小若菜 隆の文章工房

いらっしゃい。工房へ、ようこそ。

小若菜 隆の文章工房へようこそ。

この工房ではエッセイ(日々の雑記)と創作物(小説他)を書き綴っております。

もし宜しければ、どうぞごゆるりと、お楽しみ下さいませ♪


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とりっくおあとりーと。
お菓子をくれたって。
貴女のハートを撃ち抜くぞ。


(隆、ニャに言ってるニャすか┐( =´●Д●`= )┌ハァ←猫また、呆れ気味の御様子)
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前回の内容はこちら↓を参照
2017-10-31
名門(1) ―zombie survival part Ⅲ 20、21日目―
https://ameblo.jp/h-m-taka5723/entry-12324253330.html



「なるほどな。白鳥……白鳥二等陸佐から私たちが来ると聞いていたわけか」
私たちは白鳥華玖に応接室へと通された。
座り心地の良いソファ。
猫またが私の肩から降り、嬉しそうにソファに座っている。
「そうです。結乃を助けて連れてくると聞きました」
こちらは籐の椅子に座る華玖が返答しつつ。
足を組み直す。
「それで出迎えをしてくれたと?」
私、思わずガン見しつつ質問。
こういった時、サングラスは便利。
「はい。驚かせてすみません」
華玖が、ちょっと悪戯っぽい笑み。
「いや、美人のサプライズは大歓迎だ」
私、無駄にカッコつける。
「んん!」
華玖の背後に立つ男が咳払い。
私、視線を向ける。
出迎えた男。
表情一つ変えず。
私を見ている。
私、視線を外した。
「しかし、白鳥……二等陸佐も言ってくれればいいものを」
普段、呼び捨てにしているため。
階級をつけ忘れそうになる。
「なんでも、異世界から来たはいいけど男尊女卑の塊でセクハラ発言ばかりしている男だから、屋敷には上げないように、とか言ってたわね」
華玖、やや咎めるような視線。
「後半は正しい。だが、前半は大いに違う」
私、即答。
「私のセクハラ発言は女性に対する愛だ」
私、足を組み背もたれに身体を預けた。
「魅力のある女性にアプローチするのは当然のこと。逆に、どんなに美しくても性格の悪さが顔に出ているような女には声すらかけない。男尊女卑ではない。人を見てるのさ」
私、言い終えて。
笑みを浮かべてみせた。
だが、華玖ではなく。
「そういったことは本当に造作の良い男が言うから説得力があるんだ」
背後の男が口を開いた。
「……何が言いたい」
私、視線を男へ向けた。
「失礼します」
応接室の扉をノックする音。
「入りなさい」
華玖が微笑んだまま返答。
結乃が扉を開けて入室。
お盆にティーカップを乗せ、持ってきた。
私と猫また。
華玖と男の間に置かれたテーブルの上へ置いていく。
「もう体長はいいのか?」
私、男から結乃へ視線を移した。
「はい。本当にありがとうございました」
「ニャむ! 元気になってよかったニャ。驚かしてごめんニャさい」
猫また、ごめん猫の姿勢。
「いえ、こちらこと、失礼なことを……」
結乃が申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。
「なに、気にしなくていい」
私、猫またに変わって返答。
「ただ、こいつは人間に疎んじられた過去がある。これからは、仲良くしてやってくれ。猫が嫌いじゃなかったらな」
「そんな! 私、猫大好きですから」
「本当ニャすか!♪☆」
猫また、顔を上げた。
「はい、華玖様の猫の世話もお手伝いしております」
「猫を飼ってるのか?」
私、華玖へと視線を向けた。
「えぇ。『もなこ』と『むむ』です。今は私の部屋で寝てるけど……」
「女子にゃんこ、か?」
「そうよ。どちらも女子にゃんこだけど、それがなにk……」

「ぜひ紹介してニャ!☆♪★o(=*≧∇≦=)ノ★♪☆!」

猫また、元気いっぱい。
「え、えぇ(汗)いいけど……」
華玖が困ったような顔。

「ぜったいニャ♪☆(=*≧∇≦=ノ)ノ☆♪
☆♪お願いニャ♪☆乀(乀=≧∇≦*= )☆♪」

猫また、嬉しくて踊っている。
「え、えぇ……」
「安心していい。こいつは私と違って『ニャっち』なことはしない。ただ、かわいい女子にゃんことピトって寄り添ってほんわかした幸せな時間を過ごしたいだけだ」
「そ、そぅ。こわかなっちとは随分違うのね」
「こ、こわかなっち?」
「そう。小若菜陸曹って、なんだか固っ苦しいでしょ? こわかなっち、の方がしっくりする」
「まぁ、私は別にかまわんが……」
私、嬉しいのと照れくさいので。
後頭部をポリポリとかく。
「あぁ、それより結乃。足は速いが体術はからっきしと聞いた。そんな君が、なぜひとりであんなところに?」
「はい……アイオーン高岡店に食糧を調達しに」
「なるほど。それで?」
「アイオーン高岡は、普段でしたらゾンビ兵がおりませんので、私たち生存者にとっては食糧庫代わりなんです。でもなぜか今日はゾンビ兵が複数体もおりまして」
「確かに、防人の人間も4人やられた。しかし、内部にいたゾンビ兵は片付けたはずだが」
「いえ、私が遭遇したのは駐車場におりまた」
「駐車場に?」
「富山合同高岡宿舎の横にある駐車場です」
「あぁ、そうか。あちら側にも駐車場があったのか」
県道24号線を懸命に走ったが。
もしかしたら、もっと最短ルートがあったのかもしれない。
「それにしても、ゾンビ兵にやられなくてよかったニャ」
気持ちが落ち着いた猫またが、ホッとした表情を見せる。
「本当にありがとうございました。いつもでしたら、ゾンビ兵に襲われても撒けるんですが、車で追われてしまったので」
「足の速さだけで逃げ切れる相手じゃない。なんなら、私が銃の扱い方くらい、レクチャーしてあげようか?」
「必要ない。私が教えている最中だ。口出しは控えて頂きたい」
華玖の背後に立つ男が表情を変えず発言。
私、結乃から視線を男へ。
「結乃、ここはもう良いですから」
華玖が優しい眼差しで結乃に指示。
ティーカップを手にする。
「あ、はい。かしこまりました」
結乃が頭を下げ。
応接室を退出。
「あの子はご両親をゾンビに殺され、行き場所を無くしていたんです。それで、私たちが引き取りました。体術や拳銃の扱い方はこれから覚えさせます」
華玖、紅茶を一口。
「そうか……で、さっきから、というか最初から気になってるんだが、後ろに立ってる男は何者だ? カタギには見えないが」
私もティーカップを手にした。
一口、口に含む。
「山路といいます。白鳥の家をすべて切り盛りし、守っているバトラーです」
「バトラー? お宅んちは殺し屋をバトラーとして雇う慣わしなのか?」
「なぜ、山路が殺し屋だと思うんです?」
華玖が驚きもせず質問。
「硝煙の匂いがマシなだけで、血生臭さは私以上だ」
「そうですか……でも、私の身を守るのもバトラーの仕事ですから。戦闘能力の高い者を雇うのは当たり前です」
「そうかい。お前さんがバトラーだったら、私はコック長だ」
私、白鳥から視線を山路へ。
「うーん、意味が分からないし、山路は料理の腕も一流よ。コック長を雇う必要がないわ」
白鳥、一笑に付す。
「そうか。それでは一度、ディナーに招待してほしいもの、ぅ……」
私、ティーカップを慌ててテーブルに置いた。
「どうされました?」
華玖がティーカップをテープルに戻し、身を乗り出した。
私、左胸を右手で抑える。
身体をくの字に曲げた。
ドクドクと細胞が蠢く感覚。
「いや……なんでも……ない……」
私、声を絞り出す。
「ニャ、隆! もしかして、ゾンビ化が進んでるニャすか!?」
猫またが感づく。
「かも……しれんな……」
「山路、すぐに治療薬を」
華玖が真剣な表情で山路を見上げた。
「かしこまりました」
山路が45度のお辞儀をして。
真っ直ぐと応接室の出入り口へ。
「いや……民間人から……治療薬をもらうわけには……」
「なに言ってるんです。まだ完全ゾンビ化までは時間がかかりそうですが、早いところ治しておいた方が賢明。うちには備蓄が大量にありますから、結乃を助けて頂いたお礼と思って、安心して飲んで下さい」
「も……申し訳ない……」
私、ようやく姿勢を戻し。
ソファに背を預けた。
猫またが左肩に飛び乗り。
心配そうに肉球を私の頬に当てた。
「いいんです。第一、白鳥家は民間人として生きていくことが許されない宿命ですから」
「ん? どういう…意味だ?」
「白鳥家の先祖は富山前田藩に仕えた重鎮でした。明治維新後は士族から軍人へ転身し、以降、優秀な軍人や陸上自衛官を輩出してきました」
「武士の時代から続く…名門の軍人家系ってわけか」
「そう。だから、私も優ちゃんも戦うための英才教育を受けた。でも、私は自衛隊なんてまっぴら。女性蔑視甚だしいでしょ? だったら、自衛隊なんかには入隊しないで白鳥家の財産を守ることに専念しようと思ったのよ」
華玖が再びティーカップを手にした。
「でも、優ちゃんは真面目な子だから、自衛隊に入った。でもねぇ、あそこまで片意地張る子じゃなかったのよ」
「そうなのか?」
私もティーカップを手にする。
猫またがフーフーと息を吹きかけた。
私、猫またの口の前にティーカップを持っていく。
猫またが少し舐めて、満足げな顔。
「ふふ、可愛いわね、猫またちゃんは」
「ニャはは♪ ちょっとお行儀が悪かったニャ。失礼したニャ」
「ううん、いいのよ、可愛いから……って、優ちゃんも昔は笑えたのよ」
「今だったら、ニコリともしないだろうな」
「自衛隊に入って、どうしても片意地張らないと生きていけなかったんだと思う。今からでも、もっと笑えばいいのにって」
「笑ったらもっと美人だろうな」
「姉の私もそう思うわ……」
華玖が言い終わったところで。
応接室の扉が乱暴に開けられた。
「ちょっと姉さん! なんでこの男を屋敷にあげてるのよ!」
白鳥が叫びながら応接室へ。
「なんでって、当たり前でしょ。結乃ちゃんの命の恩人だもの」
「そうじゃなくて、言ったでしょ! こいつは碌でもない奴だって!」
「そうかしら。こわかなっちも猫またチャンも、いい人じゃない」
「いい人、か?」
私、自ら疑問形で猫またに確認。
「人じゃないニャ。ね・こ・ま・た(=ゝ∀●=)ノ」
猫または猫またで、決めゼリフ。
「ちっともいい人じゃない!」
白鳥、全否定。
「とにかく、小若菜陸曹も猫また陸曹も、はやくここから出てって……」
「そうはいきません」
華玖がにこやかな表情から厳しい視線になる。
「ここの当主は私です。勝手なことは言わないように」
「姉さん……」
今まで見たことがないような。
白鳥の困った顔。
「だいたい、こわかなっち……小若菜陸曹はゾンビ化の兆候があります。今日は治療薬を飲んで、今夜は客間に泊まって頂きます」
「そ、そんな……」
「大丈夫。あなたも私も、そう簡単に襲われたりしないでしょ?」
華玖がニコリと笑って、小首を傾げた。
「……もぅ、勝手にして」
白鳥が口をへの字にして踵を返し。
応接室から出ていった。
入れ替わりに入ってきた山路、さすがに少しだけ驚いた表情。
しかし、すぐに元の顔つきに戻り。
テーブルへと近づくと。
小さな薬瓶を置いた。
「すぐに飲むといい。ゾンビ化はすぐに治る」
「すまないな」
「華玖様の指示だ」
素っ気なく返答し。
山路が定位置の華玖の背後へ。
「そうかい」
私、小さく笑い。
小瓶を手にすると。
一気に飲み干した。
空き瓶をテーブルに戻す。
プラシーボ効果なのかもしれないが。
身体の中で蠢いていた何かが。
スッと消えていく感覚。
「これで、ラクになる。ありがとう」
「いいえ。結乃を救って下さったお礼です」
「それに、今夜は泊めてもらえるのか?」
「えぇ。薬を飲んだからと言って、すぐに治癒しているかはわかりません。もし治っていなかったら、再投与したほうがいいでしょうから、今夜はゆっくり休んで下さい」
「そうかい。まぁ、身体の調子さえ治ったら、私は貴女とふたりっきりでゆっくりさせて頂きた……」
私のセクハラ発言途中で。
山路が顔色ひとつ変えず44オートマグを抜き。
私の顔面に照準を合わせた。
「……速いじゃねぇか」
私、苦笑を浮かべるのが精いっぱい。
「隆が対応できなかったニャ……」
猫また、驚きを隠せない。
「いい加減に口を慎め。華玖様に対する侮辱は許さん」
「人の話を聞いてるか? 美しい女性を侮辱なんぞしない。それに……」
私、真顔に戻り、山路を見る。
「銃口を向ける相手が違うようだぜ」
私、外へと視線を向けた。
「そのようね」
白鳥が真顔で頷いた。
「山路、お客様よ。対応しなさい」
「かしこまりました」
白鳥の言葉に山路が返答。
44オートマグをショルダーホルスターにしまい。
テーブルへ近づいて治療薬の空き瓶を手にすると。
出入り口へ。
「私も行こう」
私も立ちあがり。
後に続く。
「不要だ」
振り向きもせず山路が即答。
扉を開け、廊下へ。
「なに、手出しはしない。お手並み拝見さ」
私、ニヤリと笑いつつ返答し。
廊下へ出た。


