本を守ろうとする猫の話

 

夏木草介 小学館 2017年1月

 

 

高校生の夏木林太郎は、祖父を突然亡くした。祖父が営んでいた古書店『夏木書店』をたたみ、叔母に引き取られることになった林太郎の前に、人間の言葉を話すトラネコが現れる。21世紀版『銀河鉄道の夜』!

 

 

「神様のカルテ」では医者が主人公だったが、これは本の話。

作者も本が好きなんだなと感じた。

 

人間の言葉を話すトラネコが主人公に本を助け出してほしいと言う内容で、これだけでは、ファンタジーの冒険ものと思うかもしれないが、内容は濃く、本を読むことの意味や本とどのように向き合うのかといった本とのかかわり方を問う話だ。

 

 

 

 

一か月に100冊本を読み読み終えた本を並べて保管している男。

本を読む時間がない人のために本を切り刻み要約している男。

本が売れることを重視し、ノウハウ本や要約本を売る男。

 

主人公がこれらの男と対峙する。

 

多くの本が出版される現在、どの本を読めばいいのか、わからないことも多い。

同じ本をじっくり時間をかけて読む。そういった時間は現代にはないのか?

それは寂しい気がするな。

 

 

 

主人公は祖父を亡くし、叔母に引きとられることになっている高校生の夏木林太郎。引きこもりの彼を心配して本屋に来てくれる同級生との交流や彼の成長も読みどころだった。

 

 

お気に入り度★★★★

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君がくれたグッドライフ

 

監督: クリスチャン・ジュベール

 出演: フロリアン・ダーヴィト・フィッツ, ユリア・コーシッツ, ユルゲン・フォーゲル, ミリアム・シュタイン, フォルカー・ブルッフ

2014年

 

年に1度、6人の仲間たちで行く自転車旅でベルギーを目指すこととなる。スタート翌日、ハンネスの実家に寄った仲間たちに衝撃が襲う。

 

 

自転車旅行を楽しむ仲間。

彼らは、隣に座った人に課題を出す。旅行中にその課題に挑戦しながら、和気あいあいと旅行を楽しむ。

しかし、ハンネスの母宅に立ち寄った時、ある秘密をハンネスは仲間に打ち明ける。

 

 

ハンネスの決断、こんな大切なことを一人で決めていいものか?

妻や家族や友達の気持ちは、置き去りなのか?

いや、自分の人生だから、自分が決めることなのか?

 

いろいろなことを考えさせられる。

 

ハンネスの決断がよいのか悪いのか、私にはわからない。

それでも、最後は、ハンネスの決断を受け入れ、彼に寄り添うまわりの人たちの気持ちは暖かく感じた。

 

そして、旅行中の課題をこなしていくうち、仲間たちの生活に変化が起きる予感がした。

 

お気に入り度★★★

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本「錆びた太陽」

テーマ:

錆びた太陽

 

恩田陸 朝日新聞出版 2017年3月

 

錆びた太陽 錆びた太陽
 
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立入制限区域のパトロールを担当するロボット「ウルトラ・エイト」たちの居住区に、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子がやってきた。三日間の予定で、制限区域の実態調査を行うという。だが、彼らには、人間の訪問が事前に知らされていなかった!戸惑いながらも、人間である徳子の司令に従うことにするのだが…。彼女の目的は一体何なのか?直木賞受賞後長編第一作。

 

近未来を描いたSF.。

ロボットが核爆発があった立ち入り禁止区域のパトロールをしている・・・・・

実際にも、近未来、こんなことが起こりうるかも!?といった状況だ。

 

この居住区に国税庁の財護徳子が、実態調査にやってくる。

ロボットたちは、ロボットのルールに従い、財護徳子を守ろうとするのだが・・・・・・

 

ロボットにつけられた名前が、昔の 「太陽にほえろ」 を思い出させる。

ロボットなのに、人間味のあるようなところがあり、愛着がわく。

 

 

ロボットたちは「ウルトラ・エイト」と呼ばれているのに、

7体しかないのはなぜか?

 

財護徳子の発言や行動は、理解できない部分がある。

彼女は、いったい何をしようとしているのか?

 

制限区域近くに住んでいた一家の襲撃・失踪事件の真相は?

