enjoy Clover

三つ葉を伝える路上詩人じゅんぺいのブログです。
日常の喜びを中心に日々の出来事を書いていきます。

クローバーは、成長途中に人に踏まれたり虫に触られたりして葉の「原基」という部分が傷ついた時に四つ葉になることがあるそうです。

世の中には、四つ葉のクローバーみたいな人がいます。

大きな挫折や試練を乗り越えた人。

多くの人に勇気や幸せを与えられる人。

僕は、三つ葉のクローバーみたいな人間です。

何か大きな挫折や試練を乗り越えたわけでもなければ特別な才能もない、普通の人間です。

何も特別じゃないありふれた普通の一人でも、目の前のたった一人に何かを感じてもらえるのならそれで幸せです。

三つ葉だって、幸せになれる。

三つ葉だって、誰かを幸せにできる。

僕は、三つ葉を伝える路上詩人です。
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三つ葉を伝える路上詩人じゅんぺいです。

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三つ葉を伝える路上詩人じゅんぺいです。

歌詞写経1572日目。
今日は槇原敬之僕が一番欲しかったもの」。

筆文字は歌詞の引用や解説ではなく、あくまで僕が曲を聴いて勝手に感じた言葉です。

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今日は、歌うネアリカアーティストKIRICOこと佐藤貴利子さんと、シンギングボウル演奏者kazumiこと伊藤 和美さんとのコラボライブ「世界は愛そのものだ」でした。

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Kazumiさんのシンギングボウルも、KIRICOの歌も、そして会場の空間も、すべてが心地良いアットホームな癒しのライブになりました。


僕はKIRICOの3曲のオリジナルソングから作った自作物語の朗読をさせていただきました。

KIRICOの歌から感じた、僕なりの「世界は愛そのものだ」を表現できたと思います。

ライブが終わったので、さっそく全文公開します(^O^)

よかったら暇な時にでも読んでみてください♪

KIRICO×じゅんぺいコラボ『世界は愛そのものだ』(朗読用物語27〜29)

1話『世界は愛そのものだ』

2話『扉をあけよう』

3話『虹になるから』


今日のライブの様子は、そのうちYouTubeにアップしようと思っていますので、お楽しみに♪

本日お越しいただいたみなさん、どうもありがとうございました!!

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今度は誰とどんなコラボをしようかなー。

今度のイベント出店はこちら♪

お問い合わせはお気軽にどうぞ♪
080-3883-2215
j.hamasaki400@gmail.com


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ツクツク!1000ユーザープロジェクト、ひとまず300ユーザーを目指しています。

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「ここであなたを」
歌&作曲:山瀬亜子
作詞:じゅんぺい
じゅんぺい巨大書き贈り


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毎月第2火曜日に、上尾MIRAIさんで書き贈りさせてもらってます。

次回は5月9日(火)です。
お気軽にお越し下さい♪



2017年1月10日(火)
発売の月刊誌「ミスターパートナー」に掲載されました。
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2016年11月7日発売
インターネット対応書籍「ブームの真相2017」に掲載されました。
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こちらから記事を読むこともできます。


※その他のメディア掲載・出演情報はこちら♪
http://s.ameblo.jp/hamasakidende/entry-12116810250.html

※今まで手渡しで配布してきた小冊子『「じゅんぺい」になるまでの濱崎順平』が、全文ダウンロードできるようになりました!
小冊子「じゅんぺい」になるまでの濱崎順平

山瀬亜子さんの楽曲から作った物語「clover」の全文や、じゅんぺい作詞・山瀬亜子作曲&歌の「ここであなたを」の歌詞も公開してます♪

「clover」完全版はこちら

※川越の癒しくうかんCLOVER plusで、ちいさなホームライブをやってみませんか?
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KIRICO×じゅんぺいコラボ3話『虹になるから』

 

 『虹になるから』

 