屋敷の玄関を少し開け。
山路が身を屈めて外の様子を窺う。
私、その上から顔だけを少し覗かせた。
雨は上がっている。
数体のゾンビ兵が門柱に身を潜めていた。
そのうちの2体が敷地内へと入ってくる。
次いで、門柱に隠れているゾンビ兵が、反対側の門柱に隠れているゾンビへ合図を送った。
ゾンビ兵1体、続けて敷地へ。
「全部で4体」
山路が呟く。
「そのようだが……あいつ、植草じゃないか?」
「ニャむる?」
猫またが私の頭に乗り換え。
外を見る。
「ニャ、本当ニャ。門柱に隠れてこっちの様子を見てるの、植草陸軍少尉ニャ」
「逃げ帰ってゾンビ兵にされたか」
「知り合いか?」
私と猫またの発言に。
山路が加わる。
「いいや。知り合いではない。私に馬鹿の知り合いはいない」
「ほぅ、植草を馬鹿呼ばわりか」
「あまり賛同を得られない意見らしいがな」
「なに、気持ちはわかるさ」
山路が表情を変えず、返答。
「無能ではないが、決して有能の部類じゃない」
「知ってるのか?」
「以前、ここを襲いに来たから返り討ちにした。どんな言い訳をしたのか、敵軍では降格しなかったようだが」
「ほぅ、なるほどな」
「おじゃべりはここまでだ。黙って見てろよ」
山路が治療薬の空き瓶を手にする。
「どうする気だ?」
私、質問。
「黙って見てろ」
山路が私を見上げて睨み。
スーツのポケットから丸薬を取り出した。
空き瓶に入れる。
低い姿勢のまま。
空き瓶を放った。
玄関から低い軌道で。
雨に濡れた石畳に落ちる。
空き瓶が割れ。
あたりに白い煙幕。
同時に。
山路が右へと走り出した。
手にズボンのポケットから、1本の紐取り出す。
白い煙に気を取られたゾンビ兵4体。
山路の動きを把握できず。
指揮官的な植草へと視線を送る。
だが、植草の位置からも煙幕でなにが起こっているかわからない。
それでも。
植草、前へ進めの合図。
先に入った2体のゾンビ兵が。
木の陰に隠れつつ、さらに前へ進んだ。
刹那。
屋敷から見て右斜め前方から来ていたゾンビ兵に。
山路が背後から襲う。
ゾンビ兵の首へと紐を回し。
渾身の力で紐を引っ張った。
首の骨が折る様な音。
咆哮を上げる間もなく崩れ落ちる。
山路、そのゾンビ兵が腰のベルトに差し込んでいたナイフ2本を手にすると。
門柱方向へと進む。
1体のゾンビ兵が、前へ進もうとしていた。
その背後から、山路がナイフを投げる。
後頭部から深々とナイフが刺さった。
ゾンビ兵がゆっくりと前へ倒れる。
同時に。
山路が屋敷方向へと移動。
後頭部にナイフが刺さったゾンビ兵、隠れていた場所から石畳へ俯せた状態で倒れる。
植草ともう1体のゾンビ兵も異変に気がついた。
植草、門柱から残ったゾンビ兵1体へ待ての合図。
しかし、冷静さを失ったゾンビ兵が。
カラシニコフを手に倒れたゾンビ兵へと駆け寄り。
絶命したゾンビ兵の頭にナイフを認めた。
顔を上げ、ナイフが飛んできたであろう方向へ銃口を向ける。
しかし。
山路は既に屋敷方面にいる。
煙がだいぶ消えかかっていた。
山路、ほぼ丸見えのゾンビ兵の側頭部にナイフを投げて伏せる。
ゾンビ兵、こめかみにナイフが突き刺さった。
ゾンビ兵、ナイフの飛んできた方向へとゆっくり顔を向け。
山路が伏せている場所よりも高い位置へと視線を向けてから。
ゆっくりとその場に崩れ落ちた。
門柱に隠れていた植草。
ジリジリと引きさがり。
相手が追ってこないことを確かめてから。
振り向いて近くに停めていたUAZ-469へと走り出した。
しかし。
匍匐前進で低木に隠れながら門柱近くまで迫っていた山路が立ちあがり。
走って後を追う。
山路、門から外へ出た。
44オートマグを抜き、植草の背中へ銃口を向け。
「そこまでだ、植草」
叫ぶでもなく、怒鳴るでもなく。
だが、通る声。
「落ちぶれたもんだな。ゾンビ兵に成り下がったか」
植草、無言。
「まぁいい。今度も見逃してやる」
山路の言葉に。
植草が小さく、ピクリと反応。
「新政府軍のお偉方に伝えろ。今度は、もっと使える奴を送り込めと。俺ではなく、小若菜とか言う三流どころでも、今日の部隊なら呆気なく殲滅するぞ」
「三流どころで悪かったな」
私、山路の背後から声をかけた。
植草、顔だけこちらに向ける仕草。
「黙って見てろと言ったはずだ」
山路、振り向かず冷たく言い放つ。
「三流どころだから忘れちまったよ」
私、山路の横へ立つ。
猫また、肩に乗っていない。
「それに、こいつはお宅らを狙って来た訳じゃない。狙いは私と猫また。そうだろ、植草」
植草、今度は身体ごと振り向いた。
「第1陣は良いところまでいったが私をゾンビ化させるに止まった。第2陣は思わぬ邪魔が入り、結果的に私と猫またに殲滅された。そしてお宅らが、第3陣って訳だ。しかし、1陣2陣よりも力の劣る面子だったな。山路の言うとおり、私でも楽勝だったろうよ。それともなにか」
私、早抜きで銃を抜く。
ウィーバースタイルで銃口を植草の顔へ合わせた。
「何か罠でもしかけたか?」
私、半歩前へ。
刹那。
植草がニヤリと笑い。
私に向かって口を尖らせた。
唾を吐きつける。
「伏せろ!」
私、怒鳴りつつ伏せた。
山路も姿勢を低くする。
その頭上を。
唾液が通過。
「きたねぇ攻撃だな」
山路が苦笑しつつ立ち上がる。
「きたねぇだけじゃない。後ろを見ろ」
私、立ち上がりつつ、山路に指示。
山路が怪訝そうな顔で、チラッと背後へ目を走らせた。
唾液が着地した路上。
アスファルトが溶けている。
「硫酸か」
「だろうな」
我々の会話を聞き。
植草が再びニヤリと笑う。
私と山路、銃を構え。
半歩下がる。
私、ウィーバースタイル。
山路、ポイントショルダー。
「よく、硫酸を飛ばしてくるとわかったな」
「なに、改造ゾンビを造る奴の発想は似るんだろうよ」
私、もう半歩、下がる。
山路も、半歩下がった。
「もう半歩、下がってくれ」
私、口を動かさず。
小声で山路に指示。
山路、無言で半歩下がった。
「今だ!」
私、怒鳴る。
「シャャァァァ!!!」
屋敷の垣根を飛び越え、植草の背後に回っていた猫またが飛翔。
気がついた植草。
慌てて振り向く。
口を尖らせた。
しかし。
「シャャャャァァァ!!!」
猫また、飛びつつ。
植草の首を左前脚で刈る。
植草の頭が落ち。
口を尖らせた状態で地面に転がった。
それでも。
植草の胴体、倒れない。
「迷わず地獄に堕ちるがいい」
私、呟きつつ。
ウィーバースタイルで3発発砲。
植草の胸部と腹部に大きな穴が開き。
ゆっくりと、胴体が倒れた。
猫また、私の肩に着地。
「……なかなかやるじゃないか、御両人」
山路が無表情のまま、44オートマグをショルダーホルスターにしまった。
「なに、確かに私は三流どころだ。しかし……」
私、猫またの頭を軽く撫でた。
「心強い相棒がいるんでな。なんとか生き延びてるのさ」
「ニャんの。僕は隆のお手伝いをしてるだけニャ♪(=●▽●=)ゞ♪」
猫また、敬礼しつつ微笑む。
「……なるほどな。なかなか面白い奴らを送り込んできたわけか。異世界の自衛隊は」
山路が珍しく小さく笑うと。
屋敷へ向けて、先に歩き出した。


