中国がひた隠しにするPM2.5による死者の数

台湾の事例から推算されたその数は年間100万人

2016.1.18(月) 森 清勇 JBpress

北京「赤色警報」3日目、2100の工場で生産中止や削減

 地球温暖化は日本では連日の猛暑日や暖冬、世界各地では熱波の襲来、そして海面の上昇などで身近に感得され、喫緊の課題となってきた。世界の英知を結集して対処しなければ多くの国が消滅するなど、未曾有の大災難がやってこよう。
 その主たる要因とみられているCO2(二酸化炭素)の削減問題では、従来先進国に課してきた義務を、パリで開催された国連気候変動枠組み条約・第21回締約国会議(COP21)で途上国も分担することになった。埋没の危機に直面する44の島嶼国グループの訴えが大きかったとも言われる。

その会議のさなか、世界一のCO2排出量の中国では、高濃度のスモッグが首都北京を覆い、PM2.5(微小粒子状物質)による「危険」レベルの汚染が4日連続する赤色警報が出る異常な光景をさらし続けた。

 PM2.5は粒子の大きさが2.5ミクロン(髪の毛の太さの約30分の1)と小さいので、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系疾患への影響のほか、肺がんのリスク上昇や循環器系への影響も懸念されると言われてきたが、死亡についてはほとんど聞かれなかった。

台湾におけるPM2.5による疾患

 しかし、「産経新聞」(平成27年12月26日付)は、台湾ではPM2.5による大気汚染が原因で、2014年の1年間に6281人が死亡したというデータを台湾大公共衛生学院がまとめたと中国時報が伝えたことを報道している。

 細部を見ると、慢性疾患による死者3万3774人のうち、PM2.5によるものが全体の約19%を占めるという。内訳は虚血性心疾患2244人、脳卒中2140人、肺がん1252人、慢性閉塞性肺疾患645人である。

 汚染原因は、北部は交通に起因するものが多く、中南部は工場や火力発電であるという。しかし、秋冬の季節風で中国大陸から汚染物質が運ばれてくるとの報道が多いともいう。

 報道では、台湾の2014年のPM2.5の年間平均濃度は1立方メートル当たり25マイクログラム(25μg/m3)であったという。ちなみに日本の平均は15~20μg/m3(2001~2012年となっており、台湾よりやや低い濃度である。

 ただ、近年は中国の大気汚染が頻繁なため、偏西風で日本に運ばれてくる危険性も増大する。熊本育ちの筆者はかつてしばしば黄砂に見舞われたが、今日言うところのPM2.5の自覚はなかった。

 環境省のQ&Aによると、黄砂の主体は4ミクロンくらいであるが、2.5ミクロン以下の微小な粒子も含まれるため、PM2.5濃度を上昇させることもあるとしており、黄砂だからと見過ごせなくなっている。
環境汚染除去が進んでいない中国からは、黄砂とともに殺人兵器ともなるPM2.5が九州や沖縄に飛来していることが最近の人工衛星画像の解析からも確認されている(「産経新聞」27.12.9)。
 特に冬季は地面が冷やされ、汚染物質が上空にたまりやすいとされ、多くの汚染物質が日本に到達する恐れがあると指摘している。

 また、中国が1980年代に行った大気圏核実験で生じた半減期2万年のプルトニウムが東日本大震災で発生した福島原発事故時の放射能汚染調査で判明している

 中国では今後、多くの原発建設が予定されていることもあって、中国における環境問題は日本人の健康に大いに関係してくることになり、関心を持たずにはおれない。

 その中国では北京オリンピックの頃も大気汚染が騒がれていたが、死者の報道は寡聞にして知らない。台湾の状況を知ったからには、中国における死者などを推算して、今後の議論の参考に付すことが必要ではないだろうか。

信頼できない中国の公表数値

問題は中国の発表する数値は政治的に歪められていることである。経済成長率7.0%についても疑問を投げる発言は多い。どのように歪められているか、いくつかの断面からみてみよう。

ジニ係数は社会における所得配分の不平等さや富の偏在性などを測る指標とされ、社会の安定度でもある。0から1の間の数字で示され、0に近いほど平等で、1に近いほど不平等や所得格差が顕著であることを示している。0.4が社会騒乱多発の警戒ライン、0.5以上では社会が不安定化すると言われる。

