海の見える理髪店


荻原浩 集英社 2016年㋂


海の見える理髪店/荻原 浩
¥1,512
Amazon.co.jp




伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。誰の人生にも必ず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集。
 
 
 
 
 

ちょうど読み終わったところで、直木賞受賞の知らせです。
おめでとうございます。
 
 
 

 
 家族をテーマにした短編集。
 
 
 
「海の見える理髪店」
床屋の店主が客に話した自分自身のこと・・・・・・

その客は、・・・だったんだね。床屋は、気づいていたのだろう。


「いつか来た道」
母を嫌い、ずっと家を離れていた私。弟に言われ、久しぶりに帰郷すると・・・・・・・・・・・・

母は昔の母ではなくなっていた。年月が母を変えていた・・・・



「遠くから来た手紙」
祥子は、夫に腹を立て、幼い子供を連れて実家に帰るが・・・・・・・

不思議なメールが届く。それが、祥子が、今の自分のことを考え直すきっかけとなる。


「空は今日もスカイ」
両親が離婚。引っ越してきた茜は、家出を決意。海に向かっていく。

誰が悪い人で、誰がいい人なのか。


「時のない時計」
父の形見の腕時計。修理にもっていくが・・・・・・・

父への思い出がよみがえる。




「成人式」
5年前、中学生の娘が交通事故で亡くなった。両親は、そのことが、まだ忘れられないでいる。

大胆な発想。行動にうつすところがすごい。でもこれで、過去のつらい思いから、抜け出せるといいな。



表題作
「海の見える理髪店」が秀逸。「成人式」もいいな。

人は、何かの後悔を背負って生きているのではないか。しかし、その思いに変化が起きることがある。
家族の大切な一瞬を捉えている。ちくっと胸に刺さるような、それでいて、何か懐かしいような……・
そんな作品だった。

お気に入り度★★★★★