孤宿の人


宮部みゆき 新人物往来社 2005年6月


      

丸海藩は、幕府の命令で罪人の加賀さまを流人として預かることになる。

ほうは、恵まれない運命の子供であったが、丸海藩の医者の井上家にひきとられる。ほうにやさしくいろいろなことを教えてくれた琴江が、毒により死ぬ。それは、美弥の仕業だと言い張るほうだが、丸海藩を守るため、病死として処理される・・・・・・


この時代、藩を守ることが一番重要だったのだろう。人殺しがおきても、何もなかったかのように振舞う。大切は人を失って、悲しみも多いいだろうに、そうやってうそを突き通すことは、どんなにか難しく、心苦しいことであったろうかと思う。


加賀という人物が、鬼や悪霊だと言われている。なのに、さまづけで呼ぶ。いったいどんな人物で、過去にどんな事件があったのか。また、ほうや、引手見習いの宇佐は、どんな生き方をするのか。話に夢中になった。


宇佐は、ほうを妹のように思い、心配している様子が切なかった。


加賀さまとほうが接する場面がいい。誰にも心を開かなかった加賀さまだが、ほうのけなげさに、一時の安らぎが得られたのではないかと思う。ほうの一途な気持ちに泣けた。

ほうの名前が、阿呆の「呆」から「方」になり「宝」になっていくが、物覚えが悪いほうであっても、ほうの純粋な気持ちは、宝物に違いないと思う。


この本のなかで、たくさん人が死んでいく。それは、悲しいというより、なぜ死ななければならなかったのかとくやしい気持ちでいっぱいになった。

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