 2010年前後のジニ係数はドイツが0.295、日本が0.329、米国が0.378などなっている。他方、中国のジニ係数は西南財経大学(四川省)の調査では2010年が0.61で、各地で暴動が頻発している状況を裏づけた格好である。

 ところが、中国の国家統計局は2002年まで発表していたジニ係数を2003年以降公表しなくなり、2013年に2003年以降の数値を突然公表した。それによると、2003年0.479、2008年0.491、2013年0.473などとなっており、0.473から0.491の間に納まり、0.61などとんでもないと言わんばかりである。

毛沢東の大躍進(1958~62年)では3600万人が餓死し、自分の子供を含む「人肉食は特別なことではなかった」(楊継縄著『毛沢東 大躍進秘録』)という。
また、「各級の幹部は餓死者が出たことについて固く口を閉ざし、餓死者の人数統計についてごまかしを行い、死者数を小さくした。(中略)当局は、各省から来た人口数千万人減少の資料を破棄する命令まで下した」ともいう。

 香港に逃げた難民や国内の親族から餓死情報などが海外華僑に伝わり、西側メディアが「中国大陸で飢饉が発生している」と報道すると、中国政府は、「悪辣な攻撃」「デマによる中傷」などと反発し、外国から招待した“友好人士”を「衣食が足りている偽りの状況がわざわざ用意された場所」に連れて行き、「世界の世論を変えるようにしていた」のである。

 中国の2014年度の公表国防予算は8082億元(1元=16円として、約12兆9300億円)であった。平成27年版『防衛白書』は、公表国防費は中央財政支出におけるもので、「中国が実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられている」と注記する。

 実際、外国からの兵器調達費や研究開発費などを含めると2倍ないし3倍になるとする資料も多い。

 一事が万事、このような状況である。中国政府が公表する各種数値は粉飾されていると、間違いなく言えるであろう。


PM2.5による中国人死亡推算

 大気汚染の大国である中国からPM2.5による死者が聞かれないので、台湾の事例を参考に算出してみる。もっとも、中国発表のPM2.5の年間平均濃度などが見当たらないので、状況証拠から仮定するよりほかにない。

 最も単純な死者推定の最小値(A)は、台湾と条件が同じとみて人口比からの割り出しである。2015年8月現在の台湾の人口は2344万人、中国は13億6782万人である。

A:6281=136782:2344 から、A=6281x136782/2344=366522

 となる。すなわち、中国では毎年最小限37万人弱がPM2.5によって死亡していると推算される。

 しかし、現実には中国のPM2.5の濃度は、台湾の年間平均濃度25μg/m3(参考:日本15μg/m3)よりはるかに高い。

 インターネットではリアルタイムで「大気質指数」が開示されており、時々刻々の状況を見ることができる。大気質指数(汚染指数とも呼称)は大気の汚染状況を示すもので、主としてPM2.5の大気中濃度で算出される。
米国の基準では大気質指数

0~50(良好:PM2.5含有量0~15.4μg/m3)、

51~100(穏やか:同15.5~40.4μg/m3)、

101~150(敏感な人にとって有害:同40.5~65.4μg/m3)、

151~200(有害:同65.5~150.4μg/m3)、

201~300(とても有害:同150.5~250.4μg/m3)、

301~(危険:同250.5μg/m3~)となっている。

 大気質指数100が基準とされているが、国により違いがある。中国もほぼ同様の大気質指数のようである。COP21が開かれていた2015年12月8日午後1時の北京の汚染指数は、米大使館のウェブサイトでは367、北京市環境保護監測センターのデータでは314であった。

 北京では11月末から12月初旬にかけて深刻な大気汚染が続き、12月1日には一部地域で汚染指数が、世界保健機関(WHO)の安全基準の40倍となる1000に到達した(「産経新聞」27.12.9)ともある。

 2016年1月11日10時の状況は、台湾の72~137(参考:日本53~122)に対し、中国の北京周辺415、北東部220、南部152、西部325などである。数日前某時刻の日本や台湾はさほど変わらない数値であったが、中国では999などの高い数値も散見された。