夜。
21時30分。
山路が作ったディナーを食べ終えた我々は。
喫煙可の客間に通されていた。
「確かに、山路の料理は旨かったな」
私、ディナーの美味さの余韻に浸りつつ。
ニマニマ笑みを浮かべながら猫またに話しかけた。
「ニャい♪極上ニャした♪♪」
ふかふかのベッドに座る猫またが「♪」連発。
「お前、一心不乱に食べてたもんな」
私はベッド脇にある小さな書斎机に座り。
タバコを咥えた。
「ニャって、美味しかったニャすもん♪♪」
「そいつは良かった」
美味い美味いと連発しながら食べている私と。
ニャむニャむと必死に食べている猫またを見る白鳥家面々の態度は、千差万別。
華玖が笑いながら見つめ。
作り手である山路が若干誇らしげに、それでいて少し嬉しそうに小さな笑みを浮かべ。
結乃がご飯おかわり連発する私と猫またに驚きつつも、甲斐甲斐しく対応してくれた一方で。
白鳥だけは仏頂面のまま。
早々に食べ終えて、大きな食堂を後にしていた。
「姉の華玖に似て、あれだけの美人なんだから、笑えばいいのになぁ」
私、ふと思いだし。
タバコの煙をゆっくり吐きながら呟く。
「状況の犠牲者ニャすね」
猫またが、少し悲しげに返答。
「そうかもしれんな」
元々は、そんな子じゃなかった。
自衛隊に入り、変わってしまった。
白鳥が退室した後、華玖が悲しげに呟いていた。
「気持ちはわかるが、あれじゃあ指揮にも関わると思うぞ」
私、思ったことを口にした。
同時に。
ドアがノックされる。
「誰かニャ?」
「結乃が飲み物でも持ってきてくれたかな。どうぞ」
私、猫またに返答後。
ドアに向かって呼び掛けた。
ゆっくりと開く。
「ん? どうしたんだ、白鳥。こんな時間に」
私は俯き加減の白鳥へ声をかけた。
明細服から着替え、姉と同じような白いドレスシャツにジーンズ姿の白鳥。
無言のまま、動こうとしない。
「なんだ? ベッドを供にしたいのなら遠慮はいらんぞ」
言いつつ。
私はクリスタルの灰皿でタバコを消した。
「そんなわけないでしょ」
白鳥が視線を落としたまま、不機嫌そうに呟く。
「冗談だ。お宅が私を嫌ってることぐらい百も承知さ。襲ったりしないから、突っ立ってないで入ってきたらどうだ」
私は立ち上がると。
椅子を移動させ。
招き入れる動作。
白鳥が少しだけ顔をあげ。
表情を変えず入ってきた。
ドアを閉めかけ、少しだけ開けた状態にし。
私の前に立った。
「用心深いな。それとも、育ちの違いか?」
「別に、そこまでの名門じゃないわよ」
白鳥が苦笑しつつ返答。
言葉を続ける。
「そんなことより、今日は本当にありがとう。結乃を助けてもらって」
「なに、猫またじゃないが、当然のことをしたまで」
私、再び椅子を移動させ、書斎机の前へ。
白鳥が座る様子も見せないので、私が座る。
「女性の悲鳴が聞こえて、逃げ出すような男じゃないさ」
「ひとつ、聞きたいんだけど」
白鳥が顔をあげる。
「防人の橋波会長から連絡があったわ。斉藤副会長と一緒にアイオーン高岡にいたゾンビ兵を殲滅したって」
「あぁ。斉藤がひとりで行方不明の防人を探しに行くと言い出したからな。一緒についていったのさ」
「なんで?」
白鳥が眉間に皺を寄せた。
「なんで? まぁ、直観に近いな」
私、タバコを取り出す。
「吸ってもいいか?」
「どうぞ、ご自由に」
「ありがとう」
私、咥えて。
火をつける。
「防人が4人もいなくなった。我々の拠点には顔を出していない。唯一わかっている行先はアイオーン高岡。他の場所でやられていることも考えられたが、もしアイオーン高岡でやられていたとすれば、斉藤ひとりで乗り込むのは危険。無駄な危険は避けるべきだし、何より敵方が生存者の多く集まる場所に攻撃を仕かけるのは自明の理。ゆくゆくは我々の拠点にしたい場所でもあるし、安全を確保しておきたい……なんて、理屈をつければそんなところだ」
「そういうことじゃなくて」
少しじれったそうに白鳥が聞き返す。
「なんで、斉藤副会長が危険だと思って、あなたがついていくのよ」
「……変な質問をするな。当然だろ。仲間なんだから」
「でも、あなたは……」
「あぁ、部外者だ。だが、共闘する仲間だ」
「……変な人ね」
「ん? 何か変か?」
「だって、あなたは異世界の自衛隊に雇われてる殺し屋でしょ? 霧山元事務次官を探している」
「そうだな」
「だったら、なんで放っておかないの? この間の翔馬くんにしてもそう。防人の人たちにしてもそう。女性じゃないのに、助けてる。霧山って人を探してればいいのに……」
「白鳥さん、隆は白鳥さんが思ってるような人じゃないニャ」
猫またがゆっくりとした口調で諭す。
「隆は殺し屋ニャ。セクハラ大魔王ニャ。でも、目の前で困ってる人を見て、放っておけるような人じゃニャいニャ」
「よせよ、猫また」
私、苦笑しつつタバコを消した。
「そんな上等な人間じゃない。白鳥の言うように、私は単なる雇われた殺し屋。だから、情報源になる可能性がある生存者は助ける。ただそれだけだ」
「子どもでも?」
「生きていれば、年齢関係なく、何かしら情報を持っている可能性はある。事実、情報ではないが食糧と身体を休める場を得た」
「……そうね。でも、自分が怪我をして、ゾンビ化の危機まで招いて、斉藤副会長を助けてる」
「隆はそういう人ニャ」
猫また、再度発言。
「本人はクールに決めてるつもりニャ。でも、どこか浪花節ニャ」
「せめてハードボイルドくらいに言っていただけません?」
私、苦笑しつつ突っ込み。
「そんなかっこいいもんじゃないニャ。でも、新政府軍を殲滅するって言ってるニャ」
「えっ」
白鳥が驚いたように私を見た。
「余計なことを……」
私、ますます苦笑。
「どういうことなの?」
「ニャむ。翔馬くんの家族写真を見たとき、隆、静かにブチ切れたニャ。幸せな家庭を壊した連中、許さニャいって」
「そう……」
驚いた顔のまま、白鳥が頷く。
「よしてくれ。私は金をもらってこっちに来てる。任務を遂行しようと思えば、情報や食糧を共有する仲間を大事にしなくちゃならない。新政府軍に所属した霧山を確保または抹殺するためには、新政府軍を叩き潰したほうが早い。突き詰めていえば、翔馬や斉藤を守ったのも、新政府軍を潰そうと思ったのも、殺し屋として任務を受けているから。ただ、それだけだ」
私の言葉に。
猫また、無言のまま顔の前で前脚を横に振る(ヾノ●∀●=)
「……面白い人ね。クールぶって、浪花節」
「だから、せめてハードボイルドくらいにしてもらえないですかね」
「浪花節よ」
白鳥が小さく笑った。
姉と同じく、かわいらしい笑顔。
「でも、ごめんなさい。私、少し勘違いしてたみたい」
白鳥が神妙な顔つき。
「能力的には不可解だったけど、なぜ、そちらの世界の自衛隊があなたたちを送り込んできたか、なんとなくわかった気がする」
「そうかい。結論は納得いかんが、結果が良ければそれでいい」
「結果?」
「私への認識を『良い人』なんて間違ってもらいたくはないが、結果として、お宅の笑顔が見れた」
私、笑ってみせる。
「……本当に変な人ね」
白鳥が苦笑。
ただ、今までの苦笑とは。
少し違うニュアンス。
「変な人、か。褒め言葉に取っておくよ」
「ひとつも褒めてないニャすよ」
「うるさいよ」
私たちのやりとりに。
白鳥が小さく吹いた。
「変な人じゃないわ。変な人と猫ね」
「にゃんこじゃニャいよ、ね・こ・ま・た♪ヽ(=●▽●= )ノ♪」
「はいはい、猫またちゃん」
「ニャい♪」
「白鳥陸佐」
私は少し改まった声を出した。
「な、なによ急に」
「私は、今の白鳥陸佐の方がいいと思うぞ」
「えっ……」
白鳥、やや驚く。
「こんな情勢だ。厳しくしなくちゃならんだろう。だが、厳しいだけじゃ、人は疲弊する」
「お言葉ですが……」
白鳥の顔が元に戻りかけた。
私、手でさえぎる。
「お宅の言いたいことはわかる。自衛隊に入り男尊女卑に遭い、ストイックに生きていかなければ潰されていた。今も劣勢状態で、厳しく統率する必要がある。だが、もういいんじゃないか」
「もう、いい?」
真意をわかりかねたのか、白鳥が怪訝そうな顔。
「男尊女卑を繰り出してくる輩の大半は死んだ。お宅を苦しめることはない」
「そうだけど……」
白鳥が反論しかける。
「今生きてる奴らもお宅より下の階級だろ? 陰口でも叩いてたら、そんときは一喝してやればいい。敵軍の真ん中に丸腰で突っ込ませるぞ! ってな」
「そ、そんなこと上官として言えるわけないでしょ」
白鳥が呆れた笑い。
「例えばだ」
私もニカッと笑う。
「それに、今はお宅を慕っている奴らの方が多い。上官でも部下でも、みんな白鳥陸佐を尊敬している。能力の高い人だと」
「そんなこと……」
言いながら。
白鳥が少しだけ嬉しそうな笑み。
「だが、気を使わせ過ぎだ」
「え……」
白鳥が予期せぬ言葉に驚く。
「私はお宅に言いたいことを何度か言われているが、そのたびに周囲の人間から謝罪されている」
「そ、そうなの……」
白鳥が救いを求めるように。
猫またを見る。
「残念ニャけど、本当ニャ」
猫またが申し訳なさそうに頷いた。
「誰もがお宅の有能さを認めている。だが、人に厳しすぎる面については、悩みの種だと思っている人もいる」
「そう……」
白鳥、落ち込み。
「私の表の職業は、言ったっけか?」
私、話を転換。
「え? 殺し屋じゃ……あ、そうか。セミリタイヤしてるんだったわね。確か、フリーライター」
「そうだ。もう10年以上、文章を書く生業をしている」
「その割には小説の文章が下手よね」
「作者の心臓を抉って塩漬けにするような発言は慎んでくれ。第2シーズンみたいに途中から書けなくなったらどうする」
「自分が悪いんじゃない。能力が低いのよ」
「そこだ。そういった厳しさが、やる気を失わせる」
私、2本目のタバコを取り出し、咥えた。
火をつける。
「以前、フリーになる前。私は、あるフリーペーパーの編集兼記者をしていたことがある」
「へぇ」
「女社長でな」
「へぇ!」
「もともと、自分も記者だった人で、自分にも他人にも厳しい人だった。出来の悪い奴には『バカ』だの『死ね』だの言っていた」
「し、死ねはすごいわね……」
さすがの白鳥も、若干引く。
「だが、それでも社員はついていっていた。うまくいったとき、良い記事が書けたとき、手放しで褒めることもあったからだ。だが……」
「だが?」
「全体会議で、その女社長はこう言った。『私は褒めるのをやめた。褒められたかったら、家人にでも褒めてもらえ』。私はガクッと来たね」
「どうして?」
「仕事の評価は職場でしてほしいと思うのが人情だ。別に頭を撫でてほしいわけじゃない。だが、一言笑顔で『良くやった』と言ってもらえれば、次も頑張ろうと思える。そうじゃないか?」
「……」
白鳥が難しい顔で俯いた。
「厳しく発破をかけたかったんだろうが、私はそこで、若干心折れした。その直後、私は刺客を放たれて死んだことになった」
「自衛隊に依頼されて異世界へ飛ぶ前の話だったわね。資料で読んだわ」
「そうだ。だから別段、さっきの話が直接的な退職理由ではない。だが、あのまま続けていても、辞めていたとは思う」
「……そうね。そんなもんかもしれないわね、人情って」
何か思い当たる節があるのか。
白鳥が苦しげな顔。
「私も、若いころはそう思ってた。もっと評価されたい。上官に認められたい。でも、誰も評価してくれなかった」
「今の白鳥陸佐は、その時の上官と同じになっちゃいないか」
「!」
白鳥が目を丸くして私を見る。
「あいつよりはマシだ、と言いたいかもしれん。だが、今お宅の周囲にいる人から見たら、どうだろうか」
「……そうね」
白鳥、落ち込んだように視線を落とした。
「失礼なことを言ったかもしれん。だが、もう少し、笑ってもいいんじゃないかと言いたいんだ」
「笑う?」
白鳥が顔を上げる。
「ヘラヘラしろとは言わない。普段は今までどおりでいい。しかし、頑張ってる者に対して、時には笑顔で接してもいいんじゃないかと言ってるんだ」
「笑顔で、接する……」
「厳しいだけじゃ、人間は潰れる。甘やかせばつけあがる。躾けるときは躾けて、褒めるときは褒める。叱咤するときはしっかり厳しく、でも時には笑顔で労をねぎらう。今、お宅ができているのは厳しい面だけだ」
「そう……ね……」
「無理して笑うことはないが、たまには笑顔を見せてくれ。お宅の笑顔……いや、貴女の笑顔は素敵だから」
私、最後にセクハラ的。
「……ったく、最後のがなければ完璧なのに」
白鳥が呆れ笑い。
「でも、わかったわ。ちょっと、努力してみる」
白鳥がうっすらと微笑み。
2回、頷いた。
「でも、あなたのセクハラ発言には付きあいませんからね」
白鳥、厳しい視線。
「あぁ、一応は覚えとくよ」
私、ヘラッと笑った。
「セクハラ大魔王じゃニャければ、隆はもっといい人ニャんだけどニャ」
猫またがわざとらしく、小さなため息をついた。


