武士道セブンティーン


誉田哲也 文芸春秋 2008年7月


武士道セブンティーン/誉田 哲也

武士道シックスティーン の続編。東松高校の剣道部で一緒に練習していた磯山香織と西荻(甲本)早苗だったが、早苗が福岡に転校する所から物語は始まる。


早苗は、福岡南という剣道の強い学校に転校することを香織に言うことができず、連絡もできない。福岡南の剣道は、人数も多く、東松とはずいぶん違っていた。最初に知り合いになった黒岩レナは剣道をスポーツ化しようとしている。福岡南の剣道は、勝つための、成績を残すための剣道。磯山を破るために自分が利用されたりもする。自分の求める剣道と違っていて悩む。東京でひとり暮らしをしているモデルの姉緑子や香織に相談する・・・・


香織は、早苗から連絡がないことにおこっているが、早苗が悩みを打ち明けたときは真剣に答える。今まで自分だけの剣道をしてきたが、後輩や先輩、剣道部のことに気を使うようになる。

後輩の田原が、香織を慕って離れないところや、中学の同級のヘタレの清水が、いじめられることから逃げるために香織に引っ付いている。3人のコンビが、笑いを誘った。


香織と早苗。二人は、離れていても心はつながっているんだと思う。二人のそれぞれの剣道にかける想いが熱く感じられ、それぞれに成長がみられた。


剣道の師として、道場の桐谷先生、くせがあるけど福岡南の吉野先生、そして香織の父は尊敬に値する。


武士道と何かが、今回のテーマのようだ。

<・・・武者の生業は戦うこと。武士の生業は、戦いをおさめることだ>

<お前たちの剣道は、誰も殺さんですむように、誰一人傷つけんですむように、そういう社会を築いていくために、生まれてきた技>


香織と早苗と交互に書かれているが、このタイトルが、香織は3文字の漢字で硬いのに対し、早苗は話し言葉になっていてやわらかいところもそれぞれの性格を表しているようで面白い。

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