 中国は北京や上海などの市域ばかりでなく西部や北東部も含め全土的に台湾に比べて指数は高い。しかも、指数域150以下のPM2.5の包含量に比して、151より上の指数域のPM2.5 包含量は3倍も4倍も多い。

 こうしたことを考慮した場合、中国は台湾に比して少なく見積もっても3倍以上の大気汚染に晒されているとみてもいいのではなかろうか。

異常な耐性の中国人

 ただ、中国人の名誉のために言及すると、今から130年ばかり前の奉天(いまの瀋陽)にスコットランド(英国)からデュガルド・クリスティーという25歳の伝道医師が赴任してきた。

 医師は日清戦争、義和団事件、日露戦争の荒波を潜り抜けて1922年まで約40年間にわたり奉天で勤務し、中国人を観察し続けた。英国の女性旅行家イサベラ・バードも奉天の医師を訪ねて意見交換し、奉仕活動を手伝ったりしている。

医師は中国人の環境や病気などに対する強さに感心し、「我々が住民の生活状態を調査して先ず驚くことは、彼らの身体の発育がその生活状態に比して意外に良く、強健であることである」(『奉天30年』)と記している。スコットランド人であればとても耐え得ないような状況に対して、中国人は平然としているというのである。

 歴史を紐解くと、中国ほど旱魃・大洪水、蝗害・飢饉、黄砂、ペストや各種疾病などの天災、そして内乱などによる人災に翻弄された国はないとも言われる。そうした諸々が、中国人の耐性を大きくしたのであろう
今日問題になっているPM2.5に対しても、他の国民、ここでは比較対象にしている台湾の人々より耐性があるとみるならば、指数の比率やPM2.5の含有量に比例して疾病や死亡が高くなるとも一概には言えないかもしれない。

 そこで、耐性が死亡率を低減するプラス要因になると有利に仮定し、相殺できる率を一つの目安として1割に仮置きする。

 すなわち、台湾の3倍のPM2.5の汚染に晒されるが、中国人の優れた耐性でPM2.5による死亡率を1割低減させるとすると、PM2.5による死者Bは、

B=366522x3x(1‐0.1)=1099566x0.9=989609

 となる。989600人、すなわち約100万人の死亡である。一応の目安にはなるであろう。

おわりに

 李克強が首相に就任するより10年も前に、中国の経済指標で信頼できるのは電力消費量、鉄道貨物輸送量、中長期の銀行貸し出しの3つであると述べたことがある。裏を返せば、国家の指導的立場にある人物が、政府公表の多くの数値は信用できないと公言したようなものであった。

 新常態(ニューノーマル)を打ち出した習近平政権では製造業からサービス産業へウエ―トが移行しているため、鉄道貨物輸送量など従来の3指標はもはや正確でないとされる。

 中国では一人っ子政策時に生まれた2人目以降の1300万人に戸籍がなく、人口統計に算入されていなかったという。また、ジプシー的生活で統計に上がらない人たちもかなり存在すると仄聞したこともある。

 日本軍は国民党軍を相手に南京攻略戦を行い数万の戦死者を出した。当時の南京には20万人しか住んでいなかったが、現在の中国政府は南京戦で日本軍が南京在住の民間人30万人(時には40万ともいう)を虐殺する南京大虐殺を行ったとして、ユネスコの遺産にさえ登録した。

こうした国で、PM2.5による死者が何万人だろうと、敢えて公表するに値しないことかもしれない。しかし、PM2.5が日本に与える影響を考えるならば、推算する価値があるのではなかろうか。


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「何をか謂わん也」である。

大気汚染の大地に与える影響を調べたものはないのだろうか。異常な空気を吸い、異常な台地で育った作物を食して育つ人々は「耐性」が人一倍強くなって、人類の中でも特殊な体質になっているのかもしれない。

森 清勇も中国ウォーチャーとして長年記事を書いているが、文面からすれば「人命」を軽視する中国に驚くばかりの書き方だと思う。ともかく「まともなデーター」が出ない国というのは、<かくのごとし>である。

ジニ係数の公表には笑ってしまう。

こういうことが2000年以上続いているのだろう。素晴らしい国だと思いませんか。

自滅してもらうまで、手が出せない国なんでしょう。


皆さんに森氏の記事を読んでいただきたく拡散させてもらいました。

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