「『運輸政策研究機構』という団体は、空港の需要を毎回過大に予測し、全国に赤字空港が乱造された要因の一つになってきたと聞きます。先日、事業仕分けの対象にもなりましたが、いったいどのような団体なのでしょうか」=千葉県習志野市の無職男性(53)

 ■初めに建設ありき?

 運輸政策研究機構は、交通運輸に関する研究・調査を目的として、昭和43年に「運輸経済研究センター」として設立された国土交通省所管の財団法人だ。米・ワシントンにも拠点を置き、国際情報の収集活動も行っている。

 5月20日に行われた政府の行政刷新会議による事業仕分け対象となったのは、同機構の業務の一つである空港の「需要予測」だ。空港建設を目指す国や地方自治体は、同機構や民間のコンサルタント会社に需要予測を発注。空港を建設する際の判断基準となり、需要が高い場合は建設計画が進められ、低い場合は見直されることになる。

 空港の需要予測をめぐっては、これまで実績を大幅に上回る予測が多数出されてきたため「建設ありきで赤字空港の乱造を招いた」との批判がなされてきた。

 国交省がまとめた国内98空港(国内線)の需要予測と平成20年度の利用実績によると、資料が存在する72空港のうち、実績が予測を上回ったのは羽田などわずか8空港で1割程度。石見や紋別、奥尻などの地方空港は、予測の5分の1にも満たなかった。

 同機構についてはこれまで、98空港の大半の需要予測を請け負ってきたかのような報道がなされてきたが、実際に受託したのは北九州、静岡、那覇、福岡の4空港だけ。

 この4空港のうち、年間で106万人と予測した静岡(昨年6月開港)は、5月末までの1年間の利用者が41万人と大きく予測割れ。北九州も283万人に対し119万人(20年利用実績)と半数以下だった。福岡も1610万人に対し1477万人(同)と予測を下回った一方、那覇は1240万人に対し1460万人(同)と予測を上回った。

 つまり機構だけでなく、民間のコンサルタント会社の大半も需要を正確に予測することは難しいというわけだ。

 しかし、仕分け人から「発注者である国の建設を進めたいという意向をくんで過大予測しているのではないか」と指摘が相次いだのは、同機構自身が招いたといっても過言ではない。

 国交省OBの同機構会長が3月、報道機関のインタビューに対し「反復的に大幅に外してきたのは恥ずかしい。発注者側からこういう結果を出せとまでは言われないが、発注者の意図をどうしてもおもんぱかってしまう」と語ったからだ。

 同機構は「会長本人は一般的な構図として個人的な意見や感想を述べただけ」と釈明するが、需要予測の公正さに疑義を生じさせる発言として波紋を呼んだ。

 ■結果は「予算縮減」

 国交省によると、需要予測は将来の国内総生産(GDP)や人口見通し、地域別の交通量などを数値化してコンピューターではじき出すといい、「一定の条件を付与すると一定の結果が出るため恣意(しい)が入り込む余地はない」と、発注者の意向への配慮を否定する。

 13年12月には、ガイドラインを作成して、受注者ごとにバラバラだった予測方法の統一を図ったというが、それでも正確な予測は難しい。この最大の原因について、国交省は航空会社の経営悪化で想定していた就航が実現しなくなる点を挙げる。

 しかし、仕分け人の「予測は常に間違うものだが、いつも過大に間違えるのは、わざとやっていると思われても仕方ない」という指摘はしごくもっともだ。

 航空政策に詳しい早稲田大学の戸崎肇教授は「過大予測の原因が検証されず、長年まかり通ってきた背景には国民全体が空港を造りたかったことがある」と指摘する。「今でこそ赤字空港だと批判するが、新幹線が整備された後は空港くらいしかなく、国から補助金が出るから、地元の建設業界や財源を確保したい自治体も歓迎した」と話す。

 戸崎教授は同機構について、調査・研究業務には一定の成果があるとした上で、問題点として、国交省OBが多数天下りしている事実を挙げる。「空港は公共性があるから、利益追求に走りすぎる民間コンサルタントだけでなく、機構のような公的機関が空港関連業務を受託してもいいが、そうであるなら、機構は人的に国交省から独立しないといけない」と指摘する。

 仕分け結果は、国が需要予測を行う業者を選定する際には、競争的な手法を取り入れて「予算を縮減する」だった。(河合龍一)

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