刑事のまなざし


薬丸岳 講談社 2011年7月 〈2012年6月文庫)



 

刑事のまなざし/講談社
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刑事のまなざし (講談社文庫)/講談社
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『オムライス』…内縁の夫が焼け死んだ台所の流しの「オムライスの皿」、『黒い履歴』…クレーンゲームのぬいぐるみ「ももちゃん」、『ハートレス』…ホー ムレスに夏目が振舞った手料理「ひっつみ」、『傷痕』…自傷行為を重ねる女子高生が遭っていた「痴漢被害」、『プライド』…ボクシングジムでの「スパーリ ング」真剣勝負、『休日』…尾行した中学生がコンビニ前でかけた「公衆電話」、『刑事のまなざし』…夏目の愛娘を十年前に襲った「通り魔事件」、過去と闘 う男だから見抜ける真実がある。

ぼくにとっては捜査はいつも苦しいものです―通り魔によって幼い娘を植物状態にされた夏目が選んだのは刑事の道だった。虐待された子、ホームレス殺人、非 行犯罪。社会の歪みで苦しむ人間たちを温かく、時に厳しく見つめながら真実を探り出す夏目。何度読んでも涙がこぼれる著者真骨頂の連作ミステリ。




「その鏡は嘘をつく を読み、夏目刑事の存在を知り、この小説を読んだ。
短編集で、ひとつづつの事件を夏目刑事が解決していく形になっているが、その中で、夏目のことが、次第に明らかになっていく。

以前は、法務技官として、少年と向き合っていた夏目が、なぜ、人を疑う刑事になったのか?

刑 事になっても、人に接する姿勢は、依然とあまり変わってないようだ。威圧的な態度をとらず、罪を犯した人に対しても、その人の心に寄り添っている。夏目は淡々と しているようで、実は、つらい過去を背負っている。だからこそ、犯人と奥底の気持ちを理解し、真実を突き止めることができるのではないか。


罪とどう向き合うべきか。罪をどう償うのか。深いテーマだ。


短編として一つひとつ事件もひねりを加えた結末があり、夏目のことを描いた長編としても読み応えがあった。

お気に入り度★★★★★