翌朝。
朝食後の9時。
私と猫または出発の準備をしていた。
「すぐに駐屯地へ行くんじゃニャかったニャすか?」
ベッドの上で。
丹念に耳のあたりの長毛を毛づくろっている猫またが聞いてきた。
「駐屯地には午後に行くとして、午前中は一度、コンビニへ戻る」
私は私で。
小さな書斎机で銃の手入れ中。
念のために持ってきていたP137。
まだ使用していないが。
手入れは必要。
ちなみに。
道具は山路に借用。
「ニャんで?」
「アイオーン高岡店がやられたんだ。私たちが留守の間に、コンビニがやられてたらまずいと思ってな。考え過ぎだとは思うが、一応、確認しておく。ついでに翔馬の荷物を1つでも持って行ってやりたい」
「ニャるほど。了解ニャ」
猫またが毛づくろいを止め。
小さく頷いた。
と、同時に。
ドアがノックされた。
「小若菜陸曹、ちょっといいかしら」
白鳥の声。
「あぁ、どうぞ」
私、手入れの手を止めず返答。
「失礼します」
迷彩服姿の白鳥がドアを開け、入ってきた。
ドアは完全に閉めず、少し開いている。
「どうした。デートのお誘いか?」
「残念ながら違います」
白鳥、即答でNo。
ただ、今までより幾分、否定の口調が穏やか。
「すぐに駐屯地まで来てください。昨日、あなたが拾得した小型監視ロボットについて、京極陸佐がすぐに確認したいそうです」
「すぐに?」
私、手入れの手を止め、顔を上げた。
「申し訳ないが、私たちは一旦、コンビニに戻って施設安全の確認と翔馬の荷物を取りに行きたいんだ」
「それでしたら別の自衛官に行かせます。敵方の通信網がどの程度回復しているか、小型監視ロボットを調査して早急に確認しといたほうがいいと京極陸佐が連絡してきました」
「仕方ないな。わかった」
私、視線をP137へ戻す。
「こいつが終わったら、すぐに行こう」
私、手早くP137を組み立て始める。
「二丁拳銃なのね」
白鳥が近づいてきた。
「普段はしないが、今回対峙する連中は相当にタフだと聞いてたからな。用心のためさ」
私、組み立て終了。
立ち上がり。
ヒップホルスターへとしまう。
「それなら、腕試ししといたらいかが?」
机の前に立った白鳥が。
微笑みつつ、小首を傾げる。
「腕試し?」
「ニャむ?」
猫また、言ってから飛び。
私の左肩へと着地。
「どういうことニャすか?」
「簡単です。先日のトレーニングを拳銃2丁所持して行うんです」
「勘弁してくれ(苦笑)」
私、文字通り苦笑を浮かべる。
「あれは実戦よりもキツい。あんた以外にクリアした奴はいないそうじゃないか。二流とか三流とか言われちまう殺し屋には、土台無理な設定だぜ」
「あら、2人目の達成者になったら、もう2流なんて言われなくて済むんじゃない?」
白鳥が少し挑むような視線。
「……言ってくれるじゃねぇか。人の自尊心をくすぐりやがって。わかった、ちょっとチャレンジしてみるよ」
「了解。じゃあ、沢登陸曹に伝達しておきます」
「頼んだ。あ、それから……」
私、軽く頬を突き出す。
「なに?」
白鳥が少し不思議そうに驚き顔。
「いや、ほっぺにチュってしてくれたら、私は頑張れる」
私、笑ってみせる。
「……まったく、懲りない男ね」
白鳥が呆れ気味に笑った。
「良く言われるよ」
私、顔を戻す。
「でも、いいわ」
白鳥が私に顔を近づけてきた。
「え……」
私、攻められると弱い。
絶句。
白鳥、ますます顔を近づけ。
そして。
机越しに。
「ニャむるぅ!?」
猫またの頬にキスし。
顔を離した。
猫また、目がまん丸。
「うちに2匹の猫がいるのは、姉さんが話してると思うけど、私も猫好きなの。きっと関二等陸曹より猫好き。だから、猫また陸曹には、すこぉーし優しくします」
白鳥、にこやかな表情で言うと。
踵を返し、ドアへと歩いて。
「出発は1000(ヒトマルマルマル)。早々に準備しといてください」
言い残し。
廊下へと出ていった。
こちらに振り向き。
ドアを閉める。
「ニャ、ニャ、ニャむるぅん♪♪ 白鳥さんにほっぺチュされたニャ♪♪O(≧∇≦)O♪♪」
猫また、大はしゃぎ。
「あーあ、またそうやって女子のハートを鷲掴みにしやがって」
私、わざとらしく小さなため息をつき。
「でもまぁ、白鳥がセクハラ発言に付き合ってくれたから、良しとするか」
小さく笑った。


