、一話完結のストーリーを楽しむことができるのだろうか。

 

 

16. No Way (2:34)

Written by Alan Vega

 

期待の Alan Vega によるこのアルバム5つ目となる16曲目は、13曲目からの実験的路線への変更が受け継がれていて、ちょっと身構えてしまう感じではある。ただ、サウンドエフェクトの使い方はツボを心得ていて、このアルバムの残りの曲への期待が高まる。

 

 

17. Livingroom Lamplight Odyssey (3:14)

Written by Ric Ocasek

 

リックのボーカル(ラップ)が聞こえてきて、その点ではほっとさせられるが、きわめて実験的要素は高い。タイトルからすると、リビングの灯りを眺めて物思いにふける内面を描いた曲なのか。03分31秒もの間これが延々と続くのは、正直きつい気はするw

 

 

18. Listen up, Saint Francis (0:59)

Written by Gillian McCain

 

9曲目の 「宇宙人と妖精の秘密の交信」 の続きのような曲であるwww  宇宙人がとても饒舌に変わっている点を除けば、9曲目との違いが自分には分からないw

 

 

19. Gangland Scag (2:16)

Written by Alan Vega

 

自分としては Written by Alan Vega の曲に期待しているのだが、曲が進むにつれて実験性の度合いが高まっていく。この19曲目については、自分としてサウンド的に楽しめる要素は残念ながらほとんどない。

 

 

20. Daily Events Book (2:00)

Written by Ric Ocasek

 

リックの書いた曲だが、試聴した限りだとリックのボーカル(ラップ)は聞こえない。02分00秒の他の部分には入っているのか、それともインストゥルメンタルなのか。サウンド的にはアフリカあたりのワールド・ミュージックのように聞こえる。

 

 

21. With Eight Essential Vitamins (1:44)

Written by Gillian McCain

 

またまた 「宇宙人と妖精の秘密の交信」 の続きだったら、今回のレビュー記事的にはオイシイのだがw、そこそこのバンド演奏チックなサウンドに乗せて、専属の女性ボーカル(ラップ)の声で何事かが語られている。

 

 

22. Metal Eyes (2:41)

Written by Alan Vega

 

期待の Written by Alan Vega の曲は、ここでまたしても実験性の度合いが一気に高まる。4曲目、7曲目、10曲目で聞かせてくれた良質の 「ミュージック」 から、どんどん遠ざかっている。これを聞かされても、自分は何とも論評のしようがない。

 

 

23. A Certain Blindness (2:04)

Written by Ric Ocasek

 

リックのボーカル(呟き)が聞こえてきてホッとする一方、アルバムの終盤に入って実験性の度合いを高める他の曲に追随するように、難解な謎解きを投げかけてくる。ただ、リックのイズムが感じられる1曲ではあると思う。

 

 

24. Ghosts Before Breakfast (1:46)

Written by Gillian McCain

 

Gillian McCain による曲だが、ボーカル(呟き)はリックが歌っている。試聴可能なタイムの終盤に、専属の女性ボーカルの声が聞こえる。もしかすると、他の曲でも実はフルに聞けばリックが歌っているものもあるのかもしれない。

 

 

25. Shoot the Fucker (1:33)

Written by Alan Vega

 

期待の Alan Vega のアルバム最後の曲の、このタイトル。"fuck(er)" にはネイティブ英語で特殊な意味でもあるのかと思って urbandictionary.com で調べたが、我々が普通に知っている意味しかなさげだ。何か深い意味が込められたダブルミーニングではないようだ。

 

 

26. Everyone F--K (3:00)

Written by Gillian McCain

 

"F--K" と伏せ字になっているが、ネットで探せばすぐ出てくる(↑の25曲目が伏せ字になってないのでほとんど意味ないしw)。「いやそりゃまそうやけども」 としか言いようがない曲タイトルだw  これが Written by Ric Ocasek でなくて良かった、そう思うw

 

 

 

 

 

以上、各曲の一部をサンプル試聴しただけではあるが、「Getchertikitz」 を一応自分なりに聞いてみてのレビューなるものを書いてみた。
amazon.com にあるレビューのように 「リックは一体何を考えているのだ?」 とまでは思わないがw、これの感想を聞かれても戸惑ってしまうのが正直なところである。

 

各曲の歌詞を詳しく吟味できるわけはないので、「Troublizing ツアー」 や 「Quick Change World ツアー」 のように腰を据えたものではなく、駆け足のレビューとなってしまったが、仮に CD を入手して詳しく聞き込んだとしても、似たような内容のレビューになるだろう。

 

結論としては、リックの盟友であるとはいえ Gillian McCain、Alan Vega の2人がパフォーマーとして均等に参加していることから、「Getchertikitz」 をリックのソロ・ディスコグラフィーに含めることは、微妙ではないかと考える次第である。

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