【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 鳩山・小沢氏はバッジをはずせ | ななめも。

【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 鳩山・小沢氏はバッジをはずせ

MSN産経 2010.1.20 02:39

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100120/plc1001200240001-n1.htm


 「秘書のやったことは議員の責任。バッジをはずせ」。言い出しっぺはほかならぬ鳩山由紀夫総理その人だ。この政治倫理のルールにより、加藤紘一氏ら何人かがバッジをはずした。それなのに母親からの「愛の子ども手当」12億円の贈与税を払わず、「みんな秘書がやった」「なぜ母が一言も話をしなかったのか」「自分は何も知らない」と他人のせいにして、バッジをはずさなかった。男として恥ずべき食言で許せない。
 そして今度は、小沢一郎民主党幹事長の4億円土地購入疑惑である。3人の現元秘書らが政治資金規正法違反容疑で逮捕された。
 ≪「形式犯」で済まされない≫
 その1人、石川知裕容疑者は長い間、資金管理団体「陸山会」の会計を担当した小沢氏の側近で、現在は民主党の衆院議員だ。大手ゼネコンへの強制捜査のやり方をみると、東京地検特捜部の狙いは、行政犯、形式犯である政治資金規正法だけでなく、ダム建設をめぐる裏の企業献金と贈収賄容疑のようだ。小沢氏の場合は「秘書の行為は議員の責任」という政治倫理だけでなく、政権交代闘争の大スローガンであった「企業献金禁止」にも抵触する。
 小沢幹事長は新党をつくっては壊し、つくっては壊し、政党助成法による「政党交付金」を国庫に返納することなく、自分の政治団体に引き継がせている。1994年の新生党解散時には9億2千万円を「改革フォーラム21」(所在地・小沢個人事務所)に、2003年の自由党解党時の15億5千万円(うち政党助成金5億5千万円)の一部を、後年「小沢政治塾」の運営母体となる「改革国民会議」に引き継がせている。

 一方、「陸山会」は97年からの10年間に18件、計10億円もの不動産を購入し、法律上の法人格がないとの理由などから、すべて小沢氏の個人名義で登記されている。政党交付金は、リクルート事件をきっかけに「政治とカネ」の疑惑を透明にするため、国会議員5人以上の政党に頭割りの選挙費用を税金から交付するという制度である。今日では、その予算は300億円に達し、衆院で308をとった民主党には、約170億円が幹事長に委ねられている。もしもこうした公金が不動産購入に不正使用されていれば、まさに業務上横領罪や背任罪の疑いも出てくる。徹底的捜査を強く望む。
 ≪鳩山首相の驚くべき発言≫
 その疑惑の小沢幹事長が「(秘書らの逮捕は)検察の公権力の乱用だ」と公然と非難し、「最後まで戦う」と検察に宣戦布告し、民主党大会でも鳩山総理との会談でも、「バッジをはずす」どころか「幹事長続投」を宣言したのである。さらに驚いたのは、鳩山総理がこれを承認し、「ぜひ戦ってください」と激励したことだ。
 総理大臣が与党幹事長を「禊(みそぎ)」は済んだと庇(かば)い、麾下(きか)の行政の一部である検察との戦いをけしかける-本人はその後否定したが-ことの政治的意味の重大性を鳩山総理は本当にわかっているか。これは暗に、いざとなれば千葉景子法務大臣に特捜部の捜査中止を命じる「指揮権発動」を仄(ほの)めかしたと誤解されかねない重大な発言だ。なぜ総理は小沢幹事長に「やましいことがないのなら、地検の任意参考人聴取にも、国会の喚問にも応じ、国民への説明責任と身の潔白を説明しなさい」と指示しなかったのだろう。

 同じ脛(すね)に傷を持つ総理と幹事長が一蓮托生(いちれんたくしょう)とばかり傷をなめあっている姿は、正視に堪えない。閣僚たちも、とくにかつての全共闘の闘士たちや社民党の幹部が続投に反対せず、沈黙を守っている姿は、なんとも寂しく情けない。議会制民主主義の黄昏(たそがれ)である。
 ≪党内の政権交代こそ改革だ≫
 鳩山・小沢両氏は潔く辞職すべきだ。まず民主党は、「70%に達する小沢幹事長辞任要求、40%そこそこになった内閣支持率」の世論調査を直視せよ。そして、松下政経塾出身者28人など若手議員が、沈黙していないで「民主党内での政権交代」に向けて決起すべきだ。それが「改革」である。
 鳩山内閣は初めから、国益を損なう「異形の内閣」だった。総理は外務大臣からさえ「日米合意を守らないと『人間社会』にはいられない」と心配される「宇宙人」である。もっとも筆者は鳩山総理らを「サロン・コミュニスト」と呼ぶ。それはロシア革命前夜、豪華なサロンに集う帝政ロシア貴族のインテリ青年たちで、自らの手は汚さずに「ブ・ナロード(人民の中へ)」と叫んで革命を論じていた人々を指す。
 大富豪である鳩山氏は筆者も出席した新年の賀詞交換会でいきなり「派遣村」に触れ、「憲法で保障された最低限の『お暮らし』もできない人々」救済を訴えた。順番が違う。鳩山内閣の優先課題は「景気・基地・献金」。そうした人たちへの救済は自らが10億円くらい寄付してから語るべきだ。
 政権発足からわずか4カ月で「天皇の政治利用」「日米同盟弱体化」「外国人参政権」「デフレ・スパイラル」と異形内閣の数々の過誤で日本が危ない。倒閣を急ごう。(さっさ あつゆき)