ホームレス出身の天才画家。神の世界を見る男。猫の姿をした天使に愛されたアーティスト。画家になった赤井を形容する言葉はいくつもあったが、今となってはそのどれもが皮肉にしか聞こえなかった。ホームレス出身ということが話題となりあっという間に噂が広がり一世を風靡した赤井だったが、赤井が世間の注目を浴びていたのは、たった半年間だけだった。

 

あの時、ホームレス仲間の水野が広げた噂は、あっという間にホームレス仲間から一般社会に広がった。赤井が描いたあの絵には、確かにそれだけの人間を惹き付ける魅力があった。噂を嗅ぎつけたTV番組の取材が来た時に、赤井はカメラの前で黒猫を抱きかかえ、あの時のようにインスピレーションで筆を取りあっという間に絵を完成させた。絵の素晴らしさに加え、猫を抱きかかえた後に一瞬で絵を完成させるパフォーマンスにより、赤井は一躍時の人となった。流行に敏感な著名人や珍しいもの好きな大富豪は、次々と赤井に作品を描くように依頼した。

 

 しかし、ある日突然、赤井は何の絵も描けなくなった。いくら黒猫を抱いても、何の光景も浮かんでこなくなったのだ。それ以来、一時は画家として大成功していた赤井も、今ではかつてのように公園で生活するホームレスに戻っていた。赤井に残されたのは、赤いジャンパーと黒猫だけだった。

 

 

「おい、クロ。お前もなんか食っとけ。」

 

赤井は公園のゴミ箱から漁ったコンビニ弁当の残飯であるポテトサラダを手に乗せて、クロと名付けた黒猫に差し出した。しかしクロは、差し出されたポテトサラダを食べようとはしなかった。5日も前から、クロはぐったりしていて何も食べようとはしない。赤井はしかたなくポテトサラダを自分の口に運んだ。口の中に、冷たい感触が広がった。

 

「そろそろ、いい時期かもな。」

 

赤井は雲だらけの夕焼け空を見上げて呟いた。先週から12月に入り、寒さも厳しくなってきた。この調子なら、いつ初雪が降ってもおかしくない。

 

「俺は、いつ死んでもいい。元々お前と出会った日に死のうとしてたしな。雪が降ったら、クロ、お前も俺と一緒に死ぬか?」

 

赤井はクロに尋ねるが、クロは何も答えない。赤井がクロを抱きかかえようとした時、赤井のジャンパーから何かが落ちた。拾って見てみると、それは数ヶ月前に画家だった赤井がもらった手紙だった。

 

「以前、あなたに絵を描いてもらったものです。私は獣医をしていましたが、以前手術を失敗したことがきっかけでメスを持てなくなってしまいました。そんな時、あなたに描いてもらった絵を見て、もう一度動物たちのために頑張ろうという勇気が沸いてきました。今はこちらの動物病院で、もう一度基礎から勉強させてもらっています。」

 

そういえば、こんな手紙、他にもいくつかもらったな。子どもの不登校に悩んでいた親が、子どもの不登校を認められるようになったとか、喉の病気で歌えなくなったシンガーソングライターが、今度は作家として小説を書くようになったとか、事故による怪我が原因で自分の思うような演技が出来なくなった女優が、障害者のための劇団を立ち上げたとか。万引きを止められなかった中学生が、絵を見てから万引きがくだらないと思ってそれから二度としなくなっただとか。本当か嘘か分からないような内容も多かったが、画家として活動していた時、赤井のところにはそんな手紙が多く届いた。

 

みんな、バカみたいだ。こんな腐った世界で、そんなことをして何になる?自分を変えてまでなぜこんな世界で生きようとする?赤井は拾った手紙を握りつぶして再びポケットに押し込んだ。

 

ふと、鼻先に冷たい感触がした。右手でそっと触ると、鼻先が微かに濡れていた。赤井が空を見上げると、空からパラパラと白い雪が振り始めていた。

 

「やっと、この世界とオサラバできるな。その前に…」

 

