いちばん初めにあった海


加納朋子  角川書店 1996年8月


<ワンルームのアパートで一人暮らしをしていた堀井千波は、周囲の騒音に嫌気がさし、引越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、「いちばん初めにあった海」。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開風の手紙が・・・。差出人は<YUKI>。
だが、千波はこの人物にまったく心当たりがない。しかも開封すると、そこには”あなたのことが好きです"とか、”私も人を殺したことがある"とか謎めいた内容が書かれていた。一体、<YUKI>とは誰なのか?なぜ、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を辿る旅が始まったー。
心に深い傷を負った二人の女性が、かけがえのない絆によって再生していく姿を描いた、胸いっぱいにひろがるぬくもりあふれたミステリー。>紹介より


過去のつらい記憶を消してしまうこと、そうしてしまうほうが楽に生きていけるのかもしれない。けれど、ずっと、そうやって生きていくことはできないのだ。

しかし、過去のつらいことを認めたとき、まわりには自分を理解し見守ってくれている人たちがいるということ、悲しみとは別のうれしい出来事もあるということ、そんなことに気づくことができる・・・・・・・こう物語っている。心に響く話だ。


心に深い傷を持った二人の女性の友情というよりもっと深い関係に心うたれた。


もう1編「化石の樹」

これは、「いちばん初めにあった海」と語り口も内容も違う。しかし、よくよく読んでみると・・・・・・・

そう、結城の話ではないのか!そう感じた時、この物語が、よりいっそう深みを増した。

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