愛知県離婚問題相談センターのホームページ(養育費について-算定表の使用方法-)でも記載してありますが、義務者、権利者が働こうと思えば働けるのにもかかわらず、働こうとしない場合には、潜在的稼働能力があるものと判断して、統計資料などで収入を推計することもあります。

 

今回、以下にご紹介する事例は、その潜在的稼働能力が問題となった事例です。

 

平成24年に裁判上の離婚をした元夫は、元妻に対し、毎月、月額6万円の養育費を支払っていましたが、その後、自分の年収が減少し、元妻の年収が増加したことから、養育費減額の調停を申し立て、調停が不成立となったため審判へと移行しました。

 

審判では、元夫が、調停の段階で職を失い、審判の段階でも、就職活動を行っていることから、事情変更を認めたのですが、元夫に潜在的稼働能力があるものと判断して、賃金センサスから収入を約605万円程度と推計しました。

 

元夫が即時抗告した後の高等裁判所の審理では、「元夫は、失職後、就職活動をして雇用保険を受給しているが、原審判がされた時点では未だ就職できていなかったことが認められるところ、その状態が、元夫の主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮していないものであり、元妻との養育費分担との関係で公平に反すると評価されるものかどうか、また、仮にそのように評価されるものである場合において、元夫の潜在的稼働能力に基づく収入はいつから、いくらと推認するのが相当であるかは、元夫の退職理由、退職直前の収入、就職活動の具体的内容とその結果、求人状況、元夫の職歴等の諸事情を審理した上でなければ判断できないというべきであるが、原審は、こうした点について十分に審理しているとはいえない」として、差し戻しました。

 

要するに、労働意欲がないから働かない、働かないから収入がないというような場合には、養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価され、潜在的稼働能力があるものと判断して、統計資料などで収入を推計することが許されるが、そういう場合でなければ、簡単に潜在的稼働能力があるものと判断すべきではないということでしょう。

 

現在、無職で、必死に就職活動をしてはいるがなかなか採用してもらえない、生活の頼りは雇用保険だけという状態で年収が約605万円程度と推計されれば、多くの人は戸惑うことと思いますので、潜在的稼働能力の有無の判断は、慎重かつ十分な審理に基づいて行われるべきであると思います。

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