CROSSOVER JAZZ
dummy
2007-02-18 19:39:51

バンコクで遭難3

テーマ:Reminiscence
近寄ってきた男は、少年だった。
真っ赤なシャツを着ていた。
年の頃15、6だろうか。
手を振りながら、何やら僕に話しかけてくる。
一日歩き回って何の成果もあげられなかった僕は、
少し開き直っていた。
「Help me! I have no money.I come from Japan.」
となるべく、簡単な英語で自分の境遇を説明した。
彼は、そのうちHelpとNo Moneyをどうやら理解したようだ。
屈託のない笑顔を浮かべて、手招きをする。
いま思えば不思議だが、彼に対しての恐怖心や猜疑心はほとんどなかった。
もちろん、何かあれば一瞬で反応しようと構えていた部分は、どこかにあったはずだ。
けれど、むしろそうするのが自然かのごとく、彼に導かれるまま掘建て小屋の一つに入っていった。
木造で横長のちょっと長屋を思わせる家には、長い縁側があって、雨戸も開けっ放しだった。
その縁側に座ると、さっそく彼は何か現地の言葉でしゃべりかけてきた。
眉毛の太いしっかりした顔立ちの美少年だった。
僕は「ぜんぜんわからない。」といった身振り手振りをして、
「English? Speak English?」
と訊いた。
彼の反応は微妙だった。
先ほどの対応からして、ほとんど通じないと思った方がいいかもしれない。
そのうち、彼の兄か友人と思われる男が奥から現れた。
彼にも同じように、身振り手振りで自分のことを話したが、いま一つ通じたのかどうかわからない。
彼ら二人で、なにやら僕のことについて話している。
その様子から、いくぶんか伝わっている部分もあるようだ。
僕に対してこそこそと何かを企てているような雰囲気ではない。
むしろ、僕が困っていること、僕にしてあげられること、などについて真剣に語り合っているという風に見えた。
僕がズボンからポケットの耳を出し「ほら何も持ってないでしょ」というジェスチャーをすれば「うんうん」とうなずく。

雨はやがて小降りになり、気がつくとすっかりあがっていた。
雨上がりの匂い。
川からの強烈な汚臭や、真上の道路から漂ってくるアスファルトや排気ガスの匂い、それらが混じりあった独特な匂い。
言葉の通じない3人の男の奇妙なやり取りは続いた。
やがて辺りが少し暗くなった頃、赤いシャツの少年に家の奥へと通された。
「Eat? Drink?」とジェスチャーまじりで訊いてくる。
そういえば、朝からほとんどなにも食べていない。
自然に顔がほころんで、「Yes!」とこたえた。
すると「Beer?」と訊いてきた。
「え?」と思ったが、とりあえず「Yes!」とこたえた。
この頃になると、かなり親近感もあった。
こいつらは悪い奴らじゃない、という動物的なカンもあった。
家の奥にあった小さな玄関から外に出る。
すると、何とそこにはモールのような小さな商店街になっていた。
看板も屋根もないただ商品が雑然と並んでいるだけの粗末な店が3つ4つ。
そのうちの一つが食料品を扱う店だった。
背の低い老婆が店番をしていた。
赤シャツの少年が二言三言彼女に話しかける。
面倒くさそうに老婆は立ち上がって、ゆっくりした動作でヒマワリの種とビールを出してきて、彼に渡した。
彼はまた彼女に何か話している。
どうやら値切っているようだ。
彼女は表情を変えずに「あっちへ行け」
というような手振りをする。
親戚なのかもしれない。
彼からもらったビールは、銘柄もよくわからないものだったがとにかく美味しかった。
さらに、手のひらいっぱいにのせてくれたヒマワリの種の味は、僕のガシガシに歪んだ心の細胞のひだに、甘く優しく絡み付いてきて、思わず涙が出そうになった。

どのくらい時間がたっただろうか?
その路地で2時間ぐらい、ぐだぐだ過ごした頃だと思う。
どこからともなく別の老婆が現れて、僕を見るなり大声でどなりはじめた。
一体何が起こったのかと思う間もなく、彼女は近寄ってくる。
鬼のような形相で、僕に必死に何かを言い続けている。
赤シャツの少年が、あわてて止めに入る。
しばらく、もみ合うような状態が続いた後、少し落ち着いた彼女は英語を交ぜながら僕にもう一度語りかけてきた。
それを聞くうち、その内容を理解した僕は愕然とした。
それは「私の両親、兄妹は日本兵に殺された。」というものだった。

つづく
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2007-02-14 11:33:01

スタジオ・アパートメント

テーマ:Recording report
スタジオ・アパートメントとのコラボレーション曲のレコーディング。
彼らのアルバムのリード曲を、ボーカルのMonique Binghamと共作しました。
4月頃にアルバムに先行して12inchがリリースされる予定です。
StudioApartment1
スタジオ・アパートメントの森田君と阿部君と
StudioApartment2
ピアノは、ヤマハのC7