今日の小若菜隆:【館発見】雷光に照らされ、謎の館(http://shindanmaker.com/245054 )が姿を現した。以後、全データを引き継いでそちらを探索してもよい。

今日の叡智笑鷹:【アクシデント】女ゾンビに噛まれてしまう! 十日以内(あと10行動)に治療できないとゾンビ化しゲームオーバーだ! 今【同行者】がいるなら代わりに噛まれ、一人失う。

【小若菜隆を選択・ステージ移行はせず】

今日の小若菜隆:【戦闘】路地裏でゾンビに遭遇! 5のダメージ! 戦闘後、襲われていた女性からお礼に治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)か食糧7のどちらかを貰える。

今日の叡智笑鷹:【探索】がらんとしたスーパーマーケットで、油と手頃な瓶を発見。それらを材料にして、火炎瓶(受けるダメージを0にする。使い捨て)の一丁あがり! 食糧:-3

【小若菜隆を選択・治療薬を得て、すぐに使用】

HP:94、食糧:65
アイテム・寝袋
クリアフラグ A(1つ)
※ゾンビ化治療済み


(あとがき)
えぇっと、長いよ(笑)
たった2日分の選択肢で。
まさかこんな展開になると思ってませんでした。
なんだよ、もう白鳥さんと仲良くなってるじゃないか(笑)
いや、まぁ、最後までロマンス的要素は一切織り込みませんけどね(爆笑)
そんなわけで、こんばんは。
小若菜隆です。

さて、今回は新キャラクターが3人ほど登場しましたが。
そのうちのお二人は。
大好きなアーティストさん『しーなとシュウ』のおふたり(椎名まさ子さん・梶山シュウさん)がモデルでございまして。
前回に引き続きのご登場でございます。

でもって。
お屋敷の写真ですけども。
奈良国立博物館仏教美術資料研究センター様(旧奈良県物産陳列所・国の重要文化財)でございます。

12話目あとがき1

12話目あとがき2

色々と候補はあったのですが。
たまたま雨の日に近くで用事があり。
豪雨での撮影が成功。
それなりによい写真が撮れたかな、と思ってたりします。

てなわけで、本日はここまで。
このあと、小若菜さんは続きを書きます(。-ω-)zzz←言ってることとやってることに違いがありすぎる(苦笑)
おやすみなさいませm(●_●;)m
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前回の内容はこちら↓を参照
2017-10-22
不覚 ―zombie survival part Ⅲ 17~19日目―
https://ameblo.jp/h-m-taka5723/entry-12321934128.html


「さて、それじゃ我々も駐屯地に行きますか」
私、言いながら。
車のリモコンキーをジャケットのポケットから取り出した。
刹那。
「キャァァァァ!!」
女性の叫び声。
私、リモコンキーをポケットにしまい、銃を抜く。
「猫また、治療は後回しだ。行くぞ」
私、言うが早いか。
駆けだした。
「了解ニャ!」
猫またも牙と爪を出した。


アイオーン高岡店の駐車場から県道24号線へ出て、右折。
万葉線を左に見つつ。
声のする方向――旭ヶ丘交差点へ向けて走る。
交差点までの距離、約150メートル。
BGMは柴田恭兵氏の『TRASH』。
「そんな韋駄天じゃねぇ!」
私、本文に叫びつつ走る。
「誰か助けてぇ!!」
再び、逼迫した女性の声。
まだ、若い声音。
私、速度が上がる。
「反応がわかりやすいニャ!」
猫また、思わず突っ込む。
「なんとでも言え!」
私、旭ヶ丘交差点を右に曲がる。
250メートルほど先。
ほぼ倒壊している富山合同高岡宿舎前。
道の中央。
ゾンビ兵が数体。
私、さらに走る。
ゾンビ兵、誰かを取り囲むように円形の立ち位置。
その中央。
ゾンビ兵の足下。
しゃがみこんだ姿勢の女性。
メイド服着用か。
距離、100メートルまで迫る。
「そこまでだ!」
私、一旦立ち止まり叫ぶと。
ウィーバースタイルで2発発砲。
こちらに背を向けていたゾンビ兵2体の後頭部に命中。
頭の後ろ半分を吹き飛ばし、その場に崩れ落ちた。
気がついたゾンビ兵、こちらを見る。
メイド服の女性もへたり込んだまま、顔を上げてこちらを見た。
ボーイッシュな顔立ち。
髪はショートカット。
まだ幼さ残る女性。
皮膚は肌色。
間に合ったらしい。
「今助ける!」
私、もう2発発砲。
走り出す。
ヒップホルスターの銃に手を伸ばしかけたまま、ゾンビ兵2体が頭を吹き飛ばして倒れた。
「キャーー!!」
メイド服の女性、またも頭を抱える。
残ったゾンビ兵5体が、それぞれCz.82をヒップホルスターから抜く。
私に向かってポイントショルダーで構えた。
私、走りながらウィーバースタイルで銃連射。
ゾンビ兵3体の頭部や胸部を撃ち抜き。
残り2体の右肩へ命中。
力が入らなくなった右手からCz.82が地面に落ちる。
同時に。
頭部や胸部に大きく穴を開けたゾンビ兵が膝から崩れ落ちた。
慌てたゾンビ兵2体。
左手で右肩を抑えつつ。
一瞬、後ずさるように引き下がり。
我々に背を向けて逃走。
走る先には。
UAZ-469に似た小型の軍用車。
私の足では到底、追いつけない。
「追え、猫また!」
「了解ニャ!」
猫またが、私の右肩から飛翔。
「待つニャ!」
猫また、叫びながら猛ダッシュ。
女性の横を通過。
猫また、チラッと見る。
「メイドは任せろ! 行け!」
私、走りながら叫ぶ。
「わかったニャ!」
猫また、加速。
しかし、ゾンビ兵2体がUAZ-469に乗り込み、猛スピードで発進。
富山合同高岡宿舎前横の路地へと右折。
「逃がさニャいニャ!」
猫またも右に曲がった。
軍用車両、加速が違う。
それでも。
猫また、徐々に近づく。
だが、飛んで爪や牙で攻撃できる射程圏内には、なかなか入らない。
「仕方ニャいニャ!」
猫また、飛翔。
全身が発光し。
人型へ(スーツ着用)。
着地し、走る。
人型でも速い。
BGMは柴田恭兵氏の『RUNNING SHOT(SHOTGUN MIX)』。
猫また、銃を抜いた。
走りつつ、ポイントショルダーで発砲。
タイヤ目がけて2発。
だが、UAZ-469のボディに弾丸が跳ね返された。
ゾンビ兵2体が振り向き、焦り顔で猫またを見る。
「隆みたいに当たらニャいニャ!」
猫またが叫んだ。
UAZ-469が速度を上げ。
アイオーン高岡店の国道8号線側駐車場を右に見つつ。
同国道の高架下、小さなトンネルに入る。
そこを直進し、道なりに右折すれば。
緩やかな坂道を登り、8号線に入り。
氷見街道方面へと向かう車線に合流する。
「8号線で逃げる気ニャすか!」
猫また、右折してアイオーン高岡店国道8号線側駐車場へ入った。
最短距離で8号線への出入り口まで200メートル。
速度を緩めず走り抜ける。
8号線が高架になっているため、最後はやや、上り坂。
猫また、問題にせず走り抜け。
足を止めず、反対車線近くまで走り寄る。 
同時にUAZ-469が側道から8号線へ入ってきた。
猛スピードで猫またの前を走り抜ける。
猫また、UAZ-469が走り去った車線へ。
立ち止まり、ウィーバースタイルでUAZ-469の後方に向かって3発発砲。
走りながらではなく、立ち止まっての発砲。
1発がUAZ-469のタイヤに命中。
タイヤがバースト。
ハンドル操作不能に陥ったUAZ-469。
縁石に乗り上げ、横転。
そのまま勢いよく路上を回転しながら進み。
爆発・炎上。
「悪く思わないでニャ。か弱い女性を襲った罰ニャ」
言いつつ。
猫また、銃をショルダーホルスターへしまう。
「……隆が一緒だと彼女が危険ニャ」
猫またが呟き。
今来た道を走って戻り始めた。


