風の墓碑銘(エピタフ)


乃南アサ 新潮社 2006年8月

工事現場から白骨死体が、発見される。その貸家の持ち主の老人は、認知症で、徘徊をくり返していたところ、撲殺されて発見される。音道、滝沢は、コンビを組んで捜査することになる・・・・・・・・


「凍える牙」で始めてコンビを組んだ音道、滝沢の二人が、ここでも活躍。二人とも、優れた刑事で、お互い理解しつつも、距離をとって接している。音道が、滝沢をアザラシとあだ名をつけていたり、滝沢が、音道を女性だからやりにくいと嘆いたりと、それぞれの視点で、書かれているので、その時々にどう思っているのかがわかり、くすくすと笑えてくる。時には、アイコンタクトをとったり、この二人のやり取りが、なんともたまらなく、おかしい。


少年を捕まえた時、「犯人であれば、家から出られる」という少年の言葉に対し、自分の子どもが、こんなことを言ったらと、言葉もない滝沢。母親から、早朝に電話で起こされて、母親の言うことに「わかっている」と答えている音道。そこには、仕事を離れたときの音道、滝沢の姿があり、日常の描写もあるので、リアリティある人物像になっている。


地道な捜査がどのように行われるのか手に取るようにわかり、事件がどのように展開していくのか、わくわくしながら読んだ。犯人が早くわかってほしいと思う反面、ずっとこのコンビで、捜査を続けてほしいという気持ちだった。

お気に入り度★★★★