『 退職 』 | 脱奴隷小児科医の刹那主義

『 退職 』

さてと、少し肌寒い季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか。

他人の心配をしている余裕のない元奴隷小児科医こと無職40歳男性です(笑)。

先週のアクセス数がすごいことになってましたな。
他人の不幸は蜜の味、なんて(笑)
いやいや多くの方々に気にかけて頂きありがとうございます。



先日病院から提示された労働契約と折り合わず、不本意ながら退職しました。
突然の退職で多くのスタッフや患者さんにご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

「 病院からの要請があった場合、30分以内に出勤すること 」

はっきりと病院側に確認したのですが、努力義務ではなく強制命令ということで
退職を決めました。
ちょっと計算してみたんですが、自宅にいたとして夜中寝ているときに病院から電話を
受けてすぐに出かける場合、着替えなどの用意に3分、エレベーターに乗ってパーキング
からクルマを出すのに5分、高速入り口まで7分、高速に乗って降り口まで10分、
高速降り口から病院まで3分、駐車場にクルマを止め(少し離れている)病棟に着くまで
2分としたら、えっとピッタリ30分じゃないですか。

すみやかに出勤ではなく、30分以内ですからね。

自宅は大阪市内なのですが、大阪市外にいれば完全にアウトです。
そこまで厳密に考えなくとも、と思われる方もおられるかもしれませんが、病院との契約書に
はっきりと30分以内と書いてある以上、例えば病院到着に1時間かかり生まれてきたベビー
に何か問題が生じてしまった場合、法的な過失が問われる可能性が十分にあります。

法的な責任を負いたくない、というわけではありません。

法的な責任を負わせる可能性のあることを、はっきりと契約書に明示するのであれば
その責任に対する対価を支払うのがスジだと私は考えるわけです。
だって、年間180日大阪市内にいて携帯を二つ持ちながら常にドキドキしておかないと
いけないのですから(笑)。お酒も飲めないしね。
それが無報酬でずっと続くわけです、病院を辞めない限り。

今までなら、何かあって夜中に来ても感謝されることが多かったように思います。
残念ながら結果が悪かったとしても。
しかし今の時代は、結果が悪ければ責任を問われる時代になってしまっています。
感謝されるどころか、もし到着するのが1時間後になって蘇生が遅れ、何か問題が
起きればただでは済まされない状況が増えてきているのが現実です。

まあ、そういう事態をなるべく避けるべく、私がいなくとも、また私の到着が遅くなって
しまったとしても、適切なベビーの蘇生が出来るように助産師さんや看護師さんに
蘇生の資格を取ってもらえるよう院内で講習会や勉強会を行って、私なりに努力を
してきたつもりなんですけどね。
私がいなくとも、私と同レベルの蘇生が出来るようにね。

こればっかりは、病院を責めたところでどうにかなる問題ではありません。

日本の医療政策に根本的な問題があるのですから。

本来、お産を扱う病院なら、蘇生の出来る小児科医を当直させるべきなんですよね。
でも実際そこまでの数の小児科医がいない。
蘇生が出来て当直をしてもいいという小児科医が少ない。
なぜでしょうか。

また小児科医を当直させたいけれど、病院としては非常にコストがかかります。
正直そこまでしっかり体制を整えれば、確実に赤字になります。
前にも書きましたが、ほとんどの総合病院では小児科は赤字部門です。
他の科の黒字を回しようやく成り立っているのが現実です。
もしくは国や県、市町村からの助成金で成り立っています。


小児科に限らず、病院勤務で労働基準法が守られている医師は非常に少ないのが
現実です。

それが今までナアナアになっていただけなのです。

私と同じように辞めていく医師が増えてきたため、慢性的に病院勤務医が減少して
いるのが、今の日本の医療の実態なのではないでしょうか。



 ・・・・・


長々と書きましたが、続きはまた次回ということで。

さてと、いきなり無職になってしまったので、どうしようかな。

とりあえず維持費のバカ高い愛車でも売っぱらいますか・・・(笑)