青い鳥


重松清 新潮社 2007年7月



非常勤講師の村内先生が、関わった生徒たちを描いた短編集。



反省文をみんなの前で読まされてから学校でしゃべれなくなった千葉。担任教師をアーミーナイフで刺した斉藤。交通事故で女性を死なせてしまい12年間遺族に許されずにいる父を持つ須藤。自殺した野口をみんなと同じように軽い気持ちでからかっていた園部。先生を困らせるあやちゃんにやめようと言えない中山。父が自殺した事から転校したが学校になじめずにいる富田。付属高校にいながら内部進学をしないで公立校を受験しようとしている篠沢。中学の時育ての父母から虐待を受けていたにもかかわらず一人ぼっちになるのがいやでうそばかりついていた松本(てっちゃん)。


村内先生は、吃音、つまりどもりで、言葉がつまってしまう。そんな人がなぜ教師にとなったのだろうと思うけれど、大切なことだけを伝えにきたのだという。言葉をうまくしゃべれない分、大切なことだけを話すというのだ。

彼の話し方は、つっかえて、聞いているのももどかしい。しかし、それだけ、真剣に話しているといえる。


正しいことではなく、大切なことを教えたいという村内先生。そして、生徒たちと話ができると「間に合った」という表現をする。


学校に居場所のない生徒たち。生徒たちの抱えている悩みは人それぞれに違う。村内先生は、そんな生徒たちに上から意見を言うのではなく寄り添うように付き合う。自分のことをわかってくれる人がひとりでもいるというだけで、生徒たちは安心できるのだ。実際にこんな先生がいてくれたら、どんなにいいだろう。


「ハンカチ」で卒業式のとき名前を呼ぶ村内先生の声が胸を打つ。

「カッコウの卵」は、村内が関わった生徒が、大人になり、彼なりの幸せを見つけ生活している姿が描かれている。そう、今悩んでいる生徒たちも大人になったら、その人なりの幸せがもてることを示唆しているようだ。

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