檻の中の少女

一田和樹 2011年5月

檻の中の少女/一田和樹
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転生にはルールがある。自分が転生すべきなのかどうかを第三者に判断してもらわなければならない。第三者は誰でもいいのだが、転生したい者は相手に自分自 身のことを話して、その上で判断してもらうことになる。ミトラスでは、この第三者をトリガーと呼び、それを紹介するサービスを行っているわけだ。トリガー と転生希望者はメッセージを交換する。そしてトリガーが転生の時期だと判断したら、転生許可証を発行するのだ。金をトリガーに送るのは、現世に未練を残し ていないことの証明なんだそうだ。第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。




橋本雄一、美代子夫妻の息子は、自殺支援サイト、ミトラスに登録して、自殺した。しかし、橋本夫妻は自殺とは信じられず、犯人を探してほしいと、サイバーセキュリティ・コンサルタントの君島に依頼する。

ミトラスの仕組みって、複雑。自殺者の背中を押すようなこんな仕組みに反発を感じる。トリガーは、アルバイト感覚でしている人もいるが、罪悪感を感じないのかなあ。自殺した人の身内は、納得がいかないだろうなと思う。


題名とは何の関係もないような自殺サイトの話だと思ったが、ミトラスの仕組みの影に何かあるのかとそれが気になり、読み進んだ。事件が解決した後に、こんな展開があるとは!犯人の狂気がおそろしい。

題名の意味は、最後まで読んでようやくわかった。

君島の語り口が、柔らかいので、ゆるい感じのミステリー。ネット犯罪を問題にしているが、それよりも、人間関係を描いた作品だ。

お気に入り度★★★★