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2007-02-10 17:56:42

バンコクで遭難2

テーマ:Reminiscence
しばらく空港でうろうろした。
日本からの長旅+トランジットで相当疲労していたので、一度ちゃんとしたところで横になりたい。
とりあえず今晩はどこかに泊まって、明日になったら大使館に行ってパスポートを再発行してもらおう。

それにしても、英語がわかる人が少ない。
僕はフランス語はおろか、タイ語は全く喋れない。
そうなると半分身振り手振り+日本語。

「No Money!  No Money!」
タクシー運転手を無理やり納得させて、バンコクの中心部に出る。
ホテルを探すが、すでに深夜。
1時間ぐらいうろうろして、やっとそこそこのホテルにチェック・イン。
エアコンの効きすぎでキンキンに冷えた部屋は、それなりに気持ちよかった。
明日からやらなければならないことを、部屋にあった紙と鉛筆に書き出す。
間もなく真っ黒な睡魔が襲ってきた。
倒れ込むようにベッドに横になる。

翌日、徒歩で2時間ぐらい歩き回って、日本大使館へ行く。
窓口の担当者に面会するまで1時間以上待たされる。
フロアの中に小さな別室があり、入室するとしばらくして日本人の係官がやってきた。
厚いプラスチック製の窓ごしに、どうしましたか?と僕にたずねる。
事情を説明し、早くフランスに行くか、帰国できるようにして欲しい。と話す。
すると、係官は事務的に、
「そういわれましても、パスポート再発行するにあたってあなたの身分を確認する手続きもありますし...」
とまるで、僕が置かれている状況など考慮にない、といった返事。
「あなたは会社員ではないので、より確認に時間がかかりそうですね。」

ちょっと、ちょっとー!
今、日本のレコード会社数社の名前を出したでしょ。
僕が、今プロデュースしているACOって歌手は、あなたもさすがに知っているソニー・ミュージック・エンタテインメントって会社に所属していて、ぼくは会社員ではないけれど長年アーティストとして日本で活動しています。
なんで、連絡をとってくれないの?

「それは、あなたの方でやってください。」
........!!

電話一本かけてくれないの?
あのこれからどうすればいいんですか?
「いずれにしても、あなたの場合、再発行には数日かかりそうですね。ちなみに、再発行には5千円ほどかかりますし、空港使用料も3千円ほどかかりますから....」
!!
!!!
あれ、じゃこのままだと今の時点でもうほとんど帰れないじゃない。
お金はかしてくれないの?

「大使館としてお金をお貸しする事はできません。」
!!!!

「とりあえず、今日のところはお引き取りいただいて、知人に連絡してみてください。」
..........それじゃ、今日ここに来た意味ってほとんどないんですけど。。。

それから1時間後。。。
僕は車とバイクが激しく行き交う幹線道路を、体も心もほとほと疲弊しきった重い足取りで歩いていた。
結局、公衆電話は3カ所試したが、どれも国際電話が使えず、店に入ってお願いしても断られた。
最後にだめもとで試した公衆電話がやっとつながるも、どれも留守番電話。
とりあえず、伝言を残す。
今夜これからどうすればいいのだろう。
そう考えながらとぼとぼ歩いているうちに、シャワーのような雨が降ってきた。

おー、これがスコールってやつかー!すごいなー!
とかいってる場合じゃないよ。
雨宿りしないと、本格的にヤバいことになる。
ちょうど幹線道路の下を、川が流れていた。
よし、道路の下に逃げ込もう。
と駆け足で道路脇の階段を下りる。

下に降りると、川縁にたくさんの色とりどりの衣類が干してある。
僕が雨宿りしようと思った道路の下には、バラックのような掘建て小屋がいくつかあった。
雨は、容赦ない勢いで絶え間なく体中を打つ。
考える時間などない。
干してあった衣類を一つ手にすると、それを傘にしながら掘建て小屋の軒下に隠れた。
その時、川向こうから真っ赤なシャツを着た男が、僕に向かって何か大声で叫んでいるのに気づいた。
叫ぶ男は、浅瀬の川を裸足のまま駆け足で渡ってくる。
僕は、戦慄を覚えながらも不思議なほど冷静な心持ちで、彼がこちらに近づいてくるのを見ていた。

つづく

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2007-02-09 19:38:38

オンエアーリスト

テーマ:ShibyaFM
渋谷FM78.4Mhz「Beats & VIbes」はこのあと、21:00からオンエアーされます。
今夜の目玉は、Sleep Walkerの次回作からの2曲。

1 Spirit of Love/ Root Soul feat Vanessa Freeman & Mike Patt
2 Musica Das Nuvens E Do Chao/ エルメート・パスコアール
3 Just Listen/ エルメート・パスコアール
4 Quiet Dawn/ スリープ・ウォーカー
5 Waltz for Moe/ スリープ・ウォーカー
6 Teen Town/ ジャコ・パストリアス
7 Chromatic Fantasy/ ジャコ・パストリアス

一曲目は、ベースの池田憲一のソロ初作品です。
イケッチおめでとう!
ジャコのベースソロによるM6,7は1979年11月にベルリンで行なわれたソロ・パフォーマンスの実況録音

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2007-02-07 03:28:00

マンナンライフのCMは...