猫またが走り去ったあと。
私はメイド服姿の女性に駆け寄った。
「大丈夫か!」
私、女性の横に走り込み、しゃがんだ。
「あ……ありがとうございます……助かりました……」
女性が顔を上げた。
へたり込んでいる。
「立てるか?」
私、銃をショルダーホルスターにしまい。
女性の肩に手を回した。
「は……はい……」
メイド服の女性、ユラユラと立ち上がりかける。
私は女性の肩を抱きながら支えた。
が、しかし。
「あ……」
メイド服姿の女性、よろける。
「おっと」
私、手に力をかけて彼女を支えた。
だが、しかし。
よろけたメイド服の女性、悪意なく私の足を踏んだ。
いや、正確には。
私の足に乗ってしまった感じ。
力の入らない身体。
全体重が私の右足の甲にのしかかる。
「ぎ!……」
比較的、細身で小柄。
それでも、40㎏はあるだろう。
痛いなんてもんじゃない。
私、瞬時に涙目。
「ご……ごめんなさい……」
メイド服の女性、よろけつつ慌てて私の足からのく。
「だ……大丈夫だ、気にしなくていい」
私、顔つきクールを意識して強がりつつ。
メイド服の女性を抱く力を強めた。
「すみません……」
メイド服の女性、まだ足元がふらついていたが。
私にもたれるようにして立った。
「なに、貴女のような美しい女性を助けるために生まれてきたんでね」
私、カッコつけ。
ただし。
足がジンジンと痛い。
「そんな……」
メイド服の女性、照れた様子で顔を背ける。
二枚目半でも。
命の恩人ならば、多少は格好良く見えるのだろう。
「ひでぇ言われようだな」
私、本文に突っこみ。
「な……何がですか?」
メイド服の女性、不思議そうな顔をして私を見る。
「いや、なんでもない。名前は?」
「三浦…結乃(ゆいの)です」
「結乃か。いい名前だ」
私、またもクール顔で微笑む。
「あ……ありがとうございます」
結乃、またも照れたように顔を背けた。
「女性の一人歩きは危険だ。送ってあげよう。家はどこだ?」
「あの……中川町の御屋敷です」
結乃が顔を背けたまま返答。
「中川町の御屋敷?」
「はい、古い洋館です」
「中川町に洋館なんかあるのか?」
私、再度質問。
と、その時。
「たかぁーーー!!」
猫またが人型のまま。
猛ダッシュで戻ってきた。
「早かったな」
私、猫またへと顔を向ける。
「早かったニャじゃニャいニャ!」
猫また、私の前で止まった。
さすがに息を切らしている。
結乃が猫またへと視線を向けた。
「ニャっちなことしちゃダメニャ!!」
猫また、結乃の視線に気がつかず。
私へダメだし。
「ニャっちなことはしていない」
私、反論。
「してるニャ! 女の人の肩に手を回しちゃダメニャ!O(=●皿●=)O!」
猫また、発言の勢いに合わせて。
髭が出てしまった。
結乃が小さく驚く。
「お言葉だか、彼女ひとりでは立てないから抱き抱えてるまで。ニャっちなことではない」
「ニャんと!? 大丈夫ニャすか?(=´●Д●`; )」
猫また、結乃の顔を覗きこむ。
「は、はい……」
結乃、少し引き気味に返答。
「ニャむる?」
猫また、なぜ引かれているかわからない様子。
「猫また、髭が出とる」
私、冷静に指摘。
「ニャんと!(;●д●=)!」
猫また、慌てて髭を引っ込めた。
結乃、ますます驚く。
「あー、驚かなくていい。こいつは妖怪、言わば物の怪だ」
「も、もののけ?」
私の言葉に。
結乃が完全に引く。
「そうニャ。でも、僕は悪い物の怪じゃないニャ(*●∇●)ノ」
猫また、にこやかに返答し。
身体を発光させた。
次の瞬間。
本来の姿に。
「僕は猫また系執筆妖怪の叡智笑鷹ニャ。猫またって呼んでニャ(=*●∀●=)ノ」
猫また、自信満々に名乗り。
「ひ、人が猫に……」
結乃が呟き。
気を失った。
「おっと!」
私、結乃を抱き止める。
「ニャんと!Σ(=●Д●= ;)」
「ニャんとじゃない。精神的に追い詰められた後に人が髭だして猫になってみろ。そりゃあ気も失うだろうよ」
「ニャんとまぁ……( ;´●ω●`=)」
猫また、しょぼーん。
「まぁ仕方ない。この世界じゃ物の怪は基本的に怖い存在らしいからな。気がついた時にでも説明してやれ」
「ニャむる……(;´●ω●。=)」
「泣くんじゃない。お前は姿恰好がラブリーだから心配するな」
「ニャむる?(=●ω●。=)?」
「今までだって女性ウケは良かったじゃないか。きっと懐いてくれる」
「そ、そうニャすかね?(=●∀●。=)?」
猫また、少し元気になる。
「あぁ、大丈夫だ。大丈夫だから、お前はキャメルを取ってきてくれ」
私、左手をジャケットの右ポケットに突っ込み。
キャメルスーパーモデルのリモコンキーを取り出した。
「りょ、了解ニャ∠(=●∀●=)」
気を取り戻した猫また。
敬礼し。
再度、発光。
人型。
私、リモコンキーを下投げで放る。
猫またが受け取った。
「急いでくれ。これで敵陣が第3陣を用意していたら、いくら私でもひとたまりもない」
「わかったニャ。急いで戻ってくるニャ」
猫また、言うが早いか。
アイオーン高岡店へと走り出した。