赤井は、クロを抱きかかえて歩き始めた。この気温なら、このまま雪が振り続ければ俺はきっと明日の朝までには死ねる。そしてきっと、クロもこのまま死ぬことになるだろう。その前に…。

 

赤井は、クロと出会った料亭の裏口にあるゴミ集積所に辿り着いた。自分が死ぬ前に、そしてクロが死ぬ前に、最後にクロに上等な刺し身を食わせてやろう。これが、赤井にとって最後の仕事だった。ここのゴミ袋から漁った刺し身が、自分とクロの最期の晩餐だった。

 

「ほら、クロ、最期にこれだけは食っとけ。」

 

 赤井はゴミ袋から漁ったマグロの刺し身をクロに差し出す。しかし、クロは食べようとはしなかった。ただ、その場でぐったりしている。

 

「どうせもうすぐ死ぬんだから、最後くらい食っちまえよ。去年は俺から奪い取ってまで食った癖に。」

 

赤井は、どうしてもクロに刺し身を食べて欲しかった。思えば、何も信じられない自分が唯一信じることができたのはコイツだけだった。初めて会ったあの時見たクロの幸せそうな面を拝まないと、俺は死んでも死にきれない。お願いだ。どうか、最期にもう一度だけクロの幸せそうな表情を見せてくれ。赤井は、生まれて初めて神に祈った。その時、急に辺りが静かになり、どこからか声が響いた。

 

「神なんか信じるな。」

 

物陰から、小汚い格好をした男が現れた。クロと初めて出会った時に会った、あのホームレスだった。

 

「神の世界が見えた気にでもなっていたのか?そんな絵を何枚か描いたくらいでいい気になるなよ。」

 

いつの間にか、さっき振り始めた雪は雨に変わっていた。降り続く雨に打たれながらも、赤井は現れた男を睨みつける。男も、赤井の方をじっと見つめて続けた。

 

「お前があの絵を描けたのは、ただの偶然だ。お前の力でもなければ、奇跡でもなんでもない。ただの偶然だ。」

 

赤井と男の間に降る雨が激しくなっていく。しかし、男はかまわずにそのまま続けた。

 

「だが、一度はメスを持てなくなった獣医がもう一度メスを持つ勇気を取り戻したのは奇跡。子どもの不登校に悩んでいた親が、そのままの子どもを認められるようになったのは奇跡。歌えなくなったシンガーが、方向転換をして小説を書き始めたのは奇跡。事故で体が不自由になった女優が、障害者が自由に表現できる劇団を立ち上げたのは奇跡。万引きを止められなかった子どもが、自分の意志で万引きを止められたのは奇跡。そして…」

 

男は、赤井の方を指差して表情を緩めた。

 

「腹を空かせたホームレスが、野良猫に食べ物を分けてやるのも奇跡だ。お前たちは、神なんかに頼らなくても自分で奇跡を起こしてきただろ?神に奇跡を願うくらいなら、自分で起こせ。」

 

男は赤井の方に指していた指をスッと下ろし、赤井の足元を指差した。それと同時に、赤井のジャンパーのポケットから、グシャグシャに丸められた手紙が落ちた。赤井は獣医からの手紙の内容を思い出して、丸められた手紙を拾ってもう一度そこに書かれていた内容を確認した。この獣医のいる動物病院は、ここからすぐ近くだ。今から走って行けば、まだ診療時間に間に合うかもしれない。クロの元気な姿が、もう一度見られるかもしれない。こいつまで、俺のくだらないこだわりに付き合って死ぬことはない。こいつの命は、こいつのもんだ。

 

赤井が顔を上げると、そこにもうさっきの男はいなかった。あの男がいったい何者だったのか、そんなことは赤井にはどうでもよかった。もう一度、クロの幸せそうな顔が見られるかもしれない。今の赤井には、そのことしか考えられなかった。

 