 

そんな謎をはらんで、物語は進む。


 

 

彼女の突拍子もない行動には、いらいらさせられたが、彼女には、彼女の理由があったわけか。

 

ロボットがどのような判断を下すのか?興味深かった。

 

ゾンビも出てくるが、こわくなかったなあ。

 

原発問題をテーマに重い内容でありながら、会話が楽しかったし、あの「猫」を登場させたり、ロボットに個性を持たせたりと、明るい雰囲気に仕上がっていた。

 

 

お気に入り度★★★★★

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映画「花戦さ」

テーマ:

花戦さ       映画館にて鑑賞

 

監督     篠原哲雄

出演 野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市

2017年

 

 

戦国時代の京都。花を生けることで世の平穏を祈る「池坊」と呼ばれる僧侶の中でも、専好(野村萬斎)は名手とうたわれていた。そのころ、織田信長(中井貴一)亡きあと天下を手中に収めた豊臣秀吉(市川猿之助)の圧政が人々を苦しめ、専好の友であった千利休(佐藤浩市)が自害に追い込まれる。専好は秀吉に対して、力ではなく花の美しさで戦おうと立ち上がる。

 

華道「池坊」の始まりが、坊さんであったなんて知らなかった。

 

池坊専好は、人の上に立って、ぐいぐい引っ張っていく輩ではなく、好きなことにまっすぐに進むといった感じ。会った人がだれなのか覚えていられない。天然なところがあり、好感が持てた。

 

専好が、千利休と仲良くなっていく様子や秀吉と戦おうとしたわけを興味深く見ることができた。

 

花の力で戦うとは、いったいどのようにするのか?花の力で戦う場面は圧巻。力ではなく、心で打ち勝とうとするところがいい。

 

野村萬斎は、顔芸がすごい。表情が豊かで、今どんな気持ちなのかを顔で表現していてすごいなあと思った。

 

お気に入り度★★★★

 

 

映画の中で生けてあった花が、映画館に、再現されていました。

 

    

本「i(アイ)」

テーマ:

i(アイ)

 

西加奈子 ポプラ社  2016年11月

i(アイ) i(アイ)
 
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「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!

 

 

シリア人のアイはアメリカ人の父と日本人の母の養子として育てられた。

裕福で理解ある両親のもと、幸せであるのに、そのことが逆にアイを苦しめる。

なぜ自分が選ばれたのか?自分だけ幸せになっていいのか?

 

世界で起きる事故や事件、災害による死者の数をノートに書き続けている。

不幸な人々に対して、自分が裕福に過ごしていることに罪悪感を感じている。

アイの苦しみの深さを感じる。

 

 

 

世界で起きている不幸な出来事も、私たちにとって、対岸の火事。

しかし、アイは真剣に考えている。

それは大切なことではないのか。

 

 

中学生から、成長するにつれ、友達ができ、愛する人にも巡り合える。

結婚、妊娠・・・・・・

後半も様々な問題に突き当たる。アイの成長を描いた物語だ。

 

 

シリア人であることの苦しみから、いつしか、他の悩みに切り替わりつつあるように思う。

アイは、自分の存在価値を見出せるのか?

最後まで、目が離せなかった。

 

 

お気に入り度★★★

本「きのうの影踏み」

テーマ:

きのうの影踏み

 

辻村深月 角川書店 2015年9月

子どもの頃、流行っていたおまじないは、嫌いな人、消したい人の名前を書いた紙を十円玉と一緒に十日間続けて賽銭箱に投げ込むことだった。ある日、子どもたちは消えた子どもについて相談していて……(「十円参り」)。あるホラー作家が語る謎のファンレターの話を聞きぞっとした。私のところにも少し違う同じような怪しい手紙が届いていたからだ。その手紙の主を追及するうちに次々と怪しいことが連続し……(「手紙の主」)。出産のため里帰りしていた町で聞いた怪しい占い師の噂。ある日、スーパーで見知らぬ老女を見かけた瞬間、その人だと直感し……(「私の町の占い師」)。
怪談専門誌『Mei(冥)』に連載した作品ほか、書き下ろしを収録した全13篇。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに腕をふるった、エンターテインメントが誕生しました。

 



「ナマハゲと私」 「タイムリミット」は、襲われそうで、とてつもなく怖い!

「十円参り」は、女子の三人の友達関係の複雑さ。女性の嫉妬心がこわい。
「だまだまマーク」も、最後はぞぞぞ・・・・。

昔、はやったこっくりさんの遊び、その延長上にある「噂地図」
もし、約束を破ったら・・・・・・


「私の町の占い師」は、実際の作者の経験から書かれたのかな?