数分後。
猫またがキャメルを運転し、戻ってきた。
私は結乃をお姫様抱っこし。
助手席へ。
その様子を見ていた猫またが。
本来の姿に戻り。
私の右肩へ乗った。
「もう左肩でいいぞ」
私、言いつつ。
運転席側へ歩く。
「もう大丈夫ニャすか?」
猫またが小首を傾げた。
「あぁ。ゾンビに噛まれた傷は、既に癒えている」
私、返答しつつ。
ドアをあけて運転席に乗り込んだ。
「ゾンビウイルスで細胞が活性化されてるんだろう。もっとも、それだけゾンビ化が進んでいる証拠でもあるのだが」
私、イグニッションボタンを押す。
エンジンがかかった。
「わかったニャ」
猫またが右肩から左肩に移動し、言葉を続けた。
「結乃さんをおうちまで連れて行ったら、すぐに駐屯地へ行くニャ」
「あぁ。そうしたいんだが……中川町に御屋敷とか洋館と言えるような家があるか?」
高岡で数少ない土地勘のある場所。
「あのあたりは高岡工芸高校とか高岡市美術館とか10段ソフトクリームで有名な『ショップまじま』さんとかあるが、メイドを雇うような大きな屋敷はなかったと思うぞ」
「隆、ここはパラレルワールドニャ。僕らの世界とは微妙に違うニャ」
「あ、それもそうか」
返答したところで。
おでこに冷たい水滴。
「ん?」
私、見上げる。
今まで気がつかなかったが。
怪しい雲行き。
「アイオーン高岡にいる間に天気が悪くなってたか」
私、ギア後方のボタンを押した。
伸縮式の帆が自動で閉じる。
「そうニャすね……あ、洋館のこと、駐屯地に聞いてみたらどうニャすか?」
「駐屯地に?」
「ニャむ。異世界の僕たちより、こっちの世界の人たちの方が土地勘はあるはずニャ」
「確かにそうだが……」
「それに、こんな世界でメイドさん雇ってるおうちニャんて、そんなに多くないニャ。生存者を把握してる自衛隊ニャら、何かしってるニャ」
「冴えてるな、猫また。しかし、1つ用心しときたいことがある」
「ニャに?」
「新政府軍の連中が通信網を早々に復活させてる危険性さ」
「ニャむ?」
「忘れたのか? ハエ型ロボットを」
「ニャ! そうニャすね」
「我々を監視していたと考えていい。あんな小型ロボットの映像を傍受できる態勢を整えている。こちらの通信を傍受されない保証はない」
「でも隆、京極陸佐はこっちの通信を傍受できるほどには回復しニャいって自信満々だったニャ」
「それもそうだな……」
帆が閉まっているが。
外の雨が急激に強まってきた。
「隆、ここで積んだり崩したりしても仕方ないニャ。とにかく、連絡してみるニャ」
「そうだな。今日は冴えてるじゃないか、猫また」
「いつもニャすよ」
猫またがドヤ顔。
「そうだな」
私、笑ってみせて。
通信ボタンを押した。
「こちら、富山CSM、小若菜だ」
『こちら富山駐屯、白鳥優二等陸佐。どうしました?』
「ほぅ、二等陸佐直々にご返答頂けるとは驚きだな」
『たまたま通信室にいただけです。あなたが通信してくると女性自衛官にちょっかいをだしかねませんから、私が出たんです』
「相変わらず痛いところを衝くな、まぁいい。確認したいんだが、敵軍からこちらの無線が傍受される恐れは現状もないんだな」
『特に異常は見られません。簡易的な通信手段は再構築したようですが、こちらの無線を傍受するレベルには達していないと思われます。何かありましたか?』
白鳥が事務的に返答。
「なーに、ちょっとな。後で駐屯地に戻ったら報告する……と、その前に寄りたいところがある。高岡市内に土地勘がある者を出してくれ」
『私で良かったらお答えします』
「高岡に詳しいのか?」
『だから私が答えると言ってます』
本当に相変わらずな態度だなこの女は、と思ったが。
言ってもせん無い事なので、黙っておく。
「そうかい。だったら教えてくれ。高岡市の中川町付近にメイドを雇うような屋敷はあるか?」
『屋敷?』
「そうだ。古い洋館らしいんだが」
『古い洋館……』
白鳥の口調があからさまに変わった。
「なんだ? どうかしたか?」
『い……いえ、別に。中川町の洋館でしたら、県道24号線を高岡駅方面に進み、志貴野中学校を過ぎたところ、高岡広小路第一ビル手前の道を左折、高岡市役所と高岡工芸高校を過ぎたら左側にあります』
「ってことは、高岡市美術館の正面か? あのあたりには10段ソフトクリームで有名な『ショップまじま』さんがあったと思うが?」
『もっと手前です。行けばわかるはずです』
「そうか。いや、わかった。その辺りだったらナビ無しでも行ける。ありがとう」
『いえ……なんでそんなことを聞くんです?』
「ん? なんでって……あぁ、実はメイド服姿の女性がゾンビ兵に襲われているところを助けたんだ」
『えっ!!』
白鳥の声音が明らかに普段と違う。
『怪我は?』
「怪我はしていない。だが、ゾンビ兵に襲われた後に猫またが人から本来の姿に戻るところを見て、あまりに驚いたんだろうな、気絶しちまったんだ」
『そ、それで……』
「これから家まで送り届けてやろうと思ったんだが、本人からは『中川町の御屋敷で古い洋館』としか聞いてなかった。だから駐屯地で土地勘のある人に聞いたらどうだと猫またがアドバイスしてくれたのさ」
私、軽く微笑みつつ。
肩に乗る猫またを見る。
猫またも右前脚で親指を立てる仕草。
『そ、そうだったんですか……今から、行くつもりですか?』
「あぁ。彼女の雇い主も心配してるだろうからな。ってか、その屋敷に何かあるのか? さっきから様子が変だぞ」
私、的確に突っ込み。
『い、いえ、なんでもありません。ただ……』
「ただ?」
『危険な場所ではありませんが、彼女を届けたらすぐに屋敷から出て下さい』
「……わかった。なる早で出ていく。それじゃ」
私、通信ボタンを再度押して。
無線終了。
「白鳥の奴、なんか知ってるな」
「ニャむ、隠してる感じニャ」
「危険ではないと言っていた。いくら嫌ってる相手とはいえ、命にかかわるような場所に行かせやしないだろう。さて、何を隠してるのか……」
「隆、悪いクセニャ」
「……そうだな。今考えても結論は出ない。だったら、行ってみて確認したほうがいい」
「ニャすよ♪」
「よし、では相棒の御指導に従って、行くとしますか」
私、猫またにニヤッと笑ってみせると。
ギヤを入れ。
キャメルを発進させた。


県道24号線を走り。
北陸電力高岡支店の前を通過し。
志貴野中学校の前を通って。
志貴野中学校前交差点を左折。
右手に高岡広小路第一ビル。
「あれ?」
「ニャむむ?」
私と猫またが声を合わせて、少し驚く。
私、キャメルを止めた。
「ニャんか、違うニャ」
「あぁ」
私たちの知っている高岡広小路第一ビルよりも、少し小ぶり。
そして。
富山県高岡警察本部の看板。
「人の気配もするニャ」
ゾンビではない。
また、敵意剥き出しの人間の感じでもない。
「帰りにでも寄ってみよう」
今は、立ち寄っている場合ではない。
結乃を送り届けることが先決。
私、アクセルを踏む。
「そうニャすね」
猫またが頷いた。
左手に高岡市役所。
もはや残骸と化している。
右手には高岡工芸高校。
次いで、高岡市美術館。
「高岡工芸高校は藤子・F・不二雄先生の卒業校ニャ」
「丸井の創業者も卒業生だったか」
「青井実アナウンサーのおじいちゃんニャ」
「良く知ってるな」
「1200歳ニャから」
「年齢は関係ないと思うぞ」
本編とはまったく関係ない会話をしつつ。
キャメルを走らせる。
「あれか」
左手に。
垣根に囲まれた大きな建物が見えてきた。

12話2枚目

「随分と和洋折衷な感じだな」
「ニャむ」
車を門の前へ止める。
「さて、かなりの雨だが仕方ない。私が一旦降りて呼び鈴でも鳴らしてみる……」
言いかけたところで。
門が自動的に開いた。

12話1枚目

「……猫また、妖力でも使ったか?」
「いんニャ」
猫またが小さく首を振った。
「だろうな」
私、視線が鋭くなる。
屋敷の正面玄関から。
大きな黒い傘をさし。
黒い帽子をかぶった男が出てきた。
こちらに向かってくる。
「どうやら、我々の到着をわかっていたらしい」
黒系のスーツにワインレッドのシャツを着用。
シャツのボタンは第2ボタンまで開いており。
大き目の襟がスーツの外へ出ている。
「あいつ、ただもんじゃないぞ」
「ニャんと?」
身体は決して大きくなく。
比較的、小柄。
顔も小顔だが。
視線が一般人のそれではない。
「きっと普通の人が見ても判断つかんだろうが、同業者だからわかる」
「ニャんと!? ニャ(じゃ)あ、あの人も殺し屋ニャすか?」
「あぁ」
殺し屋特有の、瞳の奥の冷徹さ。
私ですら危機感を感じるほどの冷静さ。
「何人の人間を殺めてきたんだか」
私、小さく息をついた。
男が近づいてくる。
「ど、どうするニャ、隆」
猫またが心配そうに私と男を交互に見た。
「なに、私たちはこちらにお勤めの方を助けたんだ。礼を言われることはあっても、いきなり撃たれることはあるまい」
私、言いながら。
背筋に寒さを感じる。
男が運転席へと近づく。
私、窓を開けた。
いつでも銃を抜けるよう、ハンドルから右手を離す。
「いざとなったらアクセルを踏む。ハンドル操作を頼む」
私、口を動かさず。
腹話術で猫またに指示。
「わ、わかったニャ」
猫またが頷いた。
男が中腰になり。
開けた窓から顔を覗かせた。
「失礼ですが、小若菜隆特別一等陸曹と猫また特別三等陸曹ですか?」
男が質問。
表情の変化がない。
「そうだ。なぜ私が来ると知っていた?」
「結乃を助けて頂きありがとうございます。華玖様がお待ちです。そのまま玄関前までお車でどうぞ」
私の質問に答えず。
男が返答し、姿勢を戻すと。
先に歩き始めた。
「……なんなんだ、いったい」
「白鳥さん、ここの何を知ってたニャすかね……」
「今さら考えても始まらん。死ぬことはないだろうし、行くぞ」
私は窓を閉め。
一旦、バックしてから。
左折して屋敷の敷地へと入った。