赤井はクロを抱きかかえると、手紙に書かれた動物病院までの道を走り始めた。履いていた穴だらけのスニーカーが脱げそうになる。それでも、赤井は構わずに走った。曲がり角を曲がる時に濡れた地面に滑って転びそうになる。よろけながらも、それでも赤井は走った。冷たい空気が肺に入って胸が痛む。それでも、赤井は走り続けた。クロを抱きかかえているが、以前のような不思議な光景なんて何一つ見えやしない。見えるのは、いつものゴミみたいなこの世界の街並みだけだ。あの男の言うとおり、この世界に神なんていないのかもしれない。それでも赤井は、自分の腕の中にあるクロの温もりだけは確かに信じることができた。

 

いつの間にか、降り続いていた雨は止んで、西の空から夕陽が顔を出していた。その夕陽とは反対側の東の空にうっすらとした虹がかかっていることに、必死に走っている赤井はまだ気付いていなかった。

                                    (完)

 

(完)

その他の物語はこちら
http://s.ameblo.jp/hamasakidende/entry-12168406147.html

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KIRICO×じゅんぺいコラボ2話『扉をあけよう』

 

 『扉をあけよう』

 

 結局、その年は暖冬でそれ以来東京に雪が降ることはなかった。4月になって春がきても、赤井は今までと変わらずにホームレス生活を続けていた。赤井があの黒猫と再会したのは、そんな日のことだった。

 

 その日、赤井は同じ公園をねぐらにしているホームレス仲間と情報交換をしていた。一口にホームレスといっても、その中には様々な派閥やランクがある。何年か同じ場所でホームレス生活をしていると、自然と似た者同士でコミュニティができて妙な仲間意識が芽生える。たとえそれが、本心では互いを軽蔑しあっている者同士でも。

 

 赤井の話し相手は、なぜかミズノのランニングシューズとジャージをいくつも持っている通称「水野」だった。水野は、次の炊き出しはいつだとか、どこのコンビニが何時に廃棄弁当を処分するか、などといった情報を仕入れる度に、わざわざノートに情報をどこかで拾った色鉛筆で色分けしてメモをしてきてまで、自慢げに話してくる。赤井は自分のペースで一方的に話してくる水野のことが嫌いだったが、仕入れている情報は役に立つものが多いので週に一回は水野に話を聞きに行くようにしていた。必要な情報とどうでもいい話を頭の中で整理しながら話を聞いていた赤井は、公園のベンチの上で黒猫が寝ているのを見つけた。

 

 「ん?どうした赤っちゃん?」

 

 水野は、赤井が自分の話を集中して聞いていないのに気付いた。

 

「いや、そういえば去年の冬にあんな黒猫に食い物を盗られたことがあって。」

 

赤井の視線の先に黒猫がいることに気付いた水野は、着ているジャージの袖をまくった。

 

 「あそこのベンチにいるあいつがそうだってのか!よし、俺に任せとけ!」

 

 「いや、確かにあれも黒猫だけど、あいつかどうかは…」

 

 「いーや、黒猫ならみんな同じだ。連帯責任だ。」

 

 そう言うと、水野は何かを叫びながらベンチに向かって走り始めた。頼んでもないのに、自分が正しいと思ってやることすべてが誰かの役に立つと思っている。赤井は水野のそんなところも嫌いだった。どうして望んでもないのにいつも勝手に他人の世話を焼きたがるのか。そういえば、水野は昔、学校の先生だったと聞いたことがある。

 

 叫びながら走る水野のことを黒猫が静かに待っているわけもなく、黒猫は素早くベンチから降りて走り出した。赤井が呆れて眺めていると、なぜか黒猫は赤井の方へまっすぐ向かってきた。黒猫はすぐそこまで近づいてくると、急に赤井の胸に飛び込んできた。突然のことに、赤井は反射的に飛び込んできた黒猫を抱きかかえる。

 

