【兵庫県】ルドベキア、オミナエシ…英国風ナチュラル庭園「シーズンズ」
テーマ:植物園夏休みに家族連れの歓声が広がっていた宝塚ファミリーランドが閉園して7年半、久しぶりに「はなの道」を通って跡地の一角にできた英国風ナチュラル庭園「シーズンズ」(宝塚ガーデンフィールズ内)を訪ねた。池の周りを歩き、石垣やアーチが区切る小庭を巡ると、花から種へ変わっていくルドベキアが夏から秋への季節のうつろいを示し、オミナエシ、ギボウシなど日本の山野から生まれた草花も園内を彩っていた。
昭和初めにできた大温室を活用したエントランスから入り、ファミリーランド時代から植物にかかわってきたガーデナーの藤井俊通(としみち)さん(43)に案内してもらった。東側の「ウッドラン・ドガーデン」から時計回りに池の周りを巡る。このあたり元からあったエノキやイロハモミジの木々が日陰をつくり、池に注ぐせせらぎが流れて夏の陽射しの下でも心地よい。
木々の足元で一段と橙(だいだい)色が映えるのはルドベキア。7月から咲き続けている鮮やかな花も、実の季節にうつってきている。一部は花が落ちて黒い種になっており、ボンボリのような姿が面白い。「シーズンズの名のとおり四季を通して植物を楽しめる庭にしています。花だけでなく葉や実にも豊かな表情があります」と藤井さん。「アナベルの白い花は終わりましたが、今は緑、秋には茶色のドライフラワーとして人気がありますよ」という。カシワバアジサイも盛りの白い花の色がワインレッドのような色合いを帯び、一部は茶色のドライにうつっている。
「シーズンズ」は英国人ガーデンデザイナー、ポール・スミザーさん(40)の「多年草を中心とした庭づくり」という考え方でできた英国風庭園。といって欧米種の植物だけが集められているのでなく、日本の山野に根ざした草木が多く見られる。初夏から咲き続けてきた白いギボウシは、ペトリオットという園芸種だが、もとは日本のギボウシが潮風に耐えて帆船でヨーロッパに運ばれて人気を呼び、多くの園芸種が生まれてそれが再び日本に戻ってきているという。ウッドランドにあるヤツデの木も「日本では陰気なイメージもありますが、ヨーロッパの庭では珍しい形の葉として人気があります」。英国風庭園を通じて、日本の豊かな植生をを再認識できるのも面白い。
ニセアカシアのアーケードをくぐり、「チャペルの遺跡」に近づいたところで現れる広い水辺の情景は印象的だ。午前中には今もスイレンが赤紫の花を開く。ミズアオイの仲間のポンテデリアが青紫の花をつけて池面に広がっている。南米原産の植物というが、自生種のミズアオイは近畿の池でなかなか見られなくなってきただけに新鮮に映る。池に注ぐ流れに沿ってミソハギの薄い赤紫の花も見える。比良山系の湿地でよく見かけたが、お盆の花として何か懐かしさを感じる花だ。
「泉と牧草の自然なエリア」をはじめ随所で目につくのは、秋の七草の一つ、オミナエシ。英国風庭園でオミナエシが見られるとは思わなかったが、夏から秋へうつっていく広い草原の情景を、落ち着いた黄色の広がりで表現している。日本の山野もよく歩くというポールさんも気に入った花なのだろう。同じく秋の七草のフジバカマの仲間のユーバトリウムが隣りあわせで伸びている。
秋の七草の細葉のススキとともに、同じイネ科のグラス類も穂を伸ばしてきている。あぜ道によく生えているチカラシバ、南米原産のパンパスグラスなどもとの出生地はさまざまだが、夏の陽射しの合間に吹き始める秋風に揺れ、穂のきらめきに秋の陽光を感じることができる。
8月後半は花の少ない時期ととらえられがちだが、この庭を回っていると、次々に出会う草木の表情に不足は感じない。6、7月から咲き続けてきた花が元気に終盤を飾り、あるいは花から実へと装いを替えて魅せ続け、秋の花が遅れることなく登場する。
「化学肥料を使わないという考えで樹木の皮を使ったバーク堆肥で土づくりをしています。いい土になるとミミズが寄ってきて、また豊かににしてくれます」と藤井さん。こうした土が今年の暑い夏も、植物の元気を支えているのかもしれない。
小道のベンチに座って夏から秋へとうつろうぜいたくな一瞬を過ごしていると、ファミリーランド跡地のせいか、小学生の時の8月終わりの気分を思い出した。海水浴も花火もお盆も済み、夏休みもあと少しとなった日の夕方。過ぎゆく夏を惜しむとともに、9月から始まる新学期へちょっぴり期待とやる気を感じた時を。
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