テーマ:Bulletin
こちらでご覧になれますよ。
CM01の蒟蒻サンバです。
http://www.mannanlife.co.jp/cm/index.html
ぷるんといきましょう!
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2007-02-06 16:36:26

バンコックで遭難した話1

テーマ:Reminiscence
父が死ぬ数ヶ月前に、タイで遭難した。

フランスへ向かう途中のトランジットで、
バンコックの空港に立ち寄った。
10時間以上の待ち時間があって、最初は寝たふりとかしてやり過ごそうと思っていたが、そのうち我慢の限界が来た。
同行したK君と相談して、空港の外に出て、ご飯を食べたりお土産とかを買おう、という話になった。
空港の外に出たとたん、むせ返るような熱気と鼻をつまんでも体中にしみ込んできそうな匂いに、失神しそうになった。
これがタイの空気かー!
と感動しながら、ものの5分も歩くと市場にたどり着いた。
魚、肉、野菜、穀類,,,あらゆるものが積み重なるように並べてあって、それらが混じりあった匂いはさらに強烈だった。
行き交う人々の活気あふれる姿や、土煙を上げながら二人乗り、三人乗りで通り過ぎるバイク。
市場周辺の充満したエネルギーにひとしきりやられた後、なるべく無難そうなレストランでタイ・カレーのようなものを食べた。
K君も僕も、はじめて見る異国の人々のリアルな暮らしぶりを目の当たりにして興奮していた。

やがて日も落ち、
たいしたみやげを買う事もなく空港に戻る。
チェック・インする前にカフェで小一時間過ごすことに。
持っていたセカンドバッグをK君にあずけて、トイレに行った。
戻ってくると、そのバッグがない。
あれ、僕のバッグは?
本を読んでいたK君が顔をあげると、目の前にあったはずの僕のセカンドバッグがない。
あれ?おかしいなー。
テーブルや椅子の下など、くまなく探す。
ない!
パスポート。財布。航空チケット。たばこ。
今着ている服以外すべてのものが入ったバッグがない!
K君曰く、
本を読んでいたら、肩を叩かれふりむくと、お金が落ちていると男にいわれた。
そこに何バーツかの紙幣が落ちていて、礼を言った。
........それだ。
きっとそれですよ。
その間にもう一人の共犯者が、僕のバッグを「ごめんなさいよ」したな。
きっとそうだ。
でもいまさらごちゃごちゃ言っててもしょうがない。

すぐに空港警察に行った。
あまり英語が通じない。
何とか説明したけど、半分ぐらいしか伝わってないみたい。
そうこうしているうちに、フライトの時間も近づいてくる。
別ルートで、フランスに向かっている他の二人と向うで落ち合うことになっている。

しかし何しろ、航空チケットもパスポートもない僕はここからどこにも行けないのだ。
K君は、僕に一万円を渡した。
その時は、なぜかそれで何とかなるような気がした。
どう考えても、それじゃどうにもならない事に気がつくのはそれから数時間してからの事。
とにかく、彼はフランスに向けて飛び立った。
一人になった僕は、それから一週間以上バンコックの街を、文無し状態で彷徨うことになる。
その話はまた....

つづく。
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2007-02-05 22:26:56

酒のあて。など

テーマ:Cook
酒のあてが中心です。
からすみとほうれん草
からすみとほうれん草のバター炒め 
味玉ラーメン
野菜ラーメン(これは、僕の妻が作ったものです。)
春菊とシャケ
シャケ缶に春菊のおひたしを和えました。 
ブロッコリー
ブロッコリーと豚肉のトマトシチュー
納豆パスタ
納豆パスタ。黒いのは岩のりを刻んだもの
もやしと水菜
もやし、水菜、牛タンの炒めもの
蒟蒻
炒り蒟蒻と椎茸のピリ辛

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2007-02-02 06:53:25

久々の大阪

テーマ:Live report
水曜日は大阪ブルー・ノートでのライブ。
平日だというのにたくさんのお客さんで、ビックリ。
入れ替え制、および対バンドがあったりもして、
演奏時間が短かかったのが、残念でなりません。

それにしても、悔しいけれどやっぱり...
スタインウェイ(ピアノの種類です)は気持ちいいなー。
タッチが何ともいえないんです。
うちのベヒシュタインも独特の重厚な感じがあるけど、
スタインウェイはとても上品な軽さがあるな、と思いました。

こういう場所で、ソロピアノのギグとかもしてみたいな、
と改めて思いました。

メンバーだけの打ち上げをしたんですが、
そこに元モンド・グロッソの戦友、フルートの大塚秀人が参加。
どんな話題にも全力で体当たりしてくる。
キラキラするぐらい生き生きしていて、
元気をもらいましたよ。
また、彼と一緒に音楽を作ったり演奏できたらいいなー。
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