キャメルを玄関前に止めた私は、車を降りた。
「結乃は私が引き継ぎます。申し訳ございませんが、ご自身で扉を開けて、中へお入りください」
男が言い終わると、私の返答を聞くそぶりも見せず。
助手席側へと歩き始めた。
「……わかった」
私はドアロックをせず。
玄関へとゆっくり歩く。
屋根があるが、吹きこんでくる雨に少し濡れる。
気にしていられない。
「猫また、頼む」
小声で指示。
「ニャい」
猫またが頷き。
身体を私たちの背後へと向けた。
キャメルのドアが開く音。
「男の人、助手席に向かって身体を屈めたニャ」
猫また、報告。
「結乃さんの両わきに手を入れて移動させたニャ……背後から抱えるようにしたニャ……」
私、不自然にならぬように気をつけながら。
ゆっくりと歩く。
それでも、玄関まで辿り着く。
しばし、動きを止めた。
「男の人、膝を結乃さんの背中にあて……ニャ! 活入れしたニャ!」
猫また、小声で叫んだ。
「結乃さん、気がついたニャ。周りをキョロキョロ見回してるニャ」
「わかった。助かったならいい。それにしても手馴れたもんだ」
私、玄関のドアノブへと手を伸ばし、回した。
ドアを引き。
中へ入る。
「これは……」
「……懐かしいニャ」
大きなフロア。
正面には2階へと続く大階段。
赤い絨毯が敷かれている。
1階、2階ともに、左右へと続く廊下が伸びる。
柱や階段の手すり、2階廊下の柵などは曲線的。
天井にはシャンデリア。
明らかに植物をモチーフにしたステンドグラス。
「内観はアール・ヌーヴォーに強く影響されてるな」
しかし。
壁は吸い込まれそうなほど美しい白色。
漆喰塗り。
柱や床、階段や2階廊下の柵はすべて木目。
色は塗られていない。
天井も太めの木と細めの木で格子模様。
「外観も内観も和洋折衷は共通か」
「明治期とか大正期にこんなお屋敷を見たことがあるニャ。でも、ここまでアール・ヌーヴォーに影響されてるニャんて珍しい気がするニャ」
「そうなのか?」
「僕が見たことニャいだけかもしれニャいニャ」
「どっちやねん」
「ニャはは」
猫またが誤魔化し笑い。
ほぼ同時に。
2階の廊下の先から。
扉が開閉された音。
パタパタと廊下を走る足音。
そして。
古い洋館らしいドレッシーな女性……ではなく。
白いドレスシャツを着て。
首からは水色のストール。
デニムのショートパンツ。
ネイビーのパンプスを履いた女性が現れた。
色白で、ショートパンツから伸びる太ももが眩しい。
「あなたが小若菜一等陸曹!?」
女性が嫌みのない笑みを浮かべつつ階段を駆け下りてくる。
歳の頃なら40代後半か。
年上・笑顔・美人・色白・ショートパンツ。
しかも、無駄な贅肉はない感じだか。
ほどよく出るとこ出てる系。
「……もろ好みだ」
「何言ってるニャすか」
私の心からの呟きに。
猫またが呆れ顔。
「いや、なんでもない……確かに、私が小若菜だ」
私、猫またに小声で返答し。
女性へと答えた。
「ありがとぉー!!」
女性が両手を前に出して握手を求めつつ。
私に走り寄ってくる。
私、慌てて両手を出す。
「結乃を助けて下さったんですって!? 本当になんとお礼を申し上げて良いやら!」
女性が私の手を掴み。
上下にブンブンと振る。
「は、はぁ……」
恐らく、この女性が。
華玖様なのだろうが。
これだけ由緒ありげな屋敷の女主人とは思えない感じ。
「あの子、足は速いんですけど、あんまり体術の心得がなくて」
「は、はぁ……」
「ニャい……」
猫またも、やや押され気味に返答。
「あっ! あなたが猫また三等陸曹ね。初めまして。この度はあなたにも助けられたようね」
華玖と思われる女性が満面の笑みで猫またの頭を撫でた。
「ニャむるん♪ニャむるん♪♪ 僕たちは当然のことをしたまでニャ♪♪♪」
美人に頭を撫でられると「♪」まみれな猫また。
普段の3倍増し。
「お前だって美人には弱いじゃないか」
「隆みたいにニャっちな理由じゃないニャ♪♪」
「余計なお世話だ……って、そんなことよりもだ」
私、顔を引き締めた。
「お宅といい出迎えの男といい、なんで我々の名前から階級まで知ってるんだ」
「あぁ、優ちゃんが教えてくれたから」
「優ちゃん?」
「えぇ。妹の優ちゃん。いつもお世話になっております」
「お世話になってる優ちゃんって、まさか……」
「白鳥優二等陸佐は、私の妹です。私は姉の白鳥華玖と申します」
華玖が優しげな笑みを浮かべつつ、頭を下げた。

「な(ニャ)んですとぉ!?Σ(●Д●ノ)ノ(=●Д●ノ)ノ!?」

私と猫または、シンクロで驚きを隠せなかった。

(「名門(2) ―zombie survival part Ⅲ 20、21~日目―」へ続く)

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本日は皆さま御存知・お嫁ちゃんこと小若菜モトカと。
モトカの実家がございます城陽市にある「文化パルク城陽」にて、映画鑑賞をば♪
映画のタイトルは『ごはん』。
内容をざっくり申し上げますと。
稲作農家を題材にしておりまして。
城陽も舞台になっており。
ハートフルでありながら、いろいろと考えさせられ。
その上、見終わった途端に「うまいご飯を食べたい!」と猛烈に思ってしまう映画です(←説明下手だな、自分・苦笑)。

実を申しますと。
この映画を拝見するのは二度目でして(←前回はお嫁ちゃんのお父さんに誘われて拝見※1)。
展開をわかっているにもかかわらず。
私もお嫁ちゃんもギャン泣きしてました(笑)

どうやら、今後も各地で上映されるそうで(詳しくは未来映画社さんのFacebookでご確認を→https://www.facebook.com/kenjutomedamayaki/)。
ぜひ、年代問わず、多くの方にご覧頂きたいです(福本清三氏も大事な役どころで登場されますし・笑)。
大人ならば、お米作りを題材にしたハートフルなドラマとして楽しめつつ。
「農業って大事やな」と改めて気がつかされると思いますし(↓ネタバレ注意ですが、下記に詳しく想いを書きました※2)。
お子さんやったら、お米ができるまでの工程とか、どんだけ苦労して作られてるか、楽しみながら学べて。
食べ物を大事にする、ご飯を大事に食べる意識が芽生えたりするんじゃないかな、と思います。

ともあれ。
良い映画を拝見させて頂きました。
未来映画社さま、安田淳一監督、関係者の皆様方々、ありがとうございました♪

んで、上映終了後は。
主演されている沙倉ゆうのさん(ブログはこちら→https://ameblo.jp/sakurayuno/)が舞台挨拶をされまして。
閉会後、快く観客の方々と写真を撮られており。
私たちも撮らせて頂きました♪

ごはん上映会にて1

ごはん上映会にて2
↑私、髪ボサボサやな(苦笑)

沙倉ゆうのさま、ありがとうございました♪O(≧∇≦)O♪
監督さんに「DVDをはよう出して下さい」とお伝え下さいませ(笑)

さて。
明日は日曜ですが、私はお仕事。
その後はゾンビサバイバル小説の続きを書けたらいいなぁ(( ●_●;)←遠い目・苦笑)
と、とにかく(汗)
夜もとっぷりと更けて参りましたので。
本日はこれまで。
おやすみなさいませ。


※1
私およびお嫁ちゃんの氏・素性を御存知の方々。
大変申し訳ございませんが、ネット上やお身内で我々の氏・素性がわかってしまうようなコメント・発言・告げ口(笑)はお控え下さいませ。
(↑仕事柄、世を忍ぶ戸籍上の本名と小若菜隆・モトカが直結されてしまうと厄介なことになりますゆえ、御理解・御協力を宜しくお願い申し上げますm(●_●)m)

※2
物語の途中に出てくる内容なので、ネタバレ注意ですが。
これ、農地を残さなきゃいけないと思ってる方も、農地を住宅地とか工業団地とか商業施設とかに変えた方が良いと思ってる方も、観た方が良いと思うんです。
個人的には、農地も大事やけど工場も商業施設も住宅地も人が生きていく上で大事だと思っており。
物語で出てきた工業団地誘致を一概に批判するつもりは毛頭ないんです。
工業団地が出来て生れた雇用とか自治体に落ちる税金とか考えれば。
必要やったんやろな、と思うんです。
でも、この映画を観たら。
農地がなければ美味いお米はできないよね、農業が衰退しちゃまずいよね、とも思うんです。
だから、農地を残そうと声をあげている方はもちろんのこと。
農地を他の用途に変えた方が良いと思ってる方も、この映画を観て。
まずは「農業は大事」とゆう、同じベクトルを向いて。
その上で議論していくことが大事なんじゃなかろうかと。
そしたら、完全に農地をつぶすとか。
完全に工業団地誘致をしないとか。
両極端な答えは出ないんじゃなかろうかと。
そんなことを想った次第でございます。
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横浜ベイスターズ、おめでとうございますO(≧∇≦)O
素晴らしい短期決戦の戦い方、さすがラミレス監督!
野村ヤクルトを思い出させる戦いっぷりで、ワクワクしちゃいました♪♪
インタビューも紳士ですな!
日本シリーズも楽しみですo(*≧∇≦)ノ
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