一人芝居ミュージカル、略してひとみゅー、
終演致しました。
ご来場の皆様、本当に本当にありがとうございました。


思い返せば今年の3月。
東京芸術劇場で観た、ミュージカル、
「color of life」
が全ての始まりだった。

私の大切な友人であり、ボイトレの師匠でもある、伊藤靖浩氏が作曲しNYで初演を行い絶賛された作品の日本版初演、ということで、
普通に、いつものように、
友人の舞台を観にいくように、行ったんである。


度肝を抜かれた。


高校の頃はミュージカル大好き少女だった私のなにかに火がつくのに時間はそうかからず、
気がつけば身の程知らずにも

「私もミュージカルやりたい」

と思っていた。

更に身の程知らずなことに、
私はいつものように飲んでいた伊藤さん(ふと思ったんだけど私は伊藤さんのことを苗字にさん付けでしか呼んでいない。今度、ヤスとか呼んでみようか。逆に気味が悪い気もする)に、ふっかけたのである。

「伊藤さん、私一人芝居のミュージカルやりたい」

と。

伊藤さんはその時、

「え、いいよぉー。どんなのやりたい?」

と答えた。
ノータイムだった。
皆さん、あの男は、頭がちょっと変です。笑


そこで私はジュディ・シルの話を始めた。
壮絶な人生の中で穏やかで美しい音楽を残した、夭折の、不遇のシンガーソングライター、歌姫と呼ぶにはあまりにも冴えない見た目の、とんでもなく複雑な輝きを放つ歌声の、彼女のことを、知っている限り話した。

伊藤さんは

「えっなにそれやろうやろう」

と言った。
やっぱりノータイムだった。
あの男は頭がちょっと変です。笑


そして、殆ど同じタイミングで岡田あがさという女優が私と同じように触発されて、伊藤さんに一人芝居のミュージカルやりたいと言い出したということがわかり、
これはもう本当に実現させようと、伊藤さんが動き出した。
企画はいつの間にか男女2バージョン公演という話に膨らみ、
あれよあれよという間に、
出演者のオーディションが始まり、
脚本家の公募がなされ、
生演奏のミュージシャン各位がブッキングされ、
気がつけば、
出演者がアンダーキャストまで含めると16人、
脚本家が述べ10人、
演出家3人、
ミュージシャンが6人、
というなかなかの規模の企画になっていた。


私は、ミュージカルをちゃんとやったことがない。
高校演劇では多少やったことがある、という程度で、歌えもしなければ踊れもしない。
それでいてどうしてあんな無謀なことを言ったんだろう、と我に返って思わなかったわけではないけれど、
終演した今、思うことはひとつだ。



あの日、
「一人芝居のミュージカルをやりたい。
  書いてくれない?」
と言って、
本当に良かった。

身の程知らずに、
やりたいと思ったものに手を伸ばしてみて、
本当に本当に良かった。


一人芝居、の、作品集だったから、
稽古はみんな別々で、
通しや照明の合わせの段階になって、ようやく他の人の作品を観られるようになった。
他キャストさんの通しを観て、歌やダンスのレベルの差に落ち込むのは意外と一瞬で済んで、
こうまで差があると逆に腹もくくれるわ、と謎のポジティブさを発揮することが出来た。
図々しい根性の人間で、よかった。

本番に入るとそれは駅伝だった。
基本的には個人技で、
演奏や照明とやりとりはするのだけれど、
ひとり。
一人芝居。
しかし自分の出番が終わって外に出てみれば、
次の出演者が、出番を待っている。
そうだ私も出る前に帰ってきた共演者に優しくしてもらった、空気を渡していただいた、
30分前のそんなことを思い、
文字通り、タッチして、
おかえりなさい、
いってらっしゃい、
そして最後は団体として拍手を頂戴する。
個人で頑張り、団体として勝ちに行く、
これはまさに駅伝だなと思った。


伊藤さんの頭のおかしさはとどまるところを知らず、
この企画を10回続けて、100本の一人芝居ミュージカルをつくるのだそうだ。
もうあのひと当分死ねないぞ。
まだ残り90本もあるのだ。
自分の出演作以外全て見届けるまで、私もやはり死ねない。
一人芝居ミュージカル短編集、は、
終わったのではなく、始まったのだ。


始まりの終わりに、
想いがとどまるところを知らずにあふれまくっていく。
とにかく今は全ての方に感謝を。
そしてこんなことをやりたいと言い出した自分の蛮勇だけは讃えたい。




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金髪カラコンという、
普通に暮らしてたら絶対やらないビジュアルにもした。
とにかく色素の無い、光に透けそうな女を。というオーダーに応えるかたちで、こうなった。
似合ってる、怖い、本当に白人っぽい、色々言われましたが、どうでしょうかしら。
個人的には、リップの内側に滲むように塗った赤い色、これ、気に入っています。


長くなりました。
それでは、
またいつか、
お会いしましょう。


ハマカワフミエも、
一人芝居ミュージカル短編集の今後も、
どうぞよろしくお願いします。