 その瞬間、赤井は自分の意識がどこかに離れてしまうような感覚がした。肉体は確かにここにあるのに、自分の意識はどこか別のところを彷徨っている。自分の意志とは関係なく、自分の意識だけが飛び回っている。肉体的な視界とは別に、目で見るのとは別の、何か精神的な視界で見たものがイメージとして浮かんでくる。今まで見たこともないような、不思議な光景だった。この世のものとは思えないような美しい光景だった。

 

「今だ―!絞め殺せ―!」

 

走ってくる水野の声が、別世界のことのように遠くに聞こえる。そんなことよりも、今はこの光景を見ていたい。いや、今だけではなく、この光景を永遠に留めていたい。

 

「どうした?赤っちゃん?早くその猫を絞め殺せ!」

 

 水野がもう一度叫んだ。水野の叫び声に驚いて、黒猫が赤井の腕から飛び降りる。その瞬間、赤井の意識は現実の肉体へと帰ってきた。さっきまで見えていた光景が、見えなくなってしまった。このままでは、あの光景を忘れてしまう。

 

 「ノートと色鉛筆を出せ!早く!!」

 

 赤井は自分が叫んだことにすら気付かなかった。突然の赤井の叫び声に驚きながらも、水野は言われた通り持っていたノートと色鉛筆を差し出した。水野からノートと色鉛筆をむしり取った赤井は、すぐに地面にノートを広げて一心不乱にノートに絵を書き始めた。

 

「早く、頭の中から消えてしまわないうちに、さっきの光景を描かなければ!」

 

赤井の頭の中には、それしかなかった。黒猫は、そんな赤井の姿をじっと見つめている。

 

 気が付けば、その絵は完成していた。いったい何を表現しているか、自分でも分からない絵。誰にも解説などできない、ただ浮かんできたイメージを記録しただけの絵。赤井は、いま目の前にある絵を自分が描いたことが信じられなかった。赤井が我に返った時、そこでじっと赤井を見つめていた黒猫が「ナーオ」と鳴いた。

 

「赤っちゃん…。」

 

 黒猫と同じく、絵を描く赤井を呆然と見つめていた水野が、震えながら口を開いた。

 

「赤っちゃん、この絵、すげぇよ。なんかよく分からないけど、俺、感動しちゃったよ。これ、インスピレーションってやつだろ?」

 

水野は、鼻を真っ赤にして涙と鼻水を垂れ流している。

 

「俺、みんなにもこの絵を見せてくるよ!」

 

水野はジャージの袖で涙と鼻水を拭うと、赤井の描いた絵を持って走っていってしまった。

残された赤井は、その場に立ち尽くした。さっき見えた光景は、一体何だったんだろうか?あんな景色、今まで見たことがない。こんな汚れきった世界に、あんな美しい景色があるなんて。いや、あれはこの世界のものとは思えない光景だった。そう、まるで…新しい世界への扉が開いたかのような…。

 

「ナーオ。」

 

立ち尽くす赤井の足に、黒猫が擦り寄ってきた。

 

「今の景色、お前が見させてくれたのか?」

 

赤井の問いかけに答えるかのように、黒猫はもう一度「ナーオ」と鳴いた。こいつを抱きかかえていた間に、あの光景を見ることができた。もしかしたら、こいつにも同じものが見えていたのかもしれない。何の根拠もない理屈だったが、赤井はなぜか自分の思いつきに確信が持てた。

 

「腹、減ったな。飯でも探しに行くか。」

 

赤井は黒猫を置いて歩き出す。しかし赤井には、黒猫が自分についてくる確信があった。何も信じられないはずの男が、なぜかこの黒猫のことは信じることができた。黒猫は、赤井の信じた通りに赤井の後を付いていく。そうだ。俺とこいつは、離れられない。こいつと一緒なら、俺はまだ生きられる。赤井は、自分の後を付いてくる黒猫の存在に安心感を覚えた。

 

4月の始めのとある公園。この世界は汚れきっているとしか思っていない男が、目の前の景色をいつもより少しだけ美しく感じられたのは、散り始めた桜のせいだけではなかった。

 

(つづく)

その他の物語はこちら
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