最後の
「七つのカップ」は、今までの作品とは、違って、ホッとできる内容だった。
今までが、怖い話の連続だったので、最後にこの作品を読んで、気持ちを落ち着けることができた。

お気に入り度★★★

映画「シン・ゴジラ」

テーマ:

シン・ゴジラ

 

監督 庵野秀明

出演: 長谷川博己, 竹野内豊, 石原さとみ

2016年

 

 

「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明が総監督・脚本を手掛けた12年ぶりの日本版『ゴジラ』。突如として出現した巨大不明生物・ゴジラと対峙する日本の姿を、リアリティを追求したストーリーとドキュメンタリータッチの演出で描き出す。

 

 

最初は、それほどでもなかったが、進化しかゴジラは、強かったなあ。

ゴジラとの対戦は半端ない緊張感だった。

 

 

予想もしない災害?が起きた時、日本政府はどのような対処をするのか?自衛隊の出動は?海外に頼るべき?

 

各省庁それぞれの立場からの発言で、解決策がなかなかまとまらず、時間が経って、事態が悪化してしまう・・・・・・・・・

そんな様子は、今の官僚たちを皮肉っているように思う。

 

それでも、最初戸惑いを見せたものの、それぞれの力を結集して、ゴジラに立ち向かう姿は、日本の底力を感じた。

 

日本政府の姿をリアルに表現した映画といえよう。

 

 

 

お気に入り度★★★★★

本「静かな雨」

テーマ:

静かな雨

 

宮下奈都 文藝春秋 2016年12月

静かな雨 静かな雨
 
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忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない。新しい記憶を留めておけないこよみと、彼女の存在がすべてだった行助。『羊と鋼の森』と対をなす、著者の原点にして本屋大賞受賞第一作。 

 

<二〇〇四年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。 >

とあるから、この作品が、デビュー作なんですね。

 

パチンコ屋でたい焼き屋を営むこよみさんと行助の物語。

 

こよみさんを一途に思う行助の気持ちが純粋。

そして、多くを語らずとも、行助の家族のこよみさんに対する接し方が暖かかった。

 

静謐な印象で、これが、この作者の持つ良さであり、こういう雰囲気の作品好き!

 

お気に入り度★★★★★

Dの殺人事件、まことに恐ろしきは

 

歌野正午 角川書店 2016年11月

 

 



カメラマンの「私」が渋谷の道玄坂で出会い、交流するようになったのは、賢いが生意気な少年・聖也。
その日も私は道玄坂のダイニングバーで聖也と話していたが、向いの薬局の様子がおかしい。駆けつけた私たちが発見したのは、カーペットの上に倒れた、上半身裸の女性だった。
その後、私と聖也は事件を探り始める。しかし、私はあることに気がついてしまい、元の世界には戻れなくなっていた――(表題作)。

「人間椅子」「押絵と旅する男」「D坂の殺人事件」「お勢登場」「赤い部屋」「陰獣」「人でなしの恋」「二銭銅貨」

 

 

 

江戸川乱歩の小説をもとに作られた短編集。

 

どの作品もひねりがあり、どんでん返しがあり・・・・・・・・

そして、救いのないラストに驚愕!

ゾ、ゾ、ゾ、とする。おそろしかった。

 

スマホを使ったトリックとか、江戸川乱歩の時代にはなかったものだが、

うまく、現代版となっていて、元の作品の雰囲気そのまま、いい仕上がりになっている。

 

江戸川乱歩の元の話も読んでみたくなった。

 

お気に入り度★★★★★

 

 

映画「キャロル」

テーマ:

キャロル

 

 監督: トッド・ヘインズ

出演: ケイト・ブランシェット, ルーニー・マーラ, カイル・チャンドラー

2015年

 

キャロル [DVD] キャロル [DVD]
4,104円
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パトリシア・ハイスミスのベストセラーをトッド・ヘインズ監督が映画化。1952年、ニューヨーク。クリスマスで賑わう高級百貨店のおもちゃ売り場に娘のプレゼントを買いに来たキャロルと店員・テレーズは、引力に導かれるように惹かれ合う。

 

 

ケイト・ブランシェットの美しさに魅了された。

高級な毛皮がよく似合う。気品があり、いいところの奥様って感じ。

 

ルーニー・マーラは帽子がよく似合う。

ういういしくて、かわいいって感じだった。

 

 

 

キャロルは家庭の問題を抱えている。

テレーズは、付き合っている人がいる。

 

そんな二人が、おもちゃう売り場で出会い、惹かれあう。

様々な葛藤を経て、彼女たちが見出した道とは、何なのか?

 

最初のシーン、見つめあう二人の視線が熱かったが、

ラストのシーンはそれ以上。印象に残るラストだった。

 

お気に入り度★★★★